「俺達三人は、あそこで出会うべくして出会った。陳腐に言えば、そういうことだ」  
「………」  
「例えば、ギャルゲーには、よく道の曲がり角でヒロインとぶつかって出会うパターンがある。ちょっとしたズレで回避されるようなことでも、ストーリー上必ず起こる」  
「はあ……」  
「勿論、ある程度の制限のある自由ってのはあるさ。  
例えば、朝、早めに起きて学校に行く。朝食を摂ってから学校に行く。このような理不尽な、何の意味もない不自然の行動を行うことは可能だ。  
だが、ストーリーそのものには逆らうことは出来ない。たとえ、道ばたで出会わなくても、学校に行くと、朝会でヒロインが紹介される。そして、そのヒロインは主人公のクラスに編入され、席は主人公の隣になる。そして、  
『わたし、この学校不慣れだけど、いろいろ教えてねっ』  
などと科白を言う。時間と場所は変わっても、行為自体はなされることになるわけだ。この現象を俺はバックノズルと呼んでいる」  
「はあ……」  
「あるいはもう一つ別の可能性として、別の人間に会っていた可能性がある。  
例えば、前述の出会いが無く、ヒロインの女の子は違うクラスに編入された。  
しかし、放課後主人公が自分の所属する部活動に行くと、主人公のことを『おにいちゃん』と慕う後輩がいる。  
または、主人公のあこがれの先輩がいる。この現象を俺はジェイルオルタナティブと呼ぶ」  
「…ギャルゲー、好きなんですか?」  
「愛している」  
きっぱりと、狐面の男は言った。  
 

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