「――赦して欲しいなら、解るわよね?変態お兄ちゃん」
結局僕は、まさに"姑息"としか言いようのない手段で有耶無耶にした為に
月火ちゃんにも平等に歯磨きプレイを行なうことを誓う以外に手の施しようがなかったのだ。
いくら僕が吸血鬼のような存在と言っても、恐怖や戦慄の情がなくなったわけじゃない。
忍のようにウン100年も生きていればまた、違ってくるのかもしれないけれど、
所詮は、人間に毛が生えた程度の吸血鬼のような何かなのだから。
……閑話休題
プレイを始めてしまえば、もうこっちのものだと思っていたなんて
火憐ちゃんとの歯磨きプレイで何も学んでいない自分が、顧みて恥ずかしくなった。
はだけた拍子に見えるようになった、可愛らしい胸やおへそが。
艶かしくも可愛らしいうなじやふとももが、
何よりも、声にならない声と吐息、可愛らしい表情が、
――僕の情欲を否応なしに高めてしまっていたのだから、致し方ないと言いたいところなのだけども。
そう。見慣れてしまい過ぎて、以前はもはやだらしなくさえ思えていたというのに。
僕になされるがままになっている姿には、それを打消して尚、あまりある程の魅力があった。
ときめきを覚えざるを得なくなってしまったのだった。
それにしても、と改めて思う。
こんなに可愛らしい妹達がいると言うのに、どうして僕は気付かなかったのだろう。気付こうともしなかったのだろう。
もはや、灯台下暗しというレベルではない。なんて勿体ないことをしていたのだろうかという後悔さえ
禁じ得なくなってしまっていたのだった。
恐らくは、欲求不満が苛立ちに変わり、視野狭窄を起こしていたに過ぎないのだと思う。
――それも、2人の本心を知ろうとせぬまま、可愛げがない等と不満を覚えていた所為で。
僕は勝負に勝つ為、邪念や後悔をも磨き落としてしまう位のつもりで、月火ちゃんの口腔を磨く。
一心不乱に、それでいて慈愛を込めて。
しかし、何とか平静を取り戻そうとする僕を嘲うかのように、月火ちゃんが正気に返ってしまう。
「第1ラウンドは、私の勝ちで良いのかな、変態お兄ちゃん」
普段から眠そうな瞳はトロンとしていて、うなじに浮かぶ玉のような汗で、髪が貼りついてしまってさえいた。
それでも尚……寧ろはっきりとした口調で、僕に選択を迫る。
そう。僕が苦慮しているうちに口元をぬぐい、改めて僕に選択を迫っていたのだ。
トロンとしつつも鷹のような眸で僕を見つめ、嗜虐的で妖艶な笑みを湛えながら。
その眸は、ある一点を捉えていた。
そう。殆ど行き場のなかった情欲で充満していることを如実に示す、僕の男としての象徴を見つめていたのだった。