お兄ちゃんのベットで横たえられ、お兄ちゃんにされるがままになっている私。
とめどなくあふれていくかのような涙や涎、その他諸々を
タオルの敷かれた枕へと零れるがままにしていた。
ああ、これはお兄ちゃんや火憐ちゃんが正気を失っても仕方がないのかな、なんて
埋め合わせの一環としてお願いした歯磨きプレイを堪能しつつ、漸うと理性を手放していく。
少し前からは考えられない位仲良くなった理由について思いを馳せていた。
シャコシャコと、最愛のお兄ちゃんに歯を磨かれる快感を覚えながら。複雑な思いを抱きながら。
(変態の癖に、妙に憶病なのがプラチナムカつく。キスくらいしてみやがれ、チキン兄貴……)
もしそう思ったことが何度あったかを話せば、
私の……いや、"私達の"覚悟を否定されてしまうことに憤ってしまうのも納得してもらえるかもしれない。
無防備な姿勢を見せるのも、時折ヒスを起こすのも、本当は私のことを見て欲しいからなのだ。
ただでさえ、小学生の頃はお兄ちゃんのことが好きだからという主旨で断っていたのだ。
そんな若気の至れりの所為で、カムフラージュのつもりとはいえ
彼氏彼女の関係になるのさえ困難を極めたというのに、ピュアな関係を維持できているのが不思議な位だった。
お兄ちゃんに気まぐれの優しさを向けられたら、崩れてしまうかもしれないほどに危うい。
でも、責任取りやがれこのチキン兄貴と思ったこと等、数える気もなくなってしまった。
それに、ダメなところも含め、最も愛しているのは私だという自信も自負もある。
――この上なく変態なお兄ちゃんだけど、良いところを誰より知っているのも他ならぬ私なのだと。
火憐ちゃんは言うまでもなく、千ちゃんにだって負けるつもりはない、少なくとも不戦敗するつもりはないと。
そんなことを思案しているうちに、我ながら妙に艶っぽい声を無意識にも出てしまっていることに気づく。
我に返った途端恥ずかしくなり、視線を上げると、
気まずそうに頬を染め、心なしか前屈みになっているお兄ちゃんと目があった。
ムクムクと嗜虐的な欲求がもたげてしまうのも、魔が差してしまったからではないだろう。
ときに嗜虐的に、ときには被虐的に。盲目的なほどに狂おしく紡ぎでもしない限り叶わないと、
つくづくこじれ、歪んでしまった愛情に胸を馳せていたのだから。
――第1ラウンドは私の勝ちで良いのかな、変態お兄ちゃん?
ラウンド終了か続行かを尋ねる私。それはもう、耳元で囁くように、努めて意地悪に。
駆け引きはまだまだ始まったばかりだ。