【ひざまくら】  
 
 
 今日は『いいひざの日』とかいう訳のわからない日らしい。  
 せっかくなので戦場ヶ原にお願いしてみることにしよう。  
「というわけで膝枕を頼むよ戦場ヶ原」  
「……いきなり何をとち狂った事を言っているのかしらこのゴミ虫は。いいから早くその問題を解きなさい」  
「はい」  
 むう。失敗したか。  
 というか勉強を見てもらっている最中に言うことではないな。これは何を言われても仕方ない。  
 しかし目の前の問題が難しすぎて現実逃避もやむを得ないだろう。素直に戦場ヶ原に解き方を聞いてみるか……。  
「その問題が一分以内に解けたら膝枕してあげてもいいわ」  
「解けたぞ」  
「えっ?」  
 戦場ヶ原の言葉を聞いた瞬間僕の頭は冴え渡り、一瞬で解答を導き出してしまった。  
 単純てレベルじゃないぞ僕の頭脳よ。良くやった!  
「……仕方ないわね。ほら、来なさい」  
 戦場ヶ原はテーブルから足を出して広いところに移動し、僕を誘う。  
 やべえ、いざとなったら緊張してきた。  
 今更膝枕くらいで、と思うかもしれないが、身体は重ねても意外とこういう事は未経験なのだ。  
 おそるおそるといった感じで僕は戦場ヶ原の太ももに横向きで頭を乗せる。  
 あ……なんかすごい心地良い。  
 戦場ヶ原の柔らかさと匂いになんだか安らかな気持ちになる。  
 これで耳かきでもしてくれたら最高だな、とか考えてると、ふわっと僕の髪を梳くような感触があった。  
 戦場ヶ原が僕の頭を優しく撫でたのだ。それも一度だけでなく何度も。  
 ヤバい、本格的に寝てしまいそうだ。  
 何とか抵抗しようと試みるが、如何ともしがたい睡魔が襲ってくる。  
 なら、せめて今の気持ちだけでも伝えておかないと。  
 僕は戦場ヶ原の手を握りながら感謝と愛情の言葉を口にした。内容を明かすのは勘弁して欲しい。いつもなら言えないような恥ずかしいことなのだ。  
 そして。  
 結局僕が起きたのは一時間以上起ってからだが、戦場ヶ原の機嫌がそんなに悪くなさそうだったのは気のせいじゃないと思いたい。  
 今度はもう少し時間に余裕がある時に頼んでみようか。  
 そしてあわよくば戦場ヶ原に膝枕をしてやろう。  
 男女逆なのもたまにはいいんじゃないかな?  
 
 

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