カボチャの頭。裏地の赤い黒マント。……の下に白衣のミスマッチがマニアックだ。
その奥から聞こえてくるのは理知的で冷静な、どこか機械的な声。
「Trick or Treat?」
「…………」
これだけの───木賀峰助教授がハロウィーンのコスプレをしている───衝撃すら、軽く流してしまう狐面の男。
やはり、底が知れない。
って、そんな無理矢理盛り上げるシーンでもないけど。
「どうした、そんなくだらん格好をして」
狐面の男は問う。
「どうした、そんな胸のときめく格好をして」
再度問う。
少し方向性が変わってきた。
……萌え?
対する木賀峰助教授は、これまた冷静かつ冷静に佇んでいる。冷静なカボチャと冷静な狐が向かい合っているという、まるでこの世の終わり
のような驚異的な画が、そこに広がっていた。
シュールすぎてついていけなかった。
「Trick or Treat?」
「……そんなに悪戯して欲しいなら、思う存分堪能させてやるぜ」
言うが否や、狐面の男は木賀峰助教授の被っていたかぼちゃを取り払う。
「菓子なんぞよりは万倍甘く、愛してやるぜ」
「…………あん」