「今日は11月22日で『いい夫婦の日』、つまり僕たちの日ってわけだな!」
「何でだよ! いつ俺とお前が夫婦になったんだ!?」
「照れるなよー零っち。この前だって僕に犯されながら悶えていたじゃん、のたうち回りながらさ」
「レイプされたら誰だってそうなるわ! しかも首締めプレイなんかしやがって! 情緒もロマンもないぞ!!」
「クビシメロマンチスト、なんてなー。でも零っちも最後にはイったじゃん。僕の中でどくどくーって」
「やめろ、あんなの思い出したくもない」
「なんだよー、零っちは僕のこと嫌いなのか?」
「……別に嫌いじゃねえよ、むしろ」
人識は言葉の途中で出夢の腕を掴んで引き寄せ、その勢いでそのままベッドに押し倒した。
突然のことに出夢はうっかり抵抗せず、そのまま組み伏せられる。
「お前のことは気に入ってる方だ。だから、その、なんつーかな」
押し倒しはしたものの言葉が上手く続かず、ぼりぼりと頭を掻く。
出夢は起きる素振りも見せず、人識の言葉を待った。
「その、お前とはもっと普通にそういうことをしてえんだよ。殺し名の分際で何を言ってんだってのはわかってるけどな、殺し合いもしてる仲だし。でも、んむっ!?」
人識の言葉は途中で遮られた。
突如頭を引き寄せられ、出夢の唇で口を塞がれたからだ。
「……?」
が、人識は訝しむ。
いつもならすぐさま舌がねじ込まれてくるのだが、今は押し付けられるわけでもなく、ただ触れ合うくらいの優しいキス。
人識は自然と目を瞑り、暴力で人を屠り続けてきたとは思えない小さな出夢の身体を抱き締めていた。
「ん……」
唇が離れ、しばらく見つめ合う。
出夢は茶化すようないつもの表情は見せず、少し紅潮しながらはにかむ。
「零っち……いや、人識」
「な、なんだ?」
「僕のお嫁さんになれよ」
「何でだよ!? 逆だろ!」
思わず人識は突っ込みを入れる。
が、出夢はその言葉ににやりと笑った。
「そっか、僕を嫁にするのはいいんだな」
「っ……!!」
はめられた。
一気に人識の顔が赤くなる。
「あーもう! わかったわかったよ! こんな世界に生きてる俺らだけどよ、お互いハタチ超えて生きてたら結婚しようぜ!」
もはや開き直りに近いプロポーズ。
それでも出夢は嬉しそうに人識を抱き締める。
そしてこの日は。
ベッド上で初めて人識が優位になった日であった。