「おい、そろそろ」
「ん……」
僕の首筋に歯を突き立てて血を吸う忍の背中をぽんぽんと叩くと、できた傷口をペロリと一舐めして忍は離れた。
すぐに血は止まり、二つの噛み痕だけが残る。いや、見えないんだけどさ。
「それにしてもお前様の血は美味いの。ブラッドソムリエの儂を唸らせるほどじゃ」
「そんな職業はこの世に存在しない」
舌なめずりをする忍に僕は突っ込みを入れる。
「ま、生きるために必要なことには快感を伴うらしいからな、食事しかり睡眠しかり。血が生きるために必要ならお前の脳に補正が入ってるんだろ」
「しかし儂が美味いと思っておるのは血だけではないぞ」
「え……んむっ!?」
突然忍に頭を掴まれ、キスをされる。
口をこじ開けられ、舌が僕の口内に差し込まれて唾液を掬い取り、激しく啜られた。
顔を離すと二人の唇の間に糸がつうっと引く。
「な、なにを……」
「ふふ、やはり唾液も美味いわい。極上じゃ」
唇の周りをペロリと舐める忍の目は、外見とは不相応に淫靡な光を放っていた。
そのままベッドに、つまり僕の横にぽすんと座る。
「お前様はどうじゃ? 儂の唾液、じっくりと味わってみぬか?」
そう言って忍はあー、と口を開ける。
自らの唾液をたっぷりと絡めた舌を突き出して。
それがしたたり落ちそうになるのを見て、僕は即座にその舌を口に含んだ。
「んっ……」
忍が小さな声をあげる。
それに構わず僕は舌を吸い、こくこくと飲み込んでいく。
舌にまとわりついていたのをすべて吸い尽くすと今度は忍の口内に舌を侵入させ、唾液を求めて這い、かき回し、啜る。
「んっ! んんっ! んふうっ!」
くわえた忍の舌をちゅううっと強めに吸うと、びくんっと身体を震わせて僕の身体にしがみついてきた。軽くイったのかもしれない。
唇を離して頭を撫でてやると、もたれかかってくる。
「どう……じゃったかの?」
「ああ、忍の唾液、美味しかったぞ」
「むふふ、そうじゃろ」
自慢気に僕の顔を見上げる。
そしてすぐに不満そうな表情に変わった。
「しかし儂は全然満足しておらぬ。もっとお前様の体液を味わいたいぞ」
「ああ、ほら」
舌を突き出すが、忍はふるふると首を振った。
そのまま手を伸ばし、カチャカチャとズボンのベルトを外しにかかる。
「お、おい、忍?」
「こっちの方が儂の好みじゃ。お前様の血、ドーナツと並ぶ美味三天王じゃよ」
語呂悪っ!
というかドーナツと同レベルなのかよ。
そうこうするうちに肥大化した肉棒がズボンからさらけ出され、天に向かってそそり立つ。
「ああ……これじゃ」
忍がうっとりとした目でそれを見つめ、ふんふんと匂いを嗅いでくる。
そこから肉茎に頬をあてがい、軽くこすりつけた。
まるでマーキングをしているかのようだ。
ひとしきり頬擦りしたあと、今度は舌を這わせ始める。
柔らかく温かい感触に思わず声が出そうになった。
根元から先端まで余すとこなく舐められ、忍の唾液とカウパーが混ざり合って妖しく光る。
一旦顔を上げて息が荒くなった僕の表情を確認した忍は、にっと笑って口を開けた。
白い歯と、ピンク色の舌と、赤い口内。
唾液でぬらぬらとてかるそこは僕の情欲をかき立てる。
それを読み取ったか忍は舌を淫らに動かす。
ああ。
その口で。
その舌で。
気持ち良くなりたい。
気持ち良くしてほしい。
僕は懇願するように忍に言う。
「忍、くわえて。そのちっちゃな口で、イきたい……っ」
「ああ、お前様の体液、儂の口の中でぶちまけるがよい」
忍は改めて顔を寄せ、先端を口に含む。
そのままゆっくりと唇の輪っかが根元へと進んでいき、肉棒が温かい感触に包まれていった。
忍は最初から容赦せず、気持ち良くするというより射精に導こうと激しく動く。
強弱をつけながら唇を締め付けて上下に動き、裏筋と亀頭を舌先で擦り回し、根元を指でしごきながら陰嚢を手のひらで包み込んでやわやわと揉む。
それらの動きにあっと言う間に限界まで高まった僕は忍の頭を押さえつけ、離れないようにする。
「忍、イくよっ、出すよっ……ああ、ああ……あ……あうっ! うっ! ううっ!」
小刻みに腰を振り、忍の口と舌と手で絶頂に導かれた僕は思い切り射精した。
びゅくびゅくと尿道を通って放たれる精液を忍は舌で受け止め、口内に溜める。
すべて出し切って余韻に浸る僕の手を取り、喉に当てさせた。
「あ……」
こくん、と精液が喉を通る感覚が伝わり、言いようのない興奮が湧き上がる。
それを繰り返して口内のをすべて飲み干すと、今度は肉棒にこびりついた精液を舐め取り、尿道に残ったものを吸い出す。
それらを口の中に含んだまま忍は身体を起こし、僕の頭に手を回した。
まさかこのままキスをして僕に飲ませる気じゃないだろうな?
が、そんな心配は杞憂だったようで、忍は僕の頭を自分の顔のすぐ下に横側に抱く。
ちょうど僕の耳が忍の喉に押し付けられているような感じだ。
「んっ、く」
ごくん、と喉の鳴る音が僕の耳に響く。
触覚でなく、聴覚で感じるその様に僕の肉棒はまたもや臨戦態勢となった。
忍の腕を取ってベッドに押し倒し、覆い被さる。
「おお、随分積極的じゃの」
「お前のせいだ」
「かかっ、なれば責任を取らねばの。じゃが」
忍は口を開けてちょいちょいと指差した。
「出す時はここじゃぞ?」
「いくらでも出してやるよ」
短くやりとりをした僕達は再び唇を合わせ。
舌を絡めながら体液の交換を行い始めたのだった。