今日は二月一日。どうやら『ニオイの日』とかいう日らしい。
「というわけで戦場ヶ原、お前の匂いを嗅がせてくれないか?」
「阿良々木くんのどんな思考の回路を経てそんな言葉が出てきたのか私にはわからないのだけど」
「そうか? つまりだな」
「説明しなくていいから目の前の化学式をさっさと正しく変化させなさい」
「……はい」
最後の追い込み、というよりは最後の足掻きとも言える受験勉強中。
ちょっとした現実逃避をしてしまったようだ。しかしこの化学式少々厄介なんだよな……。
素直に戦場ヶ原に解き方を聞いてみようか?
「それが解けたら匂いくらい嗅がせてあげてもいいわよ」
「できたぞ」
「えっ?」
なんだろう、このやりとりにデジャヴを感じる。いや、気のせいだなきっと。
それより重要なのは戦場ヶ原が匂いを嗅がせてくれると言ったことだ!
匂い。ニオイ。戦場ヶ原のにほひ!
「なんだか鼻息が荒くなっている阿良々木くんに危機感しかないのだけれど……まあ約束したし仕方ないわね、いいわよ」
戦場ヶ原は座り直し、軽く手を広げて僕を誘う。
もちろん遠慮なんかする僕ではない。身体を近付け、肩に手をのせてうなじに鼻を寄せる。
大きく息を吸い込むと、肺一杯に戦場ヶ原の匂いが満たされていった。
それは言葉にできないほどいい香りで、僕はそれに夢中になる。
「ん……」
戦場ヶ原が唇をぎゅっとしながら眉根を寄せて呻いた。
どうやら僕の鼻息がくすぐったかったらしい。
だけどそんな戦場ヶ原の仕草がとても色っぽくて。官能的で。
僕は戦場ヶ原を押し倒し、その豊満な双丘に顔をうずめる。
「あ、阿良々木くん?」
「もっと……戦場ヶ原の色んなところを嗅ぎたい……いいか?」
いや、すでに胸元を嗅ぎまくっているわけだが。
戦場ヶ原は軽く溜め息をつく。
「阿良々木くんが匂いフェチだとは知らなかったわ」
「戦場ヶ原限定だけどな」
「私も阿良々木くんの匂いなら好きなのだけれどもね……ちゃんとあとで今日の分の勉強をするのよ?」
「ああ」
僕は戦場ヶ原の服に手をかけ、ゆっくりと脱がしていく。
そして生まれたままの姿になった戦場ヶ原のあらゆる箇所を嗅ぎ、じっくりと愛した。
そしてもちろん。
後日羽川に説教された。