「よっ、と」  
 ぽすんと抱えていた斧之木ちゃんをベッドに寝かす。  
 忍と並んで眠るその構図は実に微笑ましいものだった。  
 しばらく眺めて目の保養をし、僕は自室を出て居間に下りる。  
「いつも余接が世話かけてすまんの阿良々木くん」  
 ソファーに座る影縫さんが声をかけてきた。  
 そう、今日は珍しく影縫さんが来訪しているのだ。  
 アポなしだったので、もし家族全員が夜まで帰宅しないということでなかったら面倒なことになっていたかもしれないが。  
 僕は影縫さんの対面に座る。  
「いえ、なんだかんだ忍のやつも楽しんでますし。気兼ねなく遊べる相手がいるのはいいことでしょう」  
 それに斧之木ちゃんがいることによって勉強中に忍に絡まれることが減ったしな。  
 しかし……。  
「ん? どした? そんなにうちをジロジロ見て」  
「あ、いえ……」  
 影縫さんと二人きりというのは否が応でも緊張してしまう。  
 もちろん変な意味ではなく、怖さによるものだ。  
 今は敵ではないといっても一度は本気で戦った間柄だし、現状が敵でないだけで決して味方というわけではない。  
 むしろ敵に回る可能性をいつだって秘めているのだ。僕が忍と共にいる限り。僕が吸血鬼の出来損ないでいる限り。  
 だが。  
「はっはーん、さてはうちの色香に惑わされてるんやな。男子高校生は旺盛やからな」  
 当の本人は僕たちの過去に何があったかなんてまるで気にしていない。  
 これは余裕からくるものか本来の性格によるものか。  
 たぶん両方なんだろうなあ。  
「いや、違いますよ。確かに影縫さんは綺麗ですけど…………というかそんなキャラでしたっけ?」  
 これまでの付き合いからすると性別関係をネタにするような感じはしなかったのだが。  
 いや、そこまで深い付き合いをしたわけではないけど。  
「んー…………お、そうや!」  
 僕の言葉を聞いてしばらく思案していたかと思えば、突然何かを閃いたような声をあげる。  
 何だろう、嫌な予感しかしないのだが。  
「そういえばあん時のお代をまだ貰ってへんかったな、ちょうどええからここで請求させてもらおか」  
 あの時。  
 僕が吸血鬼化した時のことだろう。  
 しかし影縫さんはいらないみたいなことを言っていたはずなのだが。  
「なーに安心しなや。金を取ろうっちゅうわけやない」  
 そう言って立ち上がり、僕の方に歩み寄ってくる。  
 
 やばい!  
 ものすごく怖い!  
 ひょっとしてサンドバックにでもされるのだろうか?  
 逃げようか逡巡しているうちに影縫さんは僕の前に立ち、肩を掴んできた。  
 あっという間もなくそのままソファーに押し倒され、馬乗りにされる。  
「か、影縫さん?」  
「ありきたりな台詞やが、お代は身体で支払ってもらおうかっちゅうことや」  
「え……んむっ!」  
 組み伏せられて唇を塞がれた。  
 抵抗する隙も与えられないまま口内に舌が侵入し、僕の舌が絡め捕られる。  
 ぐちゅぐちゅと唾液の音が脳内に響き、理性が薄れていく。  
 唇が離れると唾液の糸が二人の間に引かれた。  
「か、影縫さん……だめですよ、こんな」  
「えー、そんなこと言うてもほれ、阿良々木くんのココはすでに臨戦態勢やさかい。やめられる方が酷なんちゃう?」  
 そう言って影縫さんは股間をぐりぐりと僕の下腹部に押し付ける。  
 すでにズボンの上からでもはっきりわかるくらいに僕の肉棒は肥大化していた。  
「ま、嫌や言うても無理にでも取り立てるけどな」  
 影縫さんは僕の両手首を片手で押さえつけ、もう片手で僕の服に手をかける。  
 ていうか封じられているところがぴくりとも動かない。どんな力をしているんだこの人。  
 僕が無駄な抵抗を諦めた頃にはシャツは捲り上げられ、ズボンとパンツは脱がされて性器をさらけ出してしまっていた。  
「へえ……いい身体をしているのは知っとったけど、こっちも立派なもんを持ってるやんか。しかも準備万端ときとるし」  
 影縫さんはくすくすと笑いながら僕のギンギンに固く反り返った肉棒を眺める。  
 うう、穴があったら入りたい。いや、性的な意味でなく。  
 影縫さんはべー、と舌を出す。  
「口でしてやってもええんやけどな、あっという間に果てそうやからやめとくわ。どうせ阿良々木くん早漏やろ?」  
「決めつけないでください!」  
 そりゃちょっと人より早いかもしれないけどさ!  
 でも回復力には多少自信があるつもりだ。  
「ええってええって。若いんやし仕方ないこともあるわ」  
 笑いながら影縫さんは僕の肉棒を掴み、自分の股間に押し当てる。  
 ……え? この人いつの間に下を脱いだんだ?  
 すでに影縫さんは下半身を一糸纏わぬ状態にしており、少しイメージとは違う薄い陰毛と性器をあらわにしていた。  
「よっ、と」  
 一切合切迷いなく。  
 僅かたりともためらないなく。  
 影縫さんは腰を沈めた。  
 
 その結果として秘口に先っぽを押し当てられていた僕の肉棒は当然影縫さんの中に侵入してしまうわけで。  
「う、あああっ!」  
 意図せずに僕の口から悲鳴のような声が漏れる。  
 暖かくて、柔らかくて、前戯もしていないのにしとどに濡れたぬるぬるの感触。  
 敏感なモノを気持ち良く包み込まれて僕の脳内がドロドロに溶けていく。  
「んっ、ああ……気持ちええとこに当たるわ! 阿良々木くんの、最高やん!」  
 腰を小刻みに振って膣内の感じるであろう箇所を肉棒のカリ首で擦らせている影縫さんが感極まったような声を出す。  
 あの影縫さんが。  
 僕の上で腰を振ってよがっている。  
 ちょっと前までは想像だにしなかった淫靡な光景にますます興奮が高まっていく。  
 つまり情けないことにいつ果ててもおかしくないわけであって。  
「か、影縫さん……も、出ます……から……」  
「んー、うちのこと名前で呼んでくれたら許したってもええで」  
 影縫さんの意図が読めない。  
 だけどこのまま出すわけにはいかないので僕は再び懇願の言葉を口にする。  
「よ、余弦さんっ……もう、限界ですから……っ……」  
「んふふー、わかったで」  
 言うなり影縫さんはぐっと腰を深く落とした。  
 肉棒が根元まで影縫さんの膣内に埋まる。  
「う、ああっ! な、なんで……っ?」  
「許したる言うたやろ。このまんま中で出してもええよ」  
「!? だ、だめですよ、そんなの……うっ!」  
 反論しようとするときゅっとさらに膣内が締まり、うねうねと肉襞が絡みついて更なる快楽を与えてきた。  
 もう耐えきれそうにない。  
「よ、余弦さんっ! 出ます!」  
「ええよ! 阿良々木くんの精液、うちの中にどぴゅどぴゅ出しぃや!」  
 僕は解放された両手で影縫さんの腰を掴み、下から幾度も突き上げる。  
 一番奥を突くたびに影縫さんは気持ちよさそうに仰け反った。  
「あんっ! あんっ! まだおっきくなって、子宮口まで届いて! うちを孕ませる気まんまんやないか!」  
「う……あ……あ……あ……あっ! ああっ!」  
「あはっ! 来たぁっ! 熱いの、うちの中に! どぷどぷ出とる!」  
 僕はついに影縫さんの膣内に精液を放った。当然一回で出し切れるものでなく、何度も射精する。  
 精液が尿道を通り抜けるたびに僕は身体を震わせ、影縫さんは体内にぶちまけられる感覚を堪能する。  
 やがて長い射精が終わり、僕は息を荒げながらぱったりと両腕を投げ出す。  
 
 影縫さんはほう、と息をつきながら余韻に浸り、満足げな笑みを浮かべていた。  
「んー、良かったで。阿良々木くん……ん?」  
 僕の顔を見た影縫さんが訝しげな声を出す。  
 かと思うとそのまま腰を揺すり、再び僕の肉棒に刺激を与えてきた。  
「ん、くう……っ!」  
「なんや、まだこんなバキバキなまんまやんか」  
 そう、僕の肉棒はいまだ出す前と変わらぬ硬度を保っている。  
「まだ満足してへんのか。しゃーない、うちが最後まで付き合うたるわ」  
 言うなり影縫さんは上着を脱ぎ捨て、その豊満な胸を露わにした。  
 ふるふると揺れるその光景に僕は思わず唾を飲み込む。  
「ほれ、今ならうちの身体、好きにしてええんやで」  
 僕はおそるおそるといった体でその膨らみに手を伸ばした。  
 そして。  
 そのまま僕たちは幾度も身体を触れ合わせ、重ね合い。  
 僕は数えるのも億劫なほどに影縫さんの身体に精を注ぎ込んだ。  
 事後にシャワーを一緒に浴びるか? とのお誘いは丁重にお断りしておく。  
 最後に斧之木ちゃんの寝顔を眺め、影縫さんはある意味物騒な一言を残して帰路についたのだった。  
 
 
『良かったで阿良々木くん、またよろしゅう頼むわ』  
 
 
 
 

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