「あららら……」
「?」
「ぎさん」
「取ってつけたかのように人の名前を呼ぶな!」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「柿食えば」
「鐘が鳴るなり法隆寺!? ってなんで僕がお前のボケに乗らなきゃならないんだよっ!」
「阿良々木先輩。アイアンメイデンという拷問道具を知っているか?」
「道端で偶然出会った世間話の出だしに、拷問道具の話題を持ってくるお前のセンスを疑うよ」
「ちなみに日本語で言えば鉄の処女だ」
「僕の言葉を聞かずに話をすすめるな!」
「失礼。しかし阿良々木先輩。あの鉄の処女。処女! という道具は……」
「……待て……なんで処女って部分だけ強調するんだよお前は……」
「ん? 私は処女だぞ?」
「訊いてないよそんなこと!」
「そうか。じゃあアイアンメイデンの話に戻ろう」
「戻らなくていい……。拷問道具の話はやめてくれ」
「そうか、残念だ。今私の会話の引き出しには、後はBLについての話題しかないのだが」
「随分と狭い引き出しだなあおい!」
「ああ、そうだ。じゃあ少年漫画の話をしよう」
「少年漫画?」
「アイアンメイデン・ジャンヌは可愛いと思わないか? 阿良々木先輩」
「いや、確かに少年漫画だけどあくまでアイアンメイデンから離れたがらないんだなお前は……」
「あの鍵穴に手を突っ込みたいと、男なら誰でも一度は想像するだろうな」
「中学生のエロ妄想だよそれは!」
「ああ、男なら別の部位を突っ込むか」
「最低な振りだー!」
「ちなみに阿良々木先輩。あの打ち切りの最後のページに書いてあった蜜柑は、未完であることを暗示したものだったのだが……」
「そんなこと読んでた人なら誰でも知ってるよ! 馬鹿!」