あれから四年。  
 人間失格の殺人鬼、零崎人識は、ほんの気まぐれで、本当にただの気  
まぐれから、かつての知人、欠陥製品の元を訪れた(最も、正確に言  
えばその恋人である青色の住むマンションなのであるがそれは重要事項  
ではない)。  
 心なしか、四年前よりも警備が手薄になった。そんなことを考えなが  
ら、人識は三十二階にの天井裏へ忍び込んだ。  
 彼にとってはほんの悪戯心だったのだが、この何気ない行動が、彼の  
運命を決定付けた。もしこの時、彼が素直に玄関から入っていれば、ま  
だ運命は変わったかもしれない。  
 天井裏を忍び足で、声と気配の方向へ向かう。  
 そして、その真上。  
 人識は、隙間から部屋の中を覗き込んだ。  
 
「えへへ、いーちゃーん。髪、くくってー♪」  
「おっけー。じゃ、友。ぼくの髪もくくってー♪」  
「うにー、おっけー♪」  
「!?」  
 
 後の『零崎人識、バカップルの巣潜入レポート』というベストセラーが  
生まれる、その第一歩であった。  
 
 

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