「なんか、忘れられてる気がする」  
「誰にだよ」  
 玉藻がぐだーっと床に寝転がりながら、窓から差す光を浴びている。  
「そういや、しっかり学校行ってるのか?朝早くに出ていくが」  
「ゆらーり」  
「おい」  
「ゆらゆら」  
「……聞けよ」  
「ゆーらゆらーり」  
「…………」  
 何でこいつと暮らしてるんだっけ…………。  
「ひとしき君」  
「なんだよ」  
「眠くなったらえっちしたくなったんだけど……だめ?」  
「…………この淫乱が」  
「イン……ライン?スケ…………ト……したいの?」  
「言ってねぇよ!」  
 
 ぴーんぽーん。  
 
「あー、はいはい!誰だよ畜生」  
 どたどたと足を踏み鳴らして玄関までいく。  
「今開けるんでちょっと待ってくださいねぇっと」  
 ガチャリと鍵が開く。ドアを開けると眼鏡をかけた女が立っていた。  
「……よう、ガンダム」  
「ジグザグ、よ」  
 前に会った時と変わらない格好で、ジグザグが立っていた。  
「玉藻、知らない?冬休み終わっても寮に戻らないんだけど」  
「あん?あいつ、毎朝出ていくけ――――」  
 パリーンと、それはもう小気味いいぐらい軽い音が響く。  
「……ん?」  
 ジグザグを放って、音の鳴った方へと向かうと、窓ガラスが――――  
「あんの、馬鹿小娘がッ!!」  
「どうし」  
「たもこうしたもねぇ!人の家の窓破って逃げやがったんだ、あいつはよぉ!」  
 開けろよと言いたい。  
 とりあえず、見つけだしてお仕置しないと。  
 

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