放課後の生徒会室は、校内にいるセレブラントの会議室のような役割を持っている。
そのため、校内のセレブラントが現実世界に出払っていない限り、放課後の生徒会室には常に誰かいた。
それとは対照的に、昼休みの生徒会室は驚くほど人気がない。
そんな、誰もいない生徒会室にミナトはいた。
「……」
必要としていない幻体を知覚できないようにしているために、本来聞こえてくる昼休みの喧騒は聞こえない。
耳に痛い沈黙の中を歩きながら、ミナトは普段シマが座っている椅子に近付いた。
椅子とテーブルの間にある隙間の前に座り、スペースを作ろうとクッションに手をかけて椅子を少し前に押す。
十分なスペースが生まれ、ミナトはそこにペタリと座りこんだ。
そして椅子から手を離さず、逆に今度は顔を近付けて頬を寄せた。
(司令……)
ホウッと、熱っぽい息を吐く。
そうしながら、ミナトは制服の上から乳房を優しく揉み始めた。
「ん、んん、ぅ…」
乳首と下着が擦れ合うように手を動かし、より刺激を高めていく。
だが、服の上から得られる快感はたかがしれている。
名残惜しそうに胸から手を離し、その手でセーターを捲り上げる。
鎖骨まで押し上げた所で、ボタンを外していく。
セーターの下に隠れる上二つを除いた全てのボタンを外し終えるまで、少しばかり時間がかかった。
そのせいでホックを外す時間が惜しく、シンプルな白のブラをセーターと同じように押し上げて退かす。
ぷるんと零れた乳房を掴み、服の上からより強く揉んだ。
「ぁ、ぁ…、はぅ…んっ」
柔らかい乳肉を揉みしだき、時折乳首を摘む。
それだけでも十分に快楽を感じることはできるが、オルガズムに達するにはまだ足りない。
時間が限られていることもあって、乳房を揉みながらスカートの下に手を伸ばした。
(もう濡れてる……)
ショーツの上からなぞった陰部が湿っているのに、じわりと頬が赤くなる。
しかし、それにミナトの手を止めさせるだけの抑制力はなかった。
指をショーツの中に入りこませ、愛液でぬめっているヴァギナを守る花弁を指の腹で擦る。
「ンァ!」
乳肉を捏ねるのとはまた違う快感に、嬌声が上がった。
(声は堪えないと……)
幻体の存在をシャットアウトすることはできても、セレブラントに同じ事はできない。
だから、いつ誰が、ミナトのあられもない声を聞きつけてここに入ってこないとも限らなかった。
(司令に見られでもしたら…っ)
そこまで思って、シマに見られたときのことを想像する。
あの冷たい目に、自慰をしている姿を見下ろされる。
軽蔑の眼差しを受けるかもしれない。
もしかしたら、犯されてしまうかもしれない。
そう考えただけで漏れ出る愛液の量が増え、指が水につけたように濡れた。
溶岩のように噴き出た感情が激しい指の動きに繋がり、ねとつく蜜はどんどんショーツを濡らす。
シマに犯されるという甘美な想像に捕われたミナトは、頭の中で自分の指をシマの指にすり替えていた。
「ふぁ、ぁ、ぁ…っ、司令…っ、きもち、い…ですっ、司令…!」
柔らかくなった肉の花びらを広げながら、憚ることなく淫らに喘ぐ。
頭から声を抑える事はすっぽりと抜け落ちており、卑猥な想像の中でシマの指に嬲られるのに夢中だった。
ミナトのそれよりは大きく、けれど傷一つないシマの指がグチュグチュになった陰部をなぞり、押し開く。
淫乱と詰られても仕方ない姿を、やはり彼は淡々とした、それとも情欲の火が灯った目で見るのだろうか。
どちらの目を想像しても、それはミナトの興奮をさらに煽る手助けしかしなかった。
「ひぅっ」
さらなる快楽を得ようとして、濡れた花びらの上で控えめに存在を主張していた淫核を指先で摘んだ。
効果は絶大で、新たな蜜が精製されてミナトの指を濡らす。
神経が集中しているために、乾いた指で触ると痛みすら覚える肉の芽。
しかし、十分な潤いを得ている指は痛みを引き出すことなく、強い快楽ばかりを引きずり出した。
「だ、めです、司令…っ、そこ、はぁ…」
いやいやと首を振るが、想像の中のシマは手を休める事はない。
それに合わせて実際の指も止まらず、プクリと膨らんだ淫核を、痛みを感じる一歩手前の強さで何度も擦った。
「そ、こは…ぁ、きもち、よすぎ…てぇ…っ!」
淫核の刺激に恍惚となりながら、揉みすぎて熱を持ち始めた乳房に、さらなる刺激を与える事も忘れない。
手を動かすたびに尖った乳首が掌に押し潰されて、それがまた何とも言えない快感になった。
「ふ、ぁ…?」
不意に、快楽で視界が狭まっていたミナトの目に椅子が映った。
シマがいつも座っている椅子。
自分はその前に腰を下ろし、胸をまさぐり陰部を慰めている。
その事実を向き合うと、ゾクゾクとした背徳が背中を走ってまた新たな快楽を生み出す。
椅子に座ったシマの前に座り、彼の雄を咥える自分を何度想像した事か。
それだけではない。
乱暴に乳房を揉みしだかれる、涎を垂らす陰部を舐められる、猛ったペニスをヴァギナに突き入れられる。
淫らな想像をして、人前だというのに陰部が濡れかけた事は何度もあった。
「しれぇ…っ」
舌足らずな声で愛しい男を呼びながら、乳房を掴んでいた手で椅子に縋りついた。
温もりはなく、冷たい革張りのクッションがそこにあるだけ。
だが、ここにいつもシマが座っていると思うと、花びらはしとどに濡れていくのだった。
「しれぇ…、もっと…もっと気持ちよく…、気持ちよくして…ください…っ」
自らの想像が作ったシマに強請りながら、椅子に乳首を擦りつけるようにして動く。
そして、頭のなかのシマがそうするように、一方の指はクリトリスを捏ね回し、もう一方の指はヴァギナの中に滑り込ませた。
「ああんっ…!」
手とは違う感触に乳首はしこり、淫核と膣を同時に責める指に一際大きな声が上がる。
「あぁ、イイっ…!きも、ちイイで…す、しれぇ…っ!」
気弱な生徒会長を補佐するしっかり者の副会長も、冷静な司令をサポートする優秀な副司令もそこにはいなかった。
今ここにいるのは、自分が与える快楽に善がり、想像の男に酔いしれる一人の女だった。
「もうっ、もう…だめです…っ!」
飲み込みきれなかった唾液を零しながら、さらに強く椅子に縋りつく。
「イク…っ、イっちゃ……アアアアアッ!!」
最後まで言い終わる前に、ミナトはビクンと体を震わせて絶頂を迎えた。
ブルブルと小刻みに全身を振動させ、オルガズムの余韻を味わう。
時間があれば続ける所だったが、残念な事に何気なく見た時計の針は昼休みの終わりを知らせている。
余韻の波を乗り切ったミナトは、ぐっしょりと失禁してしまったように濡れたショーツの中から指を引き抜いた。
「ハァ…っ」
零れた吐息はまだ熱に浮かされていて、情欲を色濃く残している。
それを振り切るように首を緩く振ったが、目に入った椅子を見てしまうと、同じ熱っぽさの息が出た。
「司令…」
呟きながら、自分の熱で冷たさが損なわれているクッション部分に頬を押しつける。
自分から移動した熱はあたかも今さっきまでシマが座っていたような錯覚を与え、香るはずのない体臭までミナトの嗅覚に拾わせた。
「しれぇ…」
浮かぶ表情は、酷くうっとりしていた。