その日は、朝からエポナの様子をおかしかった。せわしなく足を踏み鳴らし、横で口笛を吹く少女―マロンに訴えかけるようにしきりにいななく。  
彼女は前にもエポナのそうした様を目にした事があった。数年前この牧場をリンクという少年が訪れた時だ。  
ある時期から急に姿を見せなくなった彼が、久し振りにここを訪れたのではないか。そう思い、いつもの仕事を幾分楽しげにこなすマロン。  
しかしそんな彼女の前に現れたのは、全く見覚えのない別人だった。  
 
「おい、ガキ。いつまで寝てやがる?やる気あんのかよ」  
インゴ―の声に、マロンははっと回想から現実へ意識を戻す。  
頬から頭にかけて残る鈍痛で、頬を張られて気絶した事を思いだす。続いて、今自分が置かれている状況も…。  
「ったく、口での奉仕も満足に出来ねぇとはな。親子揃って鈍臭ぇ。これじゃいつになりゃガノンサマに献上できるやら…」  
床にうずくまったままのマロンを見下ろし、忌々しげに呟くこの男は現牧場主のインゴ―。  
マロンの日常が変わったあの日、勢い良く訪問者・ガノンドロフに食ってかかったものの、一度その力を見た途端態度を豹変させ、牧場とマロンを彼に売った呆れた男だ。  
その上で調教と称して自分も楽しもうという訳だ。その調教も、今日で四日目になる。  
 
「もういい、立て。今度はアレだ」  
マロンの髪を掴み無理やり立たせると、インゴ―は納屋の隅にある手洗い場へと引っ張っていく。  
途中まではされるがままだったマロンだが、自分を弄ぶ男の意図に気付くと急に激しく抵抗を始めた。  
「い…ぃやあ!アレは嫌、絶対にイヤ!!」  
泣き叫び、男の腕を振りほどこうとするマロン。  
「こ…この、大人しくしろ!」  
慌てて押さえつけるインゴ―だが、予想以上に激しい抵抗に苦戦している。  
マロンがここまで嫌がる事、それは浣腸だ。蛇口につながるホ―スで少女の体内に多量の水を流し込み、排泄させる。  
この排泄という獣じみた行為をインゴ―は殊更に好み、事あるごとにマロンに仕掛けていた。  
 
しばらく格闘した後、ついにインゴ―は一つ大きく舌打ちし、マロンを放した。  
「分かったよ…そんなに嫌なら仕方ねぇ」  
インゴ―が諦めたと思い、安堵の息を吐くマロン。しかし、その後に発せられた言葉に、再びその息を呑むことになった。  
「家畜共がどうなってもいいんだろうしな」  
家畜。マロンが言う事を聞かない時に、インゴ―が用いる人質。  
「あ…そ、それは!…っ」  
自分が幼い頃から父と共に育ててきた馬たちは、兄弟のようなものだ。  
しかし―マロンは思う。インゴ―にとっても、それは同じ筈だ。  
「ど…どうして、そんな事を言うの?インゴ―さんだって、ずっとあの子達の世話をしてきたじゃない!なのに何で…」  
その言葉を聞き、インゴ―は動きを止める。そして、細く肩を震わせ始めた。  
笑っている。  
「クク・・ハハハ。そうだな、俺は良くコイツらの面倒を見たよ‥見過ぎたな。すぐサボる脳無しの陰でちまちまと…もううんざりだ、見たくも無ぇ、こんな奴等よ…」  
その様子を見て、マロンは悟った。もうこの人は普通ではない。このままでは馬も殺す。もう逆らってはいけない―。  
 
「分かったわ、インゴ―さん。馬には手を出さないで。その代わり… 」  
 
 
 
そして、また調教が始まる。  
手を腰の辺りで後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされて仰向けに寝転がる。その状態で脚を鋭角に持ち上げ、肩の上空で足首と太股を手綱で固定すると、秘部と菊門が真上に来る格好となる。排泄時、最も惨めになるインゴ―お気に入りの体位だ。  
排泄の穴をまさぐり、粘液の様なものを塗り込んだ後、指より固く太いホ―スが腸壁を掻き分ける感触に思わず掌を握りしめ、冷たい水が腸の奥深くになだれ込む汚辱に美脚を震わせて反応する。  
しかし本当にマロンが恐れ忌むのは、その行為に潜む甘美な快感。秘部奥深くの疼きを否定して流した涙は、特異な曲線を描いて落ち、飛沫を上げて弾けた。  
 

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