テトラとまた喧嘩した。  
「だからここは、俺が赤獅子で入っていったほうが早い、って云ってるだろう!」  
「クズ!あんたの目はお飾りかい?  
 赤獅子だけで、どうやってあれだけのお宝をもってくるっていんだい!」  
「回数分けて運べばいいだろ!わざわざ遠回りなんてせずに…  
 つーか同い年なのに偉そうだぞ!  
 それに、女ならもっと可愛らしくしろよ!」  
「はぁ?わたしゃ海賊の頭だよ?  
 フン。おとなしくて可愛い女がお望みかい?  
 ここは海賊船だよ?女のケツおっかけてる奴は、ここにいる資格はないよ!」  
たしか、こんな内容だった。ぶっちゃけささいなことだった。  
周りの海賊達も困り、ただただ二人を見つめていた。  
何故彼女があんなにきついのか。女なら、もう少しおしとやかにしてもいいんじゃないか。  
4年前、ハイラル王と対面した瞬間の【彼女】は幻だったのだろうか。  
しおらしくて、やさしくて、たおやかで…綺麗だった。  
彼女にもう一度会いたい。そう思ってテトラについてきたのだが、もう限界だ。  
もうこんな船を出てやる。  
そう決心した。  
 
その夜、一団が寝静まったのを確認し、軽くまとめた荷物を持って、寝室を出る。  
周りの男達はグースカ幸せそうないびきをかいている。俺がいなくなることなんて知りもしないで。  
このぶんじゃ、たいていの音を出しても、潮騒と船のきしみ、  
そしていびきでやろーどもが起きることはないだろう。ほっと安堵で胸を撫で下ろす。  
階段が気持ち悪い鳥の鳴き声のような音を立てるが、潮の音と、  
船自身のきしみの音で全てかき消されていく。  
階段を上り終わり、ふと顔を上げると、テトラの部屋があった。  
この憎たらしい女もこれで見納めか…。  
足音を殺して、テトラの部屋を覗き込んだ。  
驚いた。  
 
そこに4年前見た【彼女】が寝ていたのである。  
 
もっとよく見たい。しかし、薄暗い証明ではよく見えない。  
そっと部屋に足を踏み入れ、高鳴る鼓動を意識しながらゆっくりベットへと歩み寄る。  
 
違う。やっぱりテトラだ。  
いつもの青い上着とショートパンツではなく、薄い生地のローブのような寝巻き。  
左後ろにくるくるとまいている髪は、風呂上りなのか、軽く濡れていて下ろしていた。  
一瞬でも、よりによってテトラと【彼女】を間違えてしまった自分に腹が立った。  
しかし、目を瞑り、何も云わないテトラに、いつもの憎たらしい顔は影ほどもない。  
強気な態度にいつも隠れているが、改めて顔を観察すると、16歳という歳にしては、  
未だあどけなさが残ってるように感じる。  
そっと見ると、目にはうっすらと涙の跡が残っている。泣いていたのか、不安そうな表情の無防備な寝顔。  
かかえている枕の濡れ様からして、かなり泣いていたようだ。  
あの、乱暴もので命令口調のテトラが、こんな表情をするものだとは夢にも思わなかった。  
リンクにとって、ハンマーに叩きつぶされることよりも大きな衝撃だった。  
 
珍しいものを見るような、はたまた好奇心か、または別の感情か、リンクはテトラをじっと見ていた。  
自分があこがれている【彼女】ではない。相手は、よりによってあの憎きテトラである。  
そんなことは判っているつもりだった。  
だが、ずっと見ていたいと感じていた。  
時間は大分経っていた。  
そっと覗き込む。石鹸のいい香りがする。  
すぅすぅと安らかな寝息が聞こえてきた。  
先ほどは足音を隠すのにもってこいたっだ潮騒が、今は彼女の寝息を打ち消していたようだ。  
彼女が何か呟いた。起きたのかと思い心臓が飛び上がりそうになる。  
どうやら、ただの寝言らしい。  
「う…ん…お母さん…どこ…」  
お母さん? そういえば、テトラからこの言葉を聞いたことがなかった。  
いつもは、「先代」と冷たく呼んでいた。何故、今は「お母さん」と?  
何故テトラがこれほど気弱な声を出すのか、これが何を意味しているのか、リンクにはよく判らず、  
必死で思考をめぐらせた。  
しばしの沈黙の後、彼女が再び寝言を呟いた。  
「ごめん…なさい…」  
あのときの【彼女】と同じ声だった。  
 
4年間もの間、自分が会いたい、と願っていた【彼女】は既にテトラの中に存在していた。  
いや、もしかしたら、【彼女】はテトラという強気な女の子を今まで演じていたのではないか?  
責任感の強い彼女のことだ。それまで海賊一味を引っ張ってきた先代や海賊達に、心配をさせまいと…。  
そうすれば、4年前に混乱したときに現れた、か弱い【彼女】がテトラの中から現れたのも、  
そして今「お母さん」と気弱につぶやいたことも頷ける。  
だとすれば、今まで自分はなんと酷いことをしてきたのだろう?  
彼女を強いと思い込んで、売り言葉に買い言葉。突っ張り、怒鳴り、もっとおしとやかにしろ、  
などと云ってきた。  
海賊の頭という立場で一人健気にがんばっていて、それどころではないというのに。  
もしかしたら、今まで何度となく彼女と喧嘩をしてきたが、そのたびに夜、  
こうして泣いて過ごしたのかも知れない。  
あの時のように、夢の中で謝って、自分を責めて。  
俺はそうとうのバカだ、と思った。  
彼女の目から涙の筋が伝った。  
「ごめんなさい…  
 リンク」  
 
頭の中で何かが切れた。  
 
何も考えられなかった。  
不思議と、彼女にすまない、とは思わなかった。  
【彼女】はテトラで、テトラは【彼女】なんだ。それだけで十分だった。  
テトラの上に覆いかぶさり、無我夢中で唇を重ねる。  
再び髪からいい香りがした。  
 
「んっ!?」  
テトラはすぐに目を覚ましたが、数秒間口の中の侵入者を理解していなかった。  
これをいいことに、口の中へと舌を滑り込ませる。  
まるでテトラ自身を求めるかように舌を這わせ、絡ませ、吸った。  
抵抗する意思を示しかけた手は、再び力がなくなってゆく。  
長い口付けだった。  
やっと唇を離したが、寝ぼけているのか、口付けに戸惑っているのか、その目は宙を見つめていた。  
ローブの上から胸を探る。ローブが、手の形にそってその形状を変える。  
軽い悲鳴をあげるテトラ。  
「ひ…」  
やっと我に返り、両手で懸命に体を押し返そうとするが、  
のしかかってくる男の力にはかなわない。  
「は、離してよ!誰あんた…」  
暗がりで顔が見えないようだ。こちらとしては好都合。  
ローブの襟に手をかけ、力任せに破った。普段服に隠れている部分があらわになる。  
夜目でもわかるほど白い。テトラの色黒は地ではないようだった。  
「なにす…止めっ…!」  
隠そうとする手を押しのけ、直接、その透き通るように白い胸をもみしだく。  
あまり大きくは無いが、指が吸いつけられるくらいに柔らかい。  
 
――部屋に鍵をかけないことが危険だということは、もとより知っていた。  
だが、女と見られるような行動は何一つとった覚えが無い。  
普段の自分の態度から、そんな命知らずな奴が居るとは思っていなかった。  
それに、自分は海賊達を信頼しきっていた。  
だからこそこんな形で裏切られるとは思っていなかった。否、思ったことすらなかった。  
 
悔しかった。  
裏切られたことなのか、それとも、それほど信用していた自分が悪いのか。  
それに加えて、相手が判らない恐怖。  
じんわりと目に涙が浮かぶ。  
いや、泣いている暇は無い。屈したら負けだ。  
そう自分に言い聞かせ、懸命に抵抗する。  
「バカ!アホ!変態!クズ!」  
無駄だとは判っているが、思いつく限りの罵倒を、招かざる客に浴びせかける。  
やはり動じる気配は全くない。  
抗う両手は無理やりベットに押し付けられ、奴は首筋に吸い付いてきた。  
「ひあ!」  
電気に触れてしまったように痺れる感覚に、思わず腰が反れるように浮いた。  
前から潮風が首に触れるのが厭でバンダナをしていたのだが、今は首を護るものは無い。  
そのまま首に舌が這うと、体がビクビク反応した。  
「やめ…あ…あぁ……首、はっ…ああ…」  
首筋から背筋に伝わるぞくぞくとした感触に、小さな声を漏らしてしまう。  
自分がこんな声を出してしまうことに信じらず、恥ずかしさで顔に血が上って熱くなるのを感じた。  
舌が動くと、体はそのたびに震える。  
…やばい。どんどん体の力が抜けていく。自分の体じゃなくなっていくみたいだ…。  
不思議な感覚から逃れようとして体を捩ろうとするが、両手はしっかりと拘束され、それすら許されない。  
怖いんだ、と気付いてしまった瞬間、云いいれぬ恐怖が襲ってきた。  
 
 
――頬に冷たい感触があたった。  
顔を上げると、テトラの目から涙が零れ落ちていた。  
「も、う…ゆるし…ひっく…お願い…お母さ…」  
恐怖でふるふると震え、痙攣し、子供のように泣いていた。  
いや。彼女は事実、まだ子供だった。  
ただ、今まで、そのことを必死に隠していただけで。  
そのことはついさっき知ったばかりなのに。  
 
ごめん…。  
心の中で呟き、そっと涙の筋を指で拭った。  
潤んだ目で、不思議そうにこちらを見たとき、また我を忘れそうになったが、  
それよりも罪悪感でいっぱいだった。  
ゆっくりとベットから身を起こし、テトラの部屋を後にした。  
 
 
 
 
     翌朝、リンクは赤獅子とともに消えた。  
 
 
 
 
満月の夜。海賊船の手すりにかぎつめロープがひっかかった。  
ギっと音を軽く軋ませ、そこから船の甲板へと降り立つ。  
侵入者は驚いた。  
「1ヶ月ぶり――くらい?」  
「て、テトラ!?」  
何故ここに。  
彼女が居たことを全く予想せず、動揺を隠せない。  
「…眠れなくてね。」  
まるでリンクの心の中を見透かしているように呟く。  
 
何故戻ってきた?  
てっきりそう訊かれると思っていた。次に来るのは罵倒。  
しかし、耳に入ってきたのは正反対の言葉だった。  
「あんた。何故出て行ったんだい?」  
困惑した。  
そんなもの、訊かなくても判ることだろうに。  
答えるに答えられず、言葉に詰まる。  
すると、別の言葉が耳に入った。  
「アンタは何もして無いし、これからも何もしない。  
 そうだろう?リンク」  
青い瞳がまっすぐにこちらを見据える。  
その目はこう語っているのだろう。  
――許してやるから帰って来い。その代わり、2度とするな――  
 
あれだけのことをやったのに、テトラは許してくれている。  
しかも、まだ船に居ろと云ってくれている。  
自分はあれだけテトラを裏切ったのに、  
テトラはまだ自分を信じようとしてくれているのだろうか。  
しかし。それが気に障る。  
一度あんな彼女を見てから、手を出さないことは  
――到底できそうもない。  
こうやって離れていた間でも、  
ずっと彼女のことばかり考えていたというのに。  
 
しばしの沈黙の後、首を横に振る。  
テトラの顔からすぅっと表情が消えていった。  
…怒らせたのだろうか?  
 
「今日来たのは謝るため。ごめん。  
 でも、何もしてないって俺が云うことはできない。  
 あんなことして、もう一度戻りたいなんて我侭云えやしない。  
 ここに居たら、またいつ自分がわからなくなるか、  
 自分でも不安だから」  
云っている間、自分でも意外なほど気分が落ち着いていた。  
さらに言葉を続ける。  
「1ヶ月離れてたけど…どうしても忘れられなくて。  
 だから、頼みがある。今夜だけでいい。  
 約束する。それさえかなえばもう2度とこの海賊船の甲板は踏まない。  
 俺…テトラが欲しい」  
怒りなのか、別の感情なのか、両方なのかは判らなかったけれど、  
彼女の顔が、かっと顔が赤くなったのが判った。  
「あ、あんたって奴は…この間のことといい…。  
 戻らなくていい?何いってんだい。あげくの果てに…そ、そんなこと…!  
 少しでも気を許したわたしがバカだったよ!」  
こちらを睨み付けて叫んだ。  
そんな怒るようなことだったのか?  
俺が何を望んでいるか、予想はつくはずなのに…。  
「違…俺はただ」  
テトラのことが忘れられなくて。ただ、求めていただけで。  
そんな自分の気持ちに気付いてくれないテトラに軽く腹が立った。  
あわてて弁解しようとしたが、聞く耳は持ってくれなかった。  
 
「大ッ嫌い!」  
 
ぷつん。  
はっきりと頭の中で音がしたのが聞こえた。  
前の切れ方とはまた違う。  
はっきりと意識があった。  
どうせ、嫌われているのだから、さらに嫌われることなんて怖くない。  
 
ダン、と壁にテトラの両肩を押し付ける。  
身動きができなくなる彼女。  
悲鳴をあげられる前に、首に巻いてあるバンダナをひっつかむ。  
意外と簡単にシュルリと解けた。  
「やめ…!」  
抗議の言葉を完全に無視して、薄紫色のタンクトップを下にずりさげる。  
あらわになった曲線に、手と舌がなぞる。  
白い肌に時折吸い付き、赤い華を咲かせる。  
彼女はどうにか突っぱねようとしているようだが、  
不安定な体勢での力なんてたかが知れている。  
「やだ、気持ちわ――っ!?」  
言葉が終わりきる前に、頂きに歯を軽く立てた。  
彼女の反応をもっと感じたくて、舌で転がしたり、手でつまんだりする。  
「んんっ…ふ、んぅ…ぅんっ…」  
少し顔を上げて顔をうかがうと、真っ赤になりながら、  
自分の手で自分の口を押さえていた。  
声が出るのが厭なのか。なら…  
手首を掴んで口から離し、代わりに自分の唇でその口を塞いでやる。  
無理やり舌を割りいれて、テトラのそれに絡みつか  
「つッ」  
口の中で鉄の味がし、反射的に顔を離す。  
「…な…んで…」  
震える声が聞こえた。  
「…首を振った…の…? さっ…き…」  
意味が、よく判らなかった。  
「わたしっ…  
 信じたく、なかっ…」  
判るのは、彼女の目には、はっきりと【憎悪】が浮かんでいること。  
次に耳に入ったのは、もっと意味が判らない言葉。  
「リンクが、あんな……する…なんてッ…!」  
――え。  
 
「あの日から、ずっと…考えて…な、悩んで…  
 あ、あれは…夢なんじゃ、ないか、って…  
 わたしの、悪夢で…あってほしい、って…」  
せき止めていた水が流れ出すように、テトラは言葉をつむいだ。  
声が震えているのは、怯えなのか、怒りなのか。  
「で、でもっ…服は、破れてて…夢じゃない、って…  
 せめて、リンクじゃない、って…思いたく…て。  
 他の奴じゃないか、って…」  
喋っているうちに落ち着いてきたのか、声の震えが無くなって来た。  
それと入れ替わりに出てきたのは――涙。  
「せ…めて、あんたの口から…  
 あれが嘘だ、って…認め………」  
続きは聞こえなかった。  
いや、言葉にはなったのかもしれない。でも、俺には聞こえなかった。  
でも、何が言いたいのかは良くわかった。  
…痛いほど。  
むしろ、痛かった。  
罪悪感で、胸に杭を刺されたように痛かった。  
   【せめてリンクじゃないと思いたくて】  
   【あんたの口から嘘だって認めて欲しくて】  
この言葉の意味を理解してしまった。  
「テトラ、俺――」  
「もういいよ」  
謝ろうとしたが、彼女に遮られる。  
「今夜だけ…なんだろう?」  
ほろほろと涙が頬を伝っていく。  
「今夜だけの…夢。」  
憤りを帯びた目に対照的な、優しい微笑み、光る涙。  
不謹慎かもしれないが、月明かりに照らされて、綺麗だった。  
「大好きだった。だから、大嫌いだ…」  
過去形になっているのが、辛かった。  
それ以上に、こういう形で彼女の告白を聞いてしまったのが悲しかった。  
 
そっと胸に触れ、軽くなぞる。  
少し不快そうな顔を一瞬見せたが、抵抗はしなかった。  
このまま、本当に、テトラを抱いてしまってもいいのか?  
まだ自分の中に戸惑いを感じる。  
もちろん、罪悪感もその理由のひとつだろう。  
でも、もう一つ。他のなにかの理由で、迷っている。  
何か、何かが引っかかる。  
このまま抱いたら、今まで築いてきた、何か大切なものを失ってうような…。  
何もしてこないことに疑問を抱いたのか、上目遣いで見つめられる。  
ちょっ、テトラ、その表情は反則――  
ああ、もう、何も考えなくていいや。  
どうせこれは夢だ。そう云ったのは彼女だ。  
再び手を動かし始める。  
柔らかなふくらみを、撫でて、包み込んだ。  
硬くなった頂点を摘んで。  
くぐもった声が聞こえるな、そう思っていたら、  
また口を自分の手で塞いでいた。  
そして、また手首を掴んで口を開かせる。  
「声、聞きたい」  
「ちょっ…」  
待つわけない。  
そう心の中で呟き、首筋に吸い付く。  
「あぁっ!」  
テトラの体がビクン、と仰け反ったのが判った。  
それを確認して、首筋に舌を這わせる。  
ふるふると彼女の体が震える。  
「首、弱いんだろ」  
前の夜も首の反応が違ったしね、と心の中で付け足す。  
テトラの顔はさらに赤くなり、  
まるで隠していた悪いことが見つかったかのような表情になる。  
それが思いのほか可愛くて、思わずにやけてしまう。  
 
首への攻めを再開しながら、手を胸からわき腹、  
ショートパンツの中へと移動させる。  
指がある点に触れたとき、彼女の体が強張った…のか、力が抜けたのか。  
「ふぁんっ…」  
目を潤ませ、甘い吐息が顔にかかる。  
うわ、やばい。  
そそる、という言葉があるが、  
そんなものでは表しきれない感覚が体を駆け巡る。  
テトラを一気に貫きたい衝動にかられるが、必死で抑える。  
その代わり、指を潜り込ませた。それと同時に、悲鳴。  
「あぁ――っ!?」  
まあ、納得はできる。これは、かなりきつい。  
もう少しほぐさないと、俺のほうもきつい。  
一度指を引き抜き、脚に手をかける。  
そのまま開かせて、花弁に口をつける。  
甘い声が夜の闇に響く。  
「や、はぁっ…そ、そんなとこ、き、汚い…あうっ!」  
くっと舌を入れると身を捩る彼女。  
やはりそこは狭かったが、どうにかして探ろうと動く。  
奥に、前に、しゃくりあげたり、捻らせたり、思いつく限りのことをした。  
自分の舌の動きに素直に反応する彼女に、熱くなっていく自分が判る。  
しばらく繰り返していたら、そこはとろとろになっていた。  
決して自分の唾液だけではない、他のもので。  
「ちょ…な、なんか…おかしく、な……」  
荒い息をしながらつぶやいた言葉がたまらなかった。  
この相手は、自分の言動でどれだけ俺が欲情しているのか判るのだろうか。  
仕上げに、花弁の一点を吸い上げる。  
たまらず声をあげ、その場にへたりこみそうになるが、  
俺が支えてそれを許さない。  
はぁ、はぁと荒い息をしている彼女の涙目には、  
もう憎悪の色は残っていなかった。  
 
「力、抜いて」  
「えっ…」  
云うが早いか、自分を彼女の中へ。  
「―――――ッ!!?」  
声にならない叫びをあげたのが聞こえた。  
入れたのはまだ先だけだが、これは…  
思っていたより、きつい。  
腰が引けている。痛みをどうにか逃がそうとしているのだろう。  
焦る気持ちを抑えながら、少しずつ、少しずつ沈ませていく。  
「くあぁぁ…」  
言葉にならない言葉を発した後、眉間にしわをよせ、目をぐっと閉じ、  
必死に耐えている表情をしている。  
自制心がグラグラと不安定に揺れる。  
頼むから、そんな顔はやめてくれ…。  
そう目で訴えたくて、彼女と視線を絡ませた。  
が、彼女の潤んだ青い瞳に映っていたのは、哀願。  
「…リ、リンク…」  
ちょっと待って。と云いたかったのだろう。  
しかし、名前を呼んだことは逆効果だった。  
 
一気に貫いた。  
「っあ――――――!!」  
耳を劈く悲鳴が聞こえ、  
その後、空気を求めて口を魚のようにぱくぱくさせた。  
「く、ふ、う……」  
必死に歯を食いしばって、我慢している。  
離さまいとでも云うくらいに締め付けていて…  
狭くて、動かしにくい。  
「くは、あぁ…リ、ンク、い、痛い…」  
辛そうに声を絞り出す。  
「もっと、力抜いて…俺も、キツいっ…」  
ふと思いつき、テトラの首に再び口付けをした。  
ビクリと体が跳ね、力が緩み、少し動く余裕が出た。  
そのときに判った、彼女の体温の暖かさ。  
うお…ものすごく、快感。  
その快感をもっと貪ろうと、テトラの腰を両手で固定して、  
自分の腰を動かし始める。  
奥に、手前に、きつくて動かしにくかったが、  
首を攻めながらだと、液が潤滑油の役割を果たして、  
予想以上の快感を与えてくれる。  
「あ、あぁ、ひぅ、く、ふあっ…」  
その動きに合わせて、悩ましい声がテトラの口から漏れる。  
声は、甘い色よりも苦痛の色が濃かった。  
しかし、それもそそる要因になった。  
限界は、意外と早かった。  
「……テトラの中、凄っ…俺、もう…」  
そういってテトラの中から自分を引き抜こうとした。  
夢でなければいけない。そう彼女は云った。だから、中はだめだ。  
「!?」  
信じられないことが起こった。  
テトラの両手が、自分の腰に巻きついた。  
そのまましっかりと拘束され、体を離すことができない。  
「あんたは…今日の夢を忘れるんだ…」  
テトラの声は聞こえなかった。むしろ、意味がよくわからなかった。  
考えるどころではなかった。早く抜かないと…。  
と。テトラがきゅうっと締め付け、震える。  
云い様の無い、心地よすぎる快感が体を駆け巡る。  
吸い取られる、と反射的に思ったときには、  
既にテトラの中で、果てていた。  
 
 
――わたしは、わたしだけは……  
アンタのことなんか、絶対忘れてやらないんだから――  
 
 
タウラ島に来るのも何年ぶりだろうか。  
気がついたら自分も20だ。プロロ島を出てもう8年か。  
最近、目的のために旅をしているのか、旅が目的なのか判らない。  
まあ、目的というのが…ほとんど達成できないに等しいのだから仕方ない。  
 
そんなことを考えながらフラフラと歩いていたら、  
広場で、3歳くらいの小さな女の子が泣いていた。  
一体なんだろうと思い、声をかける。  
「どうしたんだ?」  
少女が顔を上げる。  
どくん、と自分の血が逆流するような感じがした。  
――似ている。  
「ひっく…お、おかあさん…い、いなくて…」  
女の子がなにを言ったか、あまり判らなかった。  
はっとして周りを見渡すと、この子の母親らしき人はいない。  
「お、おかあさん、『ちゃんとついてくるんだよ』って、いったのに…  
 わたし…ひっく…ブタさんみつけて、おいかけて…」  
「はぐれちゃったんだね、大丈夫。すぐ見つかるよ」  
「お、おかあさんのいうこと、きかなかったから…わたしのせいなの…  
 ぐすっ…ごめんなさい、おにいちゃん」  
 
――わたしのせいだったのね、ごめんなさい――  
待って、と引き止められて、そう云った後、すまなそうに謝った。  
護ってあげないと。そのとき俺はそう決心して…  
 
何かを思い出しかけるが、それは一瞬で、すぐに消えてしまった。  
なんだ…?  
「おかあさん!」  
嬉しそうに少女が顔を輝かせ、走り出した。  
後ろを見ると、褐色の肌をした、海賊風の女性が立っていた。  
「どこいってたの!心配したんだよ?」  
走ってきた少女を抱き上げ、やさしく頭を撫でた。  
「ごめんなさいぃ…おかあさん」  
ふと女性が気がつき、こちらを見た。  
まるで、予想してなかった、というような、見開いた、目。  
「アンタは…?」  
「いや、ただの旅人だよ。女の子が泣いてたから、どうしたと思って」  
スゥっと、意味ありげに女性の目が細くなった。  
「そうか、うちの子が世話になったね、ありがとう。  
 旅人か。何か旅の目的でも?」  
「目的…ね。一応、人を探してるんだ。  
 夢なのかどうかわからないけど、ぼんやりとした記憶の中の人」  
女性は驚いたようだった。  
そりゃそうだ、いるかも判らない人を探して旅をしているなんてな。  
 
「11歳…?12歳かな。とにかく、そのくらいのころに会ったはずなんだ。  
 故郷を出たのは、その人に会う前だけど。  
 桃色のドレスを身にまとった、金髪の、耳の長い娘。」  
「8年も、そんな人を探してる?いつまでやってんだ?  
 アンタアホだろ?」  
「なっ…!?」  
唐突に毒を吐かれ、思わず絶句する。  
「こんな世の中、そんな身動きしにくいカッコで  
 出歩いてる奴いるわけないだろう?  
 ただの夢だったんだよ、ゆ・め。  
 さっさと故郷かえって、家族を安心させてやったら?  
 なーんて云ってもどうせヨボヨボになるまで旅を続ける気だろう?  
 ま、どうせ見つかったとしても、相手もヨボヨボになってるんじゃない?」  
蔑んだような、呆れたような口調で一気に云われ、腹が立った。  
「五月蝿いな!なんで見ず知らずのアンタに  
 そこまで云われなきゃならないんだよ!」  
売り言葉に買い言葉。文字通りまくし立てた。  
「あー、そろそろ昼飯時じゃないか。船に戻るとするよ。  
 じゃあね」  
しかし、相手は露ほども気にしない態度で去っていってしまった。  
なんなんだアイツは!  
自分の旅する目的なんて、普段は人に云った事は無い。  
でも、あの女の子がどこかりさ【彼女】を連想させる要素を持っていて。  
流石に女の子が【彼女】と思ったわけではないが、  
女性を見たところ、自分と同い年くらいだったし、何か知ってそうだ、  
そう思って離してみたのに、あの言葉!  
…でも、事実かもしれない。  
故郷を出たのは別の用事だったはず。もうそれすら覚えていないが。  
少なくとも【彼女】を探すのが目的で故郷を出たわけじゃない。  
そのときに一度、【彼女】に会って…  
【彼女】を探し始めたのがいつかは判らない。  
最低でも4年は経っているはずだ。  
でも、進展どころか、手がかりすら無い。  
そろそろ、あきらめてたほうがよいのだろうか…。  
…少しタウラ島で休んだら、プロロ島にも行こう。  
アリルは元気だろうか。  
 
ハイラル王も、困ったものを遺してくれたものだ。  
未来のために、過去を振り返らないように、  
過去を――記憶を【消す】力だなんて。  
今夜だけ。そうアイツは云ってたけど、  
4年の間、一緒にいたから判る。  
アイツは誘惑に弱い。そして、後で我に返って自分を責める奴だ。  
だからあの夜だけで終わるとは思えなかった。  
そして同じことを繰り返すだろう。  
だから、アイツの中のわたしの記憶を全て…消した。  
はずなのに。  
判ってる。アイツがわたしを覚えていないことくらい。  
…わたしの意地っ張りも、昔から変わらないな。  
「おかあさん?どこか、いたいの?」  
気がついたら、一筋の水が頬を伝っていた。  
「いや、ちょっと目にゴミが入ってね。なんでもないよ」  
ごしごしと涙を拭う。  
 
これでよかったんだ。  
ごめん、と云っていたアイツはとても辛そうだった。  
我に返って罪悪感で苛まれているよりは、いいんだ…。  
…今夜も、この子が寝てから、一人で泣こう。  
ずっと前から、そうしてきたんだから。  
 
わたしの8年の初恋は、今、やっと終わったんだ…。  
 

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