仲間を探るのは気が進まないが──と言いながら、ツインローバは各地を巡って、ゲルド族  
全員の調査を行った。『魂の賢者』はゲルド族の中にいる、と確信していたからだった。しかし  
それは徒労だった。綿密に調べ上げたにもかかわらず、『魂の賢者』は発見できなかった。  
「まあ予想はしてたのよ。そいつがリンクに出会っていなけりゃ、賢者のオーラは発しないから、  
あたしが見ても賢者と知ることはできない。ところが仲間のほとんどは、リンクに会ったことが  
ないときてる。万一、と思って調べてはみたけど、やっぱり無駄だったねえ」  
 と愚痴りながら、ツインローバはガノンドロフに渋面を作って見せた。  
 一戦を交えたあと、一息ついている時だった。ハイラル城の奥まった所にある、先の国王の寝室。  
豪奢な寝台は、大柄な二人がくんずほぐれつの絡み合いを繰り広げても、充分の余裕がある  
大きさだった。二人はいま、その寝台の中央で、全裸のまま寄り添い、横たわっていた。  
「まだ調べていない仲間が残っているのか?」  
 ガノンドロフはツインローバの肩に回した手を、片方の乳房に移しながら訊いた。ツインローバは  
それを気にもとめない様子で答えた。  
「ええ、いるわ。砦に残っている連中よ」  
 声に秘めた意図が感じられた。  
「あいつらがリンクに会ったことがあるとは思えないけど……それでも一応は調べとかないと」  
 そこでツインローバはガノンドロフに顔を向け、意味ありげな視線を送ってきた。  
「なにせ砦には、ナボールがいるからね」  
 ガノンドロフは黙っていた。  
 ツインローバは以前から、俺と身体の関係を結ぼうとしないナボールに対して、不審を抱いていた。  
反乱勃発のあと、ナボールは断りもなく砦へ戻ってしまい、それがツインローバの不審を強めている。  
反乱後はいろいろと忙しく、また特に実害もないので、放置してきたのだが……  
 ぶつぶつとツインローバが言葉を続ける。  
「あいつはどうも怪しい。これまで機会がなかったが、一度、心を読んで確かめとく必要がある」  
「ナボールが『魂の賢者』だというのか?」  
「それはわからないがね。だが、そうだとしても、あたしゃ驚かないわよ。ゲルド族の中で  
あんたに反抗しようと思う奴がいるとしたら、ナボールくらいのものだろうさ」  
 俺に反抗する──か……  
 ガノンドロフはひそかに微笑した。  
 確かに、そんな根性があるのはナボールだけだろう。が、それほどの根性の持ち主であるからこそ、  
俺はナボールを買っているのだ。  
 俺への反感に満ちたあの顔を、陶酔の色で塗りかえてやりたい──という思いは、前からある。  
しかし単なる欲情だけではない。ナボールは腕が立つ。根性もある。身も心も強い女だ。ああいう  
女をものにして、そばに置いておければ楽しいだろう。前に一度、犯す機会をつかみながら、  
惜しいところで逃がしたことがあったが、その時の様子では、あいつも満更ではなさそうだった……  
 俺がこんなことを思っているのを知ったら、ツインローバはどう言うだろう──と考えて、  
ガノンドロフは再び心の中でにやりとした。  
 つまらぬ嫉妬を燃やすような女ではないが、パートナーとしての立場がある。いまも何とは  
なしに、俺に疑惑の目を向けているようだが……俺の魔力がツインローバのそれを上回った現在では、  
ツインローバが俺の心を読むことはできないのだ。  
「なに考えてるのよ」  
 いらいらした調子で、ツインローバが言った。  
 やはりな──と心でほくそ笑みつつ、表情は硬く保ったままで、ガノンドロフは鷹揚に答えた。  
「必要なら、いくらでも調べろ」  
 ついでに挑発してやる。  
「俺もナボールには会っておきたいからな」  
 ツインローバの目が光った。何か言いたげだったが、それを待たず、ガノンドロフはツインローバの  
身体をうつ伏せにした。張った腰を後ろから持ち上げ、次いで、ずっしりと重い乳房を両手で  
受け止める。  
「もう……ほんとに……強いんだから……」  
 甘えた声。俺に抱かれるのが、そんなに嬉しいか。  
 どろどろに熔けた部分を、怒張で撫でてやる。  
「ああ、ガノン……今度は……後ろで……後ろでしてぇ……」  
 言われなくてもそのつもりだ。こういう欲求が一致するのは、やはり貴重な相棒だからこそだな……  
 身勝手な感想でおのれを高揚させつつ、ガノンドロフはツインローバの肛門に、硬い剛直を  
突き入れた。  
「ひぃぃッ! ガノォンッ! いいわ! いいわぁッッ!!」  
 悲鳴混じりの叫びが寝室に響き渡った。  
 
「はッ!」  
 掛け声とともに、馬は走り出す。速度を上げつつ、右に向けて弓を構える。近づく的に目を据える。  
弓をぎりっと引き絞る。  
 まず一矢。  
 即座に矢立から矢を取り、次の的へ一矢。さらに次。さらに次。  
 一寸の乱れもなく、一寸の無駄もなく、リズミカルに、敏捷に、腕が舞い、矢が放たれる。  
 的が尽きた所で速度を緩め、ぐるりと弧を描くように馬を戻し、成績を確認する。矢はどれも  
確実に的の中心を射抜いていた。  
「お見事。姐さん」  
 出発地点に戻ると、『副官』が拍手で迎えてくれた。  
「相変わらず、流鏑馬の腕は抜群だね」  
「ありがとよ」  
 敢えてぞんざいな口調で、しかし顔には素直な笑みを浮かべ、ナボールは『副官』に礼を言った。  
馬を降りると、『副官』が汗を拭く布を差し出した。手にとって顔を拭う。拭い終わると  
『副官』は布を引き取り、代わりに水筒を渡してくれた。ナボールは『副官』に頷きを返し、  
ぐいと水をあおった。  
「あっちの様子はどうだい」  
 喉を潤したあと、ナボールは訊いた。『副官』は生活に必要な物資を仕入れに、ハイラル平原の  
仲間たちの所へ出かけていて、今朝この砦に帰ってきたばかりだった。  
「うまくやってるよ。奴隷どもをこき使って、左うちわの生活さ。みんな言ってた。『これも  
ガノンドロフ様のおかげだ』ってね」  
 ナボールは返事をしなかった。ガノンドロフの名前を聞くと、重い感情が心に湧くのを抑える  
ことができない。  
 嫌悪と。不安と。そして恐怖と。  
 嫌悪は以前からあった。女は自分に屈従するのが当然と言わんばかりの態度。強い女である  
ことに誇りを持つあたしは、そんな態度にずっと反感を抱いてきた。  
 不安もしばらく前から続いている。王国を滅ぼして、ガノンドロフはハイラルの支配者となった。  
ゲルド族としては万々歳だ。ところがあいつは、まだそれ以上の何かを求めている。そう、危険な  
匂いのする何かを。  
 そして恐怖。  
 反乱勃発の時、ハイラル城の玉座の間で、ゲルド族の中でもとりわけ肝が太いと自負する  
あたしですら正視に耐えないような虐殺を、ガノンドロフは平然とやってのけた。その顔に  
浮かんでいた、あの笑い。あれはとても、人間のつくることのできる笑いではなかった。  
『こいつはもう、人として立ち入ってはならない領域に踏みこんでしまった』  
 あの時、あたしはそう思った。  
 ガノンドロフは魔王と呼ばれている。魔力を駆使するゲルドの王として。でもそれだけじゃない。  
あいつはすでに人間じゃない。「やばすぎる」もの。そう、その異名のとおり、魔になって  
しまったのだ。あたしはそれをこの目で見た。  
 こいつのもとにはいられない。  
 そう決意したナボールは、反乱のどさくさに紛れ、ガノンドロフの許可も得ず、強引に連絡役を  
買って出て、ゲルド族の本拠地である砦へと舞い戻ったのだった。やがて仲間たちが大挙して  
ハイラル平原へ移住していったのちも、今度は留守居役と称し、砦に居座り続けた。  
 武芸に優れ、さっぱりとした気性の持ち主でもあるナボールは、もともと仲間たちに人気が  
あった。中には少数ながら、ナボールと同様、ガノンドロフに面白からぬ感情を抱く者もおり、  
ナボールは自然とそういう連中のリーダー格となった。いまも砦に残るのは、ナボール党とでも  
言うべき、二十人ほどの、その集団のみだった。  
 中でもナボールに懐いているのが『副官』だった。もちろん本名はあるのだが、リーダーである  
ナボールとの意気投合ぶりがあまりに目立つことから、他の連中はからかい半分に、しかし  
心からの愛着もこめて、彼女を『副官』と呼ぶようになり、いまではそれがすっかり彼女の  
名前として定着していた。  
 
 ナボールは、その『副官』が引用した言葉を反芻した。  
『これもガノンドロフ様のおかげだ』──か……  
「その『おかげ』とやらが、いつまで続くか……」  
 語りかけのつもりではなかった。が、『副官』はその言葉に反応した。  
「どういうこと?」  
「いや……」  
 ナボールは言葉を濁した。自分がガノンドロフに対して持つ嫌悪は、ここの連中も、もちろん  
『副官』も、共有している。だが不安や恐怖は、これまで自分だけの胸にしまってきたもので、  
誰にも漏らしたことはない。『副官』は信頼できる相手だし、自分の思いを理解して欲しくも  
あるが、それらはまだ漠然としていて、どう話したらいいのか、自分でもよくわからないのだ。  
「いまは、いいかもしれない。だけど……」  
 とりあえず、そう言ってみる。言いながら、考えを整理する。  
 いまは、いいかもしれない。平原へ移住した仲間たちは、ガノンドロフのおかげで安楽に  
暮らしている。だが、その安楽な暮らしが、はたして今後も保たれるのか。  
 そうは思えないのだ。  
 ガノンドロフなら──文字どおり魔王と化した、あのガノンドロフなら──自分の欲望を満たす  
ためには、仲間のことすら、斟酌したりはしないのではないか。その欲望の対象が何なのかは、  
わからないのだが……  
「結局、あいつは自分のことしか考えていないのさ」  
 結論だけを言う。自分でも舌足らずだと思う。言いたいことは伝わるまい。  
 そうではなかった。ナボールの言葉にすぐとは答えず、『副官』はじっくりと何かを考えている  
様子だったが、やがてぽつりと言葉を返した。  
「トライフォースのこと?」  
「トライフォース?」  
 ナボールは思わず問い返した。  
 トライフォース。初めて聞いた、その言葉の響きが、なぜか心に深く突き刺さった。  
「何だい、そのトライフォースって?」  
「知らなかったのかい? ガノンドロフのおっさんが、えらくご執心のものだって、あっちの  
仲間うちじゃ、もっぱらの噂だよ」  
 聞けば、トライフォースとはハイラル王家に伝わる秘宝で、それを手にした者は世界を支配  
できるという。ガノンドロフはその一部を手に入れたが、いまだ不完全な状態であり、それを  
完全にするべく、躍起になっているのだとか。失踪したゼルダ姫の探索も、それに関係しているらしい。  
 世界を支配できるって……あいつはまだ満足していないのか? ハイラル全土を手中にしたいまも?  
 そのトライフォースとやらが、危険な匂いのする何かだったのだ、と、ナボールは悟った。  
ガノンドロフの限りない欲望の対象。自分の持つ不安の正体。  
「うさんくさい話さ」  
『副官』が鼻を鳴らした。  
「どれほどのお宝かは知らないけど、妙ちきりんなことに熱中して……はたして仲間のためになる  
ことなのかどうか……」  
 直截な物言いが自分に似ている。考えていることも同じだ。  
 ナボールは改めて『副官』への近しい思いが増すのを感じた。そんなナボールの思いに気づく  
余裕もないように、『副官』は不満げな表情で話題を変えた。  
「そうそう、こんな話もあるよ。天気のことなんだけどね」  
「天気?」  
「ああ。ここは今日もいい陽気だし──」  
『副官』は空にちらりと目をやった。太陽がきつい日差しを振りまいている。  
「──平原でも、仲間たちの住むあたりは、格別どうということはないんだが……他の地方じゃ、  
一日中、空が分厚い雲に覆われてて、やけに鬱陶しい天気なんだってさ。おまけにそういう所じゃ、  
昼間から魔物がうろつくようになって、物騒きわまりない状態らしいよ」  
 
 そこでいったん言葉を切り、『副官』はナボールに深刻そうな顔を向けた。  
「ねえ、姐さん……こんなことで、ほんとうにいいのかな? どこかおかしくないか?」  
 ナボールは冷静に訊き返した。  
「あっちの仲間たちは、そのことについて、何て言ってるんだい?」  
「自分らの住む所が平穏無事なら、それでいいんだろうさ。よそのことなんか、気にとめちゃあ  
いないよ」  
 憤懣やるかたないように表情をゆがめ、『副官』は吐き捨てた。  
 どこかおかしくないか、という『副官』の言葉に、ナボールは深い共感を覚えた。  
 おかしい。明らかに。  
 気候の変化。魔物の跳梁。それらがガノンドロフの魔力のせいであることは間違いない。  
 他にもある。噂に聞いた、デスマウンテンの噴火や、ゾーラの里の氷結。そして最近あったという  
ハイラル南東部の大規模な火災。それらは敵をやっつけるのには必要なことだったのかもしれない。  
しかし、それにしても……  
『やりすぎだ』  
 まるで世界が滅びてもいいとでもいうような、悪魔そのものの発想。  
 世界がゆがんでしまう。世界が狂ってしまう。そうなったら、ゲルド族だって立ちゆきはしない。  
 そう、いまは、いいかもしれない。だが長い目で見れば、ガノンドロフの行為は決して  
ゲルド族のためにはならない。あいつは自分が魔王になって、世界を思うままにできれば  
満足なのだろう。けれどゲルド族の王としては認められない!  
 ナボールは覚悟を決めた。  
 ガノンドロフを倒さなければならない。  
 思った瞬間、鳩尾にずんと衝撃を感じた。  
 可能なのだろうか。  
 許しを得ない行動であるにもかかわらず、砦に居座って自由にしていられるのは、単に  
ガノンドロフが征服事業に忙しく、お目こぼしの格好になっているからに過ぎない。ゲルド族と  
しては例外的に、奴に身を任せることなく、反感を隠す気もなく行動してきたあたしだ。これ以上、  
少しでも怪しい行動を示せば、たちどころに粛清されるだろう。  
 そして、もうひとつの負の感情が徐々にわだかまるのを、ナボールは自覚する。  
 嫌悪でも不安でも恐怖でもない──いや、むしろそれらがすべて融合した結果の感情と言うべきか──  
 思い出したくない、しかし思い出さずにはいられない、あの記憶。  
 ガノンドロフに犯されそうになった時、あたしがどういう心境になっていたか。犯されてもいい、  
そう思ったではないか。ガノンドロフを妄想の相手にして、自慰にふけりもしたではないか。  
表面では嫌悪しながら、あたしは実は……心の底では……ガノンドロフに……屈従したいと思って……  
「姐さん?」  
 ナボールは我に返った。『副官』が不思議そうにこちらを見ている。  
「どうしたんだい? 考えこんだりして」  
「ああ……」  
 生返事をする一方で、ナボールは気持ちを引き締めた。  
 しっかりしろ。自分の感情は置いておけ。どう動くかを考えなければ。  
 実際的な思考に取り組もうとしたナボールだったが、胸にはまだ、ひとつの言葉が突き刺さっていた。  
 トライフォース。  
 それがあたかも、自分自身に深くかかわるものでもあるかのように……  
 唐突にひとつの思いが浮かんだ。  
 巨大邪神像。砂漠の果てにある、ゲルド族の聖地。  
 なぜだろう。なぜこんなことを思い出す?  
 トライフォースと関係があるのだろうか。あそこにはゲルド族の宝が隠されているという  
言い伝えがある。トライフォースがハイラル王家の秘宝だということからの連想か?  
 いや、それだけではない。あそこには何かがある。そんな気がしてならない。ガノンドロフ  
打倒に関係した、とても重要な何かが。  
 心を決め、ナボールは静かに言った。  
「巨大邪神像を見てこようと思う」  
 
 巨大邪神像にあると伝えられるゲルド族の宝を探しに行く、と、ナボールは砦の面々に説明した。  
特に目的もない暮らしの中での、一種の気晴らしといったふうに、深刻な意図と聞こえないよう  
注意した。  
 ほとんどの連中は特に疑問を差しはさまなかったが、『副官』だけはナボールの説明を  
いぶかしんだ。ほんとうの理由があるのではないか、と詰め寄ってきた。『副官』の勘のよさは、  
二人の心のつながりを証明しているようで、ナボールは嬉しく思ったが、真意を漏らしはしなかった。  
 ほんとうはすべて打ち明けたかった。自分の企図を述べておきたかった。同じ危機感を持つ  
『副官』はもちろんのこと、他の連中も、わけを話せば、みんな味方になってくれるに違いない。  
 だが……この時点で自分の企図を明言にしておくことに、なぜか危険を感じる。みんなを  
信用しないわけではない。もっと、別のことで……それが何かはわからないが……  
 とにかく、いざという時がくるまで、誰にも企図は話すまい──と、ナボールは固く心に決めて  
いたのだった。  
 
 巨大邪神像へは単独で向かうつもりだった。自分もついていく、と『副官』は言い張ったが、  
ナボールは聞き入れなかった。  
「あんたには、残った仲間をまとめる役目がある。なんせ『副官』なんだからね」  
 冗談めかして言ったものの、それはナボールの本心だった。『副官』は一党の中でも年少の方で、  
以前はそれほど目立った存在ではなかったが、砦での生活を続けるうちに、能力も人格も磨かれて  
きていた。『副官』という名は伊達ではなく、リーダーの代役は充分に務まると思われた。  
 最後には『副官』も納得した。ナボールの言葉に、何らかの真情が秘められているのを察した  
のかもしれなかった。  
 
 出発の前夜を、ナボールは『副官』とともに過ごした。  
 女ばかりのゲルド族の間では、女同士の行為は珍しくもない習慣だった。とはいえ、その多くは  
男不在の穴埋めとしてのものだった。だが中には、積極的に女同士の関係を築く者もいた。  
ナボールと『副官』との関係も、そのような例のひとつだった。  
 ナボールと、一歳下の『副官』とは、幼い頃から仲がよかった。二人の間には通じ合うものが  
あったのだ。年頃になると、ナボールは男狩りによって処女を捨て、さらに男女との体験を重ねて  
いったのだが、『副官』の行き方は、それとはまた違っていた。  
 ガノンドロフがツインローバの身体で男となって以来、ゲルド族の処女の水揚げは、ガノンドロフが  
一手に引き受けていた。ごく稀にはナボールのような例外もあり、『副官』もその例外だったが、  
『副官』の処女は、男にではなく、以前から心の通じる相手であったナボールに捧げられたのだった。  
 その後は『副官』も、一人前の戦士として成長する一方で、ナボールや他の仲間たちと同様、  
男女両刀使いの経験を積んでいったが、ナボールとの関係は特別なものであり続けた。ガノンドロフとの  
性交を拒んだ点もナボールと一致しており、それが二人の関係をさらに強める要素となった。  
 別れを明朝に控え、ナボールと『副官』は時間を惜しんで激しく愛し合った。『副官』は  
かわいい一人の女となり、ナボールの身体の下で喜悦の涙を流した。  
 しかし夜が明けると、『副官』の顔から涙は消え、その物言いも、いつものような、さばさばした  
ものに戻っていた。  
「あとを頼んだよ」  
 砂漠への入口に立ったナボールは、他の連中とともに見送る『副官』に向け、別れの言葉を送った。  
『副官』は頷き、  
「気をつけて」  
 と言っただけだった。その顔は、勇猛なゲルド族の戦士としてのそれだった。が、同時に、  
愛する者への惜別と信頼を、ナボールはそこにしっかりと感じ取ることができた。  
 
『幻影の砂漠』を突っ切って巨大邪神像へ向かうような酔狂者は、ゲルド族の中でも、これまで  
ごくわずかしかいなかった。砦の面々は誰一人として正確な道筋を知らず、ナボールの旅は難航した。  
だが、かつてその道をたどった者が残した道しるべが、かろうじてナボールを先へと導いた。  
数日間の困苦の末、ナボールはようやく巨大邪神像に到達することができた。  
 ハイラルの西端にある『幻影の砂漠』、そのさらに西の果ての地に、巨大邪神像は建っていた。  
仰ぎ見るためには首を直角に曲げなければならないほどの大岩に掘られた、それは一体の女神の  
彫像であった。風貌はゲルド族のそれを模し、目を閉じて瞑想にふけるかのような顔、掌を上に  
向けて両手を前に差し出す神秘的な姿が、ナボールに深い印象を与えた。  
 女神の像の真下にあたる所に、内部への入口があった。中に入ると、そこは奇妙な彫像や凝った  
装飾で彩られた大広間となっており、左右には通路が延びていた。ナボールは通路をたどって、  
奥に続くいくつかの部屋を探索してみたが、宝はおろか、人間にかかわるような品物ひとつ発見  
できなかった。荒れ果てた廃墟という以外に呼びようがない場所だった。  
 しかし気になることはあった。ところどころで、壁の低い部分──床に接触するあたりに、  
方形の穴が開いているのだ。子供でもなければ通り抜けられそうもない小さな穴だったが、  
その先には、まだ部屋がありそうだった。  
 さらにナボールの注意を惹いたのは、自身の心のうねりだった。  
 ここにはガノンドロフ打倒に関する重要な何かがある。あたしはそう信じてここまで来た。  
実際には何も見つからない。だが……何かがあるという思いは、ここに来てますます強まっている。  
 何があるというのだろう。わからない。わからないが……  
 それは宝などという物質的なものではなく、何か……そう、もっと……あたしの存在自体に  
関係するような……いわば……精神的なもので……  
『何を考えてるんだ、あたしは』  
 ナボールは首を振った。  
 根拠などない。ただの思いこみだ。どうやら、苦労してここまで来た甲斐はなかったようだ。  
 失望を胸に抱き、ナボールは大広間まで戻った。  
 その時。  
「我らの神殿へ侵入するとは、恐れを知らぬ不届き者よのぉ。ホッホッホ………」  
「では、その不届き者に、罰を与えてやりましょうかねぇ。ヒッヒッヒ………」  
 二つのキイキイ声がその場に反響した。ナボールは驚愕して入口に目をやった。  
 箒に乗った二人の老婆が浮いていた。  
 ツインローバ! 人の心を読む、ガノンドロフの片腕!  
 その瞬間、わかった。ガノンドロフ打倒の企図を、砦のみんなに打ち明けることがためらわれた  
理由。ツインローバのことが潜在意識にあったからだ。  
 企図を話して、みんなが同調してくれたとする。その後、ツインローバがみんなの心を読む  
ことでもあったら……皆殺しになるのは火を見るよりも明らかだ。  
 話さないでおいてよかった──と安堵する暇もなく、ナボールの心は、それを上回る緊張に  
満ちた。  
 ツインローバが来たということは……  
 そのとおりだった。入口から差しこむ外光を背に、ガノンドロフの巨体が、暗い影となって  
立っていた。  
 
 二人の老婆がゆっくりと頭上に移動してきた。はっと身構えたナボールだったが、二人は  
手出しもせず、ナボールの頭上をぐるぐると旋回するだけだった。  
「どうだ?」  
 ガノンドロフが短く言った。ナボールはどきりとした。しかしそれは自分にかけられた言葉では  
なかった。  
「残念ながら、賢者のオーラは感じないねえ」  
「だからといって、疑いが晴れたわけじゃあないが」  
 二人が落胆したような声を出した。ナボールには意味がわからなかった。  
「ナボール、お前」  
「リンクに会ったことはあるかい?」  
 鋭い声で問いかけられる。ますますわからない。  
 賢者? リンク? いったい何のことだ?  
 二人のツインローバは、ゆるゆると回転しながらナボールを凝視していた。観察がしばらく  
続いたあと、  
「やっぱり」  
「ないか」  
 二人は同時に嘆息した。  
「けれど……」  
「お前……」  
 いきなり二人の速度が増した。ナボールの頭上をかすめ、二人はガノンドロフの両脇に飛び戻った。  
「なかなか面白いことを考えてるねえ」  
「前からくさいと思ってたんだよ」  
「ガノンさんや」  
「この娘ったら」  
「「あんたをぶっ倒したいんだとさ!」」  
 心を読まれた。が、ツインローバの姿を見た時から、覚悟はしていた。  
「言い逃れはできないよ、この裏切り者が!」  
「ガノンさんや、こいつに何とか言っておやり!」  
 ガノンドロフが歩み寄ってきた。ナボールは、身構えた身体にさらに力を入れ、腰の刀に手をかけた。  
 こいつを倒す。倒さなければならない。ゲルド族の名に賭けても。  
 だが……  
 近づく。ガノンドロフが近づく。その迫力。その威圧感。  
 思い出す。思い出してしまう。犯されそうになった、あの時のことを。  
 忘れるな! こいつは人間じゃない。やばいどころの話じゃない。こいつに屈服しちまったら、  
あたしはもう……  
 大音量で鳴り響く脳内の警報。  
 ガノンドロフが眼前で立ち止まる。静かに燃え盛る両目が、こちらを見据える。視線がぶつかる。  
「そんなに俺がいやか」  
 いやだ! と心は叫ぶ。しかし声にはならない。  
 身体が震える。あの時よりも、もっともっと強い、この圧倒的な吸引力。  
 なぜ? これも魔王の力なのか?  
「お前のことは、評価しているのだぞ」  
 評価? ほっとけ! こいつに何と評価されようが……なのに……ああ……  
「お前となら、うまくやっていけると思っているのだがな……」  
 この声。優しささえ感じられる声。  
 
 ガノンドロフの手が、胸に巻かれた布地にかかる。それがほどかれ、両胸が露出する。上半身が  
さらされる。  
 動けない。どうして? ゲルド族の血がそうさせるのか? ゲルドの女はゲルドの王に逆らえないのか?  
「あ……」  
 乳房をつかまれる。硬い両手が胸を揉みしだく。  
 感じる。ガノンドロフの手から、何かが皮膚に染みこんでくるかのような……  
 その感覚に、乳房が張る。乳首が固まる。  
「……あ……ああ……」  
 力が抜ける。目をあけていられない。立っていられない。  
 がくりと脚が崩れる。両膝が床につく。そのまま仰向けにされる。下半身の衣装を脱がされる。  
刀も一緒に。それでも抵抗できない。なすがままの自分。  
 ──こんなはずじゃない……あたしは……  
「お前は強い」  
 ──そう……あたしは……強い……それが……あたしの……誇り……  
「だが、女だ」  
 ──強い……だけど……女……その生の姿を……いまあたしは……全部見せてしまって……  
「ああッ!」  
 女の部分に触れられる。身体がきゅんと収縮する。  
 そこにも何かが染みこむ。代わりに何かが流れ出す。とろりと。じわりと。快感のしるしの液体が。  
「俺の女になれ」  
 ──何を馬鹿な……でも……『副官』……あの娘もあたしの前では……だからあたしも  
同じように……  
「あッ……くぅぅッ……!」  
 指に支配される。指に操られる。腰が揺れる。あそこがあふれる。  
 ──そうじゃない……もう長いこと……男に接していないから……ただそれだけの……  
「うあ!」  
 指が入ってくる。指に犯される。締めつける肉襞。それを求めて。それを欲しがって。  
「俺の前に跪くのは、恥ではないのだぞ」  
 ──跪く……ガノンドロフの前に跪く……そうだ……あたしは……ほんとうは……  
 仲間の女に手ほどきを受けた時を除いて、セックスでは常に攻めの立場だった。男相手に受けに  
回ったことは皆無だった。  
 ──ほんとうは……いつか……男に攻められたいと……男に屈服したいと……思っていた……  
 いつしか指は抜き去られ、もっと大きなものが、もっと大きな快楽をもたらす男の塊が、そこに  
触れていた。  
 ──あたしが……屈服する相手……やっぱり……それは……この……男しか……  
 薄目をあけ、その対象を、ナボールは見る。顔は間近に寄せられている。黒光りのする硬い皮膚。  
吊り上がった口の端に宿る冷たい笑い。堂々たる自信に満ちた、爛々と光り輝く目。  
「いいな」  
 低い声。  
 こくりと頷きを返そうと決意しかけた瞬間。  
 ナボールには見えた。  
 ガノンドロフの目。あふれる自信の裏にある、その独善、その魔性、その狂気!  
 騙されるな! こいつは自分のことしか考えていない!  
 
 呪縛が解けた。  
 瞬時に頭の後ろに右手をやる。長い髪を束ねる装具。最後の武器。それをつかみ取る。仕込んだ  
刃を開放する。まっすぐに相手の首へと叩きこむ。  
「あッ!」  
「こいつ!」  
 ツインローバのうろたえた声。  
『やった!』  
 心が震えた。  
 が、右腕は動いていなかった。刃先は首の皮膚の寸前で止まっていた。  
 どうしたんだ? 頸動脈を貫いてやったはず……なのに……  
 そこでやっと気がついた。右の手首はガノンドロフの左手に握られ、がっちりと固定されていた。  
「見上げた度胸だ」  
 平静な声だった。息ひとつ乱れていなかった。  
「そこが、いい」  
 右手首に加えて、ガノンドロフは右手でナボールの左手首をもつかみ、ぐいと床に押しつけた。  
ナボールはのけぞり、腕を大きく広げた格好で床に貼りつけられた。右手から装具が離れ落ちた。  
両脚はガノンドロフの巨体に割られ、開かれたその中心に、灼熱の肉杭が打ちこまれた。  
「うあーーーあああッッ!!」  
 噴出する叫び。  
 それは、とどめを刺されたことへの苦悩の発露であるとともに、ついに甘美な敗北を得たという  
歓喜の爆発でもあった。  
 いっさいの抵抗を封じられたまま、ガノンドロフの巨根が体内に充ち、激しく乱舞し、残酷に  
突撃するのを感じながら、ナボールは、波うち、衝突する、その二つの感情に溺れ、翻弄された。  
 いけない──と思う一方で、身体は究極の快楽を渇望する。理性が必死で否定しようとし、  
さらに欲情がそれを凌駕する。  
 いつ果てるともなく攻撃は続いた。ナボールは徐々に考える力を失い、しかし身体は勝手に  
反応していた。上の口はあられもない喘ぎを漏らし続け、下の口は絶えず恥液をしぶかせながら  
暴行を許容した。苦悩は歓喜に押しつぶされてしまっていた。  
 やがてその瞬間がきた。身体の反応が閾値を超え、ナボールの意識は白熱する閃光に満たされた。  
下半身の筋肉がぎりぎりと収縮した。一気に狭まった肉筒にきつく締め上げられ、侵入者は  
どくりと身震いすると、陵辱の証である体液を中にぶちまけた。  
 いままで経験したことのない絶大な快感に身を引きつらせながら、ナボールの理性は、ただ  
自分が犯されたという事実だけを認識した。  
 
「危ないところだったねえ」  
「往生際の悪いことだよ」  
 挿入したままのガノンドロフのそばへ、箒に乗ったツインローバが漂ってきた。  
「これでわかっただろう、ガノンさんや」  
「こいつはあんたにはなびかない」  
「見切ることだよ」  
「捨てることだよ」  
「「殺しちまいな!」」  
 毒に満ちあふれた声だった。しかしガノンドロフは、その毒には酔わなかった。  
「殺すほどのことはあるまい」  
 二人のツインローバは探るような目でガノンドロフを見、次いで互いを見交わすと、合体して  
熟女の姿となった。  
「あんた、やけにナボールの肩を持つじゃないか」  
 昂然と身をそらせた姿が、自分の存在を誇示しているかのようだった。  
「お前はやけにナボールを目の敵にするのだな」  
 笑みが浮かぶのを隠しもせず、ガノンドロフは言い返した。ツインローバの顔に稲妻のような  
感情が走った。  
「のんきなことを! こいつはあんたを殺ろうとしたんだよ!」  
 それだけではあるまい──との思いは胸にしまっておき、ガノンドロフは冷静な分析を述べた。  
「仲間を殺すのは、士気にかかわる」  
 一瞬、ツインローバは言葉に詰まった。  
「……そりゃ、たかが小娘とはいえ、こいつを慕う者もいるけど……そいつらみんな、まとめて  
始末しちまえばいいじゃないか」  
「砦の連中のことか」  
「言うまでもないよ」  
「あいつらは、俺を嫌いはしても、反抗しようとまでは思っていない。ナボールがいなければ何も  
できない小者ばかりだ。そんな連中すら殺してしまうのは、どうかな。他の仲間が動揺するだろう」  
 ハイラルを支配し始めて間もない現時点では、旧王国民はともかく、ゲルド族をも恐怖政治で  
縛ることは避けたい──というのが、ガノンドロフの本音だった。  
 ツインローバは黙ってしまった。  
 この巨大邪神像──魂の神殿に来る前、二人は砦に寄って、そこにとどまる連中を吟味していた。  
ツインローバは全員の心を読み、ガノンドロフの言うとおり、ナボールのようにあからさまな  
反逆をもくろむ者はいないことを確認していた。  
 
「『魂の賢者』のことだが……」  
 ガノンドロフは攻め手を変えた。ツインローバの表情が、はっと動いた。  
「砦の連中も調べたが、やはり該当する者はいなかった」  
「ああ……」  
 悔しそうなツインローバの声。  
「仲間をすべてあたってみたが、見つからない。それでも『魂の賢者』はゲルド族の中にいる──  
と、お前は思っているのだろう」  
「確かだよ」  
「誰だと思うのだ?」  
「それは……」  
 ツインローバの視線が、ナボールに向けられる。そう、こいつはナボールを疑っている。それも  
ナボールを殺せと主張する理由のひとつなのだ。  
 だが、もし『魂の賢者』が別人なら、ナボールを殺しても全く無意味だ。ツインローバもわかって  
いるから、その理由では抹殺を強くは主張できない。  
「ナボールだという根拠はない」  
 いったん言葉を切り、そこで餌を投げてやる。  
「いまはな」  
 ツインローバが、いぶかしそうにガノンドロフを見る。  
「確かめる方法があるだろう」  
 しばしの沈黙のあと、ツインローバは目をそらし、絞り出すような声で言った。  
「そうね……確かめてからでも、遅くはないか……」  
 ツインローバが視線を戻してきた。きつい視線だった。  
「だけど、ナボールをこのままにしとくわけにはいかない。こいつの処遇は、あたしに任せてもらうよ」  
「いいだろう」  
 ガノンドロフが頷くと、ツインローバは、挿入されたまま半ば死んだように横たわっている  
ナボールに顔を寄せた。  
「さあ、ナボール……あたしの目を見るんだ……あたしの思いを、あんたに送りこんでやるからね……」  
 
 ナボールは、眼前に近づけられたツインローバの目を、茫然と見つめた。  
 そのまま時間が経過した。何が起こっているのか、まるでわからなかった。頭は空っぽの状態で、  
筋の通ったことは何も考えられなかった。  
 あたしは眠っているんだろうか──とナボールは思った。そうとしか思えないほど、現実感が  
なかった。  
 ──これは……夢……そうに違いない……  
 意識が深い濁りの中にかき消えていこうとした、その時。  
 ナボールは感じた。自分の中で、何かがじわりと動き始めるのを。  
 動き始めてから、それがずっと自分の中に埋めこまれていたものだとわかった。埋めこまれて  
いたということを忘れるほど、それは自分と一体になりきっていたのだ。  
 ガノンドロフの陰茎。  
 いったん達したはずなのに、それは全く硬度を失わず、膣を占拠し続けていた。それが再び  
活動を開始し、粘膜をゆっくりとこすり始めていた。  
「……は……ああ……」  
 ナボールはそれを受け入れた。受け入れるのが当然だと思った。受け入れたくてたまらなく  
なっていることに、何の疑問も感じなかった。  
 ──ガノンドロフに……いや、ガノンドロフ様に……かけられる情けが……こんなに心安らぐ  
ものだったなんて……  
 さっき絶頂した時の快感を、はるかに上回る心地よさだった。くだらない葛藤を捨てさえすれば、  
これほどの悦びを得ることができるのだ。  
 ──それに気がつかなかったとは、あたしはなんて馬鹿だったんだろう……  
 心は幸福感でいっぱいだった。何もかも忘れて快楽に浸りきることができた。  
 ゆっくりとしたペースがもどかしい。  
「……お願い……どうか……もっと……」  
 出し入れされる動きに応じて、こちらの腰も動き出す。  
 相手の動きが速くなる。  
 ──わかってくれる。あたしがどうして欲しいのか、ガノンドロフ様はわかってくれている!  
「あッ!……そうッ!……そうしてッ!」  
 開放された腕を相手の背にまわし、力いっぱい抱きしめる。  
「ああッ!……もっと!……もっとぉッ!」  
 ──もっと強く! もっと激しく!  
「してッ!……してくださいッ!……あたしを!……あたしはッ!」  
 ──ガノンドロフ様のもの! あたしのすべてはガノンドロフ様のもの!  
 突かれる。突かれる。もの凄い速さで。もの凄い力で。  
「もうッ!……もういくぅッ!……いっちゃうぅぅッッ!!」  
 ナボールは一気に頂上へと押し上げられた。痙攣という言葉では収まらず、身体はがくがくと  
振動した。  
 ガノンドロフの動きは止まらなかった。無上の快感にうち震えるナボールを、ガノンドロフの  
長大な武器は、休みもせずに侵略し続けた。それがますます刺激となって、ナボールの身中では  
次々に誘爆が起こった。  
 それが終わらないうちに、ナボールの膣から陰茎が引き抜かれた。  
 ──まだ! まだ行かないで!  
 絶頂の余韻を求めて哀願を口にしようとした瞬間、両脚が持ち上げられ、腰が浮き上がった。  
露呈した後ろの部分に、それは襲いかかってきた。  
「おあああッッッ!!!」  
 仲間の女に教えられて以来、誰も迎えていなかった場所だった。男には決して許さなかった、  
処女も同然の新鮮なその場所が、初めて男に開かれた。  
 身が引き裂かれるような苦痛だった。が、ガノンドロフに苦痛を与えられることが、いまの  
ナボールにとっては最大の悦びだった。  
 またもナボールの中で誘爆が連続した。ナボールは涙を流しながら、何もかもガノンドロフ様に  
捧げる、ガノンドロフ様に抱かれるためならどうなってもいい、と叫び続けた。  
 肛門への攻撃は延々と続いた。ナボールの声が枯れ果て、最後の絶頂を迎える時になって、  
それはやっと邪精を吐き出した。  
 
 ナボールから身を離し、ガノンドロフは立ち上がった。  
 心は冷えていた。ナボールへの関心は、もう失われていた。  
 自分に代わってナボールをなぶり始めたツインローバを見やり、ガノンドロフは心の中で苦笑した。  
『こいつにしてやられたな』  
 確かに、ツインローバの洗脳のせいで、ナボールは反抗心を捨て、俺に絶対の忠誠を誓うように  
なった。しかしその代償として、ナボールの魅力である強さは失われてしまった。もはやナボールは、  
俺のまわりのどこにでもいる、色に狂った一匹の雌犬でしかない。  
 ツインローバは、俺がそう思うようになることを見越していたに違いない。  
 ナボールは目をとろんとさせ、口元から涎を垂らしながら、ツインローバの攻めに乱れ狂っていた。  
洗脳の際、ツインローバは自分への忠誠心も植えつけたのだろう。  
 変わり果てたナボールの姿を眺めながら、ガノンドロフは淡々と思った。  
『惜しい女だが、しかたがない』  
 やがて欲望を満たし終えると、ツインローバはガノンドロフの前に傲然と立ち、強い声で言い放った。  
「これでナボールは、もう逆らえない。あとは鎧でも着せて、この神殿の留守番をさせとくことにするよ。  
それでいいわね」  
 食えない奴。だが、得がたい相棒だ。  
「好きにしろ」  
 さらにツインローバが顔を寄せてくる。  
「この先、こいつが『魂の賢者』だとわかったら……その時は、あんたが何と言おうと、あたしは  
こいつを殺してやるから」  
「そうだとわかったらな」  
 からかうように答えてやる。  
 それでも、賢者の問題はまだ終わっていない。  
 あと一人。『光の賢者』、ラウル。ツインローバの終生の敵。  
 そいつに出会った時、はたしてツインローバは、どれほど残酷になるだろうか。  
 ナボールなど、及びもつかぬことになるだろう。  
 ガノンドロフは床を見下ろした。だらしなく呆けた笑みを顔に浮かべた、女の形をした抜け殻が、  
そこには横たわっていた。  
 
 
To be continued.  
 

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