気がつくと、微笑みがあった。 
「おはよう、リンク」 
 微笑みが言った。 
「よく眠れた?」 
「ああ……うん……」 
 微笑みが近づき、唇に触れる。澱む意識に、波紋が生じる。 
 顔を引き、けれども微笑みはそのままに、ゼルダが柔らかい視線を送ってくる。身を横向きにして 
対面しているのだと気づく。いつの間にか性器の結合は解かれているが、敷布の上に横たわる 
互いの肢体は、各所で控えめな接触を保っている。 
 ゼルダは微笑みを絶やさない。永久に微笑み続けるのではないかと思われるほど、自然な表情。 
あたかも微笑みが顔の造作の一部として定着しているかのような。 
 夜通しぼくの顔を見て微笑んでいたのだろうか、とぼんやり考え、省みてその思い上がった 
発想を戒め、いや、まんざら自惚れでもないのだ、と開き直ったりしているうち、徐々に頭が 
冴えてくる。 
 天国的な幸福感が、身体の隅々にまで、なお浸透している。同じ幸福感を、ゼルダもまた、 
全身に満たしている、と確信できる。 
 ただ──あまりにも幸福であったがための、当然の帰結とも言えるのだが──あっけなく 
絶頂してしまい、あげく、早々と眠りに落ち果てた自分であることに、遺憾の念を覚えざるを 
得ない。もっと幸福であれたはずのぼくたちなのに、と心が残る。 
 それでも取り返しがつかないわけではない。そう、これから、また…… 
 微笑みを返し、ゼルダを抱き寄せんとした、その時。 
 動物の唸りにも似た、気の抜けるような音が、リンクの腹から湧き起こった。 
 昨日の昼から何も食べていない。腹が鳴るのも当然だ。が、何とも間の悪いことではある。 
 きょとんと微笑みを収めたゼルダは、次いですぐ笑顔へと戻り、和やかに声をかけてきた。 
「食事にしましょうか」 
 そんなことはどうだっていい──との台詞を、すんでのところで呑みこむ。 
 ぼくはよくても、ゼルダをこのままにはしておけない。昨日の昼からどころではなく、 
まる二日間も、ゼルダは食べ物を口に入れていないのだから。 
「そうだね」 
 と応じる。 
 ゼルダは起き上がり、傍らに脱ぎ捨ててあった服を拾って、身に着け始めた。雅やかな 
身のこなしに見とれてしまう。そんな自分に気づき、あわてて目をそらす。見るなと言われた 
わけではないし、また、脱衣とは違って、見てもどうということはないはずなのだが、なぜか 
正視が憚られるのだった。 
 空腹を隠せない自分に比べ、もっと空腹であるはずのゼルダが、それを全く表に出さない点に、 
ぼくは引け目を感じているらしい──と、自らも着衣しながら、リンクはおのれを分析した。  
 
 食事に先立ち、リンクはゼルダを連れて、広場の隅にある井戸へと赴いた。洗顔のためである。 
 一夜の熟睡で疲労はおおかた消えており、加えて、皮膚にもたらされる新鮮な水の感覚が、 
さらに活力を与えてくれた。気持ちよさそうに顔を拭くゼルダも、同様に清新さを満喫している 
ようである。が…… 
 濡れた頬は必然的に、空気の冷たさを感じ取る。いまだ暗雲の消えやらぬ空は、太陽の光と熱の 
降臨を、なおも頑強に妨害しているのだった。 
 とはいえ、以前に比べると、若干、大気の明るみが増したように思われる。 
 希望を抱きつつ、リンクは手桶に新しい水を汲み、ゼルダとともに屋内へと戻った。 
 
 朝食の仕度を調えたのち、二人は向かい合ってテーブルについた。仕度といっても、ろくに 
手間はかからなかった。すぐ卓上に並べられるのは、前日リンクが食した硬いパンと干し肉、 
それに、生のままで摂取可能な、二、三の野菜くらいなのだった。リンクにとってはいつもの 
食事と大差ないが、王女の朝食にはふさわしくない、まことに粗末な内容である。しかしゼルダは 
何のこだわりもない様子で、それらを口に運んだ。 
 シークとしては粗食に耐えてきたのだから、これくらいは平気なのだろう──と推し量りながら、 
シークとは異なる雰囲気をも、リンクはゼルダから感受していた。 
 食べる仕草に、匂うような気品が漂っている。 
 シークが下品だったというのではない。むしろ逆である。普通の男にはない端正な物腰を、 
シークは備えていた。思えば、それはゼルダの持つ気品がなせる業だったのであり、いまは 
その気品を、より顕然と、ただし決して押しつけがましくはなく、あくまでも温雅に、ゼルダは 
香り立たせているのだった。 
 感受される雰囲気は他にもあった。食事をするゼルダの様子が、いかにも嬉しそうなのだ。 
何がそんなに嬉しいのか、と怪しんでしまうくらい、にこにこしている。 
 この貧弱な献立に満悦しているとは思えない。平和が戻った世界のもとで、こうしてのどかに 
食事ができること自体を喜んでいるのだろう。だが、ゼルダを嬉しがらせている要素は、 
それよりも……誰と一緒に食卓を挟んでいるか、という点ではないかと── 
「どうかしたの?」 
 いきなり声をかけられ、我に返る。 
「いや、何も……」 
 自惚れた内心を正直に吐露するわけにもいかず、まごついてしまう。ゼルダはくすくす笑っている。 
 いきなりと思ってしまったのは、ぼくが夢中になってゼルダに見入っていたからで、ゼルダの方は、 
ずっとぼくの視線を意識していたのだろう。何もかも見透かされているようで、気恥ずかしい。 
が、それがぼくたちの心の通じ合いを証明しているようでもあって、かえって幸福感が増幅される。 
「そういえば──」 
 ゼルダが、ふと真顔になって訊いてきた。 
「マスターソードはどうしたの?」 
 そばにおいてある鞘が空であるのに気づいていたのだろう。戦いのあと気を失ったゼルダは、 
ことの経緯を知らないのだ。 
 ガノンドロフの死体に突き刺さったまま、抜けなくなってしまった件を話す。 
 ゼルダは軽く頷き、口元に小さく微笑を浮かべて、静かに言った。 
「取りに行きましょう」  
 
 市街を進む間、ゼルダの顔色は冴えなかった。かつての繁栄を想像することすら困難な、 
震災の惨状を目の当たりにしては、それも当然のことと思いやられる。が、ゼルダは感傷めいた 
言葉を漏らすことなく──またマスターソードの回収方法を説明することもせず──粛然と歩を 
運ぶのだった。 
 崩壊したガノン城跡に至っても、ゼルダは前進にためらいを見せなかった。足場の不安定さは 
甚だしく、女性が歩行するのは無理ではないか、とリンクは慮ったのだが、手を引いてやる程度の 
補助は必要だったにせよ、ゼルダの足取りはしっかりとしていた。 
 朝食の間は身に着けていなかった肩当てと手袋を、宿所から出る際、ゼルダは装着していた。 
安全とはいえない場所へ赴くにあたって、身体を保護しようとしての配慮と理解できたが、 
のみならず、その装いは──額の飾りはなく、髪も整えられてはいなかったものの──強い意志が 
うかがえる行動と相まって、「王女ゼルダ」を余すところなく表現していた。 
 一人の女として情熱を解き放った昨夜のゼルダとも、穏やかな安寧の中にいる楽しみを 
無言のうちに語っていた先刻のゼルダとも異なる、それはもう一つの──いわば本来の── 
ゼルダであり、余人にはあり得ない魅力を醸し出すと同時に、背筋を正さずにはいられない 
思いをも、なおリンクに抱かせるのだった。 
 
 二人はガノンドロフの死体が横たわる場に到着した。 
 足かけ三日を経ているにもかかわらず、死体に腐敗などの変化は見られない。戦闘終了後に 
感知した、あたかも岩と化してしまったかのような無機的な硬化が、固定されたままとなって 
いるのだった。マスターソードが心臓を貫き通している点とも併せ、明らかに生命の消失を 
意味する様相であったが、やはり硬化によって固定された、死に際の狂的な表情は、魔王の 
真髄ともいえる強烈さであり、その邪悪な所業の数々を、ありありとリンクに思い出させた。 
 ゼルダは黙ってガノンドロフを見下ろしていた。戦いのあとで心を満たしていたと思われる、 
あの「哀しみ」のような感情が、そこには再び表出されていた。 
 しばらくその姿勢を保ったのち、ゼルダはガノンドロフに向けて両手をかざした。 
 硬化した死体が、少しずつ砂状の塵と化し、折から起こった風に乗って、虚空へと消散してゆく。 
 リンクは悟った。 
 昨夜の交わりで、ゼルダは『時の賢者』としての真の覚醒を得た。これはその力による現象なのだ。 
 ここまで得られていなかった勝利の実感が、いまにして全身に染み渡る。 
 やがて、死体は、完全に無となった。 
「これで、ほんとうに、すべてが終わりました」 
 ゼルダは厳粛な口調で言い、石壁に刺さった状態で残るマスターソードを、片手で指し示した。 
 柄を握り、引いてみる。 
 あれほど強固に食いこんでいたのが嘘のように、刃はすんなりと石壁を離れた。  
 
 これですべてが終わったのだ──と、ゼルダは心の中で繰り返した。 
 実質的にはすでに完了していた使命が、いまの「儀式」によって、形の上でも完了した。 
 上空に浮いていたトライフォースも、もはや、そこにはない。リンクの持つ勇気のトライフォースは 
ガノンドロフによって、ガノンドロフの持つ力のトライフォースはわたしによって、そして 
わたしの持つ知恵のトライフォースはリンクによって、各々から離れ、三すくみとなり、結局、 
誰の手にも渡らなかった。あるべき形で、あるべき場所へと戻っていったのだ。 
 いまのわたしは何をするにも自由である! 
 ……というわけには、実は、いかない。 
 ハイラル王国を再建し、ようやく取り戻された世界の平和を、これから保ってゆくために、 
わたしは、なおも、力を尽くさなければならない。 
 極端な話、世界が平和でありさえすれば、ハイラル王国など存在しなくとも一向にかまわない、 
と思ったりもする。つまり、わたしは王女でなくともよいのだ、と。むしろその方が──王女なる 
地位を捨ててしまった方が──より大きな自由を獲得できる。 
 リンクと二人で生きてゆこうとするのなら! 
 しかし、それは、あまりにも独善的な願いだ。 
 現状を鑑みるに、世界を立て直すにあたって、当面、ハイラル王国という体制が必要である 
ことは、自明の理。よって、わたしは、王女として──いや、父王亡きいまは女王として── 
世を治めてゆかねばならないのだ。 
 わたしはそれを厭わない。 
 リンクがともにいてくれさえすれば! 
 課題は山積している。頭の中で整理がついていない。心に引っかかって、まだよく把握できて 
いない点も、いくつか。 
 たとえば…… 
 ──マスターソードがリンクの手に戻ったこと。 
『え?』 
 それの何が問題なのか──と、おのれの内部を探ろうとした時、 
「あの雲は──」 
 リンクの声が思考を遮った。 
「──いったいどうなっているんだろうね。少しは薄まったようだけれど、ガノンドロフが死んで、 
いまは死体も消えてなくなったというのに、晴れる気配がないみたいだ」 
 浮かない顔つきで空を見上げている。 
「ガノンドロフの魔力があまりにも強大だったので、自然が元の秩序を取り戻すのに時間が 
必要なのでしょう」 
 と、信じるところを述べる。 
「やっぱり……」 
 同意見であったらしいリンクは、ひとつため息をついたあと、顔を向き直らせ、問いかけてきた。 
「どのくらい経ったら、なくなるかな?」 
 賢者の感覚を研ぎ澄ます。 
「数日はかかると思います」 
 リンクの顔が喜色に染まった。 
「その程度なら心配は要らないね。ちょっと待っていればいいんだから」 
 そう、待っていればいい──と、ゼルダはリンクの言を胸中で反復させた。奇妙な混乱を 
抑制しようとして。  
 
 ずっと身につけていた種々の武器を失って以来、リンクは何となく落ち着かない気分を 
味わっていた。マスターソードが手元に戻り、そんな気分もかなり解消されたところで、 
他の武器を探しにかかった。戦いの直後はゼルダを宿所に運ぶのが先決であったため、捜索の暇が 
なかったのである。 
 ゼルダも手伝ってくれたその作業は、しかしほとんど徒労に終わった。無傷で回収できたのは 
ハイリアの盾のみだった。『妖精の弓』は石塊の下で粉々になっており、破片を拾い上げられた 
だけである。残りの武器は、どこに埋まってしまったものか、目にすることすら能わなかった。 
 しかたがない──と割り切る。 
 いろいろと役に立ってくれた武器を放棄しなければならないのは残念だが、使命を果たした 
いまとなっては、必要不可欠というわけでもあるまい。マスターソードとハイリアの楯のみを 
背に負ったぼくは、ちょうど七年間の封印から目覚めた時の格好に戻ったわけだ。新たな気持ちで 
再出発というのも悪くはない。 
 気の毒がるゼルダにも胸の内を伝え、未練を捨ててガノン城を去ったリンクだったが、武器の 
不足を嘆じる場面は、早々と訪れた。 
 ハイラル平原に出る経路を確かめようとしたところ、正門に向かう通りは、地割れで遮断されていた。 
地面の欠落は幅広く、とうてい自力では跳び越えられない。ホバーブーツを使っても届きそうにない。 
フックショットは失われていたし、『金のグローブ』もないとあっては、ガノン城へ至った時の 
ような即席の架橋もできない。地割れの底には熔岩が貯溜しているから、降りて渡ることなど、 
もちろん不可能である。 
 他の道を探してみたが、どこも状況は同じだった。城壁に近づくことすらできなかった。 
 二人は廃墟と化した城下町に孤立してしまったのだった。 
 
 ゼルダはあわてなかった。茫然とするリンクに、平静な心で語りかける。 
「暗雲が空から消え去れば、この地にも、また人が集まってくるでしょう。それに、熔岩の貯溜も 
ガノンドロフの魔力の影響なのですから、やはり数日も経てば、消えるなり冷えるなりして、 
地割れの底を渡れるようになるはずです」 
 リンクは安堵の面持ちとなった。 
「それまでは、ここにとどまっていなければなりませんが……」 
 付言しながら、実は自分はこう言いたいのだ、とゼルダは是認した。 
『それまでは、ここにとどまっていられる』 
 そう、何の義務もなく、何の懸念もなく、リンクと二人でいられる、この数日間の休息を、 
わたしは堪能しよう。考えなければならない諸々の事項は、あとで改めて考えればいい。 
 おのれに許しを与えつつ、リンクも同じ思いにあることを、眩しげに寄せられるその視線から、 
ゼルダは正確に読み取った。 
 しんみりと胸が温まった。  
 
 余儀なくされた逗留も、ゼルダと二人きりで過ごす休暇と考えれば、心が踊るという表現では 
追いつかないくらいの喜びだ。とはいえ、のんべんだらりとはしていられない。たとえ数日に 
過ぎなくとも、生活の面倒は自分たち自身で見なければならない。 
 宿所へ戻って、朝と同様の簡単な昼食を済ませたのち、リンクはゼルダと一緒に、家の内の 
設備や物資を再点検した。注意深く倉庫を調べた結果、最初の調査では見過ごしていた品々を 
確認できた。調理器具、食器、酒瓶、大工道具、衣料などである。棚から張形が転がり落ちてきて、 
ゼルダを赤面させる一場もあった。 
 まずリンクが考えたのは、破損したベッドを使用可能にできないか、という点だったが、 
補修には数日どころではない時間を要すると判断され、やむなくその案を放棄した。代わりに、 
暖炉前の仮の寝床を整えたり、燃料用の木材を調達したり、風が吹きこむ壁のすき間に板を 
打ちつけたり、といった務めに精を出した。 
 一方、ゼルダは──やはり食生活を改善する必要を感じていたのだろう──崩れ残った台所に 
調理器具と食材を持ちこみ、夕食用にと炊事を始めた。再び肩当てと手袋をはずし、ゲルド族が 
残していったエプロンをまとって、かいがいしく立ち働くゼルダの姿は、リンクに新鮮な印象を 
もたらした。 
 下ごしらえを終え、あとは夕方まで鍋で煮るだけ、と告げたゼルダは、次いでリンクに、 
破れた服の繕いを提案してきた。倉庫には裁縫用具も残っていたのである。 
 服を渡し、肌着だけの格好でテーブルについたリンクは、向かいにすわって針と糸を使う 
ゼルダを、安らかな気分で見やった。 
 料理も裁縫も王女には不似合いな作業だが、シークとして経験していれば、ゼルダにそれらが 
できるのは当然で、別段、驚くにはあたらない。しかし否応なく感じてしまうのは、この場を 
占めるほのぼのとした空気であって、暮らしをともにする男女とはこういうものか、と、ぼくの 
胸は温かくなって、別の言葉で言うなら、まるでぼくたち二人は── 
 これまで本質を実感できなかった、「暮らしをともにする男女」の代表的形態を意味する単語が 
頭に浮かび、心臓が大きく拍動する。 
 そんな男女が交わすべき行為を──ゆうべぼくたちが交わして、けれどもまだ交わし足りなくて、 
なのに今朝は空腹で妨げられてしまったその行為を──矢も楯もたまらずぼくは再開させたくなって、 
すぐにも椅子から立ち上がってゼルダのもとに歩み寄って抱きしめて押し倒して── 
 待て。せっかく服を繕ってくれているのに、それを邪魔するのは、ゼルダの意に沿わない 
行動ではなかろうか。この穏やかで家庭的な雰囲気を続けて満喫したいという気持ちもぼくには 
あって、だったらその雰囲気を壊すような振る舞いは避けるべきだろう。とはいっても欲望を 
抑えておくのは相当の難事で、身体の中心が火照って火照ってしようがない。ないものの、 
ゼルダがぼくと同じことを考えているならともかく、縫い物に専念している以上そんなはずも 
ないから、やっぱりぼくは欲望を抑えなければならない。夜になってからでかまわない。 
生活する男女の自然なありようとはそういうもので…… 
 思考は惑乱するばかりである。手持ち無沙汰なのがよくないのだ、と考え、伸びかかった髭を 
剃ることにした。 
 剃刀を使うのにも、もう慣れた。初めの頃のように、肌を傷つけたりはしない。 
 手際よく処理を進めるうち、ちらちらと飛んでくるゼルダの視線に気がついた。怪訝に 
思っていると、ゼルダがためらいがちに口を開いた。 
「あの……あとで、貸してもらえないかしら……剃刀……」 
「ああ、いいよ」 
 応諾しつつも、意図を判じかねる。 
 裁縫に使うのか? いや、「あとで」と言うからには、別の用途があるのだろう。どんな 
用途かはわからないが…… 
 ほどなく仕事を終えたゼルダが、服を戻してきた。礼を言い、代わりに剃刀を差し出すと、 
受け取ったまま、もじもじしている。どうしたのか、と、さらに疑問が募る。 
 口に出して訊こうとした時、思い切ったようにゼルダが行動を起こした。テーブルに置いてあった 
タオルを、足元の手桶の水で濡らし、腋の下を拭き始めた。 
 ようやく理解する。 
 別に見られて困ることとも思えないが、それはぼくが男であるからで、女性には女性の心理と 
いうものがあるのだろう。特に身だしなみに関しては。 
 リンクは席を立った。 
「ちょっと外を見てくるから」 
 そそくさと戸外に出る。もちろん見るべきものなどありはしない。下手な言い訳だ。それでも 
頭を冷やすにはいい機会。 
 努めて心を平穏に保ち、リンクは時が経つのを待った。  
 
 夕食に供されたのは、野菜と芋を煮込んだ料理である。見かけは素朴だったが、立ちのぼる 
香りが鼻に快く、リンクは食欲をそそられた。ところがゼルダはしょんぼりとしている。 
「ポトフを作ってみたんだけれど、うまくできなかったの。やっぱり生のお肉がないとだめみたい」 
 口に入れてみる。ポトフというのが、本来、どんな料理なのかは知らないが、卑下するほどの 
できとは思えない。ふだんの食事では得られない、充実した味である。 
 正直に感想を述べる。自分なりの味の基準があるらしいゼルダは、単純に態度を変えは 
しなかったものの、リンクの評を嬉しがるふうではあった。 
 ことさら過去の食生活の貧しさをやり玉に挙げるうち、ついうっかり、シークの手料理と 
比べても格段のうまさだ、と言ってしまった。一瞬、目を見張ったゼルダが、次に大きく 
笑い崩れる。そのありさまと、自身の発言の間抜けさとで、こちらも笑わずにはいられなくなる。 
 時間は安楽に過ぎていった。 
 やがて皿は空となり、腹は満足の意を表する。 
 ゼルダが倉庫から酒瓶を持ち出してきた。 
「よかったら、どう?」 
 慎ましくなされる勧めに、 
「少しだけなら……」 
 慎ましく応じる。 
 コップに少し残っていた水を飲み干そうとするリンクを、ゼルダは制止し、水とほぼ同量の酒を、 
そこに注ぎ足した。自らはコップを空にしたのち、八分目ほどを瓶の中身で占めさせた。 
 リンクはコップに口をつけた。前にゲルドの砦で飲まされたのと同じく、かなり強い酒で、 
水で割っているのに、ちびちびと舐めるようにしか味わえない。対してゼルダは、生のままの 
液体を順調に消費してゆく。 
「大丈夫?」 
 問われて、 
「うん」 
 答えながらも、気遣われていることを痛感する。 
「平気さ。薬さえ入ってなけりゃね」 
 皮肉をこめた強がりに── 
「そんなこと……」 
 照れたような笑いと── 
「……するわけないわ」 
 挑むような視線とが返ってきて── 
「眠って欲しくなんか、ないんだもの」  
 
 どきりとしたところへ、 
「注いでくれる?」 
 と続けられる。いつの間にか、ゼルダのコップは空になっている。 
 テーブルの中央にある瓶に手を伸ばすと、向かいに坐していたゼルダが、椅子を隣に寄せてきた。 
コップに酒を満たしつつ、身近となったゼルダに眺め入る。 
 すでに外は真っ暗で、室内の明かりは暖炉の炎だけだ。そのちろちろとした揺らめきに彩られる 
ゼルダの頬は、短時間で一杯空けてしまったというのに、全く赤みを増していない。言葉や 
身体の動きからも、酔いの気配はうかがえない。 
 酒に強い体質なのだろう。確かゼルダは子供の頃──そう、七年前、ハイラル城での晩餐の 
折りに──酒はいつも飲んでいる、とか言っていた。 
 そんなゼルダとは違って、ぼくは下戸もいいところだ。ゼルダもそうと知っている。飲み始めの時、 
ぼくに水を残させた上で、しかも少量しか酒を注がなかったのは、ゼルダの気遣いの表れだ。 
それは実にありがたいことなのだけれど、何となくゼルダに頭が上がらないような心境に、 
ぼくはなってしまう。 
 酒の強さばかりではない。いまゼルダが隣に席を移してきたのも、ぼくが注ぎやすいように 
という気遣いとわかるが、そうした細かい思いやりが眩しく感じられ、ひるがえって、気が 
きかない方である自分を省みさせる。 
 他にも、まだ。 
 凛とした芯の強さを発揮する、王女としてのゼルダ。 
 気品と節度を保ち、空腹を表に出したりはしないゼルダ。 
 日常の生活を篤実に過ごそうとする、落ち着いた物腰のゼルダ。 
 大人っぽい──という印象を受けてしまう。確かにゼルダはぼくよりも、ほんの少し「お姉さん」 
なのだが、実際よりもずっと大きな年齢差が、ぼくたちの間にはあるかのようだ。 
 無論、だからといって、ぼくがゼルダに寄せる想いが変わるはずもない。ゼルダもそうで 
あるだろう。ゆうべの心と身体の交歓は、ぼくたち二人にとって、動かしようのない真実であり、 
幸福だった。ところが、昼の内に躊躇した交歓の再現を、いまだにぼくは躊躇している。 
ゼルダとて再現を欲していないはずはないと考えながら、その意思を、ゼルダの「大人っぽい」 
態度から、確信をもって感知することができないのだ…… 
『待てよ』 
 さっきのゼルダの台詞。意味を把握するより早く、次の言葉に気を取られてしまったが…… 
(眠って欲しくなんか、ないんだもの) 
 ぼくが眠らずにいることで、ゼルダに何の得があるかというと…… 
『あ!』 
 わかりきっているじゃないか! 
 同時に気づく。二杯目の酒に、ゼルダは全く口をつけようとしない。 
 つまりゼルダが椅子を寄せてきたのは…… 
 馬鹿だ! ぼくは! 
 注ぎやすいようにと気遣ったのだ、などと解釈するなんて、察しが悪いにもほどがある。 
ちょっと酒を舐めただけで、ぼくの頭は鈍りきってしまったのか? 
 ぼくの近くにいたいという、それは明白な意思表示。 
 ゼルダはぼくを誘っている!  
 
 わたしはリンクを誘っている──と、ゼルダは自覚する。 
 昼間、服を縫っている時、リンクがそわそわしているのに、わたしは気づいていた。何を考えて 
いるのかも想像できた。 
 しかし結局、リンクは考えの内容をぶつけてはこなかった。生活する男女の自然なありようを 
尊重し、昼は昼、夜は夜、とけじめをつけたのだ。それは確かに、穏やかで家庭的な雰囲気を 
満喫したいというわたしの意にもかなってはいたが、反面、一種の失望を感じてしまったことを、 
わたしは否定できない。 
 七年前、ハイラル城の中庭で、「それ以上の何か」をしようとしなかったリンクに対して 
抱いたのと同様の失望を。 
 リンクに迫られていたら、わたしは拒めなかっただろう。拒むどころか、喜んで応じていたに 
違いない。羞恥を覚えながらも、リンクが見ている前で剃刀を使おうとしたのは、言葉としては 
発せられないリンクの要望への、遠回しな答であったのだ。 
 まどろこしい態度しかとれないわたし。自分を飾ろうとする意識を、まだ捨て切れていない。 
リンクが要望を言葉にしなかったのも、わたしが無意識のうちに張りめぐらせる防壁を感じ取った 
からだ。 
 でも、いまは、夜。 
 ためらう理由は、なくなった。 
 酒を持ち出したのは、少々のことでは酔わないわたしではあっても、それで自らの防壁を 
崩せるのなら、リンクがそうと知ってくれるなら、と思った上での行いであって、こうして 
リンクのそばに身を寄せたのも、もう抑えようのないわたしの情動をわかってもらいたいという、 
勝手といえば勝手な、けれども飾りのない率直な願望の表れであって、そんなわたしの願望を 
リンクは、ああ、リンクはわかってくれた、差し伸べられるリンクの腕、抱き寄せられる 
わたしの肩、触れ合う二人の身体と身体、徐々に近づく顔と顔、その流れるような動きの連なりが、 
深まりが、酒では酔わないわたしを酔わせて、ほろほろと酔い爛れさせて、そしてさらなる酔いに 
わたしをどっぷりと浸からせてくれるだろうリンクの唇を迷うことなくわたしは── 
 
 受け入れる唇に刺激的な酒の味と匂いの残滓を感じつつ、ゼルダならではのあの香りを、 
はっきりとぼくは認識する。そうと容易に認識できるほど、いまやゼルダはぼくに密着していて、 
ぼくに身体を預けて、口を預けて、いかに大人っぽくあっても、もうゼルダはぼくのなすがままで、 
首から胸に下ろした手で服越しに乳房を撫でまわしても、抗いもせず、秘めやかに胴を震わせる 
ばかりで、そんなか弱い女の風情を、ゼルダはぼくにだけは見せてくれるのだという喜びが、 
ぼくを烈々といきり立たせる。 
 かと思えば、こちらの口技に倍する熱心な反応を舌で返してきたり、乳房に置いた手の上に 
自分の手を重ねてきたり、と、昨晩同様、いや、昨晩以上の、やはりぼくにしか示されないはずの 
強い情動を、ゼルダは隠しもしなくなって、ますますぼくは興奮してしまう。 
 そうなると、いかに身体を密着させていても、別々の椅子にすわっているのが不自由で、 
不自然で、もどかしくてたまらなくなって、やにわにぼくは立ち上がってゼルダを椅子から 
引っぱり上げて、間もおかず傍らの寝床に倒れこんで、制限なしの接触位置を確保してから、 
片手で乳房を弄び続け、もう一方の手を腹に、腰に、尻にと伸ばし、裾が捲れ上がっているのを 
いいことに、膝にも触れ、腿にも触れ、速まり強まるゼルダの呼吸に煽られながら、とうとう 
両脚のつけ根を覆う滑らかな布に手は届いて──  
 
「はッ!」 
 とわたしは息を呑む。そこに触れられる感覚は、布を間に置いてはいても、身構えずには 
いられない衝撃だ。 
 やんわりと、しんねりと、リンクの指がそこを這う。間接的な接触であるにもかかわらず、 
ほんとうに、ほんとうに、それは心地よい施しで、わたしは呻きを止められない。喉が漏らし出す 
快美の表現を抑えられない。 
 熔ける。熔ける。わたしは熔ける。 
 そこは濡れ始める。もう濡れているだろう。下着まで濡らしてしまっているかもしれない。 
だとしたらリンクは気づいている。わたしが欲情に溺れていることを。 
 恥ずかしい。だけど、嬉しい。 
 相反する二つの感情が、実は相反してはいないのだ、と、わたしは理屈抜きに納得できる。 
 リンクにそうされているのだから! 
 でも、できるなら、もっと、もっと近くに手を…… 
 何ということ。心の中ですらこんなまどろこしい言い方しかできないなんて。素直な言葉を 
使えばいい。そう、その言葉を── 
『じかに』 
 意識した瞬間、まるでそれを待っていたかのように、リンクの手が入ってくる。指が谷間に 
すべりこむ。 
 願ったとおりに! 
 触れられる。撫でられる。リンクがわたしを慈しむ。これ以上はないと断言できるくらいの 
優しさで。わたしを敷布の上に押し倒した時の強引さとはうってかわったその優しさに、わたしは 
高まって、泣くがごとくの声をあげてしまうほど高まって、この高まりが続くなら何がどうなっても 
かまわないとまでわたしは思ってしまって、なのに、ああ、なのにリンクは無慈悲にも── 
 
 手を引く。 
 焦らしたいわけではない。より広い範囲を、より奔放にまさぐりたいがためなのだ。 
 ゼルダの衣装をほどきにかかる。ところが単純に見えてそれはけっこう複雑で、離れていると 
思っていたところが繋がっていたり、あるいはその逆であったりして、無理に扱うと破れて 
しまいそうでもあって、ともすればぼくの手は戸惑ってしまう。 
 見かねたゼルダの助けによって、滞りつつも着実に、肌はあらわとなってゆく。ゆうべ目にした 
無謬の皮膚が、なおも新鮮な印象を、ぼくの脳髄に投射する。 
 一方で、さほどの迷いもないゼルダの手さばきが、ぼくの着衣を奪ってゆく。じっとしては 
いられない。逸る心を懸命に整え、ぼくは自分を解放する。 
 二人のすべてがさらされる。 
 仰向けに横たわる、究極の美。 
 それはぼくのものなんだ。 
 感激が胸をいっぱいにする。その感激をいっそう強めようとして、ぼくは行動を再開する。 
 いったん手をつけた、ぼくを待っているはずの部分に、続けて手をつけたいと欲しながらも、 
ぼくは別の部分に惹かれてゆく。 
 ふくよかに盛り上がる、二つの乳房。 
 すべすべしていて、柔らかくて、それでいてみっしりとした充満感があって、若い命の凝縮が 
ひしひしと感じられる。広さ控えめな桃色の乳暈と、ぷっくり立ち上がった同色の乳頭は、 
あたかも可憐な花のようで、ゼルダその人を如実に象徴しているとしか思えない。だからぼくは 
その部分に、ゼルダの二つの分身に顔をうずめて、手で、指で、口で、舌で、さやさやと、 
ころころと、戯れて、かわいがって、いとおしんで、ゼルダもまた、切なげに息を漏らし、 
ぼくの頭を撫でて、包んで、押しつけて、ぼくの奉仕をうっとりと──  
 
 受容する。胸になされるリンクの奉仕を、わたしはうっとりと受容する。執拗なまでの愛撫と 
口づけが、昨晩同様、いや、昨晩以上に快い。わたしは再び高まってゆく。高まってゆく。 
この高まりが続くなら── 
 ──と念じたところで、またもリンクは道筋を変える。胸につけられていた顔が、そのまわりへと 
拡散してゆく。 
 焦らしているつもりはないのだろう。ゆうべは一直線に進んだ交わりを、今夜はゆっくりと、 
じっくりと、賞翫しようとしているのだろう。結果として焦らされるわたしではあっても、 
それを不満には思わない。繰り返されるたびに高まりは強くなるから。次の高まりは前よりも 
強いとわかっているから。リンクがそうしてくれるとわたしは信じているから! 
 リンクの顔が右の腋に接する。唇が、舌が、敏感な肌の上を這い進む。シークである時は 
放置していたそこを、大人の女性にふさわしいように、わたしは、昼間、処置したのだけれど、 
そうしたせいで、身体の他の部分では得られない一種独特な感覚を、わたしは味わうことが 
できている。くすぐったくもあり、気持ちよくもある、それはほのかな、しかし確かな快感で 
あって、ゆえにわたしはこの場でも、静かに湧き上がる高まりを自覚せずにはいられない。 
その高まりをもっと高めてやると言いたげにリンクは── 
 
 左の腋に顔を移す。右と同じく処置されたそこには、やはりゼルダその人を彷彿とさせる、 
清楚な美しさが描出されている。反面、わずかに剃り残された短い毛先が、妖しい魅力を 
放ってもいる。 
 ここにあったはずのものを、昨夜のぼくは看過してしまった。余裕がなかった。見られていれば、 
と、残念な気もする。が…… 
 重要なのは視覚ばかりではない。 
 嗅覚。 
 あのゼルダの香りを、ここでは一段と明瞭に嗅ぎ取れる。つまりこれは装いではなく、 
ゼルダ自身の体臭なのだ。 
 右側に続けて左側でも、その一風変わった個性を楽しむうち、身の内に奇妙な変化が起こるのを、 
ぼくは感じる。 
 普通に身を近づけただけだと、芳しいと感動はしても、それ以上の影響はなかったのに、 
いまはどういうわけか、頭がぼやけそうになって、胸は盛大に動悸を打って、すでに怒張した 
部分がさらに勢いを増して、意思ではどうにもならない衝動がぼくの背筋をぞくぞくと駆けめぐって、 
この衝動をすぐにも発散させたい、いや、まだ早い、でも我慢できない、でも我慢しなくちゃ 
ならない── 
 ──との葛藤にどうにか折り合いをつけて、胸に顔を戻してみると、そこにある二つの 
ふくらみは、ついさっきと同じく誇らかな張りを示しているのだけれど、さっきとはどこか 
違っているようにもぼくの目には映って、たわわな実りが文字どおりぼくの賞味を待って 
いるのだと思えてしまって、ぼくはそこに食いついて、吸って、噛んで、そんな荒々しい扱いを 
ゼルダは決していやがってはいない、むしろ悦んでいる、と、その口から発せられる喘ぎ、 
恍惚とした表情、くねり踊る全身の様子から、ぼくは正確に判断できる。 
 ならばもっと悦んでもらおう。もっと悦ばせてやろう。 
 胸から顔を下ろしてゆくと、腹の真ん中にある臍の窪みが、もう見慣れたはずのそれが、 
なぜかやたら色っぽく見えて、たまらずぼくは舌を突き入れて、抉るように舐めまわして、 
するとゼルダの喘ぎが高まって、やっぱりゼルダもそこで──  
 
 感じてしまう、そんな所で感じてしまう、やっぱりリンクはそうしてくれる、わたしを、 
わたしを、高めてくれる! 
 荒々しいほどの胸の扱いも、全然わたしは気にならない。それどころか、そんなにされるのが 
悦ばしくて、なぜなら、わたしはリンクのものだから、リンクだけのものだから、何をされたって 
かまいはしない! 
 ──という許容とは裏腹に、リンクの頭がすべり下りて、そこに近づいてゆくにつれ、わたしは 
緊張してしまう。さっきは指で触れられて、その中断を無慈悲と思ったほどなのに、わたしは 
緊張を禁じ得ない。リンクが何をしようとしているかはわかっているし、それを拒みたくは 
ないのだけれど、けれど、けれど── 
 ああ、もうリンクは寸前まで来た。下腹に顔をくっつけて、もっと下へ、もっと奥へ進もうと 
するのを、わたしは反射的に阻んでしまう。脚に力が入って、開きたい、だけど開けない、 
どうしても抵抗を捨てきれない。 
 そこを見られるということに! 
 ゆうべは同じその場所に、リンクを迎え入れておきながら、視線を浴びるについては、次元の 
違った感情があって── 
 でも、でも、リンクは許してくれない。わたしの抵抗など毛ほども留意しないと言わんばかりに、 
閉じた両脚を持ち上げて、腿の内側に手をかけて、一気にわたしを左右に開いて──! 
 
 そこにあったのは! 
 ゆうべも、さっきも、触れるばかりで、まともに見るには至らなかった、それ。 
 金褐色の茂みの中で、二重の花弁を紅く咲き誇らせ、小さな雌蘂をくっきりと起き上がらせ、 
全体を大量の蜜にまみれさせ── 
 これがゼルダかとたじろいでしまう。 
 限りなく淫靡な一輪の花。 
 同じ花であっても、胸にある二つのそれとはかけ離れた様態。 
 でも、これは、ゼルダなんだ。可憐で清楚な風貌や、凛然とした王女の威厳や、篤実で 
落ち着いた物腰の奥には、かくも淫らな「女」をひそませていた。これもまた、疑いなく、 
現実のゼルダ! 
 切々と、自分に、言い聞かせる。 
 こんな君を見られるのは、世界中でぼく一人だけ! 
 
 見られている、わたしはそこを見られている、リンクにそこを見られている! 
『恥ずかしい!』 
 だけど── 
『嬉しい!』 
 昨日、わたしは、思ったではないか。 
 愛するひとにすべてを見られることが、喜び以外の、いったい何であり得よう! 
 切々と、自分に、言い聞かせる。 
 こんなわたしを見せられるのは、世界中であなた一人だけ!  
 
 見ることができるだけじゃない。他にもできることはある。 
 顔を近づける。ふわりと空気が変化する。腋と同じくゼルダの香りがそこからは放たれていて、 
別に濃密というわけではないのだけれど、なぜだかやけに誘惑的で、ぼくの全身は燃え上がって 
しまって、目の前にある花の精密な構造がことさらぼくをのぼせ上がらせて、こうしているだけで 
達しそうになって、飢えた獣のようにぼくはそこを食い散らかしたくなって、しかし、しかし、 
そうはいかない、ゼルダの傷を忘れちゃいけない、ぼくは、ぼくがしなくちゃならないことは、 
そっと、そっと、君の、ここに── 
 
 ふいごにも似た激しい呼吸を、その部の皮膚にわたしは知覚する。 
 あられもなく広げた両脚の間を、女が最も秘すべき身体の奥を、見られていて、嗅がれていて、 
そうされているという意識でわたしの全身は燃え上がってしまって、吐きかけられるリンクの息が 
ことさらわたしをのぼせ上がらせて、こうしているだけで達しそうになって、飢えた獣の餌食と 
なって蹂躙される自分を想像して、いいの、いいの、それでもいいの、リンクにだったら 
何をされてもいい、わたしは、わたしがしなくちゃならないことは、そんな、そんな、あなたを、 
そこに── 
 
「ひぃッ──!」 
 と空気を裂くような悲鳴をあげる君を押さえつけ、かつ、爆発直前にある自らの欲求をも 
無理やり抑えつけ、あくまでも優しく、あくまでも穏やかに、ぼくはぼくの口を使う。 
 熱い、熱い、ぬめりの中で、そこは甘く、酸っぱく、場所によってはちょっとした苦みもあり、 
その玄妙な味わいが、むせかえりそうになる芳気とも相まって、ぼくの神経を励起し、あるいは 
幻惑し、それでもぼくは理性をもって、複雑な形状を呈する襞の隅から隅までを、舐めて、舐めて、 
舐めつくして── 
 
 舐められて、舐められて、舐めつくされて、わたしは朦朧としてしまう。食い散らかされるか 
との予想に反する、リンクの意外な優しさが、穏やかさが、わたしを安らげ、あるいは高まらせ、 
そう、ここでも、リンクは、わたしを、高めて、高めて、高めきろうとして── 
 
 高めて、高めて、高めきろうとして、ゆうべ、ぼくを収めた、深く、狭い、鞘の中に、そっと、 
そっと、舌を挿して── 
 
 挿されて、挿されて、じわりと、挿されて、リンク、リンク、わたし、もう、何が、どう、 
なっても、いいから! 
 
 ゼルダ、君の、ここに、こうして── 
 
 そうして! そこに! リンク! リンク!!  
 
「あぅッッ──!!」 
 
 ああ、君は──! 
 緊縮する肉筒に舌先を締めつけられ、硬直する両脚に頭を挟みこまれ、ぼくは知る、ぼくは知る、 
君が至福を得たことを! 
 
 そこに! あなたが! くれた! 頂点! 
 絶大な快感が、体軸を貫き、脳に達して、無数の火花を、散らしに散らし、それらは次第に、 
溶け広がって、わたしの肢体の、感激的な拘縮を、解いてほぐして、静まらせてくれて── 
 
 継続と余韻の経過を待って、ぼくは口を離す。頭を起こす。身を君の上に置き、のけぞり 
固まった顔を、ぼくは見下ろす。 
 眠るがごとく閉じられた目。しどけなくぽっかりと開いた口。 
 生命の凍結を思わせる凝固のさまは、やがて溶け、ほぐれ、静まり、忘我の色を残しながら、 
君は緩やかに目蓋を上げて── 
 
 リンクがわたしを見下ろしている。慈愛あふれる微笑みがたゆたっている。わたしが得られた 
悦びを、一緒に悦んでくれている。 
 けれど、それにはとどまらない。 
 煮え滾るような欲情と、切羽詰まった要求が、微笑みの裏には隠されていて、いいえ、 
もうリンクは隠しもしないで、 
「ゼルダ……」 
 と声を震わせる。ゆうべと同じその呼びかけに、わたしも同じく頷いて、何度も何度も頷いて、 
そう、わたしは行き着けた、あなたにも行き着いてもらいたい、そしてわたしももう一度、 
あなたとともに行き着きたい、だからわたしはそこを開いて、すでに上にあるあなたの身体が、 
わたしのおなかに押しつけてくる、硬い、硬い、男のしるしを、あるべき所にあらしめようと── 
 
 開かれた脚の間に腰を据え、火を噴きそうなくらいに猛り狂った男の部分の先端を、蜜液に 
あふれかえる花の中心に触れさせた途端── 
 それだけで暴発しそうになる。暴発させたい衝動に駆られる。 
 必死で衝動を封じこめる。 
 こんなところでは終われない。しかしいま動いたら、わずかでも動いたら、敢えない結末に 
なるだろう。だからゼルダ、時間をくれ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、余裕をくれ、どうか、 
ゼルダ、もうちょっとだけ── 
 
 そこに触れたままあなたは動かない。どうして? どうして? もうわたしは妨げない、 
わたしはあなたのものだから、何をされてもかまいはしない、すっかり心づもりはできているのに、 
あなたは何をためらっているの? どうか、リンク、お願い、早く── 
 
 君はぼくを待っている、それは充分わかるけれど、がんがん響くほど伝わってくるけれど、 
もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、もう、もう、もう大丈夫、もう行ける、行ける、行こう── 
 
 来るの? リンク? 
 
 行くよ! ゼルダ!  
 
「あ──!」 
 
 ぼくは行く。ぼくは行く。ゆっくりと。ゆっくりと。注意に注意を重ねて。限界寸前で自分を 
保って。ゆうべのように君をいたわり、なおかつ、ゆうべにまさる和合を求めようとするからには、 
これくらい細心でいなければ── 
 
 リンクが来る。リンクが来る。ゆっくりと。ゆっくりと。優しく。優しく。優しい上にも優しく。 
傷ついたわたしをいたわってくれて、わたしに苦痛を与えまいとして、それが嬉しくて、幸せで、 
わたしはとてつもなく幸せで、でも── 
 
 無事に奥へと安着する。無類の感動がぼくを満たす。腕で互いを抱きしめ合って、腰を互いに 
押しつけ合って、ぴったりと繋がった君とぼく。その部分の長さと深さ、体積と容積、表面の 
微妙な凹凸まで、すべて合致しているとしか思えない完璧な結合。運命の繋がりと、心の繋がりと、 
そしてこの身体の繋がりの、何もかもが揃ったぼくたち二人。嬉しくて、幸せで、ぼくは 
とてつもなく幸せで、だけどこれよりも大きな幸せを、ぼくたちは得られるはずなんだ、 
そのためには、そのためには── 
 
 ──でも、ゆうべは感じたそこの痛みを、いま、わたしはほとんど感じていない。代わりに 
あるのはあなたがそこにいることで身体が訴える快さ。ゆうべもあるにはあったけれど圧倒的な 
心の幸福に凌駕されてはっきりと認識するには至らなかった肉体的快感。それが、いま、瞭然と 
わたしを捕獲して、支配して、この肉体の快楽が、なお続く精神の幸福に加わって、無上の調和を 
完成させて、これが愛するひととの結び合いというものなんだわ、あなたとわたししか成し得ない 
究極の繋がりなんだわ、だけどこれよりも素晴らしい繋がりを、わたしたちは作り上げられる 
はずなのよ。そのためには、そのためには── 
 
 ──そのためには、ただじっとしているだけではだめで、静だけではなく動が必要で、しかし 
そうしたら、いまそうしたら、ゆうべと同じくあっという間に達してしまうんじゃないかと 
危ぶんでぼくは踏み切れない、まだ踏み切れない、だからゼルダ、ここでまた頼んでしまうけれど、 
もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、時間を、余裕を、と思っているそばから君は、ああ、 
君は──!  
 
 ──そのためには、ゆうべにもあったこの動きがあればいい。そう、この動き。何の動き?  
何が動いているの? わたし? わたしの腰が動いている? わたしが自分から腰を動かしている? 
ゆうべもわたしはこうしたの? わからない。覚えていない。でもこうしたら、こうしたら、 
気持ちがいい、気持ちがいい、だからリンク、あなたも、ああ、あなたも──! 
 
 ──君は、ゆうべのように腰を揺らして、ぼくもそうしろと急きたてて、わかった、そうする、 
先行きは心配だがとにかくそうしてみる、君の動きに合わせて、進んで、退いて、進んで、退いて、 
ああ、気持ちがいい、気持ちがいい、とはいえ気になる、こうやってぼくが動いても大丈夫なのか? 
君は大丈夫なのか? 君は──? 
 
 ──あなたも動いてくれる、動いてくれる、そうよ、それでいいの、大丈夫、痛くない、 
痛くないのはあなたが優しくしてくれるからだけれど、そこまで気にしなくてもかまわない、 
かまわない、続けて、続けて、リンク、動いて、お願い、続けて──! 
 
 ──君は? 苦しくはない? ないね? いいんだね? 続けるよ、続けるよ、動いて、動いて、 
懸念は捨てて、ただし配慮は捨てず、進んで、退いて、進んで、退いて、ゆうべよりも長く、 
ゆうべよりもしっとりと、だけど、ああ、だけど──! 
 
 ──続けて! 続けて! そのままずっと! わたしを感じさせて! わたしに感じさせて! 
あなたの動き! あなたの恵み! あなたの力が続く限り──! 
 
 ──だけどもうだめだ、我慢できない、許してくれ、ぼくがこんな窮地にあるのも君が 
素晴らしすぎるせいなんだ、ぼくにそうさせているのは君なんだ、だから──! 
 
 ──限りを超えた? いいわ! いいのよ! リンク! ちょうだい! ちょうだい! 
あなたを! わたしに! 
 
 ──だから! いく! いってやる! ゼルダ! いくよ! いくよ! ぼくは! 君に! 
 
「んあぁッッ──!!」 
 
 きた! きたわ! あなたが! わたしに! 感じる! 感じる! 脈打つあなた! 飛び散る 
あなた! わたしを歓喜させるあなたの証! あふれる! あふれる! そこがあふれて! 心が 
あふれて! わたしのすべてがあふれまくってもうどうしようもないどうにもならないどうなるか 
わたしにもわからないわたしはわたしはとうとうわたしは──!!  
 
「あぁんッッ──!!」 
 
 君も! いって! くれたんだ! 
 無比なる幸福。無量の満足。他には思考の筋道すら立てられない。 
 ゼルダの上に身を重ねたまま、挿入した器官に襲いかかる肉壁の痙攣を、ただひたすら享受する。 
絶頂後の弛緩が感覚を鈍らせてはいるものの、ぼくのすべてを吸い取ろうとするかのような、 
そのひたむきな収縮は、実に甘美と言わざるを得ない。 
 陶酔的な時間が過ぎ去ってゆき…… 
 やがてゼルダも弛緩する。 
 ふと腰を浮かせかけ── 
 自分に驚く。 
 上半身を起こす。少し引いて、目で確かめる。 
 勃起したままだ。射精したあとだというのに。 
 いかにぼくがゼルダに魅了されているかという、これは実証に他ならない。 
 そんなゼルダと繋がる自分を、改めて目の当たりにしてみると……美中の美であるゼルダの 
女陰を、自分の陰茎が占めていて、それがゼルダに至高の喜悦をもたらしている、と、いまさら 
ながら、ぼくは実感し…… 
 誇らしくなる。 
 再び衝動がかき立てられる。 
 前進させる。 
 密着した粘膜が一緒になって奥へとすべり動く。 
 後退させる。 
 まとわりつく襞が一緒になって外へと引き出される。 
 前進と後退をゆるゆると繰り返す。接した部分の、目には捉えられないすき間から、濁りを 
帯びた粘液が滲み出し、にちゃにちゃといやらしい音をたてる。なおさら衝動が強められ、 
腰の動きを止められなくなる。 
 摩擦による快感は減じもしない。それでも、ひとたび達したせいで、当分は持ちこたえられそうだ。 
 ただ、ゼルダの方はどうだろう。もう苦痛は感じていないようだが、さらに続けるのは酷かと 
いう気もして── 
 
 リンクが動いている。わたしの中で動いている。ゆったりと、けれども逞しく、平然と進退を 
繰り返している。 
 勃起したままだ。射精したあとだというのに。 
 いかにリンクが雄々しいかという、これは実証に他ならない。 
 そんなリンクと交わる自分を、改めて頭に浮かべてみると……隆々と高ぶったリンクの男根が、 
自分の秘所を占めていて、それがわたしに至高の喜悦をもたらしている、と、いまさらながら、 
わたしは実感し…… 
 たまらなくなる。 
 再び情動がかき立てられる。 
 リンクに合わせて、前へ後ろへと腰を揺らす。進まれた時の圧迫感と、退かれた時の吸引感が、 
摩擦による快感を増大させる。 
 苦痛は微塵も感じない。ただただ心地がいいだけだ。優しい、優しい、リンクの動きが、 
わたしをどんどん舞い上がらせる。 
 ああ、でも…… 
 優しいだけでは、もはや収まりがつかなくなっている。力強く激しく愛して欲しい、と、 
わたしは願わずにはいられない! 
 リンクはわかってくれるかしら。どうしたらわかってもらえるかしら。 
 簡単なこと。そう告げさえすればいい。 
 言うの? わたしが? それを? リンクに? 
 女のわたしがそんなことを…… 
 だけど、もう、抑えがきかない……  
 
「もっと……」 
 
 ゼルダの口から漏れ出た言葉が、ぼくをびりびりと身震いさせる。 
 交合中、快美の喘ぎを絶やさなかったゼルダではあるが、意味のある言葉を発したのはこれが 
初めてだ。しかも、その内容ときたら…… 
「いいの?」 
「ええ」 
「ほんとに?」 
「ええ」 
 腰の動きを速めてみる。喘ぐ声が高さを増す。さらに動きを速めてゆく。喘ぎがいっそう 
悩ましくなる。 
 のみならず── 
「……もっと……ああ、もっと……」 
 うわごとのように頼りなく、しかし意味するところは明確に、際限なく要求を重ねる、君。 
 わかった。ゼルダ。そうしてやる! 
 あらゆるためらいを投げ捨てる。起こしていた上体を前に倒す。すかさず背中にまわってくる腕が、 
ぼくをがっちりと絡め取る。その拘束に甘んじながら、自由のままの下半身を、ぼくは猛然と 
躍動させる! 
 突く。突く。突く。突く。 
 突き続ける。突き続ける。突き続ける。突き続ける。 
 喘ぎが叫びに変わった君を、容赦なくぼくは追いつめる! 
 
 突かれる! 
 刺される! 
 貫かれる! 
 抉られる! 
 こうして欲しかった! こうして欲しかった! あなたにこうして欲しかった! 
 もの凄い! もの凄い! もの凄い! 
 快いとか気持ちがいいとか、そんなありきたりの言葉ではとうてい表現できないこの感覚。 
あなたの男に攻め立てられて、わたしの女は崩れてゆく、壊れてゆく、とろけてゆく、どろどろになる、 
ぐちゃぐちゃになる、ぐらぐらと煮立って沸騰する、蒸発する、膨張する、緊満する、もうだめ、 
もうだめ、破裂する、わたしは破裂する、あなたの勇ましい突撃で、わたしは破裂してしまう──!! 
 
 ほとばしり出る叫喚で、ぼくは君の絶頂を知る。膣壁の強烈な攣縮が、ぼくを捩じ切らん 
ばかりに締め上げる。激越な快感が殺到する。それでもぼくは敢然と、攻めの勢いを持続させる。 
 まだだ。まだ大丈夫だ。まだ続けられる。 
 君の顔を見てみよう。目も、鼻も、口も、耳も、頬も、顎も、眉も、額も、それらはみんな、 
あるべき最高の形で、あるべき最適の位置に置かれていて、その美しさの極みともいえる表情は、 
あの気品の面影を残してはいるのだけれど、いまはまるで呆けたように溶けきって、君の中身を 
さらけ出していて、茫洋と開かれる目をうかがえば、青い瞳がとろんと濡れて、だけども奥には 
轟々と燃え盛る情欲をひそませていて、そうだろう、君は満ち足りてはいないんだ、まだまだ 
ぼくを欲しがってるんだ、だったらぼくは斟酌しない、行ける所まで行ってみせる!  
 
 まだ? まだなの? まだあなたはわたしを悦ばせてくれるの? 
 こんなに嬉しいことがあっていいのかしら。 
 こんなに幸せになれていいのかしら。 
 こんなに素晴らしい経験を── 
 ──などという感激も保てない。破裂したかと思った自分が、まだ形を残していて、でも破裂は 
次から次へと絶え間なく起こっていて、何が何だかわからない、わかるのは、わかるのは、 
わたしがあなたを欲しがっていること、それだけ、ただそれだけで── 
 
 達している、達している、君は絶え間なく達している。 
 なのに君は鎮まらない。ぼくに負けない勢いで、激しく腰を揺すり立てる。 
 何という熱狂! 何という貪欲! 
 どうやったら君は満足するんだ? いくらぼくが攻め続けても、いくら自分が達しても、 
なお不足だと言いたいのか? それは、つまり、ぼくにも── 
 
 あなたにも! あなたにも! あなたにも! 
 これほどわたしを悦ばせてくれるあなたを、わたしも悦ばせられるのだと、どうかわたしに 
納得させて欲しい、達して欲しい、わたしの中で達して欲しい! 
 
 達して欲しいと、そう思っているのか? そうか? そうなんだね? 
 いいとも、ゼルダ、そうしよう、それが君の望みというのなら、ぼくは迷わず従おう、ぼくの 
すべてを、愛する君に──! 
 
 愛するあなた、わたしのあなた、どうか、どうか、あなたの、すべてを、注いで、放って、 
わたしに、わたしに──! 
 
 君に捧げよう、君に献じよう、いよいよ、ぼくにも、終わりが、見えて、ぼくは、ぼくは、君の、 
そこに──! 
 
 そこに! そこへ! そこで! リンク! 
 
 ゼルダ! もう! 
 
 リンク!! 
 
 ゼルダ!! 
 
「「──────!!!」」 
 
 飛ばされる、飛ばされる、あなたと、わたしが、一緒に、一緒に── 
 
 無限の、かなたへ、一緒に、一緒に、君と、ぼくとで── 
 
 永遠に── 
 
 永久に── 
 
 二人の……世界へ………… 
 
 
To be continued.  
 

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