眠り続けるリンクの横で、その手に介させた悦楽の余情を、ゼルダは恍惚と反芻していた。が、 
余情が薄まるにつれ、代わりに懸念が強まってきた。 
 あたりを見まわす。 
 くしゃくしゃに丸められた敷布が部屋の隅に置かれている。後始末をしてくれたリンクにも、 
それ以上の処置をする余力はなかったようである。 
 身を立たせ、そばへ寄る。 
 白い布地に染みがついている。乾きかけた部分の色調が、染みの正体を雄弁に物語っている。 
かすかに異臭も漂っている。 
 じっとしていられなくなる。 
 布の塊を抱えこみ、そそくさと戸外に出る。井戸端まで行き、持ったものを石畳に放り出す。 
汲み上げた水をぶっかける。何度もそれを繰り返す。 
 リンクが起き出す前に失態の痕跡を消しておきたかった。いまさらそうしたところで、なかった 
ことにはできないのだが、最後の始末くらいは自分でつけなければならない。 
 ぐしょ濡れになった敷布を揉み洗う。 
 やがて染みは見えなくなり、ようやく心に落ち着きが戻った。 
 空を見上げる。 
 先刻、屋内に光を届かせていた太陽は、暗雲の陰に隠れてしまっている。その雲は、しかし、 
四分五裂の状態だ。きのうは雲に途切れがあるという程度に過ぎなかったのに、いまでは空と雲の 
割合が逆転し、青空の中に雲が散らばっていると表現できるくらいになった。しばらくすれば、 
再び太陽は顔を出すだろう。 
 順調な天候回復が、先に待つ事態への感情を喚起する。 
『思うまい』 
 心がかりを封じて作業に専念するうち、予想どおり、広場に日光が降りかかってきた。肌に 
感じる温かみから、ゼルダは改めて全裸のおのれを自覚した。 
 焦るあまり、格好を気にする余裕もなかったが、焦りがなくなったいまとなっても、裸で外に 
いることに抵抗感は湧いてこない。おとといの洗濯の際、すでに経験した状況である。慣れて 
しまっているのだった。 
 のみならず、あの時は、リンクの面前で自慰まで行って見せて…… 
 淫蕩の記憶が脳内を駆けめぐり、ほどなく昨夜の一件に立ち戻った。 
 なぜあんなことになってしまったのか。 
 快感が強すぎたために、尿道の括約筋が緩んでしまったのだろうが、これまでは、どんなに 
快かろうと、排泄などには至らなかった。 
 初めての肛門体験だったせいか。 
 確かに普通のセックスとは違っていた。膣で交わる時は、局所に炸裂する快感が全身に 
飛び散ってゆく心持ちがするのに、ゆうべの肛交では、身体の芯に快感が堆積し続け、内から 
自分を呑みこんでしまうような印象を受けた。そんな異質な感覚が、筋肉の調節を狂わせたのかも 
しれない。這いつくばって、しかも肛門を穿たれるという状況が、通常の後背位にも増して、 
「犯される」意識をかき立てたからでもあるだろうか。 
 感覚は消えていない。内部で膨れ上がり、最後に爆発へと至った快感の余塵が、まだ身の奥に 
浮遊している。入口には違和感も残っているが、それを打ち消して余りある心地よさだ。  
 
 とはいえ──と、ゼルダの思いは移ろってゆく。 
 こういう感覚を得るのは、実は、初めてではないはずなのだ。シークとしてリンクを受け入れた 
経験があるのだから。 
 ところが、かつてのそうした感覚を、いまのわたしは、鮮明には想起できない。初めてリンクの 
性器を口にした時も思ったことだが、行為自体の記憶は明確なのに、感覚についての記憶が 
付帯していないのだ。 
 どうしてかというと…… 
 思い出す。 
 歴史改変前のカカリコ村で、アンジュの運命の転換をリンクに託し、その出発を見送ったあと、 
シークが頭に描いた想念。 
 ──女性に対するリンクの行動に気を揉む僕がいるかと思えば、女性への想いを抑えきれずに 
こうして急いでいる僕がいる。僕の中に自分ではない何者かがいるとしても、我ながら複雑と 
言うしかないこの人格は、とてもある特定の何者かの存在で説明できるものではない── 
 そう、特定の「一人」では説明できない。しかし「二人」であれば容易に説明可能だ。事実、 
そうだった。 
 ゼルダとラウル。 
 シークは男だった。つまりラウルとしての面が表に出ていた。女性と接する場合には、とりわけ 
「男」の面が強く表出された。アンジュに対する感情も然りで、実際のところ、彼女を愛したのは 
ラウルであったと言うことができよう。 
『幻影の砂漠』の地下室では、シークの相手は女性ならぬリンクであったのだが、ラウルの 
半覚醒を目的とした行為であったため、表に立ったのは、やはりラウルとしての意識だった。 
もちろん、リンクを受け入れるという行為に、ゼルダの存在が影響しなかったはずはない。 
けれどもそれはあくまで影響に過ぎず、ゼルダとしての意識は、終始、抑制されていた。 
 シークがセックスの際に得た感覚を、いまのわたしが鮮明に想起できないのは、そういう事情で 
あるからだろう。 
 ただし、一つだけ例外がある。 
 シークがリンクを訪った時のことだ。感覚の記憶が鮮明でない点には変わりないものの、 
あの時は、ゼルダとしての意識が──ラウルの半覚醒に刺激されたせいか──ある程度、 
活性化されていた。 
 いま思えば、ガノン城でリンクを襲うことになる暴虐を、シークの中にあって、わたしは、 
いわば「予知」していたのだ。それが避けられないのなら、いっそ自分で──との意思が、 
あの行動を導いた。当然、意思は心の奥底に隠されていて、シークは、リンクのために望ましい 
こと、正しいことと信じながらも、行動の本質を認識するには至らなかったし、わたし自身、 
ゼルダに戻ったあととなっても、自らの「予知」を思い出せなかった。その「予知」は不可避的に 
現実となり、リンクは多大な苦難を味わわなければならなかったのだが、シークとの体験が 
わずかなりとも救いになったとすれば、甲斐はあったといえるだろう。 
 それに…… 
 あのできごとの記憶は、わたしにとって、ひそかな喜びでもある。 
 リンクをめぐる女性たちが、どんな形でリンクと交流したのか、詳細は知らない。おそらく 
行為そのものは、わたしの場合と──程度の差はあれ──大きな違いはないだろう。しかし、 
あの時のようなリンクを見知っている女は、わたしの他にはいない。リンクとそこまでのことが 
できたのは、わたしだけなのだ。 
 もっとも、それをしたのはシークであって、ゼルダではない。いまのわたしには、もはや 
望むべくもない行為……  
 
 頭に思いを遊走させつつ、ゼルダは手を動かし続けた。日は少しずつ高くなった。真昼も 
遠からぬ刻となって、もうよかろうと判断し、洗濯を終えた。ひとりで敷布を絞るのは、かなり 
厄介な次第だったが、何とかその段階も通り越した。戸外にはロープが張られっぱなしとなって 
いたので、干すのに手間はかからなかった。 
 宿所に戻ると、ちょうどリンクが上半身を起こしたところだった。ぼうっとした顔で、 
空っぽになった部屋の隅に目を向けている。何か言われるより先に、との意識が働き、顔を洗って 
きたら、と勧めてみた。リンクは短く了承の返事をし、ゆらゆらとした歩調で外に出て行った。 
ゼルダは、ほっと息をつき、濡れた身体をタオルで拭ってから、食事の準備にかかった。 
 昼食の間、リンクは無口だった。起床時のぼんやり感が抜けていない様子である。昨夜の件が 
話題に上らないのは好都合だったが、その疲労の度合いも気遣われ、ゼルダは内心、恐縮の 
思いだった。 
 食事のあとになっても、リンクのぼんやり状態は変わらなかった。椅子にすわったまま、 
頬杖をつき、目をとろんとさせている。横になっての休息を促すと、そうするほどではない 
とのこと。かといって他の何かを始めるでもない。あれこれ言わない方がいいと考え、ゼルダは 
仕事を続けることにした。夕食の仕込みをしておこうと思ったのである。 
 倉庫に入り、食材を検討する。手近な所にあった分は、あらかた消費しつくし、これといった 
ものは残っていない。あとは隅の方の一角に保存されているようだが、前に木箱が積まれていて、 
手が届かない。 
 箱を持ち上げようと試みる。かなり重い。 
 リンクの手を借りようか…… 
 いや、リンクには休んでいてもらおう。力をこめれば持ち上げられないことはない。ただ、 
手に傷がついてしまうかも…… 
 いったん倉庫を出て、手袋だけを装着する。戻って木箱を移動させる。その中身も気になったが、 
持った時の重みと音の感じでは、金属性のもの──おそらくは武器か装身具──のようで、 
少なくとも当面の目的には無関係と推断された。 
 後ろにあった荷物と対面する。麻袋が数個。中身は芋と干し肉。食べ飽きた感もある食材。 
しかし贅沢は言えない。 
 選択の幅が限られるのは是非もないこと。メインは芋にしよう。ただし煮るばかりでは 
能がないから、今日は別のやり方で…… 
 ──などと考えながら、その場を去ろうとしたゼルダの目が、ふと棚の上の「それ」を捉えた。 
 どきりとする。 
 ここでは見慣れてしまった品。留意することもなくなっていた。 
 なのに、いまは目が離せない。どういうわけか…… 
 違う。わけはある。わかっている。「それ」を使えば、わたしは── 
『だめよ!』 
 何ということを考えているのだろう。そんなことができるはずがない。いかにわたしが淫らな 
女であっても、まさかそこまでは── 
『でも……』 
 これが最初で最後の機会。二度とは訪れない機会。間違いなく。 
 動悸がどんどん速まってゆく。欲望がどんどん強まってゆく。 
 ああ、けれどわたしがそれを求めたら、リンクは何と思うだろうか。いままで相当な行いを 
重ねてきたわたしたちではあるが、今度ばかりは人格を疑われかねない。疑われてもしかたがない。 
疑われて当然だ。 
『ああ、でも……』 
 抑制が抑制にならない。リンクの疲労も制止要件とはならない。体内に吹き荒れる衝動を、 
どうにもできなくなっている。 
 リンクとそこまでのことができるのは、わたしだけ。 
 他の女性たちへの、そんな対抗意識──あるいは優越感──のような思いが、わたしの中には 
存在している。浅ましいといえば浅ましい。反面、達観しきれていないのが嬉しくもある。 
賢者らしからぬ俗な感情を自分は残しているという点で。 
 日ならずして否応なく賢者たらざるを得なくなるわたしだから! 
 衝動が限界を超えたと自覚した時、すでにゼルダは「それ」を手に取っていた。  
 
 背後で気配がした。倉庫の方である。 
 そこへ入るゼルダを見ていたので、出てきたのだとしか考えず、リンクは椅子に坐した姿勢を 
変えなかった。 
 気配は動かなかった。 
 怪訝に思って、後ろをふり向く。 
 ぼんやり気分が吹っ飛んだ。 
 ゼルダが立っている。こちらを見据えて。股間にペニスをそそり立たせて! 
 いや、ペニスじゃない。本物じゃない。あれは張形だ。棚にあった張形をゼルダが身に着けて 
いるんだ。だけどなぜゼルダがそんな格好を── 
「リンク」 
 ──しているのかは明らかだ。低めの声。真剣きわまりない顔つき。心なしか目尻が 
吊り上がっている。意思がびんびんと伝わってくる。 
 その品そのものには驚かない。女性が装着しているのだって不思議とは思わない。そうする 
ための器具なのだし、ナボールや『副官』が使っているのを見たこともある。だが、いまぼくの 
目の前にいるのは他ならぬゼルダで、そのゼルダがぼくに、そう、このぼくに何を求めて 
いるのかというと── 
「いやなら、そう言って」 
 言わせるのか? ぼくに? 君がどうしてそんな気になったのかぼくにはさっぱりわからない 
けれど、言うとなったらぼくが何と言うか、君にだって予想はつくだろう? 
 君の求めを容れた場合のぼくの立場を考えた時、思い出されるのはガノンドロフに犯された 
経験だ。あれはぼく自身の至らなさが原因でもあったから、ぼくは現実として受け止めなければ 
ならない。が、思い出したくもない汚辱の極みであることは確かだ。それを思い出させようと 
いうのか、君は? あの時のぼくは最低の気分で、ただ初めてではないことだけが救いで── 
 待てよ、そうだ、救いだという初めての時、シークを受け入れた時のぼくはどうだったか。 
拒否したいと思ったか? 思わなかった。そうした方がいい、そうするべきだ、とまで考えた。 
満足感や幸福感すら、ついには得た。とするとぼくはその行為自体を嫌悪しているのではなくて── 
 待て。それとは話が別だ。男が相手ならまだしも理解できる。攻めるべき立場の側が攻める 
のだから。ところが君の要求するところは男女の完全な逆転であって、そういうやり方があると 
初めて知ったのはゲルドの砦で『副官』から教えられた時だが、その際、ぼくは、 
(冗談じゃないよ!) 
 と本気で憤然としてしまったほどだ。ツインローバにその行為を匂わされた時も、 
(そんな目に遭わされてたまるもんか!) 
 と大反発した。過去に男を張形で犯した経験があるに違いないナボールや『副官』も、 
魂の神殿では、あれほど奔放な交わりを繰り広げながら、ぼくを攻めようとはしなかった。 
いかに異常な行為であるかをわきまえていたからだ。それくらい度はずれたことなのだ。女が男の 
体内に入りこんでくるなんてことが──  
 
 あったじゃないか! 
 ぼくは自分の体内に女の侵入を許したじゃないか。インパの指を受け入れたじゃないか。あの時、 
ぼくは絶頂にまで至って、 
(こういうセックスもあるんだ──ってことだよね) 
 としみじみ述懐したじゃないか。 
 ぼく自身がそう言ったんじゃないか! 
 さらに思い出す。 
 アンジュも言っていた。 
(いろいろな形のセックスがある) 
 当時のぼくはセックスというものがこれほど多種多様とは想像もしなかったが…… 
 しかし、実際は、そうなのだ。 
 ゆえに、男と女が立場を替えたセックスがあっても、何らおかしくはない。おかしいと思うのは 
偏見に過ぎない。 
 ──と納得するところまでぼくは来てしまった。来てしまったが、これは理屈であって、 
まだ一般論であって、ぼくが君を受け入れるかどうかは…… 
 どうかは…… 
『ゼルダ……』 
 見る。 
 君。 
 目の前の、君。 
 神々しいまでに美しい君の、その一部のみが人工の「男」となった姿を見て、ぼくは…… 
 胸が破裂せんばかりの興奮を覚えざるを得ない。 
 張形を除けば身に着けているものは手袋だけという点が、なおさら興奮を呼ぶ。エプロンだけの 
君がそうだったように。いや、それ以上に! 
 外見ばかりのことじゃない。 
 君は君なんだ。どんな格好であっても君は君なんだ。 
 ぼくは君を愛している。君もぼくを愛している。 
 だったら、愛し方、愛され方に囚われるべきではないだろう。 
 ゆうべ、君はぼくに後ろを委ねた。今日はぼくが君に委ねる。自然なことと思えてくる。 
あるべきこととまで思えてくる。 
 ぼくたちはこれくらいきわどい行為を交わせる間柄なんだ──と。 
 なおかつ、ガノンドロフに穢されたぼくが、いまここで君を迎え入れるということに、大きな 
「意味」があると思えてならない。 
 馬鹿げているだろうか。器具によって──しかも元々は敵であったゲルド族の所有物によって 
──なされる行為に、そんな「意味」を持たせようとするのは。 
 いや、馬鹿げてなんかいない。何を介在させようと、君は君だ。初めてシークを受け入れた 
時だって、そうした方がいい、そうするべきだ、とまでぼくが思ったのは、シークを介した 
その陰に、君の存在を我知らず感じ取っていたからに違いないんだ。 
 だから、ぼくは……  
 
 リンクが立ち上がった。 
 左手を差し出してきた。 
『あ……』 
 全身の筋肉から緊張が抜ける。身体がくずおれそうになる。それほど自分は切羽詰まって 
いたのだといまさらのように知る。 
 リンクは聞き入れてくれた! 常軌を逸したこの求めを! 
 でも、なぜ? 
 こちらから要求しておきながら、いざ応諾されてみると、いぶかしみを禁じ得ない。 
「いいのね?」 
 念を押す。 
「君になら……」 
 あなたは言う。低めの声。真剣きわまりない顔つき。けれども口調は穏やかだ。意思が 
ふんわりと伝わってくる。 
「浄めてもらえる──と……思うから……」 
 打たれた。 
 あなたも? それを? 
 ガノンドロフに穢されたわたしが、そののち、あなたを迎え入れた時、この上ない幸福の中で 
実感したこと。 
(わたしは浄められているのだから!) 
 それと同じ感激をあなたは期待していると? わたしにはそれができるのだと? あなたの 
方からもわたしを求めてくれているのだと? 
 言葉が続く。 
「君だけだ」 
『ああ!』 
 その言葉は──(リンクとそこまでのことができるのは、わたしだけ)──わたし自身の思いと 
正確に重なって、ゆえにわたしは歓喜する、するのだけれど、あなたの純粋な思いに対して、 
わたしの思いのいかに独善的であることか。他者に比べて自分の方がなどと優越感を抱くことの 
何という愚かしさ。そうではなくて、そうではなくて、これもまたあなたとわたしの間にあるべき 
ひとつの愛のかたちなのだと、わたしも純粋に認めよう!  
 
 ゼルダは歩みを前に寄せ、差し出されていたリンクの左手に、自らの右手を重ねた。二つの手が 
握り合わされ、二つの裸体は傍らの敷布の上に横臥した。 
 唇と唇が結ばれる。両手が互いを愛撫する。 
 常のごときに続く絡みは、ゼルダの気負いを和らげた。が、そのため、ついつい、絡むに 
あたっての反応も、常のごとくになりかけた。リンクが胸に顔を寄せると、ゼルダも自然に胸を 
寄せかけ、口での施しを求めてしまうのだった。 
 いつものわたしたちではないのだ──と思い出されたのは、リンクの顔が下方へと至った時である。 
 張形の先に接吻された。 
 背筋が震えるような快さを、ゼルダは感じる。 
 もちろん肉体が直接に得た快さではない。 
 女の股間から突き出た「男」を男が口にしているというあまりにも倒錯的な状況へのおののき、 
そして、何のためらいもなくその倒錯を行為にするリンクへのいとおしみが、ゼルダを感悦に 
導いたのだった。 
 行うべきさらなる倒錯をゼルダは意識し、そこに向けての漸進を開始した。 
 リンクの下半身に顔を持ってゆく。意図を察したのだろう、リンクはうつ伏せになって脚を 
開いた。その奥に口をつける。丁寧に舌を使う。昨夜、自分がされたとおりに。 
 そこにさほどの緊張はなく、舌は思いどおりの動きを許された。 
 ひとしきりの口技を終えて、ゼルダは身を起こす。右の手袋を脱ぐ。枕元に置かれたままと 
なっていた瓶から、手のひらの上に移した油で、唾液に濡れたリンクの部分に、なおも潤いを 
与えてやる。 
 ゆっくりと指を進入させる。 
 さすがに筋肉の硬化が感じられた。が、待つうちに道は開かれてゆき、やがて指の全長が 
格納された。 
 間をおいてから、動かしてみる。これも昨夜の経験に鑑みて、優しく、優しく、ほぐしてやる。 
 深い呼吸を繰り返し、時に小さく呻きながらも、リンクは従順な態度を変えなかった。 
耐えているだけではない。息づかいには快感の徴候がうかがわれた。それが徴候の域を超え、 
紛れもなくリンクの感覚の主体になったと察知できた時点で、ゼルダは指を離脱させた。 
 張形に油を塗りつける。その手触りや外観が、行為を目前としたいまになって、しんしんと 
心を張りつめさせる。 
 どんなふうに使うかは、考えるまでもない。シークであった時、ナボールや『副官』の 
振る舞いを目の当たりにした。装着の際、戸惑わずにすんだのも、彼女らという手本があった 
からだ。身体の動かし方は、文字どおり、身体が覚えている。やはりシークとしての経験によって。 
 ただ、いまの自分の物は、シークの物より、ひとまわりもふたまわりも長く、太い。 
人工物だけあって硬度も無機的。受け入れる側は少なからず違和感を覚えるだろう。 
 慎重であらねばならない。 
 ゼルダは位置を取った。膝で立ち、うつ伏せのリンクの腰に手を添える。力を入れる必要もなく、 
腰は自発的に持ち上がり、目的の箇所が露呈された。 
 先端を触れさせる。 
 ぴくり──と小さな体動が伝わってきた。 
「リンク……」 
 万感をこめた呼びかけに、頷きだけが返される。 
 ゼルダは挿入を開始した。劈頭こそ抵抗に遭遇したが、一時的なものであり、あとは妨げを 
受けなかった。しかし寛容に甘えはしなかった。リンクの反応を確かめながら、細心の注意を 
もって、緩徐な前進を行った。 
 短からぬ時間ののち、下腹がリンクの臀部に接触した。完全な没入を意味するその接触を得て 
初めて、ゼルダは感動をおのれに許した。  
 
 ゼルダに充たされている──という感動が、リンクを支配しつくしていた。受容は必ずしも 
容易ではなく、常に弛緩を自分に言い聞かせていなければならなかったものの、ゼルダの 
思いやりある行動で、ほとんど苦痛は感じずにすみ、純一な喜びを保持することができた。 
 挿入を完了させたのち、ゼルダは静止を続けていた。過度な刺激を回避するための配慮と 
察せられ、リンクは深い謝意を抱いた。が、感動はさらなる感動を要求していた。いつまでも 
静止したままではいたくなかった。 
 意を短く言葉にする。 
 応じて、内部にある物が、ゆっくりと前後に動き始めた。 
 摩擦は緩やかに継続された。確かな快感が生み育まれるにつれ、「犯されている」自分が 
意識されてきた。決して荒っぽくはない。むしろこれ以上はないくらい温雅な交わりである。 
にもかかわらず、背後からの侵入を一方的に甘受している状態は、そう言い表すしかない 
ものだった。前夜、騎乗位で狂乱するゼルダからも似た印象を与えられたが、それとは全く次元が 
異なっている。後ろから攻めてやった時のゼルダの至福が、いまにして理解できた。 
 その意識は、勃起していた陰茎を握られるに及び、ひときわ顕著となった。既知のごとく 
ゼルダの弄茎は──技術的にはともかく──結果として感得される快さの点で実に優れており、 
リンクは喘ぎを抑えられなくなった。初めは右手で直接なぶられた。そのうち攻め手が手袋を 
したままの左に替わった。滑らかな布の感触が常ならぬ快さを誘発する。加うるに、素手では 
触ってやらないと言われているかのようで、なおさら被姦の想いが高められた。 
 肛門への刺突が、少しく勢いを増しつつも穏やかさを保っていたのに対し、手は何らの 
斟酌もせず、リンクを限界に追いやった。 
 間もなく絶頂が到来し、至上の感動をリンクは収めた。  
 
 リンクの射精を確認したのち、しばしの間をおいてから、ゼルダは占拠していた場所から 
退去した。リンクが至った先は単なる肉体的頂点のみではないことをゼルダは推察しており、 
それがゼルダ自身にも高度の感動をもたらしていた。 
 とはいえ無欠の感動とはいかなかった。ゼルダの肉体は達していなかったのである。 
 真の男とは違って挿入した部分に感覚はない。ただ、張形を進ませる際、その裏側にある小さな 
隆起によって膣口と陰核が圧迫され、攻める側も快感を得られるようになっている。ゼルダも 
快感を得てはいた。しかし慎重であれと心がけていたため、思い切った刺突を実行できず、快感は 
半端なものにとどまってしまったのだった。 
 自分が達するのが目的ではないとわかってはいたものの、発散できなかった欲望が、敷布の上に 
置いた腰の奥でくすぶり続けるのを、ゼルダは悶々と自覚せずにはいられなかった。 
 リンクがゆるりと仰向けになった。股間に目が行った。若干、硬度を減じているようでは 
あったが、なおそれは勃起の域内にあった。 
 リンクの興奮は失われていない。 
 くすぶりが発火に移行する。 
 手で触れようとして、思い出した。 
 局部を足で苛まれた体験。 
 元はといえば自分が強いた行為であったのに、その被虐感をリンクにも味わわせたくなる。 
リンクを後ろから「犯した」ことで、加虐の情が増進しているのだと認識された。自制する気は 
なかった。 
 右脚を伸ばし、足裏で陰茎を押さえつける。かすかな呻きを漏らしながらも、リンクは 
避けようとしない。さらに圧迫を強める。左脚をも伸ばし、二つの足で挟みこする。たちまち 
勃起は回復する。リンクが身をよじる。よじって快美を訴えている。足での攻めを無条件で 
許容している。 
 再度の射精を導くのに大した時間は要すまい──とは思われたが、ゼルダはそれを望まなかった。 
いまや身の奥で燃え盛っている炎をどうにかするのが先決だった。 
 脚を戻し、仰向けのリンクに身をかぶせる。上からまっすぐ顔を見下ろす。驚きの表情となり、 
一瞬、目をそらしかけたリンクは、しかし次にはゼルダの視線をしっかりと受け止め、無言の 
頷きで承諾の意を表した。 
 ゼルダは上体を浮かせ、リンクの両膝の裏に腕をかけて、下半身を持ち上げた。かなりの力を 
必要とするその体勢は、リンクが自ら両手で大腿を胴に引き寄せたため、さほどの困難もなく 
維持が可能となった。 
 張形を至適位置に持ってゆく。できるだけ体重を前にかける。 
 腰を送り出す。 
 二度目とあってか、挿入は容易に成し遂げられた。忍び出るリンクの声に苦痛の気配はなかった。 
ゼルダは抑制を振り捨て、おのれの情欲を全うさせにかかった。  
 
 先の交合とは打って変わり、何の遠慮もなくなったゼルダの攻めを、リンクはひたすら享受した。 
苦痛は感じなかった。あるのは快感だけだった。 
 一つだけこだわりを挙げるとすれば、それは喜悦に喘ぐ自分の表情をゼルダに見られている 
点である。普通の交わりなら当たり前である対面の状態が、後ろから攻められる以上に「犯される」 
意識をかき立てるのだった。が、その意識は羞恥を呼びこそすれ屈辱とはならず、かえって喜悦は 
大きくなり、リンクはこだわりと見なすのをやめた。すべてをゼルダに捧げているという幸福感が、 
リンクの胸を満杯にした。 
 ゼルダもまた、幸福感を満喫しているようだった。美しい顔は陶酔の色に染まり、豊かな胸は 
心情を反映するかのごとく弾み踊った。 
 女としての歓喜を表出する、そんな上半身の様相に対して、下半身は男と変わらぬ猛々しい 
運動を展開しており、ゼルダを性別不特定の妖しい存在へと変貌せしめていた。一方、男の攻めを 
受け入れるリンクは、逆に女としての要素を有していることになり、やはり性別不特定の存在で 
あるのだった。 
 性別など、どうでもいい──とリンクは思った。 
 ここにあるのは、男と女なのではなくて、ぼくとゼルダという二人の人間なのだ。ぼくたち 
二人であるからこそ、性別を超越した、この関係が成り立つのだ。 
 とはいえ、男としての感覚が失われたわけではなかった。肛門に沸き立つ快感は、必然的に 
陰茎をも高ぶらせる。握られたいと願わずにはいられない。ところがゼルダの両腕はこちらの脚を 
支えていて自由にならない。かといって自分で触れることもできない。両手で脚を抱えこんで 
いるからである。 
 煩悶は、しかし長くは続かなかった。ゼルダの動きが速度を増し、付随して攻めの方向が 
やや変化した。直腸内を往復する剛棒が、男の急所を──かつてインパに衝かれて果てさせられた 
部分を──こすり立てるようになった。 
 耐えられなかった。 
 直々の刺激もなしに勃起は極限に達し、唐突な射精が引き起こされた。噴出した精液がゼルダの 
腹部を直撃した。それが同じく極限状態にあったとおぼしきゼルダにも変化を及ぼした。ゼルダは 
リンクの名を叫び、急に動きを止め、全身をわなわなと震わせた。 
 陶然とたゆたう意識の中で、その到達を、リンクは無上の欣幸と感じた。  
 
 至高の時間を長引かせたいのはやまやまだったが、絶頂に伴い、ゼルダは無理のある体勢を 
維持するだけの腕力を発揮できなくなっていた。リンクも同様であるらしく、結合は解除せざるを 
得なかった。 
 それでも感激は失われなかった。今度こそ、この結び合いは完璧なものになったのだ──と、 
ゼルダは確信していた。 
 快楽を求める意思もなくなっていない。「男」としての行為を終えたあとは、本来の女として 
悦びに浸りたかった。 
 腰から張形を解きはずす。陰部に接していた内面はべっとりと濡れている。愛液は尽きる 
気配もなく秘裂からしたたり落ちる。こぼれるままにしておく手はない。となると、すべきことは 
一つである。 
 左腕に残していた手袋も脱ぎ、真の全裸となって、ゼルダは身を移動させた。仰向けの格好を 
保っているリンクの顔上に跨る。ゆっくりと腰を落とす。そこに口が触れるやいなや、舌の活動が 
始まった。粘膜に直接リンクを感じられることの素晴らしさは期待していた以上で、ゼルダは 
盛んに嬌声をあげ、絶え間なく腰を蠢かせた。その圧迫に敢然と抗する形でリンクの口技は 
続けられ、いっそうゼルダを感極まらせた。 
 数度の頂点を経たのち── 
 股間にわだかまる異質な欲求を、ゼルダは感知した。 
 尿意である。 
 どうしてこんな時に。後ろを攻められているわけでもないのに。癖になってしまったのだろうか。 
 惑いながらも、こうしてはいられないと腰を浮かせる。 
 離れられなかった。リンクの両腕にがっちりと腿を絡め取られている。 
「あの……」 
 おずおずと呼びかける。 
「ちょっと……」 
「だめだよ」 
「え?」 
「離さない」 
「でも……」 
 普通の時なら喜ばしいリンクの言葉だが、いまは普通の時ではない。 
 意を決して、言う。 
「……出そう……なの……」 
 瞬時、きょとんと固まったリンクの顔は、すぐに柔和なほころびへと転化した。 
「いいよ」 
「いい──って?」 
「そのままでいいよ」 
 駭然となる。 
 ここでしろと? この状態で? そんなことをしたら── 
「だって──」 
「いいんだよ」 
 抗議を押しのけるように言い放つリンク。 
「ぼくは君の全部が好きだから」  
 
 腰を引き戻される。再び局部を舐められる。快感が飛び散る。尿意も強まる。だけどまだ 
間に合う。いま身を振りほどいて立ち上がれば粗相しないですむ。なのにわたしは立ち上がれない。 
立ち上がろうという気にならない。どうして? どうして? いくらリンクがいいと言っても、 
まさか、まさか、まさかそんなこと、わたしは顔にリンクの精液を受けたけれどもそれとは 
全然わけが違う、できるはずがない、はずがない、はずがないと言い立てる一方で、そうなっても 
かまわないとわたしは思っている? そうしたいと思っている? 思っている。わたしは 
思っている。わたしたちはこれくらいきわどい行為を交わせる間柄なのだとわたしは思って 
しまっている。だから、ああ、だからわたしは、わたしは! わたしは──!! 
 
 ゼルダは解放した。肉体と精神の双方を、である。 
 下腹部に貯溜していた衝動がほとばしり、忍びやかな水流の音に合わせて持続し、次第に弱まり、 
そして、消えていった。 
 閉じていた目をあける。おそるおそる、下を見る。 
 リンクの顔が濡れていた。まわりの敷布にも染みができていた。が、あるべきほどの湿りではない。 
『なぜ?』 
 リンクは口を閉じていた。頬が膨らみ気味となっていた。何かを含んでいるみたいに──と 
思った直後、喉骨が上下し、頬の膨らみがなくなった。 
 すべてを悟る。 
『そこまで……』 
 嬉しかった。 
 ただただ、嬉しかった。 
 残った雫を舐め取ろうとするのか、リンクは熱心に舌を使い続けている。その奉仕に秘部を 
預けたまま、ゼルダはすすり泣いた。泣くことでしか表現できない法悦だった。  
 
 やがて法悦は去り、おのれを客観視できるだけの余裕を、ゼルダの心は取り戻した。 
 自分が信じられなかった。 
 わたしは何をしてしまったのか。 
 あるべきひとつの愛のかたちと言い切って男の肛門を張形で犯し、感激に身を打ち震わせるとは。 
その上、あろうことか、相手に小水を飲ませ、それに悦びを感じるなど。 
 世界でいちばん淫らであるとか、そんな次元の話ではない。いったいこれが人のすることだろうか。 
獣以下の行為ではないか。 
 次々に浮かぶ理性の弁を、しかしゼルダは平静に受け流した。後悔も、自己への嫌悪も、 
一向に湧いてこなかった。 
 わたしたち二人の間では、なされて然るべき行いである。 
 ただし、報いは受けなければならない。 
 ゼルダはリンクの股間へと身を移し、跪いて陰茎を口に含んだ。二度の射精のあとではあったが、 
いまの行為が刺激となったのか、それは半ば勃起しており、使用可能となるまでに、さほどの 
手間は要さなかった。 
 立ち直ったと見定めてから、ゼルダはリンクに背を向け、這う姿勢をとった。腰を持ち上げ、 
両手で尻を左右に開いて、望みとする場所を明示した。 
 どんなに荒々しく扱われようともかまわなかった。 
 リンクは優しかった。 
 初めに口を使ってくれ、次には油のついた指で慣らしてくれ、その後、ようやく陰茎を 
送りこんできた。挿入も、続く前後運動も、きわめて穏当だった。まだ二度目に過ぎない肛交を、 
もう何度も経験したことがあると錯覚させてくれるような安らかさだった。のみならず、前に 
まわったリンクの手は、例えようのない温厚さで、乳房と陰部を撫でさすってくれた。 
 これが報いであっていいのだろうか──と、絶頂が連続するあまり途切れそうになる意識の中で、 
ゼルダは思った。 
 わたしの行為に対する、これがリンクの返答なのか。リンクにとってわたしの行為は、いま 
わたしを虜にしているこの悦楽に相当するほどのものだったというのだろうか。 
 そういうことなのだろう。 
 ゼルダは思考を中止した。無想となって快感のうねりに心身を委ねた。 
 長い時間を経て、リンクは射精に至った。同時にゼルダも極点に達した。 
 さらに少しの時間が経ったあと、胴が何かに触れるのを、ゼルダは感じた。そっと寝床に 
横たえられたのである。リンクが身を離すにあたって、支えがなければ倒れてしまうと慮って 
くれたのだった。 
 心遣いがありがたかった。が、横になったままではいられなかった。 
 ゼルダは上体を起こし、腰を下ろしていたリンクに向き直った。敷布の上に正座し、心持ち 
顎を上げ、口を大きくあけて、目を閉じた。 
 待つ。 
 リンクが立ち上がる気配がした。 
 続けて待つ。 
 声が聞こえた。 
「ゼルダ……」 
 頷く。 
 短い間ののち、口に奔流が注がれた。不思議に心地よい温かみを帯びたその液体を、ゼルダは 
できる限り喉へと送った。飲みつくせない分が口からあふれ、顎へ、首へ、胸へと流れ落ちた。 
顔の他の部分にも飛沫が散った。 
 抵抗は全く覚えなかった。感謝の念すら、ゼルダは抱いた。 
 ほどなくして奔流は途絶えた。 
 口中に残る液体を飲みこみ、開眼する。 
 目の前に濡れた亀頭があった。 
 接吻する。 
 リンクが腰を落とし、顔を近づけてきた。抱き寄せられた。 
 唇が合わさった。 
 最後までリンクは優しかった。  
 
 短い休息を挟んで、二人は井戸端に赴き、身体を清めた。合わせて張形を洗い、敷布も洗濯した。 
湿った敷布は数少なく、染みの範囲も狭かったので、あまり時間はかからなかった。 
 ゼルダが午前中に洗った敷布は、日照時間の延長によっても、まだ完全に乾くには至って 
いなかった。寝具の替えには余裕があり、無理に取りこむ必要もなかったため、新しい洗濯物と 
並べて、翌日まで干しておくことにした。すでに日は翳り始めていたのである。 
 寝床の整頓はリンクに任せ、ゼルダは夕餉を用意した。計画していた献立を実行に移す 
時間はなく、食卓に並んだのは、いつもどおりの質素な数皿だった。 
「ほんとうは、もっといいものを作りたかったの」 
 との弁解に、 
「そりゃ、しかたがないさ」 
 リンクは苦笑で応じ、煮物の味を褒めてくれた。 
 礼を述べながら、ゼルダは奇異に感じていた。 
 しかたがないという意味は、お互い、よくわかっている。自然な了解となっている。 
 あれだけ異常な交わりのあとで、なぜわたしたちは、こんなに自然でいられるのか。 
 むしろ、あれだけ異常であったからこそ、この自然さに到達できたというべきだろうか。 
 理屈はいい──と、ゼルダは胸中で微笑む。 
 リンクとここまでの関係になれたこと。それをわたしは生涯の喜びとしよう。 
 ふと視線を感じた。リンクがぽけっとした顔でこちらに目を向けている。首を傾けてやると、 
あわてた素振りで視線をそらした。腰をもぞもぞと動かしている。 
 こういう態度は、何度か見た。 
 足元の塵を払うふりをして、テーブルの下からリンクの下半身をうかがう。 
 勃起していた。 
『やっぱり』 
 くすりと笑いが漏れる。 
 男が全裸でいると──利点なのか欠点なのかはともかくとして──興奮したのがまるわかりだ。 
その点、女は…… 
 股間に手をやる。じっとりと濡れている。 
 これくらいのことになっても、端で見ているだけではわからない。無論、リンクにもわかるまい。 
こちらから言ってやるまでは。 
「寝ましょうか」 
 目を見開くリンク。望むところを読み取られた──とでも思っているだろうか。 
 食事は終わっていなかったが、かまわず立って寝床にゆく。仰向けに横たわる。 
 我慢できない。わたしも。 
 リンクが近づき、身をかがめてきた。 
 脚を開いて迎え入れる。 
 その日初めての膣交を、ゼルダは心ゆくまで堪能した。 
 
 
To be continued.  
 

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