私本・時のオカリナ/外伝/第四話/ガノンドロフ編、投下します。 
若き日のガノンドロフの話。時代的には『Prologue』よりも前。 
ガノンドロフ×ツインローバ、他 
陵辱、ロリ姦、男色、近親相姦の要素あり。 
 
 
 
 ゲルド族は女ばかりの部族である。男は百年に一度しか生まれない。 
 理由については諸説あり、神の思し召しと達観する者もいれば、遺伝的要因があるのだと理屈を 
述べる者もいて、見解の一致は得られていない。ただ、それがゲルド族にとって避けられない 
宿命であることだけは、議論不要の真実だった。 
 百年ごとに誕生する男児が、その宿命の象徴となる。生まれながらにしてゲルドの王たる定めを 
負うのである。一族の独立を保つためには、対内的にも対外的にも、確たる存在を誇示できる 
王でなければならない。そこで男児は、実の母親からも引き離され、徹底した英才教育を施される 
ことになるのだった。 
 ガノンドロフは、そうした男児として、ゲルド族の中に生を享けた。出生時より体格に優れ、 
また面貌が非凡との見立てもあって、周囲の期待はすこぶる大きく、教育はとりわけ熱心に行われた。 
 武事を教える人材は多かった。剣にせよ弓にせよ馬にせよ、名人ぞろいのゲルド族であったし、 
戦術に詳しい者もいた。 
 一方、文事に関しては、もっぱらツインローバが指南役だった。齢四百歳になんなんとする、 
この双子の老婆は、何ごとにおいても余人がとうてい及ばぬ経験を有しており、ゲルドの王たる 
者が備えておくべき知識や心得を教授するのに最も適格な人物といえた。のみならず、過去数代の 
王たちに対してそうであったように、ガノンドロフに対しても、育ての親となって生活全般を 
監督した。 
 本来の天分に教育の成果が加わり、ガノンドロフは幼い頃から多方面にわたって卓越した能力を 
発揮した。一族の期待を裏切らない傑物になるだろうと誰もが予想し、ツインローバもまた、 
歴代の王の中でも出色の出来と賞賛した。 
 
 ゲルドの王が秀逸さを要求される事項は、武芸や学問の他にもあった。 
 セックスである。 
 ゲルド族は外部の村々を襲撃して、生活に必要な物資や食料を確保する。すなわち盗賊である。 
その際、捕らえた男を強姦して子種を得るのが、ゲルドの女たちの生殖方法だった。精を 
搾り取られた男は、たいていすぐに殺されてしまう。ゲルド族は極端な母系社会を構築していて、 
生殖後の男は不要物でしかないのだった。 
 しかし自前の王がいる時期は事情が異なった。女たちは王との交わりを最優先にする。一族の 
血を濃く引き継ぐ子孫を残すためである。すなわち王は、ゲルド社会では例外的に長期間、 
父親──言い換えれば種馬──の役割を担い続けるわけだった。 
 といっても、単なる種馬では不充分。 
 盗賊が生業とあって、どの女も気性は荒い。そんな連中を束ねてゆこうとするなら、王は 
セックスの面でも支配者であらねばならない。みなを満足させ、陶酔させ、屈服させることが 
できるだけの、圧倒的な体力と技量が必要とされる。 
 ガノンドロフへの教育は、当然、この点についても徹底して行われた。 
 担当は、やはりツインローバである。 
 会得した魔力によって、二体の醜怪な老婆から一体の妖艶な熟女へと変身が可能。また 
高齢なればこそ、性経験の豊富さは──他の事柄と同様──余人の追随を許さない。性教師として 
理想的なツインローバなのだった。  
 
 ガノンドロフは思うことがあった。 
 世の男というものは、初めて女と交わった時、どんな感想を抱くのだろうか──と。 
 人によっては生涯最高の感激ともなり得るであろう初体験の記憶を、ガノンドロフは持たないの 
だった。 
「そりゃそうさ、ガノン。あんたは生まれると同時に童貞じゃなくなったんだから」 
 とツインローバは笑う。 
 百年ぶりの、しかも並々ならぬ素質を感じさせる男児の誕生に狂喜したツインローバは、 
臍の緒が切られるやいなや、その赤ん坊を抱え上げ、未熟ながらも大ぶりな陰茎を自分の局部に 
強く接触させて、感激と祝意を表現したのだという。 
 セックスと呼ぶには、いささか無理があるかもしれない。が、それを除外するとしても、事態の 
本質にさほどの違いはなかった。 
 生まれてすぐより、ガノンドロフはツインローバと暮らしをともにし、夜も常に同衾した。 
寝床は寝るだけの場所ではなかった。自身が覚えている範囲に限っても、すでに三歳くらいの 
時には、ツインローバを相手として、当たり前のように性交していたガノンドロフだった。 
もちろん快感も明確に認識していた。彼の場合、セックスは、理性的意志が形成されるよりも早い 
時節から、食事や睡眠と同じ日常行為となっていたのである。 
 ツインローバは自らの知る性技をくまなくガノンドロフに伝授した。膣は言うまでもなく、 
手、口、乳房、肛門など、肉体のすべてを使用した。さらに、セックスの持つ生物学的、 
社会的意味をも詳しく解説した。 
 ガノンドロフはここでも優等生であり、教えられる内容を次々に吸収していった。 
 年齢にそぐわぬ体験の積み重ねが早熟を促したものか、ガノンドロフはわずか八歳にして精通を 
迎え、同時期に発毛も生じていた。当初はツインローバとの交わりに夢中となっていた彼も、 
その頃になると、他者との性的接触を望むようになった。何しろ女だらけの環境である。自然な 
流れというべきだった。 
 しかしツインローバはこれを禁じた。嫉妬や独占欲のためではない。 
 ──王ともあろう者が中途半端な男であっては、配下の女たちになめられる。みなを完全に 
平伏させるだけの器量を身につけないうちは、密な関係を結ぶこと、まかりならぬ── 
 もっともな理由である。ガノンドロフも納得せざるを得なかった。自分がその域に達していない 
ことはよくわかっていた。 
 日々の交合では充分ツインローバを満足させている。けれどもそれは実力ではない。花を 
持たせられているだけだ。本気になった時のツインローバはとてつもなく淫靡で、いつも一方的に 
果てさせられてしまう。そんなありさまでは「まだ早い」と言われて当然。ツインローバをも 
平伏させる強靱な王であらねばならないのだ。 
 ガノンドロフは自重し、さらなる年月を性の研鑽に費やした。  
 
 第二次性徴の顕在化に比例して、ガノンドロフの肉体はめきめきと逞しさを増した。実年齢より 
五歳は上に見えるほどだった。文武の成績も相変わらず優秀で、特に剣を取っては大人にも 
負けない力量を示した。 
 そうした成長ぶりを考慮し、ツインローバはガノンドロフに実戦を経験させようと決めた。 
 時にガノンドロフ十歳。 
 ゲルド族一般としても王としても、初陣には破格の若さ──というより幼さ──だったが、 
ガノンドロフ自体が破格なのだから、とツインローバは主張し、みなもこれに同意した。 
 襲撃の計画が立てられた。目標はゲルドの砦に近い村である。それまでにも何度か襲った 
ことがあり、与しやすいとわかっている相手だった。もちろんガノンドロフが隊長となるのだが、 
それはあくまでも形式で、事実上の指揮は戦闘経験に富む副隊長が執るとされた。つまりは初陣の 
王のためにお膳立てされた「安全な戦い」なのだった。 
 襲撃隊は意気揚々と出発した。成功が確約された一戦のはずだった。 
 
 夜間、ひそかに目標へと近づき、まず少数の先遣隊を潜入させ、放火によって相手が混乱した 
ところへ、主力が騎馬で攻めこむ──というのが、ゲルド族の常套的な襲撃方法である。その日の 
戦闘も同じ手順で行われる予定だった。 
 実際は異なった。 
 先遣隊を放ったあと、ガノンドロフを含む部隊の主力は、近くの森陰で待機していた。ところが 
いつまで待っても村に火の手は上がらない。松明の光がいくつか右往左往するさまは見てとれたが、 
どうやらそれは敵方の動きであるらしかった。 
 襲い慣れた相手であることが逆に仇となったのである。村人は襲撃に対する備えをしており、 
いち早く先遣隊の侵入を察知して、これを追いつめているのだった。 
 副隊長は状況を把握し、しかし即座には対応を決定しかねた。 
 被害を最少にとどめようとするなら、先遣隊を捨てて撤退し、主力の安全を図るのも一つの 
方法である。が、一族の結束を重視するゲルド族に、仲間を見殺しにするという選択肢はあり得ない。 
とはいえ、救援を焦ってやみくもに突進した場合、全滅の憂き目に遭う危険がある。 
 そこでガノンドロフは提案した。 
 ──松明の動きを観察するに、村の一方の側が手薄のようである。迂回してそちらを衝いては 
どうか── 
 副隊長は同意した。ガノンドロフと護衛役の少人数だけを残し、主力の大半を率いて攻撃に 
移った。目算は当たり、敵は多大な壊乱をきたした。 
 ガノンドロフはこれを座視しなかった。わずかな手勢の先頭に立ち、正面から村に突入した。 
子供と侮ったか、敵は反撃を集中させてきたが、ガノンドロフは怖じることなく剣を振るい、 
三人までを斬り捨てた。 
 結局、これが駄目押しとなり、戦いはゲルド側の勝利に終わった。 
 砦に帰還した襲撃隊を、人々は大歓呼で出迎えた。副隊長をはじめとする隊の面々は、 
ガノンドロフの的確な判断と勇猛な戦いぶりを褒め称え、それを聞いた一同も、期待に違わぬ── 
いや、期待をはるかに上まわる──活躍をみせた若き王に、賛嘆の辞を惜しまなかった。  
 
 初陣にあってガノンドロフは、身の震えるような興奮を覚えつつも、終始、冷静さを保っていた。 
 戦場でなすべきことは、すべて教育されていた。副隊長への提案にせよ、仲間の先頭に立っての 
突撃にせよ、剣を持っての闘争にせよ、教えられたとおりを実行したに過ぎない。それでも、 
生まれて初めての実戦で、なすべきことをみごとにやってのけられたのは、興奮と冷静が彼の中で 
絶妙に共存していたからだった。 
 その共存は一種の快感でもあった。 
 自分に刃向かう者を蹂躙すること、人の命を奪うことへの、嗜虐的な快感である。 
 この時ガノンドロフは、おのれの性向をはっきりと理解したのだった。 
 
 勝利を祝う宴が終わったのち、ガノンドロフはツインローバと床に入った。 
 激しい戦闘と大量の飲酒のあとであるのに、疲れや酔いは皆無だった。人を斬ったことに 
ついての動揺もなかった。興奮と冷静の共存が続いていた。 
 戦闘──とりわけ殺人──による興奮は、常にも増して心身を高揚させていた。すでに 
成人並みの大きさであった陰茎が、一段と膨張の程度を強くし、岩のような硬さをも得て、 
ツインローバを刺し貫いた。 
 一方、冷静さの方は、自分の動きに対するツインローバの反応、そして自分自身の反応を検討し、 
行動を適切に制御するだけの余裕をもたらした。 
 戦場での敢闘を賞するつもりか、当初はガノンドロフのなすがままとなって、歓喜の声を 
あげていたツインローバだったが、そのうち反攻を行ってきた。膣に捉えた陰茎を、激甚な蠕動で 
揉み立てるとともに、四肢や口をも駆使して、ガノンドロフの全身を刺激した。 
 いつもの彼なら、それに耐えられなかっただろう。後先なしの躍動に追いこまれ、あっという間に 
果ててしまうところである。 
 しかし、この時のガノンドロフは、遂情の誘惑を決然と退け、加えられる攻撃を凌ぎきった。 
ツインローバが反攻を緩めても、敢えて再反撃には出なかった。静止を続け、時にわずかな愛撫を 
施すのみとした。ツインローバは焦れ始め、盛んに腰を揺らし、言葉を荒くして抽送を要求した。 
ガノンドロフはこれを無視した。女は焦らすに限るというのがツインローバ本人の教えだった 
からである。 
 長らくの無為な接合に我慢ならなくなったツインローバは、やがて態度を軟化させた。 
「お願いだから」とまで言った。彼女が初めてガノンドロフに向けた哀願の台詞だった。 
 ガノンドロフは怒濤の攻めを開始した。力の限りを尽くしてツインローバを強襲した。ただし 
自分が達してしまわないよう、勢いを調節することは忘れなかった。 
 ツインローバは無抵抗となり、次から次へと絶頂し続けた。それでもガノンドロフは自らを 
保持し、激しい体動を継続させた。 
 狂乱の限りに至ったツインローバは、とうとう失神状態に陥った。そのさまを見極めてから、 
ガノンドロフは悠然と、弛緩した肉筒の中で射精した。 
 常に師であったツインローバを完膚なきまでに制し得た感動が、知ったばかりの嗜虐の快感と 
入り混じって、ガノンドロフを恍惚とさせた。 
 弱冠十歳の少年が、名実ともにゲルドの王となった瞬間だった。  
 
 これを機に、ツインローバもガノンドロフを真の王と認めた。教師の地位を返上し、以後は 
補佐役に徹すると言明したのである。 
 もっとも、日常における彼女の態度は、ほとんど従前どおりだった。会話時はろくに敬語も 
用いず、「ガノン」という愛称で呼びかける。セックスでは犯される女の役回りを好んで演じる 
ようになったものの、さりとて攻め役を全く放棄したわけではなく、拮抗した関係を維持していた。 
 そんなツインローバのあり方を、ガノンドロフは許容した。いかに狎れているようでも、肝腎な 
場面では常にガノンドロフを立て、決して出過ぎた真似を働かない。それでいて必要な時には 
必要なだけの献言をする。身の程をわきまえているツインローバなのだった。 
 一族を統治してゆく上でも、ツインローバは重宝な存在だった。仲間うちの最長老であり、 
魔力も使えるから、睨みは利く。みなも彼女には逆らわず、篤い信頼を寄せている。 
 ツインローバは王のそばに侍る特別な女である──と、ガノンドロフや当人自身を含む 
ゲルド族の全員が、疑問なく了承していたのだった。 
 
 晴れて真の王の座についたガノンドロフは、ツインローバから他者との性交を許された。 
 一族の女たちもこの時を待ち望んでいた。慢性的な男不足に悩む彼女らである。襲撃の際に 
外部の男を狩るだけでは、とうてい飢えを解消しきれない。ガノンドロフが男の役割を果たせる 
状態となって、みなが期待を募らせるのも当然だった。 
 双方の欲望は野放図な発散には至らなかった。ツインローバが干渉したのである。我先にと 
手を上げる女たちを慎重に吟味し、適当と考えた者を、適当な順序で、ガノンドロフにあてがった 
のだった。 
 その初めての機会において、ガノンドロフはさすがに緊張を覚えた。慣れ親しんでいない女を 
うまく御せるだろうか、との不確かな思いがあった。 
 緊張はじきに霧散した。赤子の手をひねるようにあっけなく、ガノンドロフは征服を達成した。 
相手の女がまだ若く──といっても彼よりはいくつか年上だったが──ゲルド女にしては比較的 
温厚な性格であったことが、遂行を容易にしたのである。ガノンドロフに自信をつけさせるため、 
ツインローバがそう計らったのだった。しかし最も大きな要因は、ツインローバの伝授した性技を 
ガノンドロフが自家薬籠中のものとしていたことであり、それはあとに続いた数多くの女たちとの 
交渉でも証明された。 
 男との肉交に慣れた、成熟した女が相手であっても、ガノンドロフの優位は動かなかった。 
誰もがこぞって彼の前に跪いた。男欲しさのみが理由ではない。ふだんは男を男とも思わない 
彼女らにも、身内の王にだけは安心して屈従したいとの願いがあり、その被支配欲を、ガノンドロフは 
完璧に満たしてやることができたのだった。 
 かの副隊長も然りである。戦闘の面でもセックスの面でも熟練の域に達していながら、 
例の一件以来、自分の子供くらいの年齢でしかないガノンドロフに心酔していた彼女は、交合の 
場においても嬉々として身を投げ出し、剽悍な戦士とは思えぬ柔婉さを呈して、感悦の頂点を 
極めたのだった。 
 中には気の強い者もいた。王への積極的な支持は厭わないが、所詮は年端もゆかぬ少年、身体を 
交わらせるにあたって何ほどのことがあろう──と、鼻息も荒くベッドでの対決を挑んできた。 
そんな連中をも、ガノンドロフは簡単に籠絡できた。いかに性経験があろうとも、ツインローバに 
比べれば、物の数にはならない相手だったのである。  
 
 こうして日々は過ぎ、ガノンドロフはゲルドの王の座を着々と堅固にしていった。 
 その役に立てば──と、ツインローバはガノンドロフに若干の魔力を習得させた。それによって 
ガノンドロフは、性交の際、相手の快感をいくらか増強させられるようになったが、そうした 
補助など必要ないほど彼の精力は旺盛で、連日のセックスを悠々とこなし、また内治についても 
そつなく諸事を取り捌いた。 
 王としての安定した支配ぶりを見て、ツインローバも干渉をやめ、仲間の者たちとの交歓を 
ガノンドロフ自身の意思に任せた。かつ、それまでは封じていた新たな役割に、ガノンドロフを 
従事させた。 
 一族の処女の水揚げである。 
 初潮を過ぎた者だけが男と──あるいは他の女と──交わってよい、とするのがゲルド族の 
掟だった。相手といえば年長者ばかりであったガノンドロフは、ここで初めて、同年代ないし 
年下の女にセックスを教える立場となった。もともと年齢以上の体格を誇っていた彼は、 
成長するに従ってさらに容貌魁偉となり、陰茎の大きさも常人を凌駕していた。思春期の女体に 
とっては厳しい関門である。しかしガノンドロフの卓絶した性技は、その難点を軽々と克服し、 
苦痛ならぬ喜悦の極致を彼女らにもたらした。至高の体験を経た彼女らが、ガノンドロフの 
絶対的な支持者となったことは言うまでもない。そしてガノンドロフの方も、手つかずの処女を 
ものにする支配者としての満足感を、十二分に堪能できたのだった。 
 
 女たちとの自由な交流を許すにあたって、ツインローバは一点のみ、これだけは守れという 
忠告を、ガノンドロフに与えていた。 
「特定の女を贔屓しちゃいけないよ」 
 一族の結束を維持するためには、絶対に必要な配慮である。嫉妬は仲間割れのもとになるのだった。 
 ガノンドロフはこれをよく理解し、機会均等を心がけた。もっとも、そうせざるを得ない 
状況ではあった。多くの仲間を相手にしなければならないから、贔屓する余裕など、物理的にも 
ないのである。個々の女に執着しない習慣が、自然と身についた。 
 さまざまな年齢、さまざまな性癖、さまざまな肢体の女たちが、みな自分の前に膝を屈する。 
それは王でしか得られない楽しみだったが、慣れてくると、単調とも思われるようになった。 
一様に屈服する相手ばかりでは物足りないという──贅沢といえば贅沢な──感想が生まれた。 
 そうこうするうち、一部の女たちが──ごく少数ではあるものの──ガノンドロフとの性交を 
拒むようになった。 
 理由はよくわからない。 
 多くの女にかしずかれて悦に入っているさまが気に食わない──などと言う者もあるらしく、 
これにはガノンドロフも苦笑した。 
 ゲルドの王としてなすべき行動をとっているのに、そこを責められたのでは、どうしようもない 
ではないか。 
 ツインローバはこの事態を懸念した。しかしガノンドロフは気にかけなかった。 
 こちらの傲岸な態度に反感を抱いたのかもしれないが、王にはふさわしいあり方だから、 
改めるつもりはない。嫌いなら嫌いでいい。これほど女が多ければ、当然、反りが合わない者も 
出てこよう。排除はしない。個人的な好き嫌いを言っているだけだし、人数はわずかだ。放置して 
おいても問題はないとみた。下手に排除を試みれば、他の仲間の動揺を招くおそれがある。 
 そんな連中を、今後、時間をかけて懐柔してゆくのも、意外に面白いのではないか──と 
ガノンドロフは思うのだった。 
 鼻っ柱の強い相手こそ、落とし甲斐がある。単調な性生活の中での、ちょっとした余興に 
なるだろう……  
 
 性生活の単調さを破る機会は、実は他にも存在した。 
 外征である。 
 初陣での活躍により、以後、部隊を直接指揮するようになったガノンドロフは、しばしば各所の 
襲撃を行い、ほとんどの場合においてこれを成功させた。武闘の腕も磨かれ、彼の剛剣は出撃の 
たびに敵の血を吸って真紅となった。 
 襲撃はゲルド族の生計手段であるとともに、前述のごとく、男狩りの場でもあった。ガノンドロフが 
君臨しているといっても、一族の中では唯一の男である。対して女の数は多い。一度に複数の女を 
相手にする時もあるガノンドロフだったが、それでも一人の女が王に侍ることのできる機会は── 
ツインローバという特権者を除けば──稀少とならざるを得ない。部族外の男の需要は、決して 
なくなりはしないのだった。 
 同時に、こうした襲撃は、ガノンドロフにとっては女狩りの場となった。 
 女には不足しない境遇にあり、また常に相手を屈服させている彼ではあるものの、仲間に対して 
暴戻な態度はとれない。あくまでも和姦でなければならなかった。けれども部族外の女であれば、 
斟酌ない行動が可能となる。殺人と同じく強姦にも、嗜虐の快感を求めてやまないガノンドロフ 
なのだった。 
 別のやり方もあった。恐怖と嫌悪に身を竦ませる女を、わざと穏当に扱い、嫌々ながらの快感を 
味わわせてやるのである。精神的な敗北に相手を追いこむ趣向は、単なる暴行では得られない 
欣快を生んだ。 
 ゲルドの掟では禁じられている、初潮前の幼い少女との性交も、襲撃の場では自由だった。 
一族の処女を水揚げする時とは違って、いっさい手加減はしない。当然、相手は激しい苦痛に 
苛まれ、声を限りに泣き叫ぶのだが、それこそが眼目なのである。未熟な肉体は、性感を 
満たすには不足であっても、嗜虐の快感を呼び覚ます点では、大人に優る貴重品といえた。 
 男さえもガノンドロフは欲望の対象とした。女同士の交わりは、ゲルド族の間では常識である。 
ゆえに男同士の交わりも不自然なものとは考えなかった。仲間の女が張形で男の肛門を犯すさまも 
見ていたから、その女の位置に自分を置くことにも抵抗はなかった。もちろんアナルセックス自体は 
女を相手にやり慣れていた。 
 対象の性別にかかわらず、蹂躙できる者は蹂躙する──というのが、ガノンドロフの主義だった。  
 
 たび重なる襲撃と、それに付随する残虐な振る舞いは、近隣の地域において、ガノンドロフの 
悪名を一気に高らしめた。人は彼を『ゲルドの盗賊王』と呼び、ひたすら恐怖の的とした。 
ハイラル西方の僻地に蟠踞する一集団に過ぎなかったゲルド族は、ガノンドロフのもとで勢力を 
増し、実質的な支配範囲を徐々に広くしていった。 
 ツインローバは折りに触れ、 
「やっぱりあんたはあたしが見込んだとおりの男だったよ」 
 と、嘆賞の言葉を口にした。 
 そのツインローバが、ある時、奇妙なことをささやいた。 
「仲間のうちにもっと男がいたら、いまにも増してゲルド族は威勢を張れるようになるとは 
思わないかい?」 
 ガノンドロフはいぶかしんだ。 
 そうともいえよう。しかし実現は不可能だ。男は百年に一人だけというのがゲルド族の宿命。 
「あんたなら男を生ませられるんじゃないかと、あたしは思ってるんだがね」 
 まさか。一族の女たちとまぐわうようになってから、子供は次々に生まれているが、いずれも 
女児ばかりではないか。 
「無論、相手は選ばなくちゃならないよ」 
 その意味を問うガノンドロフに、ツインローバは驚くべき返答をした。 
 母親と交われ──と言い放ったのである。 
 ──ガノンドロフという男児が生まれたのは、男児をつくることのできる何らかの特性を、 
父親と母親が持っていたからだと考えられる。両親が続けて生殖していれば、さらに男児が 
生まれていたかもしれない。ところが父親は男狩りの獲物であったため、既に殺されてしまっている。 
そこで注目されるのがガノンドロフ。男児をつくる特性を両親から引き継いでいるはずだ。 
特性を持った二人が交われば、男児が生まれる可能性は高くなる── 
 ツインローバの説は、確かに筋の通ったものだった。が、さすがのガノンドロフも、この提案には 
意表を突かれた。 
 ゲルド族は各自の血縁をあまり重視しない。多人数による共同生活が社会形態の基本となっており、 
家族の概念が乏しいのである。いわば一族全体が一つの家族なのだった。 
 そんなゲルド族でも、近親相姦はタブーとされていた。母娘姉妹の交わりは禁じられていたし、 
王と母親が関係したという前例もない。 
「わかってるさ。だけどあんたが実に優れた王だから、あたしもここまでのことを考えるんだ」  
 
 目論見が図に当たるかどうかは予想もできなかったが、ガノンドロフはツインローバの案を 
受け入れた。 
 生直後から離れて暮らしてきた自分の母親を、ガノンドロフは母親と見なしてはいなかった。 
赤の他人も同様だった。顔を合わせ、話をする機会はあっても、それは王と配下の立場でなされる 
ものだった。王の血縁者が血縁を理由として威を振るうのを、ゲルド族は嫌っていたのである。 
 ゆえにガノンドロフは、母親との交わりにためらいを感じなかった。血の繋がった者が相手で 
あるとの認識はあったが、その認識は、むしろ倒錯的な性欲を増進させた。 
 母親の方は、そうもいかなかったようである。ツインローバの慫慂に対し、なかなかよい返事を 
しなかった。別居を続けてきたとはいえ、かつては自分の胎内にあった実子との交わりを、直ちに 
首肯できるわけはない。 
 しかし、結局は母親も納得した。男児を産むとの使命感に加え、他の者には経験できない特異な 
セックスであるという意識が、ゲルド女の淫蕩な性質を刺激したに違いなかった。 
 寝所でガノンドロフに相対した母親は、初めこそ躊躇の気配を示したものの、次第に興奮の色を 
濃くし、ついには熱狂の極を呈して、絶頂に次ぐ絶頂へと至った。ガノンドロフが射精したのちも、 
注がれた精液は一滴もこぼしたくないと言いたげに、いつまでも密な結合を解こうとしなかった。 
 
 ツインローバの企ては、ガノンドロフの相手を一人に限定してはいなかった。 
 母親は、ガノンドロフを産む前に一度、そののちに一度、それぞれ異なる男を強姦した 
結果として、一人ずつ女児を出産していた。この姉一人と妹一人をも、ツインローバは実験に 
組み入れた。男児をつくる特性を引き継いでいる点で、母親とは共通するはずだったからである。 
 既に処女ではなかった姉とはすぐに、初潮前だった妹とは性交可能な時期が来るのを待って、 
ガノンドロフは関係を結んだ。 
 姉妹は母親とは異なり、一緒に暮らした経験のないガノンドロフに対して、血縁者という感覚を 
持っていなかった。王と優先的に同衾できる立場となれたことを単純に喜んだくらいである。 
ガノンドロフにとっても、彼女らは母親と同じく、赤の他人と変わらぬ存在であったから、交合は 
何の抵抗もなく行われた。姉も妹も快楽に溺れ、随喜の声を絶やさなかった。  
 
 三人の近親者との交わりは数年にわたって続けられ、各々が何人かの子を産んだ。 
 すべてが女児だった。 
 計画は失敗に終わったのである。人為的操作の介入を許さない、厳然たるゲルドの宿命を、 
ツインローバも再認せざるを得なかったわけだが、 
「ゲルド族を強力にするためには、いちばんいい方法なのにねえ……」 
 と、諦めきれない様子ではあった。 
 ガノンドロフ自身は、男が生まれようが生まれまいがどうでもいいと考えていたので、事の 
結末に失望は覚えなかった。時が経つにつれて、むしろ生まれない方がいいとの感を強くする 
ようにもなっていた。 
 ──複数の男がいたら、女たちが個々の男を推戴して、派閥争いに走るおそれがある。王が 
特定の女を贔屓しないのも、そうした争いを防ぐための配慮ではないか。男が一人であるからこそ、 
ゲルド族の結束は保たれるのだ── 
 この意見にはツインローバも頷き、以後は男児増産の願望を二度と口にしなくなった。 
近親相姦の禁忌を破ってまで男児を求めるツインローバの企図については、一族の中にも 
疑問視する者があったから、計画の放棄は妥当な判断といえた。 
 一方でガノンドロフは、ある関心を残していた。 
 ゲルド族を強力にしようするツインローバの熱意は、いったい何に由来するのか。 
 ツインローバは答えた。 
「あんたがゲルドの王であるうちに、ハイラル王国をどうにかできれば、と思ってね」 
 ハイラル王国。 
 遠い北方の地にある国。歴史は古く、その名が世界全体を表す名称に転用されているほどだ。 
しかし現在の支配領域は狭く、ゲルド族との接点もない。そんな国に、なぜツインローバは 
こだわりを持つ? 
「いずれ教えてあげるよ」 
 と呟いたのみで、ツインローバは詳細を述べようとはしなかった。 
 ガノンドロフは追求を控えた。 
 ツインローバには何か目標があるらしい。が、言いたくないのなら放っておこう。賢明な 
ツインローバのこと、言うべき時が来たら言うはずだ。 
 その目標が何であれ、ガノンドロフの思いは変わらないのだった。 
 ゲルド族のさらなる勢力拡充は、彼自身の野望でもあった。一族の男が一人であっても、 
一人である俺がやってやる──との気概が、若きガノンドロフの内には充溢していた。 
 
 ツインローバの胸に秘められた「何か」が、自らの栄光と破滅に繋がるものであることを、 
いまだ知る由もないガノンドロフだった。 
 
 
The End  
 

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