「まーた温泉か?まったくホントに好きだよな」
呆れてぼやくミドナにリンクは心なしか嬉々とした表情で応対する。
「とっとと済ましなよ。あんまりのんびりとしていられないんだからな」
本格的に浸かるつもりか、装備の類を外しにかかるリンクを見て
ミドナは言う。
デスマウンテン頂上付近にはここより広い温泉もあるのだが、
今日は一人でくつろぎたい気分らしい。
カカリコ村宿屋の真上にある温泉は、昼間は村に手伝いにきているとかいう
ゴロン族が浸かっているのだが、夜になると人気はなくなる。
夜の黒に映えるデスマウンテンの山頂を眺めながら
ゆったりと浸かるのが、リンクのお気に入りなのである。
剣と盾を壁際に立てかけ、グローブを外し、帽子を脱ぐ。
軽くなった肩を腕をならしてベルトやらこまごまとしたものをすべて外し、
緑の衣を脱ぐと、腰より少し下までを保護している
鎖帷子が覗く。多少てこずりながらこれも外す。
この装備とあれだけの道具類を所持しながら、
よく軽快な動きができるなとミドナは普段の戦いを思い起こした。
よほど頑丈に鍛えてあるのか、
彼単体が信じられないくらいの軽量なのか。
考えているうちに、すでに布一枚になったリンクの肌の色が急に目に入り、
多少動揺して視線をそらす。
「コイツ、ワタシが女だってわかってんのか・・・?」
憮然としてぼやいていると、リンクが寄ってきてミドナの腕をつかんだ。
影の者は入浴の必要はないと言い張るミドナを
少々強引に湯の中へ引きずり込んでやった。
普段、ミドナは肩のあたりに手をおき、
ほとんどない体重を自分に預けていつもそこで落ち着いているのだが、
今ミドナとの間には多少の距離があった。
ミドナはうつむき、膝をかかえて湯に浸かっている。
頬の色が赤みを帯びているのをみると、
影の者も血が通っているんじゃないかと思う。
そういえば、ミドナは虫とかカエルとか、
気持ちの悪い生き物が嫌いだと言っていた。
言動からも女であることはわかる。
ということは影の者にも性別はあるということだ。
沈黙のまま、十数分が経った。
このあたりにいつもいる黒い鶏が、まるで自分は水鳥だとでも思っているのか、
リンクの目の前を器用に泳いで過ぎる。
風の音と、時折体を動かしたときに生じる水音以外は何も聞こえない。
先ほどまでこちらが動くとじりじりと距離を
とっていたように見えたミドナだが、
今は膝に顔をうずめたまま、動かない。
ミドナ、と呼んでみるが、彼女らしくない、
あーとかうーとか不明瞭な声でしか返事をしない。
まさかと思って抱き起こしてみれば、のぼせているらしく、
頬を赤くして体は弛緩しきっている。
奥の岩場に寝かせ、頬に手を当ててみる。熱い。
村の入り口まで戻って泉の水を汲んでくるかと思案していると
「・・・はあ・・・はあ・・・、リン・・・ク・・・・・・」
ミドナが上体を起こした。
岩肌の冷たさで少しは回復したらしい。
恐らくもう少し安静にしていれば大丈夫だろう。
ごめんと謝るリンクに、ミドナは笑んだ。
「覚えてろよ、あとで倍返しだ」
いつも強気な赤い瞳が、潤んで鋭さをなくしている。
岩に背を預け、体内の熱さを呼吸で鎮めようと、
小さな肩が、ひかえめな胸が、丸みを帯びた体が揺れる。
「ん・・・、リンク・・・・・・?」
ようやく熱が治まり始めた体を、抱きしめられている。
ぼんやりとした状態でそれを認識したのは、
なぜか押し倒されて再度横になってからだ。
「・・・・・・なんだよ・・・おもいよ・・・、リンク・・・、っ」
変な感覚が背筋を走った。
首筋が、じんと熱くなる。
「な、なに・・・?」
首筋を吸い上げてやると、びく、と肩が跳ねた。
動揺で一層揺れる瞳が、赤くなっている頬が、リンクを駆り立てる。
何か言いかけた唇をキスで塞いだ。
くぐもった声に欲情する。
こじ開けて、とがった歯をなぞって舌と舌を絡ませながら、
「んん・・・っ、ん、ぅ・・・、」
胸の形をなぞるように撫でて、やわらかさを楽しむように優しく揉む。
頂点にある突起をいじってやれば、びくんと体が跳ねる。
唇を放し、息つく間も与えずに今度は両の胸を愛撫する。
「はあ、は・・・っ、・・・・・・んっ」
左右違う動きで攻められたらたまったものじゃない。
ミドナは必死に声を出すまいと口を押さえた。
それに気づいたリンクは片手でミドナの両手首をまとめて拘束した。
「あ・・・・・・っなにする・・・ぅあっ」
なんとか抵抗しようともがく体を押さえつけ、胸の頂点を吸い上げる。
ねっとりと突起を舐め、歯を引っ掛けて、
また吸い上げれば可愛い声でミドナは鳴く。
「あ、んっ・・・は、あ・・・あっ」
与えられる感覚に必死に耐えようとしている様が愛しい。
リンクは胸への愛撫を止めて、
これ以上ないくらいに赤く染まった頬に口づけた。
「・・・っ」
なに考えてるんだと怒号をあびせるつもりが、まっすぐに見つめられて怯む。
しかもこの男はそのきれいな青い目でもって微笑むのだからたちが悪い。
ミドナは思いきりそっぽを向いて、
もうどうにでもなれ、と胸中で叫んだ。