「ねえ、リンク、のどが渇いたわ」
先を進んでいたゼルダが、馬上でふり返った。
「お水はあるかしら。わたしのは、もうなくなってしまったの」
リンクはエポナの歩みを止め、水筒を取り出して、その重さを確かめた。
「少ないけれど、まだあるよ」
「もらっていい?」
「ああ」
ゼルダの馬の横にエポナを並べ、水筒を差し出す。だがゼルダは、それを手に取ろうとは
しない。顔をリンクの方に向けて、やや首をのけぞらせ、目を閉じ、唇を少し突き出している。
口移しにして、と言いたいのだ。
『はしたないお姫様だ』
思わず苦笑いしてしまう。しかし、男がそうまでされて断るわけにはいかない。リンクは
水を口に含み、上半身を伸ばしてゼルダの肩を抱いた。それに合わせてゼルダも首を伸ばしてくる。
からりと晴れ渡った真昼のハイラル平原。汗ばむほどの陽光と、それを和らげる涼風を身に
受けながら、馬上の二人はそっと唇を合わせた。
わずかに開いたリンクの口から、同じく隙間のあいたゼルダの口へと、生暖かくなった水が
流しこまれる。リンクの唾液が混じったその水を、ゼルダはためらいもなく飲み下す。
これで用件は終わったはずだが、二人の唇は離れない。舌も交えた激しい交歓が続いてゆく。
リンクの手が衣服越しにゼルダの乳房をとらえる。ゼルダは声にならない声を漏らす。二人の
身体が揺れ動く。
これ以上は……と、リンクはエポナから下り、ゼルダの手を取って地面に立たせる。間も
おかず草の上に押し倒す。
「あ、だめよ、こんな所で……」
心にもないことを……と、リンクはひそかに思う。今朝、リンクと二人で平原へ遠乗りに
行きたい、と言った時、ゼルダはこうなることを期待していたに違いないのだ。
「だめ……誰かに見られるわ……」
「見ているのは馬だけだよ」
リンクが衣服の下に手を伸ばすと、ゼルダはあっさりと抵抗を放棄し、切ない声をあげて
リンクの首にかじりついた。
快楽に没入してゆく二人の傍らで、二頭の馬はつまらなさそうに草を食んでいた。
The End