…ガノンドロフの復活……3つの宝玉を集め、神の塔へ……そして…手にしたマスターソードは無力化…  
 
いままであったあらゆる出来事が、リンクの頭の中を駆け巡る…  
全ては運命だったのだろうか。それとも、神が自分を選んだのだろうか。  
この年になるまで一つの島で平和に生きてきた自分が勇者であると…  
 
「リンクさん…どうか…なさいましたか?」  
急に我にかえるリンク。  
ここは赤獅子の王の上。今はマスターソードの力を取り戻すために大地の賢者である【メドリ】と共に航海をしている。目指すは大地の神殿だ。  
 
ザバァッ!!  
「きゃっ!」  
急に波しぶきが上がり、僕とメドリに水がかかる。  
僕は慣れているからどうってことはないけど、メドリはひどく怯んだようだ。  
「うーんっ…」  
「だいじょうぶ?」  
「…は、はい…」  
メドリは水を被って服がびしょぬれだ。  
僕の服は水に濡れてもいいようなものだけど、メドリの服はかなり水を吸いやすい素材らしい。  
「メドリ、あぁ…服…」  
「だ、大丈夫です…」  
メドリはそう言っているが、やがてくしゃみをして、震えだした。  
「メドリ、寒い?」  
メドリは僅かにうなずいた。季節的には寒くはないけれど、水浸しになって潮風に当たっていれば体があっというまに冷えてしまう。メドリの故郷は暖かい島だったから、なお寒さには慣れていないようだ。  
「寒いか……どうしよう、どこかで休んで、服、乾かそうか。」  
「えっ! …い、いえ…ワタシには大事な使命が…休んでなんていられません…クシュン!」  
「ほら…そんなにくしゃみして…寒いんでしょ、無茶しないで。…ね、いいでしょ? 寄り道しても…」  
僕は赤獅子の王に頼んだ。赤獅子の王は一刻も早くと言ったが、僕が粘ったのでとうとう折れてくれた。  
僕は勇者である前に…一人の男だ。寒さに震える子を放っておくなんて、できるわけがない。  
 
僕は海図を開いてみた。  
「ウーン…ここからなら…うん、僕の島が近いかな。」  
「えっ? リンクさんの島?」  
僕はタウラ島のある先生から、島の別荘の権利書を貰った。この権利書を持っていれば島一つが僕の物なのだ!  
幸い僕の島はすぐ近くだ。そこでメドリを暖めてあげることにしよう。  
「クシュンッ!」  
「メドリ、待ってて、もうすぐ島に着くから。その服も、すぐに乾かせば………」  
僕はチラっとメドリの服を見て、おもわず目を奪われた。  
 
メドリは前言ったように暖かい島で暮らしていた。そのため、メドリの服は島に適応した薄い生地のもの。  
そのメドリの服は水を吸ってメドリの体にピッタリ張り付いている。メドリのゆったりした服で今まで分からなかったメドリの体のラインがはっきり分かる。  
…メドリの体系は、決してセクシーとかナイスバディとかそういうわけじゃなかった。  
腰のラインもあるわけじゃないし…ちょっと胸に目をやると、まだほとんど膨らんでいない。  
 
ザバァァッ!!  
ぼうっとしてたら、また波しぶきがあがった。今度はさっきのよりも波が高い。  
「きゃーっ!!」  
今度は全身に水を浴びたメドリ。髪まで濡れてしまった。  
「うぁー…」  
ちょっとべそをかき気味のメドリ。しょっぱい海水をたくさん飲んでしまったらしい。  
「大丈夫? も、もうすぐ着くからね!」  
「…はい…。」  
僕達は別荘の島へ急ぐ。  
 
「…じゃぁ、赤獅子の王。もう日が沈みそうだから、出発は明日の朝だね。」  
赤獅子の王はしばしば承諾してくれた。今回は冒険ではないので、剣や盾や他の装備品、それに、赤獅子の王との通信手段であるゴシップストーンも外して、僕自身も一日骨休めすることにした。  
「ふうっ…装備品が重かった…。」  
一息つくまえに、まずはメドリをなんとかしてあげないと。そのために停泊してるんだから…  
 
「さてと…」  
別荘の中に入る僕達。さて…メドリの服を乾かしてあげるにあたって一つ問題が…  
「服…」  
メドリの服を乾かすには当然メドリの服を脱がせてあげないといけない。  
そして、服を乾かしている間は…当然…全裸でいてもらうわけにもいかない。  
しかし…別荘の中を探し回って見つけたのはバスローブだけだった。  
「メドリ、どうする?」  
「ワタシは、かまいませんよ。この島、なんだか暖かいですし…」  
確かに、この島はバスローブ一枚でも快適なほどだけど  
「でもさ…女の子がバスローブ一枚…」  
「ぁ…」  
メドリはちょっと赤くなった。  
「大丈夫…です…。ここにいるのは、リンクさんだけですから…。」  
「大丈夫? 恥ずかしくないかな…も、もうちょっと服、探してみるね。」  
メドリに気を使ってなのか、自分自身が恥ずかしいからなのか…僕はなおも懸命に服を探した。  
しかし…どんなに探しても服は無かった…  
 
結局諦めて、メドリにはしばらくバスローブでガマンしてもらうことにした。  
「…じゃぁ、すみません…失礼します…」  
メドリは服を脱ぎ始めた。問題は僕がどうするか。この別荘は広いからいいんだけど部屋が一つだ。僕はメドリを気遣って外に出ることにした。  
「じゃぁ、着替え終わったら呼んでね。」  
「…すみません…」  
メドリは申し訳なさそうに頭を下げた。  
 
僕はぼうっと外で着替えを待っている。  
「…終わりました…」  
…あ、中から声が聞こえた。着替え終えたらしい。  
別荘に入ると、メドリはバスローブ姿で待っていた。  
「……」  
バスローブはかなり短めだった。メドリのひざほどまでしかない。  
メドリの素足がいつもよりも目だって見える。細く色白だ。  
「…リンクさん? 何か…?」  
「あ…あー…いや…」  
 
メドリが入浴中は再び外で待機。僕は再び、ぼうっと海を眺めていた。  
どこまで遠くを眺めても、海。そのはるか先には神の塔が見えた。  
…ん? 海の上で何か光ってる……なんだ? あれは…? バクダン島の付近のようだけど…望遠鏡で見てみよう。  
 
…あ、望遠鏡は別荘の中だ…  
 
メドリはまだ入浴中。だけどどうしてもあの光が気になって、僕は…  
「…メドリ…」  
「…はい…」  
別荘の中に話しかけた。  
「メドリ…ゴメン、ちょっとなかに入らせてもらえないかな?」  
「? はい、いいですよ…」  
僕はメドリの了承を得て、そっと別荘の中に入った。  
「…どうかなさいましたか?」  
「ゴメン、ちょっと望遠鏡取りに…気にしないで、まだゆっくり入ってていいから。」  
仕切りがあるとはいえ、なるべくメドリのほうを見ないようにサッと望遠鏡を取ってさっさと別荘を出る。  
 
さて、望遠鏡で海の上を改めてみてみよう。えっと…確かバクダン島のほうだったな……ウーン…あれは…  
あ! 光の輪だ! しかも光が強い!!  
あれはきっと…なにか大物に違いない! 釣りに行こう!!  
 
…あ、鍵爪ロープは別荘の中だ……  
 
「ご、ごめんよ…メドリ…また取りたいものがあるんだけど…」  
「あ、はい、どうぞ。」  
僕はまたメドリに頼み、別荘に入れてもらった。  
さて、すぐに鍵爪ロープを取って帰ろうと思ったけど、運悪く鍵爪が箪笥に引っかかっていた。  
(と…取れない…)  
ムキになって引っ張ったせいで箪笥が倒れてしまった。  
ガタンッ!!!  
別荘が揺れる。使っていない帽子掛けが倒れた。いや、倒れたのはそれだけじゃない。  
ガタッ  
「キャーッ!!!」  
お風呂の仕切りまで倒れた。  
「うっ!」  
一瞬、入浴中のメドリが目に入る。下半身は浴槽だし、反射的に両手で両胸を隠したので見てはいけない部分は見なくて済んだけど…  
「わぁぁっ!」  
僕も驚いて、あわてて別荘から飛び出した。  
 
…別荘の中と外…気まずい空気が流れる…僕は別荘の外、浴槽の近くの窓の前でメドリに話しかける。  
「…ごめん…」  
メドリも、僕に返してくれる。  
「…いえ…気にしないでください。わざとではないんですから…」  
「……怒ってる?」  
「いえいえ…とんでもありません…ただ、ちょっとびっくりしましたけど…。」  
メドリは、怒っている様子ではなかった。  
「…リンクさん…どうか、気になさらずに…」  
「…うん…」  
 
メドリが入浴を終え、ようやく僕も別荘に入る。  
メドリは再びバスローブに着替えていた。  
僕は気まずかったけど、メドリは笑顔で迎えてくれた。メドリの姿はさっきにも増して色っぽかった。顔は軽く紅潮しており、髪はほどいている。  
「メドリ…温まった?」  
「はい…ありがとうございます。」  
「そう。よかった。…じゃぁ…今夜はここで休むからね。」  
「はい。」  
とりあえず倒れた家具を建て直し、もう夜遅いので眠る準備をはじめる。  
 
この別荘にはベッドが一つあった。いや、一つしかなかった。  
「メドリ、今日は君がベッドで休みなよ。僕は床とかで寝るのにも慣れてるから。」  
「ええっ! そんな…」  
「気にしないで。…お互い…気にすることないよ。」  
「………………」  
僕たちは複雑な気持ちのまま眠りについた。  
 

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