ぱらぱら、と水滴の落ちる音を聞き、薄く眼を開ける。  
時間の感覚を狂わせる薄暗がりの中、肌寒い空気を感じ、  
サリアはその小さな等身に合わせた寝台の上で、静かに身を震わせた。  
 
「…まだ降ってるんだ…」  
 
森には年に2度、雨季がやって来る。  
空から降り注ぐ水の恵みは、大地を潤し木々を育む大切なものだけれど、  
あまり好きにはなれなかった。  
 
 
雨……あの小さな少年が森を去った日も、こんな風に降っていただろうか。  
 
 
彼と一緒にいられない、と分かったとき。  
笑って送り出そうと思いながら、泣き出しそうになっている自分がいた。  
心のどこかでは分かっていたはずなのに。  
痛くて仕方なかった。  
 
 
「……リンク…」  
 
冷たい空気から身を庇うように自分を抱きしめ、胸に手を当てる。  
殆ど膨らんでもいない、薄い小さな胸から感じる、規則正しい鼓動。  
 
 
この身体は大きくならない。  
何年たっても、何十年たっても大人にはならない。  
一緒にいるときからずっと感じていた。  
見えないけれど、深く大きな溝。種族の違い。  
 
 

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