交換と出会い  
 
 
…………留守番メモが一件入っています…………  
 
…もしもし、テトラ? 僕だよ、リンク。  
テトラ、突然だけど、今度の土曜日何か用事あるかな?  
実はね、僕の知り合いに、君に会ってみたいって人がいるんだ。  
もし土曜に用事がなかったら、会ってあげられないかな?  
時間は、土曜の午後9時。場所は、表通りの喫茶店。…もし大丈夫なら連絡してね、詳しく話すから。  
 
………………  
 
ある晴れた土曜日、テトラは、リンクに指定された喫茶店へと向かっていた。  
「…アタシに会わせたい人…誰だ?」  
テトラはリンクの言われたとおりにするつもりだが、待っている人物が誰かということはまだ全く聞いていない。  
リンクの知り合いなのだから大丈夫だとは思うが…なんだか怪しい。  
とにかく、テトラは喫茶店へと入った。  
「えっと…確か6番テーブルって言ってたな…」  
リンクは、「君を待ってる人は6番テーブルにいる」と言っていた。  
テトラはテーブル席を見回しながら、席を確認した。  
4番5番と空のテーブル席が続き、その隣に…いた。コーラ一杯を前に、一人で座っている男性が。  
「…?」  
妙だった。そこにいた人物、どこかで見たことがある。  
…リンク?  
格好が、リンクそのままなのだ。緑の帽子に、緑の服。そして金色に輝く髪。  
…だが、それ以外はだいぶ違った。身長は明らかにリンクより高く、歳もリンクより4〜5歳年上に見える。そして、瞳がライトブルーだった。  
…リンク? いや、違う…?  
ぼうっとその青年を眺めるテトラ。  
耳にキラッと光るものを見つけた。…ピアスだ。さらに、横顔で見る目つきも少し鋭い。  
…なんだか、怖い人のようにも思えた。  
突然、その青年がテトラのほうを向いた。  
「…………」  
「…………」  
見詰め合う二人。  
もちろん、テトラは彼を見たことは無い。  
青年も、ぼうっとテトラを眺めている。  
…この人が…アタシに会いたいって人…?  
テトラがなにか言う前に、青年がテトラに話しかける。  
「…君、来てくれたのか?」  
「えっ?」  
…やはり、この人がアタシを呼んだのか…  
 
テトラは青年の向かい座った。  
「……。」  
「……。」  
初対面の二人。会話が弾むはずがない。  
「…あぁ…何か飲む?」  
青年に話しかけられて、テトラはちょっと戸惑う。  
「…あー…うん、じゃぁ…アタシも何か飲もうかな…」  
テトラはメニューを取った。  
だが、テトラはメニュー越しに、その青年を眺めている。  
「……………」  
その青年をじっと観察した。  
その青年の真顔は凛々しい。いつものんびり顔のリンクとは大違いだ。  
…しかし、一体彼が、何の用があって自分に会いたいというのだろうか…。テトラは読んでいたメニューを伏せて、青年に目を合わせる。  
「なぁ…アンタ、アタシに用があってここに呼んだんだろ?」  
すると予想を反し、青年もポカンとした表情で  
「えっ…君がオレを呼んだんじゃないのか?」  
と、返してきた。  
「え…??」  
 
もちろん、テトラが見ず知らずの彼を呼んだわけがない。リンクに「会わせたい人がいる」と言われてきたのだ。  
テトラは青年に、その話を告げた。青年はそれを聞き、首をかしげる。  
「…おかしいな、オレは、オレに会いたがってる人がいる…って聞いてきたんだが…」  
青年も、知り合いに言われて来たのだそうだ。状況はお互い全く同じ。一体これはどういうことなのか…  
 
〜♪〜♪♪〜♪〜♪♪〜  
【エポナのうた(Full)】が聞こえる…。  
「悪い、ちょっと携帯いいか?」  
青年の携帯電話のようだ。  
青年は携帯電話の画面を眺め、それから電話に出る。  
「もしもし、ミドナ、どうしたんだ? きょ……うん、…あぁ…もう来てくれたよ? …あぁ…」  
それから、青年はじっと電話を聞き入っている。その間も、テトラは青年を観察した。  
なかなか美形だ。テトラに言わせれば、「男にしておくにはもったいないくらい美しい」顔。  
最初は怖いとかの印象があったが、優しく柔らかい口調と接し方から、そうでもないことが分かった。  
しかし、なぜリンクとそっくりなのだろう…? まるで、リンクのコスプレをしているようだ。  
少しして、青年が突然テトラに目を向けた。  
「君と、話がしたいそうだ。」  
「…えっ? アタシと?」  
テトラは青年から携帯電話を受け取った。  
「もしもし…?」  
『もしもし、お前テトラだな?』  
「…はぁ? アンタ誰?」  
『あぁ、ワタシね、ミドナってんだ。リンクの相棒。』  
「相棒…? リンクの??」  
テトラは、ミドナなんて知らない。  
『あーぁ、そうか。まだ状況分かってないんだな。あのな、リンクってのは、お前の友達のことじゃない。お前の前にいるアホ面の男のことだよ。』  
「……。」  
目の前の青年のことだろう。彼の名は、リンクというらしい。  
「リンク…おなじ…」  
自分の知っている、あの『ネコ目』リンクと同じ名前…。  
さらにテトラは、電話の声のミドナという女性から、次のような話を聞いた。  
 
数ヶ月前、テトラの知っている『ネコ目』リンクとミドナが、ひょんなことから知り合ったのだという。  
今日、テトラを呼び出した本当の人物は、その二人だった。そして、相手のリンクを呼んだのも…。  
 
「一体、なんなのさ? なんでこんなことするんだい?」  
『別に疚しいことなんて考えてないよ。たださ、【デート企画】さ。』  
「はぁ?」  
『なぁ、どうだよ? こっちのリンクは?』  
「どう…って?」  
相手が【こっちのリンク】言ってるのはこちらの青年のリンクのことらしい。  
『どうだ? なかなかイケメンだと思わないか?』  
「あ…あぁ…ま、まぁ…」  
『だろ? だからさ、そんな男とデートなんて出来たらいいと思わないか?』  
「…は?」  
つまり、テトラの知っているリンク(以下、混乱を避けるため地の文ではネコ目リンクと記述)とミドナが勝手に、テトラと青年リンクをデートさせるよう仕向けたのだそうだ。  
見ず知らずの互いを、勝手に…。  
『なぁ、どうだ、互いのリンクを取替えっこするなんて面白いだろ?』  
「ふ、ふざけるなよ!? なに勝手にデートとか…うっ…切れてる…」  
電話は切られた。  
 
青年リンク(以下、地の文では普通にリンクと記述)は電話を受け取りながら、テトラに尋ねた。  
「…ミドナ、なんだって言ってた?」  
テトラは怒った様子でリンクに言った。  
「ミドナって、アンタの言ってた相棒だろ?」  
「…あぁ。」  
「そいつとリンクが組んで、こんなイタズラ考えたんだ!」  
「? オレと?」  
「いや、アンタじゃなくて、えっと…あの、アタシの知り合いにも、リンクって奴がいて…」  
「………」  
二人はそのことについて、しばらく話し合った。  
 
「…話をまとめると…うちのミドナと、そっちのリンクって奴が、互いに知らないオレたちを呼び出して……で、ミドナとそっちのリンクが…オレたちをデートさせたい…と。つまり、オレと相手のリンクを、『交換』したってわけか。」  
リンクの交換。それがミドナとネコ目リンクの企てだ。  
「まったく、ふざけてる!」  
テトラは立ち上がった。  
「許せないあいつ! ちょっとリンクに文句つけに行ってくる! あぁ、アンタじゃなくて…うちのリンク!」  
テトラが立ち去ろうとした。  
「ちょ、ちょっと待て。」  
それを、リンクが止める。  
「?」  
テトラが振り返ると、リンクは、ちょっとためらいながら言った。  
「ミドナたちが…オレたちがデートするよう、イタズラして仕向けたって言ってたよな…。」  
「? …あぁ。」  
「…じゃぁさ、…せっかくなんだから、そのイタズラ、乗ってみないか?」  
「??」  
 
「せっかく、デートしてみろって言われてるんだ。騙されて、してみるのはどうか…って。」  
「…デート…アタシと…アンタで…」  
「あぁ。まぁ、冗談半分だけどな。…それとも、オレとデートなんて嫌か?」  
…テトラはじっと、リンクの顔を眺める。  
テトラの本音としては、テトラにとって、リンクは理想、またはそれ以上の男性だった。  
顔立ちも整っており、心も優しそう。冗談でも、こんな相手とデートできる…?  
テトラは、軽くうなずいた。  
「…いいよ。その冗談、乗っても…。」  
 
その時、出会いは突然、起こった。  
 
 

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