つい叫びそうになるのを抑えて、彼は早口且つ棒読口調で宣った。  
なんですかこれはどういうことですか、と。  
 
 
目の前にあるのは、ちょっと顔色は悪そうだが、恐ろしく端正に整った顔。  
出る所が出て引っ込む所は引っ込んでいる、均整取れた身体付き。  
大胆に肌を露出させた黒い装束。  
 
『真っ赤な顔をして・・・クックック・・・リンク、どうしたっていうんだ?』  
至近距離で妖艶に微笑まれる。  
 
 
そんな女体から理由も無くのし掛かられて、トライフォースに選ばれた勇者といえど男  
しかも青春真っ盛りの青少年が平生を保てと言われても無理からぬ事かもしれない。  
 
必死の思いで女に素性を問い正しても  
 
『野暮な事訊くなよ、どうでも良いじゃないか。今は』  
 
徐に彼女はリンクとの距離を詰めてきて、優しく押し倒されてしまう。  
 
どうでも良くないよ!とリンクは力強く言い放った、心の中で  
この美女は闇の魔物の罠かもしれない。それに誰だか分からんような女性から迫られて  
ついうっかり流されてしまうというのも、ハイラルを救うべき勇者としてどうなのか。  
 
色んな意味で危機的状況にある訳だが  
何で女の人は良い匂いがするんだろう身体柔らかいなぁ等の思考は止まらない。  
勇者である以前に、彼は煩悩に忠実且つ健全な青少年なのであった。  
 
『んん?・・・おい、コレは何だ?』  
彼の自己主張を、面白そうに見咎めた彼女。  
その内に亀のアレやらを緩急付けて服の上から擦する。  
辛棒堪らなくなってきたリンクは、止めさせようともがくが、どうしても力が入らない。  
女の細腕など跳ね除けるのは造作もない筈なのに。  
 
尖った耳に吐息を吹きかけられて、油断した唇はついに奪われた。  
深く舌を差し入れられ存分に蹂躙される口内。  
快楽をのほほんと享受してたら何時の間にか下着を降ろされてしまっている。  
 
理性も臨界に達し、やがてリンクは抵抗を諦めた。  
 
『初い奴だな。可愛いぞ、リンク』  
 
それにしてもこの美女、ノリノリである。  
長い口づけの所為か息も上がり、彼女が頬を紅潮させているのを鑑みる。  
未だ夢現の狭間で彼は思う、それはこっちの台詞だ、と。  
 
罠で上等、特上御膳を全力でご馳走になりましょう。リンクの中で何かが弾けて混ざった。  
いただきます、と美女の耳元に囁いた。  
彼等の天地が逆転する。  
 
『オマエ!いきなり何するん・・・ンッ』  
 
非難する口を一方的に塞いでやって、彼女の服を脱がせに掛かるが  
どうにもこうにも元々下着みたいな形状なので難なく直に肌触れた。  
既にぬかるんでいた粘膜の溝に指を這わせる。  
 
女体の然るべきツボを刺激しつつ、わざとらしくリンクが理由を問うと。  
彼女から軽く頭をはたかれた。  
 
『バカ。皆まで訊くな、バカ』  
 
村の幼馴染みとも仕える祖国の姫君とも違う、名前も知らない行きずりの女なのに  
高圧的な口調と態度、だがそれが良い。  
正体不明の美女を受け入れる、リンクの覚悟が完了した。  
 
『おい、リンク。何時まで寝てるんだ』  
 
リンクが目を覚ますと、至近距離にミドナの顔があった。  
同時に何故か爆発的な羞恥心に襲われて、彼は低く唸り声を上げて面を背けた。  
 
『んん?何だってんだ。変なヤツ』  
 
少し気分を害したのか、ミドナは先達って離れていく。  
 
 
良い夢を観ていて、しかも何か目的が達成される瞬間であった気がする  
のだが詳しい夢の状況はどう足掻いても想い出せそうにない。  
兎に角もの凄く良い夢だったのは間違いない。  
 
狼の姿にも慣れ、寝起きの毛繕いを終えた。  
朝の生理現象をミドナに気付かれなくて良かった。  
見つかったらさぞや相当にからかわれる事請け合いだろう。  
 
『リンク。さっさと欠片を探しに行くぞ』  
 
腕組みして待つミドナの元へ、リンクは駆けていった。  
 
 

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