終焉の者の死闘から数週間後、リンクはゼルダと共に故郷であるスカイロフトに滞在していた。
冒険が始まる前と何ら変わらない時が流れていた。
ただ一つ違うところは、あのテリーショップを目の当たりにして居ない。
リンクはふとテリーが気になり、彼が寝床にしている孤島に向かった。
島の裏に到着するやいなや、痛々しい金切り声が聞こえた。
リンクはテリーの声だと分かり、急いで声のするほうへ向かった。
するとそこには、何とも形容し難い光景が広がっていた。
そしてそれがリンクの中で嫌悪感に結びついた時、嗄れた声で四つん這いのテリーが語りかけて来た。
「O,Oh! オ客サン、久シ…ブリネ! 全裸デ 言ウノモナンダケド チョット助ケテホシイネ///」
何を隠そう、テリーの菊門には彼の宝物であるオニダイオウカブトが角から頭まで入っていたのである。
リンクは即座に見てない振りをしロフトバードを呼んだが、
また金切り声を上げ始めるテリーを放ってはいられなかった。
「オ客サン、Oh! Oh! 優シイネ! …ト、トニカク、コノ子ヲ引ッ張ル、イイネ!」
リンクはテリーを一瞬でも心配した自分を恨みながら、彼に刺さったカブトムシの背中の両脇を掴み引っ張った。
カブトムシは意外とスルスル彼からひり出されていった。
しかし、そのカブトムシの角の先端は返しの形になっていたのか、それ以上は抜けなかった。
リンクが半ば強引に引っ張ろうとするとテリーはまた喘ぐのだった。
「チョット…痛イネ/// 昨日モ ソコマデ抜ケタンダケド、ソレ以上ハ 危険ヨ!」
小麦色の肌は徐々に脂汗を発し、目からでも臭いが感ぜられるようだった。
また、辛うじて四つん這いになる彼の手足の震えは何かに脅えているかの様にもとれた。
リンクはその言動と挙動に一度は躊躇したが、今度は一心に力を籠めて引っ張った。
「オオオオォォォォォォオオ!!」
今までに無いほどの凄惨な悲鳴と共に、オニダイオウカブトもテリーから開放された。
「ハァハァ…オ、オ客サン… センキュー!命ノ恩人ネ。ハァハァ」
最もこの時間から開放されたのはリンクであることは言うまでもない。
彼が今までの冒険の中で越えてきた苦痛とは違う、何か屈辱的な汚れた体験だったのだ。
「モウ コンナ カブトムシ、要ラナイネ! オ客サンニ アゲマス」
テリーは目を輝かしながら、リンクにオニダイオウカブトを虫籠に入れて差し出した。
リンクは言いようの無いムカつきに襲われている中、苦笑いしながら拒んだ。
するとテリーは、呆れた様な顔で言い放った。
「オ客サン、人生ヲ損シテルヨ。テリーハ、毎日 オシリニ 入レテタネ!」
リンクは彼が孤島に暮らしている意味を理解できた気がした。
脱力したリンクは何度拒んでも差し出してくる彼に根負けし、ついに受け取ってしまった。
―こんなの、直ぐに捨てよう。 トラウマになりそうだ…
彼はテリーにさよならも言わず、虫籠を携えロフトバードに跨る。
すると、思いもよらぬテリーの言葉でリンクは覚醒してしまった。
「オ客サント イツモ一緒ニ居ル 前髪パッツント 夜遊ビスル時、玩具ニスレバイイネ!」