【絶対可憐チルドレン1巻おまけ Other Side】
ある夜。皆本のマンションにて。
川の字になって一つのベッドに入ったチルドレンが、皆本におねだりをしていた。
「ねー、皆本ー」
「本読んでー♪」
半ばまぶたは眠気にとろけながらも、もう少しだけ起きていたい――という、
子供の可愛いお願いであった。
「しょーがないな…! 読んだら寝ろよ!?」
「うん!」
本棚にあった童話の一つを手に取る皆本。
「仕方ない」といった表情をしつつも言うことを聞いてくれる皆本に、薫は満面の笑みで応えるのであった。
――皆本が手に取った本、読み出したお話の名前は「新約・人魚姫」。
「新約」という文字に違和感を覚えつつも、ページをめくった。
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――むかし、海に住む人魚のお姫さま(薫似)がおりました。
――人魚姫は人間の王子(皆本似)に恋をして、会いに行きたくてたまりません。
――海の魔女(葵似・スクール水着)に相談すると――人間になる薬をくれました。
魔女に貰った薬を一気飲みして陸に上がった彼女の身体は見目麗しく成長を遂げていた。
胸は豊満と言っていいほどに大きく膨らみ、そのすべてを覆い隠していたはずの貝殻は中央部のみを隠す卑猥な水着と化し。
薬のおかげですらりと伸びた人間の下半身にはただ一枚、布が巻かれているだけという扇情的な姿であった。
(今、行きます! 王子様……!)
海辺に二本の脚で立った人魚姫は、王子を捜し求めて一歩を歩き出そうと――したのだが。
ズキィィィンッ!!
(いだだだだ――――ッ!?)
踏み出した瞬間に人魚姫の脚から走る、想像を絶する激痛。
(なにコレマジで痛えッ!! うっわ声出ねーから叫べもしねえ!?)
痛いうえに、声と引き換えに脚をもらったものだから叫び声をあげることもできない。
地面に這いつくばって、口をぱくぱくさせて痛みに喘ぐしかなかった。
――そこへ通りかかる、白馬に乗った王子様。
裸に近い姿で倒れ伏す女性を見かけ、ただ事ではないと判断した。
「――――! 君!! どうしたんだい!?」
白馬から降りて、王子様は人魚姫に駆け寄る。
――――ここで、人魚姫は一つの言葉を思い出した。
それは、魔女が「人間になる薬」をくれたときに一言付け足した言葉。
『そーそー。生えてきた足で歩くときの痛みって、処女無くしたときの痛みと同じらしいでー?』
……と。
(……ってことは、男は、あたしたちにこんな痛みを強いてきたってのか……っっ!?)
そう思うと同時に、目の前に迫ってきた王子様の姿に言いようのない感情を覚えた。
それは愛情でも憎しみでもなく――加虐心。
要は、「同じ痛みを王子様にも味合わせてやろう」というモノであった。
同時にビクンッ! と、布一枚に包まれただけの股間で疼く何か。
腰に巻いただけの布をかき分けて外気に触れたソレは──、
立派な――女性には有り得ないモノ、勃起して反り返ったペニスであった。
びくびくと脈動を繰り返し先走りさえ滲ませるそれは、人魚姫の今の心を暗示していると言っても過言ではなかった。
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――同時刻、海底。
葵似の魔女が、人魚姫に渡した薬のあった棚を見て──
ありゃ、と声をあげていた。
「…しもた、アレちんちん生えてまう方やった」
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──今更気づいても、時すでに遅し。
雌雄同体(フタナリ)となった人魚姫が、じりじりと王子様に詰め寄る。
王子様はといえば、半裸の美女の股間に猛々しいイチモツがあるという非日常の光景に驚愕して思考が停止してしまっていた。
紫穂似の人魚から受け取ったサバイバルナイフを片手に、王子様に襲い掛かる人魚姫。
(へっへっへー! いいケツしてんじゃねーかよぉ王子様ぁ――!?)
声は出ないが、そう口をぱくぱくと動かした。
大きな胸をぶるぶると揺らして飛び掛かり王子様を押し倒すと、器用に王子様の衣服をナイフで切り裂く。
「な……っ、ちょ…、君……っっ!?」
当惑して叫び出す王子様の姿を目の当たりにして、ペニスは更に硬度を増した。
(げへへへ、泣いても叫んでも助けは来ねえよ!)
無言でも、そんなオヤジじみた下卑な感覚は伝わる。
恐怖に顔を引き攣らせる王子様のズボンと下着を切り裂くと、がっしと背後から腰を掴む人魚姫。
躊躇せずに凶悪なペニスを押しつけた。
王子様の背中で、大きな胸がむにゅりとつぶれて言いようのない感触をもたらしたが──、それにかまけている暇はなかった。
男として最大のピンチであるが故に。
「ちょ、こらっ、やめ────!!」
(女の痛み、思い知れぇ────っっ!!)
ずぶううううううううぅぅっ!!
「ぎゃあああああっっ!?」
──そうして、王子様の純潔は散らされたのでありました。
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「…………」
読み終えつつ、だらだらと汗を流して困惑する皆本。
単なる童話のことに過ぎないはずなのに、何故か身体の一部が痛んだ。
──そんな皆本の苦悩をよそに、チルドレンの少女たちは三者三様の寝息をたてて眠りにつくのであった。
おわり