【絶対可憐チルドレン 15th Sence. 瞳の中の悪魔(3) Other Side】
チルドレンが大人に見える――、という催眠攻撃を兵部少佐に受けてしまった皆本。
その催眠が解けぬまま、チルドレン出動要請が下る。
場所は深海。
漁船とタンカーの衝突、沈没事故からの乗員、巻き込まれたダイバーの救助任務であった。
──しかし、顔が全員同じという糸色望しそうな密航者がわんさか出てくるという、想定外の事態が訪れる。
潜水艦の収容人数の限界と、沈没船内の空気の限界。
その両方を鑑みて──皆本は薫一人を連れ、二人きりで沈没船へと乗り込んだのであった。
────のが、数分前。
早速、皆本はこの状況をだいぶ後悔していた。
「寒くてガマンできないよ。――あっためて♪」
そんな言葉とともに冷たい船の床の上で、薫が四つんばいのポーズで皆本ににじり寄る。
普段の10歳の身体ならばまだ皆本も簡単にあしらえたのだった……が、
今の薫はぴちぴちに発育した「オトナ」の身体つきをしていた。
ウェットスーツに包まれてもなお大きく膨らんで自己主張を忘れない大きな胸に、自然と目が向く。
四つんばいのままでふりふりと振られるお尻も、誘うように淫猥なまろみを帯びていた。
それらはすべて、兵部の催眠能力(ヒュプノ)のせいであり、
皆本の脳内物質が操作されて一人にだけそう見えているだけ──なのだが。
人間が視覚から得ている情報というのはあまりに多い。
そして視覚は、すべてを騙し得るのである。
「見えている」だけであるはずのオトナの身体が、視覚から皆本が脳裏に描いた触感までもを再現していた。
まるで本当に、成長したチルドレンにイタズラをしているようで。
昨日の夜中は暴走してしまい、つい「大人にする愛撫」をしてしまった。
つかんだ手をむにゅりと沈ませる柔らかい乳房の感触。
そしてむっちりとした太腿、お尻の煽情的な曲線は、皆本が久しく触れていなかったオンナのカタチ。
それを思い出して、自然とペニスが半勃ちになってしまう。
ウェットスーツの質感がさらに異質な卑猥さを放っていた。
明確に拒絶の言葉を出せずうぶな少女のように後退るだけの皆本に、薫がどんどんと距離を詰めていく。
そしてネコ科の動物が獲物を狙うときにそうするように──皆本に飛び付いた。
「おとなしくしやがれぇ──っ!!」
「どわあぁッ────!?」
慌てて逃げようとする皆本の動きを察知したかのように巧みに動き、一気に床へと押し倒す。
「げへへへ、こんな水の底にゃあ誰も来ねぇよ──!!」
そのまま皆本の股間に手を当てつつ、身体を擦りつけるようにくねくねと動かせた。
スーツ同士が触れ合い、きゅっ、きゅっ──と妙な音が響く。
厚いスーツ越しでも伝わる激しい鼓動。
そして、触れたそばからむくむくと勃ち上がってくるペニスに、薫の顔は気色ばんだ。
「……なんだよ、皆本も期待してんじゃん!?」
「ちっ、違……! これはっ……!」
視線を逸らして否定する皆本であったが、体の一部がソレを肯定している事実は隠しようがなかった。
「うへへへ、身体は正直だな〜ァ?」
いつものオヤジじみた所作全開で、皆本に口づけをしながらべたべたと身体中に触れていく。
片手をペニスに、もう片方を自分の秘所に────、
…あてようとして、む、と眉根をひそめた。
「…ウェットスーツ着たまんまじゃヤれないか。よし、皆本っ、脱げ──!」
まるで脱皮でもするように自分のスーツを脱ぎ捨てながらそう言い放つ薫。
「バッ、バカ言うなっ! こんな所でそんなっ──」
「──破くぞ」
ぞわっ。
底冷えするような薫の声。──念動力で破く、と。
「そ、それがどうした! そんなのいつもの──……」
「…今日は潜水艦の乗組員、いるよなー。…全裸でそこ、戻るか?」
「〜〜ッッ!!」
力ずくでスーツを破かれ、全裸で救出されるか、
自分から進んでスーツを脱いで、何事もなかったように着直して戻るか。
──選択肢は、ないも同然であった。
「…………わかった……」
がっくりとうなだれた皆本が、蚊の鳴くような声でそう呟いた。
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…そのころ、葵と紫穂は。
皆本と薫が二人きりであることを──とても、危ぶんでいた。
密閉空間、しかも下手をすると、光のない世界で命を落としかねない極限状況。
…そんな中に、まるでオヤジ(じみた大人に見える10歳)な少女と、
率直でやさしい(紫穂談)20歳の成人男性が一緒なのである。
──二人が、皆本が薫にレイプされないかと心配するのは当然であった。
…心配する対象がまるで逆な気もするが、彼らにとっては十分真である。
もしも葵が瞬間移動した瞬間に二人がビクッとして離れたら。
もしも薫が何処か大人っぽく変わっていたら。
──「何もなかったよ」とか言いつつ目で会話、帰りの船では手を繋いで──……
「最低!! フケツ!! そんなチームでこの先脇役として生きていくのはイヤ──っ!?」
あらぬ被害妄想を掻き立てられ、泡を食う二人。
──と、途端に醒めたように素に戻った。
「……でも、よく考えたら今更やな」
「……それもそうね。昨日のコトとか考えたら……」
少しだけ安堵する二人。──と、紫穂が更なる危惧を口にする。
「…でも、吊り橋効果とかで心が、なんてことがあり得るかも……!」
「……っ!?」
…結局いくら安心しようとしても、『オトナになるのを薫に先を越されてしまうのではないか』
という危惧に思考が堂々めぐりをしてしまう二人であった。
――仲間であっても、皆本をめぐるライバル、というわけである。
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薫の半ば脅迫めいた要請に従って、ウェットスーツを脱いでいく皆本。
何とか逸らそうと頑張るのだが、視線は全裸で仁王立ちする薫の胸から離せていなかった。
明石家の母も、姉も──巨乳である。
二人に迫られてその胸を腕に押しつけられて、皆本はしょっちゅう前かがみにならざるを得なくさせられていた。
その血族直系である薫の、催眠による未来予想図が目の前にあった。
興奮しているのか、息を荒らげている薫。
──それだけでふるふると揺れる胸。柔らかそうで、張りのある形。
「……さ、皆本。……ヤろー……?」
ふらっ、と倒れこむようにして、裸のまま皆本に身体を預ける薫。
慌ててそれを受け止め、胸板に潰れる胸の感覚に皆本は身をこわばらせる。
――と。
「…………っ!?」
そこで皆本は、抱き止めた薫の身体が氷のように冷え切っていることにはじめて気が付いた。
「お、おいっ、薫!? どうした、こ、これは――」
狼狽する皆本をよそに、薫は少しでも身体と身体の密着面を増やそうとしてすり寄る。
よほど寒かったのだろうか、近くで見ると唇は紫色になりかけていた。
「薫! ……エネルギー放出のし過ぎか……!?」
「――そんなことはどーでもいいからさ…抱いてよ。あっためて……?」
「……っ」
薫は茶化すように言っていたことが、切実な事実であったと知る皆本。
まるでハンマーで頭を殴られたような気分になった。
(……こんなことに気付かなかったなんて――……! 僕は……!!)
「み、なもと……?」
黙りこくった皆本に抱きつきながら、どうしたのかと顔を上げる。
力を失いかけている上目遣いのその視線を受けて、皆本は決心をした。
「――――分かった、しよう。
……けど、これは…君を暖めるためだ。最後までは勿論しないからな?」
自責の念で眉根に深くしわを寄せて、そう告げる。
「ん……しょーがないか。……で、どうすんの?」
薫の問いかけに、顎に手をあてて考え込む皆本。
――薫の体温を上昇させつつ、最も体表面の密着度が高い体勢は何か。
やがて一つの結論に思い至ったのか、顔を上げて薫の目を見据える。
「薫。……僕の上に乗るんだ。…その、僕の、陰茎を押さえて、根元あたりに股間が来るように」
性器を表す言葉を言うのがちょっと気恥ずかしかったらしく、ゴホン、と咳払い一つ。
言うとおりに皆本のペニスの根元にまたがる薫。身体の前面がすべて、皆本と密着した。
「……ん、気持ちいい……」
その言葉は性的なものではなく、冷え切った身体に染み入る人の体温のあたたかさによるもの。
「…あとは、好きにするんだ。このままで体温の確保が出来るのが一番いいんだが……」
そうもいかないだろう? と目線で問う。
「……皆本、ご奉仕されるのが好きなワケか!」
「ちぁが――うっ!!」
セクハラ軽口に、怒号。
いつものやりとりをしてから、不意に真面目な顔になって――それから、苦笑しあう。
「……しょーがねーな、根性なし! ……今日は、皆本のチンポでオナニーするだけで勘弁してやる」
「――有り難いね、それは」
言うと同時に、薫が眼を閉じて唇を突き出す。皆本は身体を曲げ――その唇に、自分の唇を重ねる。
唇も冷たくなっていて、それが皆本の責任感を苛み、罪悪感をちくりと刺激した。
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ぢゅ、ずちゅっ、じゅぷっ……!
皆本に密着したまま腰を前後にふりたくり、薫は自慰をしていた。
無毛の割れ目にペニスを食い込ませているだけでも、どんどん高揚していくのが傍目にも分かる。
興奮の度合いが高いのか、薫の秘所からはすぐに愛液が溢れてびしょびしょになっていく。
またがった皆本のペニスはヌラヌラと光り、その下の太腿にはてんてんと分泌液の跡。
「ひっ、ん……はぁ、はぁっ……!」
顔を紅潮させ、腰をはしたなく前後に振る薫。その速度が、徐々に、目に見えて速くなりだした。
一番気持ちイイところを発見したのか、性器の一点を集中してぐりぐりと押しつける。
また、そうして強く速く刺激されたことで、皆本のペニスも限界に達しようとしていた。
「ふぁっ……、皆本っ、イ、イイ……! イクっっ……!!」
びくっ、びくんっっ!!
まず皆本のペニスで自慰をしていた薫が絶頂し、ぶるっ、と一際大きく身体を痙攣させた。
「あ……はぁ…、ふぅ、ぅ……」
脱力し、ずるり、とペニスから滑り落ちるようにぺたん…と座り込む薫。
腰を下ろした瞬間、ちょうど薫の性器が皆本の亀頭を上から下までなぞるように、触れた。
ずぢゅるる……っ!!
敏感な粘膜同士の接触。
それまで亀頭以外の部分だけを触れられていたこともあり、その一擦りで皆本のペニスも限界を迎える。
「──っっ、僕も、イキ……そうだっ……!」
腰が震える。堪えることができない。
(せめて薫は汚さないようしないと……──っ!?)
汚してはいけない、と考えた途端、目の前の薫ががっしと皆本のペニスを捕まえた。
「!?」
「皆本ぉ……、まだ…寒いからさぁ…、あたしにぶっかけて……あっためて…?」
驚く皆本に、まだ夢見心地のような表情でつぶやく薫。
頬がうっすらと朱に染まっている。
顔射など、十歳のチルドレンには間違ってもするべきではないだろう。
そう理解はしながら──していながら。
それでも、生理現象に逆らうことは出来なかった。
「っ、っくう──っ……!!」
びゅぶっ、びゅるっ、びゅくんっ! びゅるるっ……!!
「あ……んっ……!」
べちゃべちゃと吐き出される白い粘液。次々と薫の肌を汚していく。
「……あったかいよ、皆本……」
髪から、胸、腹、座り込んだ股間には液溜まりさえ出来、脚──。
薫の全身は、余す所なく欲望に染められていく。
粘液に汚されたまま笑う薫の姿は、いつのまにか大人から少女に戻っていた。
その姿に、皆本は不覚にも──胸の、高鳴りを覚えてしまうのであった。
────。
シてしまったことは隠しきれないだろうが、とはいえ精液まみれで助けを待つわけにもいかない。
船内に残されていたタオルなどを使って、皆本は薫を洗っていく。
手早く精液を落とし終わると、無言で薫を抱きかかえた。
「…………」
「……さ、寒いって言ってただろ」
「……うん」
皆本の肌から伝わる体温が、薫に充足感と幸福感を与える。
それらの感情が、枯渇しかけていたチカラに変わる。
薫は皆本の腕に抱かれたままで、柄にもなく柔らかな笑みを浮かべた。
それを間近に見ていた皆本の動きが、止まる。
「…………」
「? どーかした、皆本?」
問うてくる薫に──その笑顔に少しだけみとれたなんて、言えるはずもなく。
今この場に紫穂がいなかったことを感謝しながら、皆本は薫の髪を撫でた。
「なんでもない。──さぁ、二人が戻ってきてくれるまでもう少しのはずだ。
身体、冷やさないようにな」
そう言って、少しだけ強めに薫の身体を抱き寄せる。
薫も何か感じ入るところがあったのか、オヤジのようにわめきたてることはしなかった。
さっきまでのうるさいやり合いが嘘のように、二人は静かに寄り添う。
──互いの、体温を分け合うように──。
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──さて、二人がそうしている間の潜水艦の外では。
光の届かない深海の中で一人の少年──見た目だけだが──が、潜水艦の中の様子を探っていた。
「……ダメだ、とても出て行けない……。
今出て行ったら僕は確実に醜く嫉妬したお邪魔虫じゃないか……」
深海の水圧の中でも単独行動が出来るほどの──能力。
未だ超度(レベル)の底が見えない複合能力者・兵部京介は、一人悩んでいた。
今の状況を邪魔してやりたいという考えと、それはあまりにも野暮だという考え。
ただの嫌がらせに見せかけた、皆本への完全催眠を画策していたのに──、
皆本とチルドレンは予想外に性行為に対して鷹揚だったことや、
薫と皆本の絆も予想外に深かったことが(兵部には)災いした。
(……絶対に拒否すると思っていたんだが──……)
それでも最後の一線を越えないのは──、皆本の強硬な理性か。
…何にせよ、常闇の深海の中で。
兵部は一人寂しく、海底に突き刺さった沈没船の中の二人を眺めるのであった。
おわり
【おまけ】
──余談として。救出に来た葵と紫穂に、ノータイムで性行為はバレた。
ひょっとしたらオトナになっているんじゃ──と覗き込む二人に薫は伏せていた顔をあげ──、
「いやー! さっすが皆本。なんかシャワーみたいに射精してさー!!
一人ぶっかけフェスティバルとかそーゆー感じ?」
げははは、と下品な笑い声で、満面の笑みを浮かべた。
あからさまにホッとする葵と紫穂、呆れた顔をする皆本。
──そして、潜水艦の乗組員の口から、まことしやかに
『ザ・チルドレン担当官の皆本光一はロリコンである』
というウワサが流れるに至るのであった。皆本の肩身が若干狭くなったのは、言うまでもない。
おわり