「彼女が今回の犯人か?」
「黒幕は兵部だがな」
皆本の返答に混じる苛立ちに、賢木は内心で肩をすくめた。(何に苛ついているんだか…ジェラシー?)
皆本はじろりとにらむと、賢木に詰め寄る。
「何か言いたい事でもあるのか?」
「いや…紫穂ちゃんの見込みは?」
内心の動揺をおくびにも出さず、賢木は尋ねる。その答えは薄いレポートだった。
「まだ感想レベルだが。ああ、所持品については後日調査結果を渡す」
そう、彼らの目の前にいる黒巻節子は薄い手術着のみを身にまとってベッドに横たわっていた。
「変なことをするなよ」
賢木の視線を追っていた皆本が釘を刺す。
「わかってるさ。信じろよ」
賢木の一点の曇りもない笑顔に、皆本はため息をつくと「じゃあまかせた」と言い置いて
部屋を出た。
賢木はだらしなく椅子を鳴らしながら報告書を読む。
「黒巻節子。19歳。写真を撮る、という行為を通じて相手とのリンクを繋ぐテレパス、
+ヒュプノの合成能力者。性格的にバベルとあわずに脱退、監視対象になっていたが、
一年ほどまえからロスト、以後消息不明、そんで…紫穂ちゃん曰く、『ヒュプノによる自己
暗示+催眠。外部からの精神本体への干渉は不可能。備考として、何らかのキーワードの存在
の可能性』っと」
賢木は報告書を机に投げ出すと、椅子ごと彼女に近づいた。
彼女は穏やかな寝息をたてて眠っている。その寝顔はむしろ幼くみえた。
「なんであんな爺に従ってんだか…」
彼女の髪をなでながら賢木はつぶやく。答えは知っている。バベルが、そして桐壺局長がどれほど
「エスパーの力の一般解放。それによる共生」を謳っても、所詮エスパーは国家の道具でしかない。
実際、バベルですら上級職にはエスパーはいない。
「柄じゃねえな」
思考を切り替え、彼女の心に手を伸ばす。
いた。暗闇に眠る眠り姫。手を伸ばすと、触れる直前に消え去り、離れたところに現れる。
数度繰り返し、賢木は接続を切る。
「なるほど、こりゃ無理だ」
賢木は立ち上がると机に向かう。
(おそらく、「目を覚まされ」そうになると、その自我を消して、別の「眠っている」自我を
作り出しているのか。つまり、彼女が認めない限り「起きない」わけか)
そしてペンを一本掴むと、再び彼女の元へ向かう。
「なら、物理的に刺激を加えるとどうかな?」
賢木の口元は微妙に歪んでいた。
賢木は彼女の服の前を脱がすと、ペン先で彼女を刺激する。
彼女の体が痛覚に反応する事を確認すると、満足げな吐息をもらした。
「なるほど、体まで麻痺させているのではなく、あくまで精神的なものなわけだ」
賢木は笑う。他人が見ればおそらくぞっとするような笑みを。
賢木はペンを置き、彼女の胸に手を当てると、再び彼女を『読んだ』。今度は心で
無く体を、性感帯を読み取る。記憶する。
そして何の前触れも無く、賢木の両手がうごめきだす。右手は乳房から鎖骨を経て
うなじへ。左手はわき腹からへそを経て内股へ。なでるように、こするように、揉む
ように。緩急をつけて。決して単調にならぬように。
賢木の両手は生き物のように彼女を這いまわる。やがて彼女の頬に赤みがさし、息が
荒くなる。乳首か硬く尖りだし、股が自然に開きだす。それは本能に従う雌の動き。
そして右手が、今まで決して触れなかった陰唇を掻き分け、陰核をつまむと、彼女は
全身を硬直させ痙攣した。
賢木はそんな彼女を満足げに見つめた後、半開きになった唇に自分のを重ね、舌を差し込む。
動かない彼女の舌とからめ、歯茎をこすり、上あごをなめる。
もちろん両手も活動を再開する。
やがて賢木の口はそこを離れ、うなじに痕の残らぬぎりぎりの強さで吸い付き、鎖骨に
ぬめりを残し、胸にたどり着く。乳房を堪能し、乳首に軽く噛み付き、吸い上げる。
へそを蹂躙し、叢を経て、ついに秘所へと達した。
十分に濡れそぼった秘所に舌が進入する。はねようとする腰をしっかりと捕まえ、十分に
犯す。
…やがて賢木が口を離した時には、彼女の秘所は唾液と、それ以外の粘液でびしょぬれに
なっていた。
賢木は手早く服を脱ぐ。引き締まった体と、…馬並みの一物が現れる。
賢木は一物をあてがうと、一気に貫いた。一物の先に彼女の子宮を感じる。
挿入だけでいってしまったらしい、痙攣する彼女の腰を掴むと、賢木の腰が動き出す。
単純なピストンだけでなく、捻るように、こすり付けるように、変幻自在に動き回る。
賢木は彼女にのしかかる。
「ふっ、うっ、はっ、うぅ…」
肺を圧迫された彼女の苦しげな吐息が漏れる。賢木の腰つきはより激しさを増し。
「うおっ!!」
賢木は直前に一物を引き出し、彼女の体に精液をぶちまけた。
「ふう…」
賢木は一息つく。しかし、一物はいまだに天を指していた。
「せっちゃん、2R目行こうか?」
まだ荒い息をつく彼女の目の前に顔を近づけ、賢木は宣告する。
彼女をひっくり返し、後ろから塗れそぼる秘所に突き入れる…
実のところ、賢木がもてないのはひとえにその性豪ぶりが知れ渡っているせいだった。
なにせ、賢木は商売女を病院送りにした「実績」があるのだった…。
「ふーーーーー満足満足」
賢木が彼女を解き放った時、彼女は息も絶え絶えに、瀕死の状態だった。
前で4回、後ろで3回、口で2回、胸で1回しておきなから平然としている賢木に比べ、
彼女がイッた回数は両手両足でも足りないだろう。
「おっといかん。皆本にばれたらうるさいからな・・・」
賢木は後始末を始める。朝の光のなかで。
翌日、いや、当日。
「それで何かわかったか?」
皆本の問いに賢木は黙って首を横に振る。
「くそっ、兵部の目的だけでもわかれば…」
「まあ、あせるなよ…まだ昨日の今日だ。時間はあるさ」
「ならいいんだが…ん、何だ?…わかった。すまないが出動がかかった。調査頼む」
あわてて出て行く皆本を見送りながら、賢木はつぶやく。
「大丈夫。ちゃんとやるさ…ちゃんと、ね」
聞こえていないはずの黒巻の顔がさっと青ざめたように見えた。