【絶対可憐チルドレン 29th.Sence ナショナル・チルドレン(2)〜表紙撮影舞台裏〜】
『野上葵(10)の場合──normal──』
「スマン、皆本はん……。こんなモンしかできんかった……」
手作り用の道具を完璧に揃えて甲斐甲斐しく調理に励んだ葵であったが、
ついうっかり材料の分量を間違えてしまった。
でき上がったチョコレートは、失敗という字を体現するようにどろりと溶けた代物。
それを皆本の前に出しながら、葵は苦渋に顔を歪ませる。
「…………」
見た目からして良くないそのチョコレートを、皆本は無言でひょいと口の中に放り込んだ。
指についた残りも舐めとってからゆっくりと咀嚼し、味わう。
「……み、皆本、はん……?」
恐る恐る、伺うように問い掛ける葵。
その表情を吹き飛ばすように優しげに笑い掛けながら、皆本は告げた。
「──うん、美味しかった。ありがとう、葵」
葵には紫穂のように心を読むことは出来ないが、それでも皆本の優しさは強く伝わってきた。
言葉と同時に頭を撫でられ、頬を染めて俯く葵。
「……おおきに、皆本はん」
──と。甘い空気が漂ったのも束の間、葵の目がギラリと輝いた。
「失敗作は失敗作やけど、食うたからにはホワイトデーのお返しは戴くで……?」
「──っ!?」
「ふふふ、皆本はんはバックが日の丸やからなー。ええもん買うてなー」
「す、少しまからないか、葵……?」
「アカン、ビタ一文まからんで? ──そ、それがウチへの、あ、愛の証や思て……、な?」
顔を赤くしながら、物欲にカモフラージュして想いを伝える葵。
そのワカりやすい告白に、皆本もまた赤面させられる。
「わ、解った。……し、仕方……ないな。うん。仕方ない……」
そして、皆本もまた声を詰まらせながらそれに応えるのであった。
おわり
『明石薫(10)の場合──adult──』
「皆本――っ! ってことでバレンタインのプレゼントはあたしだっ!! 喜べ――っ!!」
のっけからハイテンションで、皆本の前に現れた薫。
その未成熟な身体は衣服の代わりに、赤いリボンだけで彩られていた。
右肩から左脇を通して巻かれ、背中に大きな蝶々結びのついた上半身を隠すリボンと、
タイトスカートの様に巻かれて下半身を隠すリボンの二つだけ。
それ以外の箇所は、お腹も、ぴちぴちとした太腿もすべて剥き出しであった。
「っ!! なっ、何をしてるんだ薫――――!!」
そう叫びながら顔を引きつらせて汗をダラダラ流しながら後ずさる皆本に、薫はじりじりと詰め寄る。
「ホラホラ、このリボン解いて好きにしていいんだぜ? なぁ皆本……っ」
自ら結び目を緩めながら間合いを詰めていく薫から、皆本は必死に目を逸らす。
「だっ、だから! そんな格好はやめろっ……!!」
ううっ、と唸りながら告げる皆本。
その言葉に、薫はキョトン、とした表情を見せた。次いで「ははーん」という顔になる。
「何だよ皆本ってばー。これじゃあ露出度が足りないってんだな?
さすが皆本、要求するプレイの難度が違うな!!」
「――なっ、何だってっ!?」
驚きに目を見張る皆本を尻目に、薫はしゅるるっ、と上下の大きなリボンを解いた。
ばさり、と乾いた音をたてて、薫は一糸纏わぬハダカに――――は、ならなかった。
――否、むしろ全裸よりもなお卑猥な姿に生まれ変わる。
脱ぎ捨てられた長く太いリボンの下から現れたのは、細く短い赤色のリボン。
二本のそれは、薫の両の乳首に可愛げに結ばれていた。
小さな胸の頂点で勃起した乳首の根元で、アクセサリーのように揺れる。
「ちょ、っ……!!」
皆本の静止も間に合わず、薫は次に丸出しになった下半身、秘所を指で割り開いた。
にちゅ、という湿音と共に、陰唇が開かれる。
リボンがある箇所は、両の乳首だけではなく。開かれた女陰の――、
その狭間、女の娘の一番敏感な箇所――クリトリスに、三つ目のリボンが結ばれていた。
ほかの二つと違い、リボンはすっかり愛液を吸い込み濃い赤色に変化し、しんなりとしてしまっている。
薫の指先がくすぐるように自身の膣口の周囲を蠢く。
ぴちゃぴちゃと水音を響かせながら、淫花はゆっくりと濡れ開いていた。
目の前の状況を石になったように見つめる事しかできない皆本の目に焼き付けようと、薫は乱れていく。
「はぁ、んっ……。ふふ、皆本ぉ……、コレで、イイん……だろぉ……?」
ぶるりと身体を震わせて艶声を放ちながら、薫は皆本を壁際に追い詰めていくのだった。
おわり
『三宮紫穂(10)の場合──abnormal──』
指先でつまんだ、スティック状のチョコ菓子。
先端を齧ったソレを、唇を尖らせながら殊更にエロティックに見えるようにして口から離す。
そして齧った箇所を向けて、紫穂は皆本に差し出した。
「はい、皆本さん。食べかけのチョコあげる♪」
「あのな、紫穂……」
呆れた表情をする皆本に、紫穂は更に言葉を重ねる。無邪気そうな雰囲気が一転した。
つい、と、スティック菓子を弧を描くように振る。
皆本の視線がそれを追うのを見つめながら、にんまりと悪女の笑みを見せた。
「――それとも、コレを…………お尻に、挿れて欲しいのかしら?」
コレ、と差したスティックを、舌を伸ばしてちろりと舐める。
それだけで、まるで紫穂がフェラチオをしているような錯覚が皆本の頭を過ぎる。
「……っっ!? な、なんでそーなるッ――!?」
一瞬見惚れてしまった事実を覆い隠そうとするように、声を張り上げる。
「……最近、そういうのが流行りらしいから。皆本さんも、ソレっぽいし……」
まったく予想外の言動に狼狽する皆本に、紫穂はしれっと告げる。
くるくると動かされるスティック。まるで泳ぐように。その動きさえも、淫靡に感じられた。
「ぼ、僕にそういうシュミはないっ!!」
皆本が必死に否定をする。怒りにか、それとも別の感情にか、僅かに顔を赤くして。
その様子を見て、紫穂は心底可笑しそうに笑った。
「ホントかしら?」
「当たり前だっ!!」
嘲笑を浮かべて問い掛ける。それに応ずる怒声。
それが虚勢に過ぎないと、接触感応能力者(サイコメトラー)である紫穂は確信していた。
顔に浮かんでいる笑みが、どんどん深くなっていく。
やがて、しばらくすると口を開く紫穂。罠に引き込む言葉を紡ぐ。
「……なら、確かめてみてもいいわよね……?」
その言葉が既に、引き返すことの叶わないソドムの入り口と言えた。
あとは扉を開き、堕ちゆくのみ。
おわり