【絶対可憐チルドレン 36th Sence. パンドラの使者(1) Other Side】
まるでそこが自宅のように実に三週間もの間、皆本の家に泊まりこみ続けていたチルドレンたち。
三人が実家へ一旦帰り、修羅場を回避して非難してきた賢木と皆本の二人だけとなる皆本宅で、
これ幸いとばかりに皆本が掃除と選択に勤しんでいた――その平穏を突き破るように。
左目から頭にかけての痛々しい縫い目を持つ、鼻から下を包帯で巻いた巨体の偉丈夫と、
前髪を引き詰めて頭頂部で結い上げたパイナップル型の髪型、
ノースリーブの、脚を少し上げれば下着がすぐに覗いてしまいそうなミニスカートのワンピース、
そして横縞のハイソックスに身を包んだ少女が、
突如、皆本宅を襲撃した。
少女の名前は「澪」。
兵部京介が主宰するエスパー組織「P.A.N.D.R.A」の一員で、葵とは別種の瞬間移動能力者(テレポーター)。
賢木をテレポートで冷蔵庫と同化させて動きを封じ、皆本を拘束――誘拐する。
そうして、薫へ挑戦状を残した。
――普通人(ノーマル)と仲良くしているようなエスパーなど、「女王(クイーン)」だとは認めないと。
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両手両足を拘束された皆本を乗せた大型のワゴンが、深夜の街道をひた走る。
運転手は先の人造人間(フランケンシュタインズモンスター)じみた偉丈夫。
荷台では、終始眉間に皺を寄せたままの澪と皆本が会話を続けていた。
「……どういうつもりだ!? 薫を「女王(クイーン)」と呼ぶってことは、君も兵部の仲間なのか!?」
「うるさいオジサンね。黙らないと、口をふさぐわよ!!
……こんなヤツの言いなりになってる奴に、少佐を取られるなんて許せるわけないのよ!」
少しでも多くの情報を得ようとする皆本に、澪の口から本音が漏れる。
頬に少し赤みが差し、にわかに息が荒くなった。
――つまりは、兵部に想われている薫への嫉妬であると。皆本は悟った。
「君……!! 自分が何を言っているのかわかってるのか!? あんな年寄りの変態――」
そこまで皆本が口にした瞬間。
皆本の背後――車の壁の空間が歪む。そこから生えるように澪の両手が現れる。
「〜〜ッッ!?」
極限定的な瞬間移動。手足を封じられていた皆本に抗うすべがあろうはずもない。
ガムテープを伸ばし、皆本の口に貼り付けてから腕を元に戻す。皆本の言葉は完全に封じられた。
「む――――っ!! む―――――――――!!」
「今度少佐の悪口を言ったら、鼻もふさぐ!!」
額に青筋を立てて、皆本を睨みつける澪。
――と、ふと。怒りに歪んでいた澪の顔が、悪戯――、
というよりは、仕返しを思いついたような嗜虐に満ちた表情を浮かべる。
「そうね。こいつを痛めつけて、あのガキに思い知らせてやるわよ」
少なからず揺れる車内で、澪は危なげなく立ち上がる。
棒状の三連イヤリングが互いに擦れ合って、チャリチャリと軽い金属音をたてた。
ヴュ……!
澪の両手が瞬間移動し、皆本の脚の近くに現れる。
ガムテープでぐるぐる巻きにしていた両足に触れると、一旦それを破いて解き放つ。
そうしてから改めてガムテープで両足を固定した。
――今度は開脚状態で、皆本は車の荷台の隅に磔にされてしまった。
「む、む――っ!!」
眼鏡の奥の目を見開く皆本。
腕が再び瞬間移動して元へ戻るのに合わせるように、皆本を見下ろす位置に立つ澪。
ゴリッ――!!
「むぐッ!?」
少女らしい、細く長い脚が持ち上げられる。
次の瞬間、底の厚いかかとのブーツが皆本の股間に打ち込まれた。
ごり、ごりっ……!!
ジーンズのデニム地を通して、少女の容赦ない踏みつけが続く。
幸いなのは、縦方向に対して前に向かって踏みつけるようにされていることと、
澪自身にそれほど力がないことだろうか。
仰向けの状態であったなら、片方くらいは潰されてしまっていたかもしれない。
――とはいえ。
股間に刺激を受け続けて、健康的な青年(兼主夫)である皆本(の一部)が黙っておれようもなく。
前後に揺らしていた澪の脚が、その裏に変化を感じて止まる。
「むぐ、むぐぅぅっ!!」
「……何よ、少佐のことを変態とか言ってる癖に。オジさんの方がよっぽど変態じゃない!?」
固い生地を通してさえ容易にそれと判るほどに、皆本のペニスは隆起してしまっていた。
「ハッ、何よロリコン。変態、変態っ、変態っ!!」
かがんで皆本の顔に自身の顔を突きつける澪。唾を飛ばしそうなほどに繰り返し罵倒を続ける。
「む゙〜〜ッッ!!」
動かない頭を必死に横に振って異論を訴えようとする皆本であったが、
続けて行われた澪の行動に驚き、ピタリと動きを止めてしまった。
するり――……。
澪の手が短いスカートの中に潜りこんだかと思うと、微塵の躊躇もなく。
黒のワンピースの下に穿きこんだ、白のショーツを――脱ぎ去ったのである。
座り込んだ状態の皆本からは、スカートの奥の未成熟な秘裂が丸見えであった。
仁王立ちをしている澪の脚の付け根は皆本の股間を踏みつけていたことで少なからず興奮してしまったのか、
割れ目がわずかに開きかけてピンクの陰唇を覗かせていた。
脱いだばかりのショーツを指先でくるくると回しながら、澪はフン、と鼻を鳴らす。
「オジさんの行動、ちょっと見てたんだけどさ。
――10歳のガキの下着まで洗うなんて、ちょっと変態すぎなのよ!!」
皆本は何気なく、それこそ日課として行っていた洗濯であったが、
外部の人間から見てみれば10歳少女3人の下着を、20歳成人男性が
そう言うと、澪の手が瞬間移動する。皆本の頭の上の空間が歪み、出現する両手。
手に持ったショーツを――股布の部分が皆本の鼻面に合うように被せた。
「んぅぅぅぅっ!?」
下着の触れた箇所から伝わってくるほのかな温もり。
鼻腔を通り抜ける少女特有の性器のニオイに、皆本は困惑の極みに陥った。
兵部に心酔している少女が、どうしてこんなことをするのか理解出来なかったからである。
しかし、そんな頭とは裏腹に皆本の身体は性臭に敏感に反応してしまう。
ビクビクと更に強く股間が盛り上がり、全身を走る悦楽に脊髄が震えた。
それを目の当たりにした澪の顔が、さらに侮蔑に歪む。
「フン。敵にこんなことされて、そんなトコ腫らして!!
それで変態じゃないなんて言い訳はできないわよ!? このド変態っ!!」
貼り付けられたレッテルがバージョンアップすると同時に、澪は再び皆本の股間を踏みつけにかかった。
今度はさっきよりも更に強く。車の壁に手をついて、全体重を足にかけて。
ぎりぎりぎりぎり……ッッ!!
「んぐううううぅぅぅっ!?」
愛撫とは程遠い衝撃に、皆本は嫌な脂汗を垂らして呻き声を上げる。
それでも、澪の踏みつけの強さが止む気配はまるでなかった。
ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり……ぃぃぃっっ!!
「アハハハハッ、いっそ潰れちゃえばいいのよ!!」
暴走した思考のまま、笑い声をあげてかかとをぐりぐりと左右に動かす澪。
局部である陰嚢が転がされながら圧迫を受け、ペニスの竿の部分が足の裏で皆本自身の下腹部と挟まれて踏まれる。
快楽と紙一重の激痛。
そして本当に潰されてしまうのではないかという恐怖に、皆本の精神がオーバーヒートしていく。
果てに、車の揺れに合わせるようにして一際強く踏まれた瞬間に、全てが弾けた。
「ンッ、んぐ――――ッッ!!」
ぎゅりぃぃぃぃぃっ――――!!
びゅぶっ、びゅ、びゅくっ! びゅるるっ、びゅぶっ、びゅぶぶっっ!!
「ん、……んぐッ、――――ッ……」
電気椅子にかけられた囚人のように、皆本の身体が何度も跳ねる。ビクビクと。
口が塞がれているため皆本は鼻で息をするしか出来ず、鼻で必死に呼吸を繰り返すが――、
やがて耐え切れなくなったのか、意識を手放した。
澪の足の裏に、狭いジーンズの中で暴れ狂い精液を放出するペニスの感触が靴越しに伝わってきた。
皆本が意識を失ってもなお射精は続く。
放出が収まったのは、もう車が予定の場所に到着しようかと言う頃であった。
足に感じるペニスの脈動が完全に収まってから、ようやく澪は足を皆本の股間から離す。
射精は収まったが、皆本のペニスはまだ勃起したままであった。
「……っ、フン、運が良かったわね」
その様を見て、知らずにごくり、と喉を鳴らす澪。
意識を失った皆本を見下ろしたまま、無意識に舌で乾いた唇を舐め潤しながら、
きっと今頃自分の残した挑戦状を読んだであろう薫に思いを馳せる。
「来なさい、明石薫――「女王(クイーン)」……!! 少佐はあんたなんかに渡さないのよ!!」
そうして、外の見えない後部荷台の窓から夜の闇を透かして見るように、
中空を睨み上げるのであった。
おわり