【絶対可憐チルドレン 41st Sence. 荒野のエスパー(1) Other Side 後編】  
 
ぎしり――。  
紫穂の頭の両脇に置いた手が、ベッドのスプリングをきしませる。  
組み敷いた少女の顔を直下に見下ろし、かすかに目を伏せる皆本。  
伏せる前までは未だ見え隠れしていた迷いの色は、再び紫穂と視線を合わせると掻き消えていた。  
 
「……よし、行くぞ……っ」  
 
片手で乱暴に自身の眼鏡を取ると、投げるように枕元に放る。  
そうするや否や、皆本は紫穂の唇に吸い付いた。  
「ん……ッ」  
いきなりの積極的な行動であったが、紫穂もまたそれに従順に応える。  
二人の舌が遠慮なしに絡み合い、相手の唾液を一滴でも多く取り込もうと貪欲に動く。  
 
くちゅ、くちゅっ……、くちゃ、ちゅぱっ……。  
 
口での呼吸を忘れ、お互いの鼻息でこそばゆい思いをしながらも唇同士の交合は止まらない。  
「ン……っ、はぁっ……」  
やがて紫穂が苦しげに口で呼吸を求めるように顔をずらす。  
それを追いながら少女の柔らかい頬に舌を伸ばし、愛撫の場所を切り替える皆本。  
頬から耳へ。耳たぶを咥えて軽く引っ張り、中に優しく息を吹きかける。  
全体を口内に含み、食みながら耳朶の隅々を味わい尽くしていく。  
 
(――も、もうっ……、私はっ、葵ちゃんみたいに耳は弱く……んっ、ないの――にっ……)  
 
そう思いつつも、紫穂は律儀に耳をねぶられる感触に反応してしまう。  
サイコメトリーで伝わる皆本の表層意識は『普通に大人として扱うような愛撫』であった。  
がっつくようなものではなく、身体の末端からゆっくりと昂ぶらせていくそれ。  
それ自体は紫穂にとって嬉しいものではあったが、  
未だ要所に触れようとしない――焦らされるような触れ方、に身体がむずむずとし始める。  
「……っっ」  
 
身じろぎをして、紫穂は寝たままぶるぶると腰を持ち上げた。  
組み敷いた皆本の脚に自身のしとどに濡れた股間を押し付けるようにして、先へ進むように促す。  
「ん……んぅっ……!」  
悶える姿を認めて皆本はぱちくりとまばたきをする。  
――と、わずかに身を引いて紫穂と距離を取り、微笑みかけてみせた。  
 
「判った。……次、だな」  
言葉にしなくても、それは伝わること。  
それでも律儀にそう呟いてから、皆本は片腕で紫穂の上半身を抱きかかえると  
脱ぎ掛けで胸元にたわんだままのネグリジェをするすると引き抜いて脱がせていく。  
「……っ」  
かすかにむずがるような声。ほっそりとした首元と鎖骨が露わになる。  
ネグリジェで一旦遮られた視界が開けると、紫穂は恥ずかしげに皆本から視線を反らした。  
「……みなもと、さんっ」  
 
「裸に……するよ」  
 
それは紫穂の意思を問うものではなく、ただの確認。  
羞恥に目を伏せて頷く姿を認め、皆本は紫穂の両足を抱え上げる。  
「ひっ」  
柔らかそうな生地のショーツに包まれた小ぶりなお尻を撫で回す皆本。  
その指先を下着の端にかけると、薄皮を剥くようにして最後に隠された肌をさらけ出していく。  
「あ、あぁっ……、そんなとこまでっ」  
 
脱がせながらお尻の割れ目に沿って触れるか触れないかのところで這わされる爪の先端。  
総身に鳥肌を立たせながら、紫穂はびくびくと震えて喘いだ。  
 
「――身体のナカは……大人と同じみたいだな……」  
皆本は困ったように微苦笑する。  
担ぎ上げた脚から下着を抜き取ると同時に、秘所と股布の裏側が粘質の糸を繋いだからであった。  
わずかな恥毛はしっとりと濡れて秘部の土手にへばりつき、濡れ方の凄さを物語る。  
脱がせたショーツを置くために皆本が脚から手を離すと、紫穂はごく自然に脚を開いた。  
 
露出した秘所が皆本の目に触れて、陰核が独りでに勃ち上がり激しく自己主張をする。  
 
恐らくは未だ初潮を迎えていないであろう紫穂であるのに、  
その秘唇はぱっくりと開いて後から後から淫液をこぼし続けた。  
 
「はぁっ、はぁ……、んッ。  
 ――いいわ、皆本さん。来て、……来てちょうだい。もう、……っ」  
 
広げた脚の付け根に手をやり、紫穂は陰唇を限界まで開いて内襞を外気に触れさせて見せる。  
最奥から湧き出した愛液が紫穂の戸渡りを、肛門をも濡らしてシーツにアトをつけていく。  
「ぁ、あんまり……待たされるのも、辛いの……っ」  
濡れた瞳で皆本を見上げた。  
 
それに呼応するように、皆本は慌ててベルトを外すとスラックスを脱ぎ捨てた。  
下半身をトランクス一枚にして、膝立ちで紫穂の開いた脚の間に立つ皆本。  
 
紫穂が、身体を起こしながらそれに手を伸ばす。  
ずるり――。膨らみきったトランクスの内側から、反り返った皆本自身が飛び出した。  
痛そうなほどに膨れ上がった亀頭は、その先に半透明の先走りを滲ませる。  
 
肉茎の太さと、膣口の大きさは傍から見ても吊り合っていなかった。  
それは当事者である二人とも十分判っていることではあったが、何も言わない。  
 
むしろ、二人ともがその大きさの差に胸を高鳴らせているようですらあった。  
皆本は既に決意を決めていたから紫穂を抱くことに躊躇おうとはしなかったし、  
紫穂は逆にそれに引き裂かれることさえ望んでいた。  
 
トランクスを放り投げて、皆本は紫穂の腰を掴んで引き寄せる。  
一度身体を倒して軽く口づけをすると、赤銅色の亀頭の先端を秘所に突き立てていく。  
つぷ……っ。  
 
「――ぁ――……!」  
息を吸い込みながら、身体をこじ開けられる感触に叫びを上げる紫穂。  
ぐしょぐしょに濡れそぼっているとはいえ、それだけでどうにかなる大きさの差ではなく。  
肉棒の太さで、膣壁はギリギリと引き伸ばされて犯されていく。  
 
ず、ずずず……っ、ずぶ、ずぶぶぶぅっ――、ず、ずず……!!  
 
「は、ぁぁ……っ。んッ!! んぁっ、ぁぁっ!」  
「――っっ、なるべく、痛くないように……するからな……」  
 
皆本は、膣中のあまりの狭さに眉根を寄せて歯を食いしばった。  
腰の奥にこみ上げる射精感を必死に堪えながら、乱暴に動かしたい気持ちを抑制して腰を進める。  
膣内それ自体が狭く、油断すれば皆本のペニスを押し出そうとする抵抗感ばかり。  
それがある程度進んだところで、紫穂はわずかに目を見開いた。  
「ぁ……――」  
 
恐らくは、破瓜の瞬間。  
細い鮮血の一筋が、愛液に混じって薄まりながら流れて落ちる。  
痛みで一瞬顔が悲痛に歪む。  
――が、すぐにそれは泣き出しそうな表情となり、ひぃひぃと喘ぎ喚くようになった。  
 
 
まだ性体験が少ないはずの若干10歳の少女である紫穂が、  
初体験であるのに高い順応性をもって悦楽を感じていることにはワケがある。  
最高超度(レベル)の接触感応能力(サイコメトリー)を持ったせいで  
人の様々な汚いことも、猥雑な本質もすべて知ってしまった紫穂は、呆れるほどに早熟であった。  
人目を盗んでの自慰も――数え切れない。  
 
すべてが、今このときの。  
皆本の腕の中で乱れるときのためのものであったと、  
痛みが徐々に悦楽に変貌していくことに狂いそうになりながら紫穂は実感していた。  
 
 
「ぁ、あ、ぁぁっ……!?」  
未だ皆本のペニスの幹は4割ほどが体外に残っていたが、  
やがて紫穂の膣内いっぱいにペニスが埋まりきって先端は子宮口を小突いていく。  
「はうっ、ンッッ! ァ、み、皆本さんっ……」  
 
隙間なく詰め込まれたペニスを、下腹に力を入れながら引き抜いていく皆本。  
粘膜と粘膜、肉と肉が強く擦れ合いながらピストン運動に変わっていく。  
溢れる恥液は垂れ落ちることなく、肉棒と膣襞の擦り合わせで白く泡立ち卑猥に飛散した。  
 
「ひぎっ、あっ、開いちゃうっ、ッ! あううっ!?」  
「っ――、紫穂っ、もっと、ゆ、緩めてくれっ……!」  
 
紫穂は身体の中心に穴を開けられた――と錯覚するほどの痛み混じりの快楽に泣き叫ぶ。  
対する皆本も、ペニスをぎゅうぎゅうと締め付ける感覚に我慢の限界を迎えていた。  
 
粘り気のある泥を何度も踏みつけるような、咀嚼音じみた音が響く。  
ぐちゅぐちゅと幾筋もの糸を引きながら肉茎の出し入れが続いた。  
 
「っ、っ――……。スマン、紫穂、僕はもう……っ」  
 
固く目を閉じて震えながら、こみ上げる衝動に皆本はそう詫びの言葉を口にする。  
射精を必死に押さえ込んでいたつもりではあったが、  
あまりの心地よさに脊髄が熱を持ったようにさえ感じた。射精が近い。  
 
「すぐに、抜く……」  
「――いいわ、皆本さん。膣内に――――出して」  
 
堪えながら腰を引きかけた皆本の腰に脚を巻きつけて、紫穂は妖艶に笑った。  
「な、っ――……」  
「まだ、キてないから。……出しても……っ、ふぁっ! で、デキな…ぃからっ……!」  
 
告げた紫穂もまた、腰の動きの早まりに強く昂ぶり出す。  
一瞬戸惑った皆本であったが、すぐに思い直した。  
杭を打ち込むように、紫穂の子宮にも入り込めと念じるようにペニスをねじり込んでいく。  
 
そして、蜜月の終わる最後の一突きが紫穂の胎内を抉った。  
子宮の中に亀頭が収まってしまったのかと二人が錯覚してしまうほどの強烈な快楽が貫く。  
ぐりぃぃぃぃっ――!!  
 
「い、イクぞっ。っ――! あ、ぐっ……!!」  
「やっ、あ、ぁぁぁぁあぁっ、ひぃぃっ、何これ、変ッ。あ、ッッ! あぅうっっ――!!」  
 
皆本の首に手を回し、滂沱の涙を流しながら絶叫する紫穂。  
その腰を押さえつけてペニスの先を子宮口に強く擦り付ける。  
 
爆発するように精液が吐き出されて、胎内のすべてを満たしていった。  
「あ゙、あ゙ぁぁぁっ……、ァ……」  
 
最後の一突きの後は、皆本は動かない。動く必要を感じていない。  
ただ無言で紫穂に強く縋りつきながら、すべての精液を一滴残らず注ぎ込むことだけを考えていた。  
 
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情事を終えてから、皆本が紫穂の膣内に居た時間と同じくらいの間二人は抱き合っていた。  
すべてを少女の内側に叩きつけたペニスがゆっくりと力を失っていく。  
それによって塞き止めるものを失った精液がごぼりと音をたてて逆流する。  
 
まだ熱を多分に持った白濁に身震いし、紫穂はわずかに鼻にかかった声をあげた。  
「ん――、ァっ……」  
ペニスを抜ききった皆本が、脱力してベッドに大の字になったままの紫穂を気遣う。  
寝起きのときよりも酷く額にへばりついた前髪を払ってやり、ティッシュであちこちを拭った。  
 
「――あ、もったいない……」  
 
皆本の手がこぼれ落ちる精液を拭った瞬間、紫穂はそう呟く。  
「もったいないって……。まったく、君は……」  
紫穂の「そういう」反応に皆本の手が一瞬――止まった。  
困ったような顔をしながらも手を動かし、自身が吐き出した情欲の痕跡を拭き取り続ける。  
 
「そうよね。何回でも出してもらえばいいんだもの、もったいなくないかしら?」  
 
「っっ……!!」  
落ち着いて余裕を取り戻したのか、悪女の笑みを取り戻した紫穂の言葉。  
それを聞いて、今度こそ皆本は凍りついた。  
確実な既成事実を持って、紫穂がどうするつもりなのか――。  
錆びついた金属のように満足に動かない首を動かして、恐る恐る視線を合わせる。  
 
そこには、――拍子抜けするほどにいつも通りの紫穂がいた。  
 
「大丈夫よ、皆本さん。……壊さないから」  
 
「何を」と聞くまでもなかった。  
何もかもをだろう。  
今の、皆本とチルドレン三人の関係のすべてがあまりにも大切なことは確かめるまでもない。  
少しでも疑った自身を、皆本は後悔する。  
 
「――そう、か」  
そうして紫穂の言葉に安堵をしつつ、皆本は少しだけ残念に思う自分の内心に気づいていた。  
自身の不行状を棚に上げて何を――と、その思いを心の奥深くへしまい込む。  
振り切るように紫穂に触れていた身体を離すと、ベッドを降りる。  
 
「シャワーを浴びた方がいい。……シーツも変えておかなくちゃな」  
目を合わせずにそう言い残して、皆本は服を掴んで寝室を後にした。  
 
 
言葉を発さずにその姿を見送った紫穂は、皆本が去ってから自身の掌を見つめる。  
皆本が少しだけ感じた紫穂「だけ」を愛しく思うココロは、離れる瞬間に読み取っていた。  
 
「今は――それでもいいか……な」  
 
指先を陰部に沈ませて、胎内に残った精液をすくいだして舐め取ると唇を笑みの形に歪ませる。  
そして紫穂は、どうにも形容しがたい淫蕩さと慕情を併せ持った貌をした。  
 
――これで、果たして未来は変わったのかは、現在の住人には判らない。  
ただ、紫穂は急激に大人びた二次成長を始め。  
そして皆本は――自責の念に悩まされつつも、少し奔放になった……のかもしれない。  
 
 
おわり  
 
 
 
 
【蛇足―あるいは本編サイドストーリーへの回帰―】  
 
 
午後――ちょうどおやつどき。  
二人の少女が、玄関に靴を脱ぎ散らかしながら室内へ駆け込んできた。  
 
「たっだいまーっ!!」  
「紫穂、起きとるかー?」  
 
元気な声を出しながら、薫と葵が学校から皆本のマンションへと帰宅してきたのである。  
今日は学校で何があった、これがあった、宿題はこれで――、  
そうかしましく話を続ける様子を、皆本は頬杖をついて見ていた。  
 
「? どーした皆本、ボーっとして」  
「――いや、学校が楽しそうで良かったなと思ってね」  
 
薫の言葉に、優しく笑って皆本が答える。  
それは天才と呼ばれ、学校を追われるように後にした自分にあまり出来なかった  
楽しい学生生活を彼女たちがしていることが心底嬉しかったからでもあった。  
 
 
が。そんな感情の機微を薫が読み取ろうはずもなく。  
 
「ま、――まさか皆本っ! 紫穂が起きないのをいーコトに、あんなコトこんなコトっ……!!」  
「そんなっ、皆本はん!? 信じとったのに――!!」  
「大丈夫よ薫ちゃん、葵ちゃん……。私なら、大丈夫だから……っ……!」  
 
ゴシップ雑誌から仕入れた知識で騒ぎ立てる薫と、それに乗って幻滅する素振りを見せる葵。  
さらにそれを煽るように、紫穂がよよよと嘘泣きを始めた。  
 
――事態の真偽を確認するでもなく、動き出す子供たち。  
薫のサイコキネシスが皆本を壁にめり込ませ、  
そこに葵のテレポートで飛んできた花瓶やらおやつがぶちまけられる。  
二人に隠れて、紫穂は面白そうに笑っていた。  
 
「すっ……、するか馬鹿――っ、うわっ、や、やめっ、ぎゃ――――ッ!!」  
 
少しだけ昔に戻ったようなやり取り。  
チルドレンと皆本の関係が先へ進むには、まだ時間が必要に――見えた。  
 
 
おわり  
 
 

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