夜の闇にまぎれて2人のエスパーが空を舞う。向かう先は郊外の廃ビル。
「――どうしても、やらなきゃいけないのか?」
「あぁ、彼女は明らかに彼の側だ。このまま行けば確実に敵となる」「しかも、手に負えないほどの強敵にね」
「そんなっ・・・」
「彼女は必要な犠牲なんだ。わかってくれ」
「でもっ!」
何かを訴えようとする女の声を遮り、男は続ける
「いいかい?彼女は全てのエスパーの未来のために死ぬんだ。これは名誉な事なんだよ」
「・・・わかったよ。」
諦めたのか、最初からやらなければいけないとは分かっていたのか。いずれにせよ彼女は了承した
「すまない。やはり僕がやろうか?君じゃ辛いだろう」
「いや、あたしがやるよ・・・逃げちゃ、駄目な気がするから・・・」
「そうか、本当に残念だよ・・・送っていこうか?」
「いや、いいよ。1人で帰りたい気分なんだ・・・」
そう言うと女は廃ビルから出て行く。帰る所は――最愛の仲間の元へ、殺すべき敵の元へ、愛する人の元へ・・・
チルドレンは中学生となっていた。予言の実現は刻々と近づいている
――朝7時。チルドレンが中学校へと向かう時間である
「じゃぁ皆本さん。いってきます」「うち、今日はちょっと遅くなんねん。部活でな。ほないってきます〜」
「あぁいってらっしゃい――?」
椅子に座ったままボーっとしている
「おい薫?どうかしたのか?」
「――へ?あ、あぁ何でもないよ。いってきます。」
「?・・・うん、いってらっしゃい」
釈然としないながらも手を振り送り出す皆本
――通学路。他愛のないおしゃべりをしながら学校へと向かう2人。
そこに薫が話題を切り出す
「そ、そういえば紫穂〜。あたしこの前この辺にさ良いランジェリーショップ見つけたんだ〜」
「あら、いいじゃない。薫ちゃんがいいって言う程の店なら一度は行ってみたいな」
そんな2人を飽きれた様子で葵が注意する。
「アホな事言っとらんではよ行くで。遅刻したら大変やで」
しかし、そんな事はお構いなしな2人である
「だーいじょうぶだって、近いし」
「こういう事が関係してるときの薫ちゃんは止められないわ。葵ちゃんだって知ってるでしょ?」
諦めのため息を漏らす葵
「しゃーないなぁ・・・もし遅れても庇ってやらへんでな」
「さっすが葵!話が分かるねぇ〜」
「ごめんね。葵ちゃん。おわびに私が直々に葵ちゃんの分まで選んどいてあげる。これで皆本さんもイ・チ・コ・ロね」
いらんわっ!と顔を赤くしながら歩き出す葵。
「――で、どこなの?そのお店って?」
「あぁこっちこっち。」
そういうと薫は紫穂を路地へと導く・・・そして・・・
「すっごーい。ホント、薫ちゃんの言う通りね〜」
「だろ?だろ?この前偶然見つけたんだ。」
いろんな意味で関心する紫穂と物凄く嬉しそうにオヤジ笑いを浮かべる薫
「これなんてどうかしら?」「いや、むしろこっちの方が良くないか?」
中学生とは思えないチョイスで盛り上がる2人
「そういやここさ、試着室があるんだ。無駄にでっかいのが。いこーよ」
「そうね。行ってみましょうか」
そうして2人は試着室へと向かう
「――確かに・・・普通のところより大きいわね。なんでかしら?」
「さぁ、わかんないけど大きいだろ?2人で入っても十分広いくらいだからな。」
何気なく言ったつもりの薫。だが紫穂がそんなおいしいネタをみすみす逃がすハズは無く・・・
「じゃぁ・・・2人で入っちゃおっか。」
「・・・・・え、えぇぇぇぇぇ!?」
「あら?いやだった?いやならいいけど。」
少し口を尖らせる紫穂。
「いやいやいや!むしろ願ったりなんですけどね!まさかそう来るとは思わなかったからさ」
「良かった。じゃぁ・・・入りましょうか。」
悪女の笑みを浮かべ薫を招き入れる
順々に服を脱ぎ始める2人。2人が下着だけの姿になるのにあまり時間はいらなかった
「薫ちゃん。最近胸が出てきてない?」
「あ、やっぱり、やっぱりそう思う?」
心底嬉しそうな薫。そんな薫に紫穂は――
クリッ――突然薫の胸の突起をつねる紫穂
「ひゃぁぁぁぁあ!?」「な、何すんのさ!紫穂」
「いや、薫ちゃんって感度良いのかな〜?って思ってね」
何の悪びれも無く言う紫穂
「いや、思ってねって・・・」
「でも・・・実際気持ち良くなかった?実は感度良いのね。薫ちゃんって」
とびきりの笑みを浮かべ問う
「そ、そんな事・・・な・・・」
ギュッ!――
「い、ひゃぁぁ!・・・ちょ・・・もう駄目だって・・・」
「気持ち・・・良いわよね?薫ちゃん?・・・」
「違っ・・・気持ち良くなんか・・・」
誰がどう見ても虚勢にしか見えないそれだが紫穂は更に笑みを大きくする
「あれ〜?おっかしいなぁ。気持ちいはずなんだけど・・・なぁ!」
――ズブッ!
いきなり下着の横から2本の指を恥部へと差し込む。
グチュ、グチュ、グチャ――
「やめ・・・紫穂・・・ひゃぁん!」
指を鍵爪のようにして、読み取った薫の性感帯を容赦なく抉る
ヌチャ、ヌチュ、ズチュ――
「意外と強情なのね。逆らったっていい事ないのに・・・これならどうかしら?」
ズブブ・・・紫穂の指がもう1つの穴へと侵入する。
未開発の穴を紫穂は容赦なくかき回す。
「ひぁ?ひっ、やめ・・・」
「イ・ヤ」
「ひぃ、ひゃ、ダメ・・・んぁぁぁぁぁ!!」
プシュ、プシャ―――!
「あら?もしかしてイッちゃった?薫ちゃん」
能力を使うまでもなく、わかりきった事を聞く紫穂
「ど・・・して・・・?」
当然といえば当然の、でもちょっと意外な問いに紫穂が一瞬止まる
「どうしてって・・・うーんと・・・えっとね・・・」
言葉に詰まりながらも続ける
「ほら、なんか最近悩んでるみたいだったじゃない?」
「で、やっぱり、悩んでる時はコレかな〜って思ったりして・・・」
最後の方は顔を赤くし、しどろもどろな紫穂。
普段では絶対に見れない紫穂の赤ら顔。自然と笑いが漏れる。
「――コレかな〜って・・・他に何か思いつかなかったのかよ?」
「し、仕方ないじゃない。ホントにあれしか思いつかなかったんだから」
まだ顔が赤い紫穂。こんな顔が見れるのは、今となっては自分だけだろう・・・
「――ありがと紫穂。さっ早く行かなきゃ学校に遅れちゃうよ」
「そうね・・・って薫ちゃん、下着はどうするの?グショグショだけど・・・」
「うっ・・・仕方ないから新しいのココで買ってくよ。」
「・・・・ワリカンにしてくれない?」
試着するはずだった物の値札を見て一瞬固まりワリカンを要求する薫。当然のごとく拒否される。
「誰のせいでこんなになったと思ってんだー!?」
「さぁ、誰だったかしら?ウフフ・・・」
そういうと紫穂はさっさと服を着て店から出て行ってしまった。
「あ、ちょ、こらー待てー!・・・はぁ・・・おいくら?」
あきらめて全額負担することになった薫。泣く泣く財布の一葉を差し出す。
そうして手に入れた黒のTバックだが心から喜べないのはなぜなのだろう。
いつ買おうと、どの様な過程で買おうと払う値段は同じなのに、なぜか喜べない。
釈然としない気持ちを抑えて薫は買ったTバックにはき変える。
「今まではいてたのは・・・どしよ?」
「皆本に洗わせる訳にもいかないし・・・仕方ないなぁ・・・捨てちゃえ!」
ポイッ――店内のゴミ箱に投げ入れる。
数時間後、店主がすばらしく驚いたのは言うまでもない。
「遅いわよ、薫ちゃん。何やってたの?」
「ちょ・・・誰のせいでこうなったと思ってんのさ・・・あたしの一葉が・・・」
「ごめんごめん。さ、行きましょ」
一通りのやり取りを終え、薫は今まで来た道を戻ろうとする。しかし紫穂は・・・
「違うでしょ?薫ちゃん・・・行きたかったのは、あっちよね?」
そういって路地の先の少し開けた空き地を指差す
「・・・読まれちゃった訳、ね」
「えぇ、悩み事を見るつもりだったのに・・・とんだ藪蛇だったわ」
背中は決して見せず、空き地へと紫穂は移動する
追って薫も空き地へ入る
「どうしても・・・殺る気?」
「それも、読んだんだろ?」
お互いの殺意が空気に満ちる
「――いいわ、サイコメトラ―の恐ろしさ。身をもって教えてあげるわ!」
こうして殺し合いは始まった。友達同士の、信頼する仲間同士の殺し合いが・・・
ジャキッ!――学校カバンの中から紫穂は拳銃を取り出す。
昔のように2発装填の「銃工」などではない。
より殺傷力の増した、7発装填の警官短拳銃。
ガガン!――狙った先は頭部と胸部。どちらも即死の位置を狙っている
・・・だが、即死させるには当然の事ながら「命中」しなければいけない訳で
「馬鹿にしてんのか!?こんなモンで殺れると思うなっ!なめるなよ!」
念動の盾が2発の弾丸を弾く。それと同時に巨大な念動波が紫穂を襲う
「くっ・・・なめて勝てるなんて思うわけ無いじゃない!」
横っ飛びに念動波を躱し、もう2発、連射する。
だが放たれた弾丸は薫から大きく外れている
「どこ狙ってんだ?――ハッ!?」
ガキィン!・・・ポタ・・・ポタ・・・
「ガードが遅れたみたいね?」
盾を張ったものの背後からの奇襲には反応が遅れたらしく
薫の腕からは鮮血が滴り落ちていた
「やってくれたな・・・!」
「跳弾なんて・・・ゲームの中だけかと思ってたよ」
成長した紫穂はサイコメトリーの能力で跳弾さえも操れるようになっていた。
薫の背後には弾丸を受け、へこんだパイプ管がある
・・・だがあれで仕留められなかったのは紫穂にとっては痛手であった
怒りに燃えたサイコキノのパワーは凄まじい物である。
ただでさえ凄まじいLV7がそうなってしまったら、いかなる力も抵抗は出来ないだろう
「お前は凄い。それは今までも認めていたし、今それを再確認したよ。」
「だがな、所詮お前はサイコメトラーなんだ。お前は絶対にあたしには勝てない。」
「サイコキノのあたしにはな!」
最大出力の念動波を出すべく薫は両手を突き出す。だが・・・
実際に出せたのはせいぜいLV4程度のそれだった。なんなく紫穂は回避する
「な、力が出せない?」
いつもと変わらない微笑を浮かべながら紫穂は説明を始める
「毒弾って知ってるかしら?薫ちゃん?第二次世界大戦辺りに使われてた弾でね」
「急所に当たらなくたって毒で相手はやられちゃうって弾なの」
「これはそれのESP中和剤版。後1・2発打ち込まれたら完全に力は使えなくなっちゃうわよ?」
「もっとも・・・その前に死んでもらう事になるんだけどね・・・」
少しだけ悲しそうに俯きながら喋る紫穂。
「ちっ・・・死ぬのは・・・お前だ!紫穂ォ!!」
猛攻を始める薫。だが今度撃ってきたのは念動波ではない。
念動力を球体に収縮した弾丸。封じられた力を最大限に殺傷能力に変えるための術である
念動球が地面を砕き抉る。攻めに転じさせてもらえない紫穂。
ガクンッ――抉られた地面に足をとられ、隙だらけになった紫穂に容赦なく念動球が叩き込まれる
「もらったぁ!!」
「かはっ・・・きゃぁぁぁぁ!!」
数え切れない念動球を受け、紫穂は悲鳴を上げる。
「死ね!紫穂ォォォ!!」
(キィン――骨は・・・折れてない。動ける!)
ズガァン!――一瞬前いた地面が跡形もなく砕け散る。
「ちぃ!」
(いい具合に怒りで冷静さを失ってるわね・・・)
「悪いけど薫ちゃん。お楽しみは終わりよ。」
そういうと紫穂はカバンから何かを取り出す――出てきたものは…ハンドグレネードと呼ばれる代物。
ピンの抜かれたグレネードが薫の目の前に投げられる
「――っ!?ヤバい!」
すべての力を前方に回し、出しうる最大級の盾を張る薫。
ボシュン!・・・モクモクモク〜・・・
「は?」
あっけにとられる薫。投げられたものはスモークグレネードだったのだ。
「じゃぁね薫ちゃん。ごめんね、逃げ切っちゃえば私の勝ちなのよね。」
(ちっ逃がすか!出口を塞いでやる!)
振り向きざまに出口である一本道を粉砕して塞いだ薫。
(ざまぁみ・・・ろ?)
カチャ――自分の頭に突きつけられた銃口に気づくもすでに遅い。
あとトリガーを一絞りするだけで薫の頭には風穴が開く。
「チェックメイトよ。薫ちゃん。」
「な・・・どうして、この煙の中であたしの位置が・・・?」
「サイコメトラーを甘く見すぎよ。煙を通じてあなたの位置を読むぐらい大した事じゃないわ」
「冷静さを失った事と、驕りがあなたの敗因ね。おやすみ、薫ちゃん。」
ズガンッ!・・・・・・ドサッ・・・