とある日曜日、紫穂は図書館に来ていた。もちろん本を借りる為である。
学校もないのでキャミソールにジーパンというラフな格好だ。
一般の小学生の基準で見れば間違っているチョイスの本を3冊程借りると家路に着いた。
「あれ?今帰りかい、紫穂?」
振り向くと買い物袋を持った皆本がいる。・・・スーツとはみ出したネギが絶望的に合ってない。
「あら、皆本さん。買出しに行ってきたの?」
「どうせ君達は今週も居座るつもりなんだろう?」
「違うわよ?今月も、よ?」
「あのなぁ・・・僕にもプライベートっていうのが・・・」
「あら、最近物騒なのよ。主任としてしっかり守って欲しいわね」
「君達を狙う犯人の方が実に気の毒だと思うけど・・・」
「何か言った?」
いつもの軽口を叩きながら腕に手を絡ませた繋いだ瞬間―――紫穂はデリンジャーを取り出し、皆本に向けていた。
「アナタ、誰?」
少しずつ皆本・・・に見える何者かから間を空けてじりじりと下がる紫穂。
「おいおい紫穂、何を言っているんだ?」
「アナタはそのスーツを何処で着たのかしらね?」
皆本の表情が変わる。醜悪な、見た事のない笑みに。
「なる程。スーツからバレるとは思わなかったよ、これは僕のミスだな」
「そうね・・・浮気防止のクセが役に立ったわ」
「直接だけでなく服までも毎日サイコメトリーされているとは・・・可哀想に・・・」
なぜか皆本が同情されているが、そんな事にはかまっていられない。
「ヒュプノ系のエスパーね?」
「他にも色々出来るんだけどね。ま、服とかは無理だけど」
「そう、残念だったわね」
「まぁ、仕事はもう終わってるからいいさ」
「どういう―――」
不意に視界がぼやける。
「そりゃあ近づいたら薬の一本も刺しておくさ・・・痛くなかったろ?」
そして―――発信機内臓のECMだけが後に残されていた―――
「―――ここは・・・」
真っ暗で何も見えない。
自分の手足でさえも。
現実なのか夢なのか。
突然、目の前にモニターのような映像が現れる。
そこに映っていたのは―――自分自身の痴態―――
音はまったく聞こえない、男の顔はわからない、が、「それ」に映っている自分自身は確かに「悦んでいた」
肌は汗ばみ、顔は上気し、目の焦点は虚ろになり
凶悪と言っていい巨大な男性自身を、その幼い秘唇を目一杯拡げ、後ろから受け入れている。
「何・・・コレ・・・ふぁっ・・・!」
不意に体に異変が起きる。
感覚が流れ込んでくるのだ・・・目の前のモニターから。
体の奥底をこじ開けられる感覚。
それは未だ経験の無い紫穂にとって奇妙すぎる感覚だった。
「か・・・は・・・・・あつ・・・はあぁッ・・・!」
混乱する。思考がまとまらない。熱い。
「ア・・・うああ・・・・・やめ、えあ・・・!」
視界にモニターが増える。次々と。
アメーバーのようなものに嬲られている自分。
サンドイッチ状態で前後から突かれている自分。
天井から吊るされ、男性自身を模った機械で苛められている自分。
制服のままローターを身につけ街を歩く自分。
「そ、んうあッ!・・・なんで・・・なあァアッ!」
全ての穴を塞がれ、浣腸され、精液を飲まされ、失禁し、潮を噴き
その全てが流れ込む――――――
「ひゃうああぁっ!ダメ!ダぁうあああッ!ハあっ、い、イクっ――――――!!」
「さて、眠り姫の様子はどうかな?」
恐らく偽の皆本の正体なのであろう、軽薄な顔立ちの男が部屋に入る。
キャミソールにジーンズという格好の紫穂はベッドで寝ているように見える。
「ありゃりゃ、随分キモチよさそうにしてるね」
へらへらと男がつぶやいた先の紫穂はジーンズの一部―――主に股間のあたり―――をぐしゃぐしゃに濡らしていた。
汗と小水のニオイが部屋に篭っている。
「さてさてどうしようねぇ?殺すなって聞いてるけど」
不意に男はビデオカメラを取り出し、録画のボタンを押す。
「さあ画面の前の皆さんお立会い。可愛い紫穂ちゃんは今とって〜もキモチいい夢を見ています。
さてここで問題です。この状態で紫穂ちゃんのサイコメトリーを紫穂ちゃん自身にかけたらどうなるでしょう?
『情報の循環と増幅』って知ってるかナ〜?では実際にやってみましょう♪」
そういって男は紫穂に手をかざす。
―――『情報の循環と増幅』―――
サイコメトラーは自分自身をサイコメトリーする事も出来る。
だが、自身の体での情報であればいいが、精神に対しての場合細心の注意が必要なのだ。
自分の精神の情報を読み取るという事はESPコントロールが暴走しやすい。
単純に言えば「読み取ろうとする行動を読み取る」というループに陥りやすいのだ。
もっとも、そういう機会などそうそう無いし、やむをえなければ誰か他のエスパーに頼んだ方がリスクも少ない。
ただ、今の紫穂の状態でそれをさせたらどうなるだろうか―――
ビクンッ!と紫穂の体が跳ねる。
汗が噴出し、ジーンズの染みが広がる。
乳首が立っているのが服の上からでもわかる。
声が漏れ出る。
「きゃあぅっ!あ!ううあッ!・・・・かぁはッ!ア、アアッ――――――!」
体が反り返り、ビクビクと痙攣する。
つま先をピンと伸ばし、傍目にも想像を絶する快感が紫穂を襲っているのがわかる。
「と、まぁこうなるワケです。アハ、じゃあ助けたかったら頑張ってここまで来てね。葵ちゃん?」
男がビデオカメラを停止させる。
「ってかもう精神がどうなってるか知らないけどね。ま、殺してないしOKでしょ」
無責任に呟くと男は部屋を出て行った――――――
一夜明け、BABELは大騒ぎになっていた。
勿論、紫穂が行方不明になったからだ。
「いいかい、勝手な行動はしちゃ駄目だ。紫穂が心配なのは僕だって一緒なんだ。君達は命令あるまで待機。いいね?」
そう言い残し、皆本はバタバタと出て行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昼過ぎ、チャイムが鳴り、葵は自分宛のポストに入った一枚のCDーRをPCで読み込んでいた。
訝しがりつつも開いたそのファイルは予想の範疇を大きく超えていた。
「え……紫穂……?」
画面の光景が理解出来なかった。
―――苦悶の、それでいて淫靡な表情で絶頂に達している親友の姿―――
『と、まぁこうなるワケです。アハ、じゃあ助けたかったら頑張ってここまで来てね。葵ちゃん?』
画面の中でへらへらと笑う軽薄そうな男。
(誰――?いや、あかん。そんな事を考えてる場合やあらへん)
(皆本はんに連絡―――)
(でもなんでウチ宛なん?違う―――早く助けんと―――)
自身のこめかみを強く掴み、ともすればパニックに陥りかける頭を落ち着かせようとする。
『あーそうだ、忘れてた。当然BABELの人達には知らせないでね?オトモダチは呼んでもいいけど』
下卑た笑いを浮かべながら発したその言葉を最後に、画面は暗転する。
(―――薫―――薫に―――)
隣部屋から呼んで来た薫の顔が凍りつくのには3分とかからなかった……。
「ここか……紫穂、すぐに行くからな!」
辺鄙な郊外の廃屋。まったく手入れのされていない庭には鬱蒼と雑草が生い茂っている。
「でも、皆本はんに連絡せんでよかったんかな……?」
「あー言われちゃどうしようも無いだろ!あんなクソ野郎1パツでぶっとばしてやる!」
「…………」
「エマージェンシーコード入力。ECM解除!いくぞ葵!」
「……うん。やったろか、ウチらの力見せたる!」
チルドレンのECMは、2時間の時間制限はあるが緊急用の解除入力が出来る。
それを使ってテレポートでここまで来たのだ。
本人達は気付いてないが、当然皆本にも解除コードが入力されたのが伝わるのだが…………。
―――――――ヒュパッ―――――――
「紫穂!どこだッ!?」
部屋を見回すと横から甲高い、それでいてどこか耳障りなあの声が聞こえてきた。
「やー、意外と早い到着だねぇ。やっぱり2人で来るよねそりゃ」
「お前ッ……!!」
ドガァッ!
薫の衝撃波が男の足元に突き刺さる。
「おっとと、気が早いよ薫ちゃん。おしゃべりって大切だと思うよ?」
「……ふっざけんな!紫穂を出せ!」
「アンタ一人だけか?ウチらを相手にするにはちょっと役者が足りんとちゃうのん?」
葵は男の後方にテレポートし、挟み込む位置を取る。
「こっちは気が短いんだよっ!」
「怖い怖い。そうねぇ……俺を喋らせたくなるようにすればいいんじゃないかなぁ?」
「ならそうしてやるっ!」
ドガァッ!!
「うあああッ!」
衝撃波に吹き飛ばされる家具。
もうもうと立ち篭る埃の中に倒れていたのは…………葵だった。
「う……」
「んなッ!葵!?」
「ありゃりゃ、痛そう。駄目だよちゃんと狙わなきゃ、ね?」
口元を押さえながら肩を竦める男。
「そんな!アタシは確実にお前を……!」
「んー、なんでか知りたい?」
「……」
「バラしちゃうと俺って基本ヒュプノなんだけど、テレパスでもあるのよ。で、隠し芸を一つ持ってるんだな」
「……で?」
「ま、両方使っての『ESPの発動誤認』って奴。ま、『方向性をズラす』でもいいけど」
「……だから一発目も当たらなかったんだ」
「そそ。ついでに俺の作戦もバラしちゃおうか」
「……」
「まず、君達は自分の能力に自信を持っている。過信と言える程にね。実際に君達は先走ってここに来た。
第二に葵ちゃんにアレを見せれば必ず2人で来ると踏んだ。薫ちゃんに送ると1人で来そうだったからね。
第三に、それによって無差別のオールレンジ攻撃が使えなくなる事。葵ちゃんを巻き込めないから」
「それだけでアタシに勝てると思ってンの?」
「いやいや、それだけじゃ無理だよ」
「それだけ……?」
「うん。第四の理由……俺の長話に付き合わせる事。どうしてさっきから俺が口元を押さえてると思う?」
「なッ……!」
――――視界が歪む――――
「最近のガス中和装置ってのは小型でね。便利な世の中になったねぇ」
「て……め……」
「んじゃ、おやすみなさい。お二人さん――――」
「ん……」
目を開けると、そこはどこかの部屋のようだった。
薄暗い。体が動かない。いや、正確には下半身が動かない。
「なんやコレ……嫌味かいな……」
葵の体は部屋の壁に囚われていた。自身の得意技のように。腹部より上は自由になるが腰から下はまったく動かない。
下を見ると膝小僧がちょこんと壁から見えている。
膝の関節あたりもがっちりとめりこんでしまっているようだ。
「うぅ……どないしよか……」
必死に頭を回転させる。
「まず場所の把握………皆本はんに……あの男の能力……ひゃっ!?」
突然の感触に慌てて振り返るが、そこには無表情な壁が視線を遮っていた――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おや、お目覚めかな?」
目の前でフルフルと震える小さな尻を目端に捉え、男は顔を上げる。
「んー、無駄だと思うよー。コレも付いてるし」
壁から生えている足首に絡ませたESP錠を弄りながらへらへらと笑う。
「さて……と……」
男は椅子に座ると、制服のミニスカートをひょいと持ち上げ、
白いショーツ越しに葵の秘所を触―――いや、弄り始めた。
爪先を滑らすように肉の谷間をなぞる。
必死でずらそうとしているのか、小さな尻が揺れる。
指は執拗に、しかし優しく、ショーツの上であらゆるラインを描く。
ピク……キュウッ……
5分―――体温が上昇しているのか、汗のニオイが漂ってくる。
同時に、小さな染みがショーツに浮き上がってくる。
男はそれを見て取ると布が少しだけ盛り上がっている場所―――クリトリス―――に指先を伸ばす。
ビクンッ!
尻が跳ねる。
男は染みから粘液を掬い取ると、ショーツの上からソコに刷り込む。
くるくると指先で潰す。爪先で引っ掻く。摘み上げる。
そのたびにビクビクと跳ね上がる。
……ヌチッ……クチュッ……チュク……
物音一つ届かない部屋に淫猥な音が響く。
30分―――濡れそぼったショーツはすでにその役割をまったく果たさず
張り付いた肉の形をはっきりと浮き上がらせている。
諦めたのか、それとも混乱しているのか、葵の反応は鈍くなってきていた。
男は片眉を上げると机に目を落とす。
そこにはあらゆる道具が―――女性を責め上げる為の―――自分の出番はまだかと言わんばかりに並んでいた―――
小さめのローターをつまみ、それをショーツの横からクリトリスに、肉の谷間に当たるように入れる。
突然の無機質な感触に驚いたのか、弱弱しくピクンと反応する。
2個……3個……4個……
いつしか葵のショーツからは何本ものコードが生えていた。
そしてスイッチはためらいもなく押される―――
ヴヴ……ヴヴヴヴヴ……
ビクゥッ!!
腰が弾ける。
必死であろう。尻が左右にふるふると振られる。足首に巻いたESP錠がガチャガチャと床を叩く。
しかし男はかまわず鋏を持ち、ショーツの一部分を切り取る作業にかかる。
ジョキ……ジョキ……
ゴムは残し、秘所の少し上―――つまり尻穴―――の布だけが綺麗に切り取られた。
ローターの振動に苛まれているのかヒクヒクと反応している穴。
男は無造作に机から透明な液体の入っている瓶を手に取った。
右手に粘着質な液体がかかる。
ぬらぬらと光るそれを指先で確認すると、男は尻穴に向かって指を近づけていく―――
……つぷ……
ビクッ!ビククゥッ!
尻が激しく振られ、ESP錠が床を叩く……が、男は腰を容赦なく掴み、指を出し入れしていく。
あまりの異質な感触にパニック状態なのだろう。指を強く締め付ける。
だが、液体のせいでやすやすと進入を許してしまう。
その指先は肉壁を突き、なぞり、掻き、葵を弄ぶ―――
ヌヌ……ヌルゥ……クチッ……クチャッ……
どれほどの時間がたったのだろう。1時間だろうか、2時間だろうか。
尻穴を責める指はいつしか2本に増え、さらにボールペン程の太さのバイブレーターが突き刺さっている。
ピクン、ピクンと小さく動く葵の秘所からは、とめどなく愛液が溢れ、太腿を伝い床を濡らしていた。
男は机からクスコ―――医療用の性器拡張器―――を手に取る。
ズヌヌ……ズズ……ヌルウッ……
尻穴が大きく開かれ、ピンクの内臓が露になる。
さらに鉤爪のような形状の道具を掴む。
先端は柔らかい素材で出来ている様だが、スイッチを入れると先端がヴヴ……ヴヴヴヴと振動した。
これで剥き出しの内臓を責めようというのだ。
グチュ……グチッ……ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!
葵の子宮を肉襞の裏側から責める。
ガチャッ!ガチャガチャッ!!!
ESP錠がかつてない音を立てて床を叩く。
さらに男は左手をクリトリスに伸ばす。
ローターを掻き分け、摘み上げ、押しつぶす。
プシャッ!シャァアァァァ―――
耐え切れなくなったのか、内腿を尿が伝い落ちる。
ビクビクと痙攣する尻、固く屹立したクリトリスが快感の度合いを表している。
男の顔に愛液と尿の混じった飛沫が飛ぶ。
それもまったく意に介さず嬲り続ける。執拗に、無機質に。
蹂躙は一向に終わらない―――
ヴヴ……
機械音が響く。いつしかぐったりと動かなくなった葵はそれでも責め続けられていた。
ピグッ!プシャァッ!
時折痙攣し、失禁する。
何十回絶頂に達しているのだろうか。
永遠に続くのではないかと思われた頃―――扉が開かれ、男は振り向く。
「……さん、そろそろ……」
「ん?ああ、もうそんな時間か?そっかぁ、あんまり待たせちゃ悪いしね。すぐ行くよ」
「じゃあ後は俺達で―――」
「ああ、任せるよ。わかってると思うけど使うのは後ろだけね」
「はい、いつも通りに」
「そうそう、使うのはこのローション」
「ええ、わかっています」
男はふと思いついたように嗤う。
「あ、こっちの黄色いラベルの方は使ったら大変な事になっちゃうかもしれないからね」
それを聞いた男達は顔を見合わせ……答える。
・・・・・・
「はい。わかりました」
そして男は部屋を出て行った。
残された男達は―――迷わず黄色いラベルのビンを掴んでいた―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ハァ……ア、も……う……かんにん……し……」
だらんと下がった腕。半分ずり下がった眼鏡。朦朧とした意識。
涙と涎でぐしゃぐしゃになった顔。葵は誰にでもなく懇願していた。
壁には引っ掻いたのであろう爪痕が幾重にも刻まれている。
床には汗の染みが広がっている。
「薫……皆本はん……たすけ……」
しかし、今、壁の向こうで更なる悪夢が始まろうとしていた……