本物の知識や経験と、透視で知ったこととは違うとは言ったのは俺だが。  
 
「それじゃ俺が犯罪者になっちゃうだろ」  
「いいから!」  
 知る限り、皆本に『キャリー』以外の恋人がいたことはない。  
 女性経験も推して知るべしだが、詳しいところを読む気にはなれない。興味もない。  
 興味津々の彼女は、自分とは違う理由で読む気になれないのだろう。  
 そこから何がどうなって考えが至ったのか分からないが、実践したくなったらしい。  
 
「紫穂ちゃんの思考回路が分からん」  
「女の子は複雑なんです。センセイはとってもお詳しいんでしょ?」  
「そりゃまーお詳しいけどさ」  
「…いいでしょ?」  
「…リミッター外すなよ。読むなよ。思念でしゃべるなよ」  
「わかったわ」  
 
 服を脱がすと薄い皮膚の下にまた薄い筋肉。そして骨。脂肪のやわらかさが少ない。  
 膨らみかけた乳房はこの歳にしては大きいほうだが、まだ硬い。触れても痛いだけだろう。  
 軽くて華奢な手足は触れているとそわそわする。  
 任務後の検診に心を動かされることなどないが、さすがに裸で抱かれるために目の前に座っていると心は騒ぐ。  
 背中から抱きかかえて肩から順に唇を落としていく。  
 
「…ロリコンの気はないんだけどなあ…」  
「センセイうるさい…んぅっ」  
 背中に手を這わせるとくすぐったがって身をよじった。  
 上半身に手と唇だけで愛撫を繰り返すが、緊張はほぐれない。  
 乳房に触れるがやはり硬い。揉みしだこうにもしっかりと芯があり、まだだと体が主張している。  
「女の子はもっと体が成熟してからのほうが安全だぞ。無茶は全部自分に返ってくるんだからな」  
「…オジサンっぽい」  
「んだと?!まだ24だよ!」  
「中学生からしたら十分オジサンよ」  
「皆本も変わらねーよ」  
「…皆本さんの名前出さないで」  
 ぷい、と顔をそらす。  
 その首筋に軽く口付ける。  
「…ひゃん」  
「なんだ今の可愛いぞ」  
「もうっ」  
 
 ぎゅうと抱きしめると、ゆっくりと力が抜けていった。  
 人肌のぬくもりは好きだ。  
 人に触れるのが好きだ。  
 拒絶されなければ。  
 多分この子もそうなんだろうと思う。  
「…キスしていいか?」  
「えー」  
 セックスを強要しておいて、キスを渋る。  
 普通の女なら帰るところだ。  
「管理官に教わってるんだろ。実践だ実践」  
「薫ちゃんに聞いたの?」  
「皆本が愚痴ってた」  
「だから…!……もう!わかったわよ!」  
 なにがわかったのやら、顔を上げて目を閉じてくる。  
 子供の顔だ。幼い。  
 ちゅ、と小さく音を立てて啄ばみ、そのまま舌を入れた。  
「ん…っ…んん…っ」  
 舌が小さい。口内も狭い。  
「ん…んー!んーっ!」  
 どんどんと胸を叩いてくるので唇を離した。  
 
「っ苦しい!」  
「息しろよ」  
「できないもん!」  
 顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。  
「習ったんじゃなかったのか」  
「…本物の経験とは違うんでしょ」  
 まったく。  
「じゃ口開けて」  
 あ、と声を出さずに口を開く。  
「鼻で息して」  
 こくこく、と声を出さずにうなずいている。  
「舌を浮かせて」  
 素直に舌を浮かせたところに、再び舌を差し込んだ。  
「ん…」  
 ふー、ふー、と鼻から息が漏れるのが聞こえる。  
「んぁ…ん…」  
 声が甘くなっていく。  
 
「んんっ?!」  
 舌を吸いながら手を腰にのばすと、声が変わった。  
「あっ…やぁっ…」  
 舌を放して隙間を作ってやると、声が漏れた。  
「やらしい声だな」  
「へんなこと…いわないで…っ!んぅっ」  
 
 腿を撫でて上体を倒す。膝を肩に乗せさせて腰を抱え込んだ。  
「ちょっと…センセイっ!」  
「力抜いてろ」  
「ひゃ…っ…あああっ!」  
 女の匂いが薄い。色が薄いのは単に個人差だろうが、毛が極端に薄いのは未発達の証だろう。  
 汗ばむ体に手を滑らせながら、ぴったりと閉じた肉をかきわけた。  
「あっ!ああっ…!」  
 肢体はもう少しで大人と変わらないところまで伸びそうなのに、心と体の成長が追いついていない。  
 そんなに急ぐことはないのに。  
 
「はぁ、はぁ、…あ、あ、ああっ」  
 舌でほぐしてもどこまでも固い。ちゃんと感じてはいるようだが、指一本も入りそうにない。  
「あっ…あっ…せんせ…もぅだめぇ…」  
 
『イっちゃえよ』  
 
 舌はとめずに思念で伝える。リミッターをつけたままでも心を閉じていても、こちらから呼びかければ彼女には伝わるだろう。  
 便利だ。  
 
『センセイずるいっ…使わないって言ったじゃないっ!』  
「あっ…あっ…!」  
 声と思念が同時に聞こえる。  
 
『いいから』  
「あ、あ、ああああああっ!」  
 
 目の前でひくひくと痙攣するのはたしかに女だが、やっぱり幼すぎる。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ…」  
 力の抜けた脚を降ろしてベッドに横たえる。  
 乱れた髪を撫でてやると、素直に抱きついてきた。  
「…おいっ!」  
 抱きつかれた隙にリミッターを盗られた。  
 直後外した指輪型のリミッターと一緒にサイドランプの奥へ押しやられる。  
「返せ」  
「いいの!」  
 手を伸ばした体を巻き込むようにしがみついてくる。  
 
『…気持ちよかった』  
 思念がダイレクトに伝わってくる。  
『そりゃよかったな』  
『続きは?』  
『無理』  
『なんでよ』  
『壊す。無理。もうちっと育ってからにしてくれ。怖い』  
『怖いの?』  
『怖いよ』  
 思念での意思疎通は早い。リミッターがなければ意識を共有するように会話が出来る。  
 奥には入ってこない。入らない。距離を知っている。  
『センセイはいいの?』  
『いいから』  
 背中を撫でてやると、腕を背に回してきた。  
 ぴったりと隙間なく抱き合う。  
『…だって』  
『いいから!自分で何とかしますって!もう寝ろ!』  
『…やってみてもいい?』  
「え?」  
 
おわり  
 

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