その、狭く静かな部屋の中に響くのは、ただ押し殺された少女の喘ぎ声だけだった。
きつめの瞳を固く閉じ、下唇を噛みしめて、襲いくる感覚に耐える。
それでも、ほかならぬ彼女自身の指先からもたらされる快感は、脊髄を走り抜け、口唇をほころばせていった。
「あ…くふっ、ん…っ」
声を漏らしながら何事か念じると、下腹部を触っていた澪の右腕の前腕部から先がふっと虚空に消え、彼女の、開かれた両足の間に現れた。
彼女のESP能力、《部分テレポート》だ。
本来、自分で触れるにはありえない角度で、澪は自分の秘唇を責める。
左手で青く実った乳房を激しく揉みしだき、右手は秘唇を掻き回した。
「あ、あ、あ、イッちゃうイッちゃう、だめ…っ」
軽い絶頂が澪の全身を緊張させる。
まだだ、まだ、たりない。あたしはこんなことじゃ満足できない。
荒い息をつきながらも、澪は貪欲にさらなる刺激を求めた。
部分テレポートを解いた右手を掲げ、目を閉じて思いを込める。
次の瞬間、そこに現れたのはまぎれもなく成人男性の陰茎だった。
勃起もしていない通常時の状態のそれも、澪にしてみれば、十分に大きなものに感じられる。
「あ、ぁ…」
ゾクリと背筋を震わせながら、澪は、陰茎をツッと舐めあげた。
「のぴょっ!?」
「…どした? 皆本…」
隣を歩いていていきなり奇声をあげて腰を引く、同僚兼親友に、賢木は訝しげな声をかけた。
「い、いや、なんでもない。なんでもないぞ、賢木…あ、あは、あはは…」
「? …変なやつ」
ひと舐めごとに、陰茎は硬度を増していった。
十分に固く大きくなったのを確認すると、澪は思いきってくわえ込む。
口をいっぱいに開いても亀頭部分を含むのが澪には精一杯だった。
狭い口の中を、硬質ゴムのような感触の肉棒に占領され、それでも澪は、苦しげな息を鼻から吐き出しながら、陰茎の先に舌を這わせ続けた。
「んっ、んむっ、んぐぐ…ぷふぁっ」
完全に反り返り、先走りのよだれをたらしながら、澪自身の唾液でテカテカになっている肉棒を見つめながら、澪は生唾を飲み込んだ。
そっと手を添えると、虚空の一物を自らの股間へと導く。
「んく…っ」
一瞬の躊躇のあと、澪はその肉棒を秘唇に食い込ませた。
「んにゃぱっ」
「いやだから、皆本っ?」
「なんでもないって言ってるだろうっ」
腰をむずかせ股間を両手で押さえるその姿は、決してなんでもない様子ではなかった。
粘っこい水音が響く。
必死にセーブしようと思ってはいるのだが、意思にそむいて勝手に動く腰は止まらない。
虚空から取り出した陰茎の操作を左手にゆだねると、澪は再び震える右腕をかざした。
右手のひらを軸に先程と同じ様に空間が歪み、軽く渦を巻くその中心部から、別の肉棒が姿を現す。
たかまった興奮からか、ためらうことなく澪は、いきなりソレを口いっぱいに含んだ。
「はぎょぺっ!?」
「? …どうしました、少佐?」
パンドラ最高幹部会議の席上、いきなり奇声を発して座っている椅子ごと腰を引く、自分達の最高指導者にして世界最強クラスの超能力者に、真木がいぶかしげな声をかける。
紅葉も軽く首をかしけ、葉などは露骨なジト目で兵部を見つめていた。
「な、なんでもないぞ、おまえたち…は、ははっ」
「ですか? では、続けますが…」
気を取り直して真木が話を戻す。
「んっ、むぐっ、んぉむっ」
一本目の陰茎には秘唇を貫かれ、二本目の陰茎には口内を蹂躙され、澪は、からだを一本の槍に串刺しにされたような錯覚に襲われていた。
息すらうまくできない圧迫感。膣内、口内だけでなく、からだの中全部が肉棒でいっぱいにされたような被虐感。それらがないまぜになり、澪の思考をバチバチとショートさせる。
「むぐ、んぐ…ぁぶぁっ、も、もうだめっ、あだじ逝ぐ、逝っぢゃうぅっ」
舌を突き出し、腰をガクガク震わせる澪。
喉奥まで陰茎を押し込み、息苦しさにむせ、涙を流しながら舌を絡ませる。
左手首に痛みをおぼえながらも、我を忘れたように激しく秘唇を陰茎でかきまわす。
「ぐはっ…だめ逝く、お願い逝っで、いっしょに逝っでぇ、皆本も、少佐もぉぉ!!」
澪の叫びに呼応するように、二本の陰茎はほとんど同時に欲望の証を吐き出した。
一本目は狭い膣内を精液で満たし、二本目は澪の顔面を白濁で覆い尽くす。
「あ、お、おぉ…」
白目をむき、全身を激しく痙攣させ、澪はブリッジをするように背を反らし…やがてバタリとその身を横たえた。
彼女が意識を失ったその瞬間、二本の陰茎も元ある場所に戻ったのだろう、フッとその姿を消した。
幻でなかった証拠であるかのように、澪の腰がわななくたび、ぽっかりと開いたままの秘唇からとろとろと泡混じりの白濁液がこぼれ落ちるのだった。
同時刻。
まったく別の場所で、二人の男が同じ体勢でからだを震わせていた。
からだをくの字に曲げて倒れ込み、両手で股間を押さえるその姿は、およそBABELのエリート青年指揮官にも、PANDOLAの最高統率者にも、見えはしなかった。
「…なあ皆本。悩みがあるんなら言えよ?」
親友の背中をツンツンと突きながら、賢木が哀れむように言う。
「な、なんでもないと言ってるだろ」
「いや、どう見てもなんでもなくないんだが…」
「うるさいな…そ、それより今日は暑いな。ちょっとシャワー浴びてくるよ」
「はぁ?」
腰をかがめながら去っていく皆本を、ただ呆然と見送る賢木であった。
「…いったい何がどうしたんですか? 少佐」
兵部を取り囲んで立ちすくみ、じっと見下ろす三幹部を代表して、真木が重そうに口を開く。
「…なんでもないと言ってるだろう」
「どう見ても、なんでもなくないよ、少佐」
ジト目で言う葉。
「明らかにおかしいと思われますが…」
小首を傾げて紅葉も言う。
「と、とにかく真木、後は任せるぞ」
「はあ…少佐は?」
「僕はちょっとシャワーを浴びてくる。汗をかいてしまったからな」
微妙に腰を引きながら片手で髪をかきあげて、兵部は背を向ける。そんな自分達のリーダーを、呆然と見送る三人であった。