「先生ー!着替えてきましたー!よろしくお願いしまーす!」あれだけ嫌がっていた綾だったが相手がイケメンだからか、なぜかノリノリだ。  
「はい伊勢島さん、じゃあまずは簡単なステップからいきましょう」  
「は、はいっ!」  
 
山田は綾にまずは初歩的な振り付けを教え、綾もそれについていく。  
 
「そうそう!伊勢島さん結構センスありますよ!」  
「そ、そうですか?えへへ・・・」  
「ちょっと上級のステップもやってみましょうか、難しいですがついてきてください」  
「はいっ!」  
 
綾はさすがにスポーツ万能なのか、少し難しいステップも見よう見まねでうまくこなしていく。  
 
「上手い上手い!いや〜びっくりしたなあ、初めてでここまで動ける方も珍しいですよ」  
「先生の教え方が上手いんですよ、きっと」  
「それに比べ、吉田さん・・・もうちょっと頑張りましょうよ。あなた確か体育教師じゃなかったんですか?」  
「ぜえぜえ、はあはあ・・・。せ、先生、少し、きゅ、休憩させて下さい・・・」  
「吉田先生、まだ初級者レベルですよ・・・いくらダンスをマスターしたいかといって、休んでばかりじゃ身に付かないですよ」  
「が、がんばり・・・ます・・・」  
 
そんなこんなで今日のレッスンが終了。  
 
「山田先生!今日は本当に楽しかったです!YUKIのダンスまで教えて頂きありがとうございました!」  
「いや〜伊勢島さんにはびっくりしました。あなたの才能なら、どこでも通用しますよ!」  
「そういって頂けると嬉しいです!」  
「YUKIのコスプレ大会に出られたら、きっと注目の的ですよ!」  
「あっ・・・(忘れてた・・・コスプレが目的じゃなく、これはハルキさんの気持ちを知る為にやってたんだっけ)」  
「ん?どうされたんですか伊勢島さん?」  
「い、いえいえ何でもないです、きょ、今日は色々ありがとうございました」  
「はい、また良ければ来て下さいね。もっとハイレベルなダンスを教えて差し上げますよ」  
「はい!失礼しまーす!」  
 
綾は元気にスタジオを後にした。  
 
「私結構ハマって来ちゃった!ハルキさんもこれ見たら喜んでくれるはず!吉田、今日は楽しかった!ありがとう!」  
「い、伊勢島・・・!?」  
「アニメって意外に面白いじゃん!今日は身を持って理解できた!ほんと感謝感謝!」  
「そうか・・・そういってもらえると連れてきたかいがあるってもんだ・・・」吉田はポンと伊勢島の方に手を置いた。  
普段の綾ならここで一発殴ってるところだが、今日は感謝の気持ちで笑顔で応えた。  
「(・・・今日吉田がここに連れてきてくれなかったら、ハルキさんのこと嫌いになってたかもしれない・・・)」  
「本当にありがとう・・・吉田・・・」  
「伊勢島・・・」  
 
二人はじっと見つめあい・・・そして・・・  
 
「じゃ、この衣装もらっていくね!今日はお疲れ!サンキュー!」  
「あ。ありゃっ!?い、伊勢島・・・普通ならここでお前が僕に抱きついて、という展開だろ?」  
「ば、馬鹿言わないで!誰があんたに抱きつくのよ!」  
「い、伊勢島〜そりゃないよ〜」  
「私もう帰るから!じゃまた!」  
「がっくし・・・」吉田の表情は冴えなかった。  
 
綾はニコニコ顔で自宅に戻り、部屋でもう一度YUKIのコスプレ服を着てみて、さっき覚えたダンスを鏡の前で踊ってみた。  
 
「うん、いい感じ!これならハルキさんのハートもイチコロよ!」と喜んでいると、携帯に電話が。ピポパポ・・・ピポパポ・・・  
「ん?誰だろう・・・もしもーし」  
「あ、綾ちゃん?」  
「ハ、ハルキさん!!!」  
電話の相手は何とハルキだった。  
 
「今大丈夫?」  
「は、はい!大丈夫です!」  
「実はさ・・・この前、綾ちゃんに悪い事したから謝ろうと思って・・・」  
「えっ?悪い事って・・・?私、ハルキさんに何かされました?」  
「あの映画のことなんだけど・・・」  
「あ、あのアニメのことですか・・・(えっ?今私そのYUKIの格好してるんだけど)」  
「うん・・・この前妹に言われて気付いたんだけど、綾ちゃんがアニメのことを気にしてたって聞いてさ・・・」  
「棗に・・・ですか・・・?(ちっ棗のやつ、そんなこと言わなくていいのに・・・)」  
「帰り際少し顔色が悪かったのは、もしかするとああいったアニメとか嫌いだったんじゃないかって思って・・・」  
「ええっ!?な、何を言ってるんですかハルキさん?(違います!あの時はそうだったけど今はYUKIが大好きなんです!)」  
「だからごめん・・・電話では申し訳ないと思ったけど、早く謝りたかったから・・・」  
「い、いえいえそんな謝らないで下さいハルキさん!私は気にしてませんから!(てか、アニメもう大丈夫なんです!)」  
「そう・・・お詫びといっちゃ何だけど、今度クリスマスだよね?」  
「は、はい」  
「綾ちゃんクリスマスの日が誕生日って妹に聞いたんだ。だからその日、お詫びを兼ねて綾ちゃんの家に行ってもいいかな?」  
「ええーーーーーっ!?(棗!ナイス!GJ!)」  
 
突然のハルキの誘いに、綾は心臓が張り裂けそうなぐらいびっくりした。  
 
「せっかくのクリスマスと綾ちゃんの誕生日、一緒に祝おうって思って」  
「わ、私の家なんかで・・・いいんですか?」  
「ああ構わないよ。どう?その日は空いてる?」  
「は、はいっ!部屋を綺麗にして待ってます!」  
「あはは・・・ケーキやシャンパンとかはこっちから持っていくから、25日の夜、プレゼントも持ってお邪魔するね」  
「は、はい!私もプレゼント持って待ってます!」  
「えっ?その日は綾ちゃんの誕生日なんだから、僕からのプレゼントだけでいいと思うんだけど?」  
「い、いえ、是非ハルキさんにお渡ししたいものがあるんです!気に入ってくれるかどうか分かりませんが・・・」  
「ははっ、分かった。じゃあ僕も楽しみにしてるよ」  
「はい!ありがとうございます!」ここで電話が終了。  
 
「ああ・・・早くもハルキさんにこの姿・・・見せる時が来たわ・・・どう思ってくれるかしら・・・」  
綾は25日が来るのを心待ちにしていた。  
 
 
数日後・・・  
 
「ねえ綾、いいの?25日ってあなたの誕生日じゃなかったかしら?」  
「いーからいーから!たまにはお母さんも羽を伸ばしてきてよ!」  
 
綾は25日をハルキさんと二人っきりの夜にしたいと考え、母親に温泉旅行へと行ってもらおうと説得をしていた。  
 
「本当にいいの?お母さんだけ行って?寂しく無い?」  
「大丈夫!いつも家の事お母さんに任せっきりだったしね、温泉でもつかってゆっくりしてきて!」  
「綾がそこまで言うなら・・・分かったわ。綾のプレゼント、喜んで頂戴するわ」  
「うん、ありがとうお母さん」  
「ありがとうを言うのはこっちよ。綾、本当にありがとう」  
「ふふふ・・・」綾は何とか母親を説得した。  
 
綾は部屋に戻り、机に座り預金通帳を眺めた。  
「冬だけに温泉旅館、意外と高かったけど・・・25日の為なら安いもんよ!」  
「さああとは部屋を片付けよ・・・ハルキさんに汚い部屋なんて見せられないし・・・」いそいそと部屋掃除が始まった。  
 
そして数日が経ち、ついにクリスマスの25日がやってきた。  
 
 
25日は土曜日のため午前中で授業が終了。  
 
「綾ちゃん帰ろ・・・あれ?綾ちゃんどこ行ったんだろ?」棗は綾を探したがどこにもいない。  
「先に帰っちゃったのかな・・・まあいいや、他の子と帰ろっと・・・」棗は仕方なくクラスの他の女の子と一緒に帰っていった。  
 
実は端で隠れていた綾、棗の帰る姿を見て  
「棗、今日だけ勘弁して・・・お兄さんと、素敵な夜を過ごすんだ・・・」  
 
綾が家につくと、リビングの机の上に母親の手紙が。  
 
綾へ  
 
綾からプレゼントしてもらった温泉に行ってきます。  
一人で寂しいと思うけど、戸締まりだけは注意してね。  
何かあったらお母さんの携帯に連絡して下さい。  
 
母  
 
「お母さんごめんね・・・無理に家を出てもらったみたいで・・・」綾は実際に母親がいなくなって、少し悪い事したかなという気持ちになった。  
 
そして数時間後、運命の待合せ時間がやってきた。するとその時「ピンポーン」玄関のチャイムが綾一人の家の中に響き渡った。  
「は、はーい!」綾はハルキさん到着と思い、玄関までドタドタと走っていった。  
 
「ガチャリ」玄関を開けると・・・なぜか誰もいない。  
「あ、あれ?ハルキさん?」綾は玄関を出て周りを見渡したが誰もいない。  
「おっかしいなあ・・・約束の時間だからてっきりハルキさんが来たと思ったのに・・・」  
「誰かのいたずらかしら・・・」と思って玄関に戻ると  
 
「パン!パン!」大きなクラッカー音が玄関先に響き渡る。  
「きゃっ!な、何っ!?」  
「メリークリスマス!そして、ハッピーバースデー!」  
「サ、サンタさん!?」  
「サンタのおじさんが来ましたよ!」  
「その声は・・・も、もおーっハルキさんじゃないですかあ!脅かさないで下さいよ!」  
「ハハハ、ごめんごめん、ちょっとビックリさせようと思ってね」  
「ハルキさんたら・・・うふふっ、サンタの格好、結構似合いますね」  
「そうかい?そういってくれると嬉しいよ」  
「私もハルキさんの違う一面を見れて嬉しいです、さ、中に入って下さい」  
「じゃ、お邪魔するね」  
「は、はい!」  
 
綾はサンタ姿のハルキをリビングルームに連れていった。  
「僕が持ってきたケーキとシャンペンを机の上に置いて・・・と。グラスはある?」  
「グ、グラスは用意してます!」  
「ありがとう綾ちゃん。じゃあケーキを出そうね」  
ハルキが箱からケーキを取り出すと綾はまたビックリさせられた。  
「うわ〜大きい!あっ!「MERRY CHRISTMAS」「HAPPY BIRTHDAY AYA」って並んで書かれてる!嬉しい!」  
「クリスマスと誕生日ということだから、特別に大きいのを頼んだんだ。今日はお祝いの日だし、一杯食べようね」  
「は、はい!ありがとうございます!」  
 
二人は終始笑顔、かなりいいムードだ。準備が終わり、二人は椅子に腰掛けた。  
 
「じゃあまずはケーキのロウソクに火を灯して・・・綾ちゃん、電気消してくれる?」  
「はい!」綾はすぐにリビングの電気を消した。  
 
部屋が真っ暗になり、ロウソクの火だけが赤く点って二人の顔を照らす。  
 
「じゃ始めるね、僕が歌い終わったら、この火を消してね」  
「はい!」  
「HAPPY BIRTHDAY TO YOU〜 HAPPY BIRTHDAY TO YOU〜 HAPPY BIRTHDAY,DEAR AYA CHAN〜」  
「HAPPY BIRTHDAY TO YOU〜」  
 
「ふうーっ!」  
 
綾のひと吹きで 17本のロウソクの火が消え、部屋は真っ暗になった。  
 
「おめでとう綾ちゃん!そしてメリークリスマス!パチパチパチ!」  
「あはっ!ありがとうございますハルキさん!じゃあ、電気付けますね」  
「うん、お願いするよ」  
 
綾がリビングの電気をつけに行こうとしたとき「キャッ!」という声を挙げて綾が倒れてしまった。  
「あっ!綾ちゃん!大丈夫!?」  
 
「あいたたた・・・な、何かに躓いちゃったみたいです・・・」  
「大丈夫?真っ暗でよく見えないけど・・・綾ちゃんの声のする方は・・・ここかな?」  
心配になったハルキが綾の声のするほうへ向かうと、綾と思われる体に手が触れた。  
「あっ・・・ハルキさんの手・・・私ここにいます」  
「綾ちゃん見つけた。さあ、僕の手はここだよ!」  
「ごめんなさい・・・自分の家なのにまさか躓くなんて」  
「こんなに真っ暗じゃ仕方ないよ、さあ、僕の手をしっかり握って」  
「は、はい・・・」  
綾は真っ暗の中でハルキの手を握り、力強く起こしてもらった。ハルキさんの手は大きく、すごく温かった。  
そして綾がリビングの電気をつけると、躓いた原因はどうやらさっきのケーキの空き箱だった。  
 
「ああっごめん綾ちゃん!この空き箱を僕がこんなところに置いてなきゃ・・・僕の責任だ・・・ごめん」  
「い、いいんですよ!私がドジだったからだけですから・・・そ、それよりシャンパン冷えてる内に乾杯しましょうよ!」  
「そ、そうだね。じゃ、乾杯!」  
 
いきなりこういったアクシデントが起きてしまったが、ハルキさんが懸命に私を助けてくれた、といった優しさが嬉しかった。  
そして二人はケーキとシャンパンを口にしながら色々と話をしているうちに、ハルキがプレゼントのことを切り出した。  
 
続く  
 

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