・・・・ピルルルルル! ピルルルルル! ピルルル・・・・・・
「・・・・・ぁ・・ぅ・・・・・・・」
芽留は枕元の携帯に手を伸ばし、アラームを止めた。
「・・・ふぁ・・・・・・・・・っ・・・」
大きく伸びをしながらベッドの上に起きあがる。
目尻を拭いながら画面を見た。
新着メール 0件 着信 0件
芽留はさらに携帯を操作し、カレンダーの予定画面を開いた。
<データがありません>
「・・・・・・・・・・!?」
慌ててあれこれ確認するが、消えたのか、消してしまったのか、今日の予定だけ空白だった。
「・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・」
しばらく考えると、芽留はベッドから降り、寝間着のまま部屋を出ていった。
数分の後、両手に牛乳とトースターを抱え、食パンを袋ごと口にくわえてもどってくる。
足でドアを閉め、部屋のローテーブルの上にトースターをセットするとパンを放りこみ、芽留は再び携帯を開く。
(めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・)
とりあず。といった様子で一件メールを打つと、芽留は牛乳ビンのフタを開く。
カップを持ってこなかった事に気がつき、しばらく戸惑うが、しかたなく1リットルのビンのまま、一口飲んだ。
(めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・) (めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・)
続けて2件のメールを打ち、ちょうどそのころ焼きあがったパンを頬張る。
・・・ピレパラポレーン♪
パンと牛乳を交互に口にしていると、しばらくしてメールが入った。
芽留はメールを開き、文面を見る・・・・・・口元がにやりとした形になった。
(めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・)
嬉しそうに、勢い良く返信をしてゆく。
芽留は打ち終わると、トースターを片付けに、部屋から出ていった。
やがて芽留は部屋へと戻ってくる。
・・・ピーピピルールー♪
メールが届いた所だった。
新着メール 1件 着信 1件(不在)
メールを開く。
「・・・・・・・ぅ・・・・・!」
芽留の頬を汗がひとすじ流れ落ちた。
・・・ピリリピリリリリーリー♪
返事を打つ前に、さらにもう一件届いた。
「・・・・・・ぃぁっ・・・・!!」
芽留は思わず携帯を取り落とす。
落とした携帯から後ずさり、芽留は部屋から逃げるように出て行く。
数分後。
芽留は、おずおずと部屋にもどってきた。
そこに恐い物でもいるかのように、そろそろと歩いて、携帯を手に取る。
新着メール 1件 着信 3件(不在)
メールを開く。
「・・・・ぁぅぅぅぅ・・・・・・」
芽留は泣く泣く、返事を打った。
そして、しばらく考え、
(めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・)
新しく一件メールを送信する。
「・・・・ほ・・・・・・・」
芽留は溜め息を一つついて、半分ほど残った牛乳ビンを手に取り部屋をでた。
とたとたと小走りで部屋に戻ってくる。
新着メール 0件 着信 4件(不在)
芽留は少し不満そうに携帯を閉じた。
・・・ピルルパルピルールー♪
芽留はササッと携帯を開け、メールを読む。
「・・・・・ァ・・・・ハ・・・・・」
顔をほころばせ、嬉しそうに返信を打っていた。
・・・・昼をまわった頃。
・・・ピーピピルールー♪
芽留は部屋でソーメンをすすりながら携帯を開けた。
新着メール 1件 着信 12件(不在)
メールを読む。
「・・・・・ぅ・・・・・!」
少し不愉快そうに眉を寄せ、すばやく返信を打つ。
・・・ピルルパルピルールー♪
返信を打ったと同時に、別のメールが届いた。
「・・・・・ん・・・・・・・」
芽留は立ち上がり、部屋の本棚から雑誌を一冊取り出し、広げながらメールを打つ。
(めるめる・・・・・・めるめる・・・・・・)
片手で打ちながらソーメンを平らげ、また小走りで片付けに走った。
・・・ピルルパルピルールー♪
部屋に戻って来た頃、メールが届き、すばやく開く。
「・・・・・・ァハ・・・・・・・・・」
芽留は笑みを浮かべ、返事を打つ。
そのまま、携帯はテーブルの上に置いて雑誌を眺めていた。
・・・ピルルパルピルールー♪
サッと携帯を開いた。
「・・・・・・・ん・・・・・フゥ・・・・!」
芽留は微笑みを浮かべ、ちょっと顔を赤くしながらクッションを抱きしめ、床にコロンと転がった。
そのままの姿勢で携帯をいじり、返信を打った。
「・・・・・・・ぇふ・・・・・・・・」
送信すると芽留は起き上がり、クローゼットを開いて服を探し始めた。
「・・・あ、芽留ちゃーん! こっちこっち!」
商店街の入り口で待っていた奈美が手を振った。
芽留は奈美を見つけ小走りで近寄る。
「・・・お。似合うじゃない、そのワンピ。」
奈美の言葉に、芽留は携帯の画面を向ける。
『あたりめーだろ ブス』
奈美は少し苦笑を浮かべた。
「じゃ、先生のウチいこっか。」
そう言って歩き出した。
『まったく 世話の焼ける ハゲだぜ』
芽留は奈美に画面を見せて、横にならんで歩き出す。
今日もまた、暑い日差しが降り注いでいた。