「死んだらどうする!」
先生の叫び声で我に返りました。
私は目の前に突き出した、自分の手のひらを見つめました。
たった今、先生を突き飛ばした私の手。
私、止めようとしましたよね?・・・でも、先生を突き飛ばしていた。
・・・どうして怒るんでしょうか。
先生、死にたいって叫んでいましたよね。
私に文句を行って、先生は立ち去ってゆきます。
・・・・・・先生、もう私の事は見てくれないんですか?
何を言っても、ただのポジティブ女なんですか?
あの日、桜並木であったときから、先生は私を見てくれてると思ってました。
・・・でも、最近は、他の子の事ばかり構っている。
「また、ココロの隙間に入ろうとして!」
入らせて下さい。先生の心に。・・・私がそこに住んだら駄目なのですか?
見てください私を。
最初のころ、あんなに私をあてにしてくれたじゃないですか・・・・
もう、いらないんですか、私は?
私は必要なんです、先生が。
・・・・先生、また屋上に上ってきました。
何かに、絶望したんですね。
フェンスを乗り越えてます。飛び降りる気です。
私は先生の背後に駆け寄ります。
ごめんなさい! 心の中で叫んで、後ろに立っている、袴姿の子を突き飛ばしました。
その勢いのまま、先生に飛びつきます。
「命を粗末にしてはいけませーん!!」
半身を向けて振り返った先生の体を捕らえました。
ふわり、と二人の体が宙に浮きます。
私は手すりを蹴っていました。
私たちは、完全に空中に飛び出しました。
先生は何か叫ぼうとして、声が出ないみたいです。
先生・・・・・・大丈夫ですよ?
一人で逝くわけじゃないですよ。
私は先生に微笑みかけます。
来世では、必ず、私が幸せにしてあげますから。
ね・・・?
そこで、私の意識は途切れてしまいました。
・・・暗くなった視界の中で、鈍い音が聞こえた事が最後の記憶です。
「・・・本当に死んだらどうするんですか。」
先生は、ほぼ全身に包帯を巻いてベッドに寝ています。
私は、隣のベッドに腰掛けて先生の小言を聞いていました。
・・・腕と頭に軽い怪我をしただけで済んじゃってます。
下にあった古い倉庫の屋根を突き破って落ちた時は、先生がクッションになってくれてました。
「・・・・・もう、やめてくださいよ?」念を押す先生。
・・・・・・・・私はただ・・・・・先生を・・・・・・・・
なぜか、涙がこぼれてしまいました。
先生はびっくりしていますが、包帯のせいで動けないようです。
「・・・じゃあ、先生・・・・。先生はどうしたら、私だけの先生になってくれますか?」
思わずそんな事を言ってしまいました。
先生は言葉を無くしています。
そうですよね。先生は物じゃないんだから・・・・・・
「・・・・・とりあえず・・・・・突き飛ばすのだけは止めてください。」
先生はそう言いました。私はうなずきます。
「・・・その先は・・・まあ・・・・それから考えます・・・・・・・」
ちょっとびっくりしました。
そして安心しました。
先生、わかりました。私は待ってる事にします。まだ、もう少しだけ。・・・ね?