私は誰よりも近い所で先生を見つめていた。
その人がどこへ行こうと着いて行き、先生が首を吊れば私も首を吊った。
その日も私は一番近い場所で先生を見上げていた。授業を続ける背の高い先生を、いつまでも。
いつものこと
そう、いつも私はその眼を、背中を、素肌を見つめていた。こうやって寝顔を見つめることが出来るのも私だけ、ちょっと優越感に浸りながらつい小さな声がもれる。
「・・・先生」
そっと手に触れる、20代の若い異性に触れているという事実に少し興奮を覚えつつ触れている手の位置が腕、肩と高くなっていく。
いつのまにか添い寝のようなカタチで腕に抱き着いていた。ふと自分の体制に気付いて離れようとしたその時。
「んぅ」
寝返りをうった望の腕がまといの肩を抱くような位置にきた。ビクッとしながら息が少し乱れる。
「先生?」
小声で尋ねたが返事はなかった、起きてはいないようだ。
しかしどうしたものだろう、私が動けば起きてしまうかもしれない。もしそうなったら・・・どうなるのだろう・・・。
「・・・はぁっ」
ますます激しくなる鼓動に大きな息がもれる。
先生は私を受け入れてくれるだろうか?
・・・わからない、むしろ可能性は低い・・・気がする、望の閉じた目を見つめながら考える。
今目を開けられたら・・・
考えれば考えるほど呼吸は大きくなり、胸が苦しくなる。
「・・・常月さん?」
寝ぼけたように望が問い掛ける。起きてしまった、どうしよう。
事に気付いた望は慌てて起きて眼鏡をかけ、まといに問い掛ける。
「何をしてるんですかぁっ」
「あ、あの・・・」
震える声、と同時に涙があふれてくる。少したじろぎながら望。
「・・・常月さん?どうしたんです?」
「先生ぇ」
望の華奢な体に抱き着く、涙の訳はわからない。好きなのに、こんなに近くにいるのに・・・。
自分の胸で泣いている少女をどうしていいかわからずに望が言う。
「常月さん、あの、その」
「もう少しこうさせて下さい、今はこれでいいですから」
言葉のでない望にまといが答える。
困った様子の望に、あぁ、いつもの先生だと安心しながらまといは幸せを感じていた。
「今はって・・・まぁいいでしょう」
胸で寝息をたてる少女の頭をやさしく撫でる望の姿がそこにあった。