ラインバックの汚して行った、森の泥だらけの絨毯には、誰も近寄ろうとしません。汚れるのがいやなのでしょうか。
しかしそんな土を全く気にする様子もなく、ツンデレラは王子に連れられて踊り出しました。
そこはまるで、二人だけのステージ。嫉妬と怒りの視線をいっこうに浴びながら、ツンデレラは幸せでした。
ツンデレラの目の前の王子は、想像していたよりも、写真で見たその人よりも、ずっとかっこいい人でした。
それに、とても優しい。声も、振る舞いも、握っている手も、すべてが温かった。すべてが有り難かった。
こんな素晴らしい人が、自分と踊っていると思うと、ツンデレラでなくても、なんだか申し訳なくなってしまいます。
ツ「あ、あの、私、迷惑じゃありませんか?踊り、へたくそじゃありませんか?」
ノ「ええ、とってもお上手ですよ」
また、王子様も彼女の事を気に入ってしまいました。二人だけの世界が、目に見えるようです。
誰も口にしませんでしたが、そんな二人は‘お似合い’でした。
ノ「(これほど美しく、かつ謙虚な女性を見たことはないですね。いや・・・昔に一度、・・・!!?)」
ツンデレラの自然な美しさをさっきまではただ眺めていただけでしたが、
改めて顔を、唇を、鼻を、瞳を、目を見開いて凝視しました。
ノ「まさか、あなたは・・・」
ツ「?・・もしかして、なにかご迷惑でしたか!?」
いやそうじゃなくて・・・
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ノ「(・・・決めました・・今夜の十二時の鐘と共に、彼女の瞳を奪います。)あの、貴方のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
ツ「はい!?・・・あの、私は、、」
ツンデレラがどもっていると、急に耳元から声がしました。
ま「ツンデレ!」
ツ「わひゃあ!!」
ツンデレラが驚いて情けない声を出してしまいます。
ノ「どうしたんですか?」
ツ「い、いいえ・・・何でもないです・・・」〔どうしたのですか、まりあさん?〕
声の主は妖精のまりあでした。ツンデレラから子声で話しかけます
ま「‘オタノシミ’だね、つんでれら。でももう行かないと、約束の十二時の五分前だよ。」
ツンデレラはその事実をすっかり忘れていました。
ツ〔!!・・・そんな、・・・・・・あと、もう少しだけ・・・〕
ま「ダメだよ、このお城大きい、それにラインバック外でずっと待ってる」
ツンデレラの必死の懇願も、まりあにさっと断られました。
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まりあは冷たく言い放ちます。
ま「さあ、行かなきゃツンデレ!」
ツ「う・・・・・・あ、あの、王子様?」
ノ「?何でしょうか。」
ツンデレラは、ダンスを止めて、王子の手をふりほどきます。
ツ「ごめんなさい!!私、帰らないと行けないんです!!今夜は有り難うございました!!すいません!!」
ツンデレラはそれだけ言い残すと、扉に一直線に走り出しました!
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ノ「ああっ!どこへ!!せめて、せめてあと五分待ってください!!」
ツ「御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい!!」
ツンデレラは謝りながら走り去ります。その姿はあっという間にホールから去ります。王子がそれに続いて行こうとしましたが、
さっきまでいなかった気さえする周りの女性たちに囲まれ、押さえられ、動けなくなってしまいました。
王子と結婚したい女たちにとって、最大の敵はツンデレラだと悟ったのでしょう。
それに、十二時まであと3分ほど。王子をみすみす逃がすわけにはいきません。
ノ「放してください・・・くっ・・・ギャリソン!!!」
ギャリソンが、わかりました、と、狙撃銃を持った男と共に現れました。
ノ「・・・?、待ちなさいギャリソン!何をするつもりですか!!?」
ギ「大丈夫ですよ、これで彼女のハイヒールのかかと部分を、射止めるだけです」
ノ「おまっ、ちょっ、それは待てって、時代設定どうなってんだよ、、ワタリ!・・・もとい、ギャリソン!!!
・・・でもなくて、ジム・ロック!!」
銃を持った男の名はジム・ロックと言うそうです。
ジ「大丈夫ですよお、狙撃銃の発明は1452年生まれのかの天才レオナルド・ダ・ヴィンチ。
そしてグリム童話のグリム兄弟は共に1780年代生まれ。時代設定的に問題はあ・・・ないです!!」
ジム・ロックは、王子の言うことに耳を貸さず、喋りながら十秒ほどで狙いをつけ、弾丸を撃ち放ちました。バァン!!
ツ「きゃあああああ!!」
ノ「!!?彼女は?どうなったんだ!?」
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ギャリソンは王子にゆっくり歩み寄り、首を左右に振ります。
ギ「彼の銃弾は、彼女のハイヒールにきっちりあたったものの、止めることは出来ませんでした。
そして、来たときの黄色い乗り物が、彼女を拾うようにして乗せて帰ってしまいました」
ノ「な・・・、よけいなことを時田ーーーーーーっ!!じゃなくて、ギャリソンーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
十二時になり、鐘が激しく鳴ります。二人の始まりを告げる鐘が、別れの音を響かせる。
女2「さあ、きっちり目を合わせてください!!」
ノ「いやだーーーーーーーー!!」
ギ「王子・・・この試練を乗り越えてこその、愛ですぞ・・・」
ジ「逃がしてしまうとは・・・私ももう引退かな・・・んん?あれは・・・」
ジム・ロックの覗くスコープの先には、きらきらと輝く物がありました・・・。
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なんとかお城から脱出したツンデレラでしたが、それとほぼ同時に魔法は解けてしまいました。
ツンデレラの服は元のボロ絹に、ランボルギーニはラインバックに、すべてが元に戻りました。ただ・・・。
ツ「まりあちゃんは消えないのね・・。よかったあ」
ま「ウン。まりあは、魔法だけで出来たソンザイだから。ツンデレの服にかかってる魔法は、形を変える魔法。
あ!ちょうど・・、足を見て。靴は消えてないデショ。それはまた別の魔法、魔法だけで出来てるの」
マリアの言う通り、足の先には硝子のように輝くハイヒールがありました。・・・片足だけ。
ツ「ああ・・・、せっかくの靴なのに、片方落としてきてしまった・・。絶望しました・・・。でも・・・、」
ツンデレラは、お城を見上げました。
ツ「王子様のおかげで、これからも頑張れそうです。今日は、本当に楽しかった・・・、あああすいません!!」
ツンデレラは、満足げな表情を浮かべた後、ラインバック、まりあ、マナミへの感謝を忘れたかのような発言に対して、
鐘のまだまだ響く中謝罪し続けるのでした・・・。
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お城の中の、ダンスパーティの行われているホールからずいぶん離れた大浴場には、鐘の音と共にクシャミがよく響きました。
大きなお風呂でしたが、入浴していたのは女性が一人だけ。腰にタオルを一枚巻いただけで、あとは女性的な肌を惜しげもなく
露出しています。二人のメイド服を着た人たちに、丁寧に体を洗ってもらっている様子は、彼女がただ者ではないことを示しています。
メ1「え・・まだ冷えちゃあないですよねえ、・・・風邪ですか?」
メ2「・・ダメですよぉそんな普通なこと言ってちゃあ。私たち名もなきメイドなんですから、もっとキャラのわかる発言しないと!
私なら“やだなあ、風邪なんかじゃないですよぉ。女王様がいい意味で噂されてるだけですよお”とかかなあ。」
メ1「・・・噂でクシャミって・・・それも普通じゃない?」
メ2「普通って言うなー!・・・あり?」
メ1「あれ?」
女「・・・もうコントは終わったかしら・・?」
メ1「ああ、すいません。お体冷えてませんか?」
女「うーん、湯冷めって訳じゃあないんだけど、森に長いこといたからかなあ。ちょっと冷えちゃったかも」
メ2「あー、だから言ったじゃないですかあ。この時期森は冷えるから、行かない方がいいですよって」
メ1「また例の山菜ですか?もう、いい加減場所を教えてくれたら、私たちが取りに行くのにー」
女「だーめ。あの場所はねえ、私のお気に入りなの。おいしいやつが季節ごとに変わってたくさん採れるんだけどね、
採りすぎちゃあダメなの。それにねえ、あそこは“心のきれいな人”しか入れないようになってるしね」
メ1「何ですかそれ・・・ってああ〜、それってひどくないですか?」
メ2「ひどくないですよ。そう思うなら、女王様にその場所を聞いて、行ってみればいいんですよ」
女「だーかーらぁ、絶対教えないんだかr、ひゃああ!!」
メイドが背中に滑らせた手に、思わず色っぽい声が出てしまった。メイドたちに振り向いた彼女だったが、二の次を告げない。
メイドたちの様子がおかしい。いや、目だ・・・。目が、違う・・・。
メ2「私たち、長年女王様のお体を洗わせてもらってるんですよ。
“ヨワイ”ところの一つや二つ、知ってるに決まってるじゃあないですかぁ」
メ1「そっかあ。・・・今日という今日は、吐いてもらいますからねえ・・・ウフフ・・・」
鐘の音はまだ余韻を含んでいたが、こちらでもまた、息子ほどでないにしろ、戦いが実に激しく、セクシーに幕を開けたのでした・・。
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女「はあっ、はあぁん!駄目っそこダメぇ!!」プシャアァァー
メ2「きゃは!ずぶ濡れですう」
メ1「あたしももう、びしょびしょ〜。はぁっ、もう我慢できないっ・・・。脱いじゃおっと!」
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