「先生、お邪魔させてもらっていいですか?」  
夏休みに入り、数日が過ぎた頃、糸色望の住む宿直室に一人の女生徒が尋ねてきた。  
彼の受け持つクラスの少女、藤吉晴美である。手には少し大きなカバンを携えている。  
「藤吉さん?ええまあ、いいですよ。」  
何もない部屋ですがどうぞ、と部屋にあげる。  
 
ちゃぶ台に麦茶と座布団を用意し、晴美を掛けさせた。  
「それで、何か相談したい事でもあるんですか?」  
どうも今日の彼女は、なんだかそわそわしていて、落ち着きがない。  
だが一方、望も内心穏やかではなかった。  
(ああ、難しい相談事ならどうしましょう、友情とか恋とか将来とか性の悩みとか…  
 そんなもの私が相談したいくらいです!助けて!智恵先生助けてください!)  
夏休み中なので智恵先生は居ない。彼女に押し付けて逃げるなんてマネはできないのだ。  
 
「相談というか、お願いというか…しばらく、この部屋使わせてもらえませんか?」  
「え?」  
「実は、私の部屋のクーラーが壊れちゃって…困ってるんです。  
 全然終わってないんです、まだ全然…これが…」  
そう言って、晴美は持ってきたカバンを開ける。  
中に入っていたのは、原稿とマンガとペン、その他もろもろ。  
「同人誌ですか…」  
「はい、あんな熱い部屋でやってもべたべた引っ付いちゃって…(何より妄想に支障が出るし…)  
 家族にも友達にも秘密にしてるんで見せられないし。」  
(親にも友人にもバレている気がするのですが。)  
いや、知らないならその方ががいいか、と望は言わなかった。  
 
「それで、私の所に、ですか。あれ、木津さんは知ってるんじゃないんですか?」  
「駄目ですよ千里は!またこんなふしだらな本を、って怒られるし、4コマしか認めないし!」  
「ああ、そうですよね…ん?」  
なんだか今の発言に引っかかる部分を感じた…ふし…だら?  
「って、あなた教師の目の前で、どういう本描くつもりなんですかぁ!?」  
「だって時間がないんです!先生もう知ってるんですから、いいじゃないですくあ!  
 そうだ、プリンあげますよ!本当は一人で食べようと思ってたんだけど、先生にもあげます!」  
 
 
結局、押しの弱い望は、晴美に負けてしまい、クーラーが直るまで、場所を提供する事になった。  
 
 
真っ白な原稿を前にして、晴美は頭を抱えている。  
「あ〜、こうじゃなくて、こうじゃなくて、うーん。」  
望は、先ほどもらったプリンを食べながらその様子を眺めている。  
(親近感が沸きますねえ、私は漫画ではありませんが、こうやって手探りでイメージを…  
 それをなんとか形にして…そうやってどうにか完成して…それで…そして…ああ…売れない…)  
どよんど、と自身の体験を思い出し、落ち込む。  
晴美は自分と違い、ちゃんと売れるということを思い出し、さらに落ち込む。  
なぜかプリンをしょっぱく感じてきた望が、ふと晴美を見やると、彼女は畳に転がり漫画を読んでいた。  
「それが原作ですか。」  
「ええ、どうにも浮かばなくて…先生も読みます?完結はまだですけど、最新刊までありますよ。」  
「それじゃ、お言葉に甘えて読ませていただきます。」  
カバンの中から十数冊の本を取り出し、望に渡す。  
「はい、先生。あ、何かアイデア思いついたら教えてくださいね。」  
 
二人、寝そべりながら本を読む。  
小一時間ほど経った頃、イメージが固まったのか、晴美は原稿に向かい始めた。  
作っているモノがモノなだけに、望は少し悩んだが、  
自分の生徒が頑張ってる姿を見れるのは、教師として嬉しかった。  
 
望が、晴美に渡された本を全て読む頃には、辺りは暗くなりはじめていた。  
「藤吉さん、そろそろ帰らないと。親御さんが心配なさいますよ。」  
「えー、もうそんな時間ですかぁ…あの、先生…」  
「明日も来るんでしょう?いいですよ、お茶菓子くらいなら用意しておきますよ。」  
「ありがとうございます!それじゃ、先生また明日。」  
「ええ、それでは。」  
また明日、と別れの挨拶を交わす。  
 
 
「おじゃましまーす。」  
「いらっしゃい、藤吉さん。」  
 
 
「そういえば、交くんはどうしたんですか?見かけませんけど。」  
「ああ、交なら倫と時田と旅行に出かけてますよ。1週間ほど。」  
「なんで先生は、行かなかったんですか?」  
「私に南国は似合いませんから…、北国は北国で死にたくなりますけど。」  
「あ〜、なるほど。」  
 
「…これ、このキャラと、このキャラですよね?この二人恋愛描写なんてありましたっけ?」  
「はい。ほら、このシーンですよ。」  
「私には、睨んでるだけに見えるんですが…」  
 
「だから、そんな穴はない!」  
「これは、こういうものなんですよ。」  
「わかりません!わかりません!」  
 
「うーん、この後どうやってまとめよう…先生、何かいい案ありません?」  
「心中しかないでしょう、最愛の人が同姓だなんて、来世に賭けるしかありませんよ!」  
 
「先生…あの…うまく描けなくて、その…先生の…見せてもらえません?」  
「え、あ、あの、わた」  
「なんて言われるの期待しちゃったりしますか?男の人って、こういう状況だと。」  
「絶望した!年下に弄ばれる自分に絶望した!」  
 
「先生が書いたのも、読ませてくださいよ。あんまり暗いの嫌なんで、ハッピーエンドの。」  
「恥ずかしいですが…どうぞ。」  
「…先生、どうしてどれも心中で終わりなんですか?」  
「それから先どうなるか、って考えると不安で、つい…」  
 
「経験を活かして、女子高生モノとか女教師モノとか、書いてみたら良いんじゃないですか?」  
「モノとか言うなあ!それに、そんな経験ありませんから!」  
 
 
晴美の宿直室通いの日々は過ぎていった。  
 
 
「おわった〜。」  
全工程を終え、一息つく晴美に望が声をかける。  
「お疲れ様です、藤吉さん。そろそろだろうと思って、お祝いのケーキ買ってきましたよ。」  
「え、先生もですか。実は私も買って来てまして、先生に内緒で冷蔵庫に。」  
今日は、ちゃんと最初から先生の分も含めて買ってきてますよ、と笑顔で続ける。  
 
「では改めて、お疲れ様です。」  
「ありがとうございます、先生が宿直室に入れてくれたおかげです。」  
「ははは、プリンも受け取っちゃいましたしね。それに、楽しかったですよ。」  
「ええ、私もすごく楽しかったです。もうこれで終わりってなると、ちょっと寂しいです。」  
「いいんですよ、来てくれて。なんて言わなくても、皆さん、ちょくちょく見に来ますけど。」  
「ええ…そうですよね。」  
 
少しの沈黙の後、晴美が口を開いた。  
「あ、そうだ。」  
ゴソゴソとカバンの中を探りだす。  
「じゃーん。」  
「ネコミミですか。」  
「はい、付けてくれますよね?」  
「やっぱり、そうくるんですか。」  
「もちろんです。いいじゃないですか、記念ですよ。それとも女装の方がいいですか?」  
「すいません、女装は勘弁してください…ネコミミでいいです。」  
「ありがとうございまーす。」  
ネコミミを持って、望に近づいていく晴美は、実に嬉しそうだ。  
 
「さすが先生、可愛いですねー。」  
「ああ、あんまりいじくらないでください…」  
別に神経が繋がってるわけでもないのだが、自分に付けられたネコミミをいじられ続けるのは、  
なんだかむずがゆいような、変な気分だった。  
「あははは、にょんたかにょんたか。」  
「もういいでしょう?あんまりからかわないでくださいよ。」  
「こんな風にからかわれるの、嫌ですか?」  
「そりゃ、男として釈然としません。」  
「そうですか、じゃあ、からかうのやめますよ。」  
そう言って、晴美は望の眼鏡を外した。  
「え?」  
困惑している望の唇に、晴海の唇が重なった。  
 
ちゅっ、と軽い音をたてて2つの唇が離れる。  
「ふ、ふじよ」  
「好きです、糸色先生。」  
未だ事態の飲み込めていない望に、もう一度キスをする。  
 
「本気ですよ。」  
望の胸に頭を押し付けるようにして抱きつく。  
混乱した頭も次第に晴れてきた望は、自分に抱きついた少女の頭を撫でながら、尋ねる。  
「本気ですか?」  
「さっき、そう言ったじゃないですか。」  
「すいません…くだらない事聞いちゃって…顔を上げてください。」  
言われた通り顔を上げる晴美に、今度は望の方からキスをした。  
 
さっきまでの合わせるだけのキスとは違う、望の舌は晴美の唇を割り、中へと侵入してくる。  
その行為に、ぎこちないながらも応えようと、晴美もまた望の舌をその舌で受け止める。  
絡み合うたびに、甘い痺れがもたらされる。  
と、その唇が不意に離された。  
「んぅ、せんせ?」  
「お布団、敷きましょうか。」  
 
敷かれた布団の上に、望が腰をおろし、おいでおいでと誘う。  
晴美は、タイムリープでもせんばかりの勢いで、その愛しい男の胸に飛び込んだ。  
そのまま背中を預け、甘えた声で言う。  
「せんせ、脱がしてー。」  
 
子供のようなその様に、笑みがこぼれた。  
衣服を脱がしていき、ブラを外した所で、その胸があらわになる。  
「大きいんですね…意外と。」  
「小さいほうが、お好みですか?」  
「いえ、そんなことは。魅力的ですよ、すごく。」  
むにゅむにゅと乳房を揉んでみる、包み込まれそうな柔らかさだ。  
桜色の乳頭をつまみあげながら、首筋にキスをすると可愛い声を上げた。  
「ひゃ、あ…せんせぇ、それ、気持ちいいです。」  
「良い反応です、先生そういう子大好きですよ。」  
耳元で呟きながら、スカートに手を入れ、下着の中へと潜り込ませてみると、湿った感触が指に触れた。  
 
晴美を仰向けにして、布団の上に寝転ばせる。  
残された衣服も脱がされ、怖いのか、恥ずかしいのか、緊張しているようだ。  
割れ目に指を沿わせ、中へとゆっくり侵入させた。  
体に流れた小さな電流に、身を震わせた晴美を、落ち着かせるように、おでこにキスをして続ける。  
「大丈夫、力を抜いてください。」  
愛らしい乳頭を口に含ませて、舌で転がす。新たに追加された快楽が、晴美の身体を伝わっていく。  
「あっ…ふぅ、んぅぅ…」  
一際大きな波が、その体を襲った。  
「イっちゃいましたか?」  
その髪をいじりながら尋ねる。  
「はふ、ふぁい。」  
ぽーっとした様子だった晴美の目の焦点が合ってきた。  
 
「先生。」  
「はい、なんでしょう?」  
「先生も脱いでくださいよ。」  
はいはい、と着物を脱いでいく。  
晴美の期待に満ちた視線を感じ、なんだかとっても恥ずかしい。  
 
あぐらをかいた望のそれを、四つんばいになった晴美が、赤くなりながらもまじまじと見ている。  
「すいません、藤吉さんの描くのより小さくて。」  
なんだかよくわからない敗北感を望は感じていた。  
「そんなの気にしなくても…あの、先生の触ってもいいですか?」  
「ええ、どうぞ。むしろお願いします。」  
 
細い指が、絶棒に絡みつく。  
「熱いですね、それに硬い。」  
「あの、硬いくせにデリケートなんで、優しくお願いします。」  
さわさわと、指に撫でられる感触が心地よい。  
「…先生、失礼します。」  
はぷっと、口にくわえられた。唾液にまみれ、舌に刺激された絶棒はその熱を増していった。  
「は、藤吉さん、うぅ、ぁ…」  
見よう見まねであるが、本で読んだ知識を使って晴美は懸命に絶棒を愛撫した。  
じゅぷじゅぷと、彼女の愛らしい唇が卑猥な音をたてている。  
文系とは思えない身体面での要領の良さも手伝っているのか、程なく望は絶頂へと導かれていく。  
瞬間、白濁液が晴美の口内に広がった。その生臭さに顔をしかめる。  
出して、と先生がティッシュの束を口の前に持ってきた。  
耐えられず、そこへ口内の物を吐き出す。  
 
「えほっ、えほっ…すいません、先生の飲んであげられなくて。」  
「え、いやいやいいですよ!あんなもの、飲み物じゃないんですし。」  
「あの、お詫びといってはなんですけど…」  
もう一度、絶棒をくわえ、口をすぼめて思いっきり吸った。  
尿道に残った精液が、搾り取られていく。  
「ふぅぅ…えへへへ…」  
しばらくは、絶望できそうもないほどの幸福感に包まれて、望はクラクラした。  
 
「先生、続き。」  
「あ…はい。」  
少しどこかに飛んでいた意識が、晴美の声によって呼び戻された。  
 
「入れますよ?」  
「優しく…してくださいね。」  
ずぷずぷと、自分の中を押し広げられていく感覚。  
痛みと不安、そして愛する人を受け入れたい、という感情が交錯する。  
「は…んぅ…あっ…はっ…」  
「藤吉さん…大丈夫ですか?」  
「いたっ、痛いです…先生、手…繋いで。」  
「すいません、気が利かなくて。」  
「ふぅ…ふふふ。」  
握られた手に安心したのか、その顔をほころばせた。  
少しでもその痛みを和らげようと、侵入を中断し、望は晴美の胸の突起を口に含んだ。  
舌の上で転がすたびに、甘いため息が漏れる。  
次第に晴美の体もほぐれていった。  
 
「はぁ…動いて…いいですよお。」  
望は、こくん、と唾を飲み込んだ。  
きつく締め付ける晴美の中を、絶棒がじゅぶじゅぶと音をたてて刺激する。  
「痛いけど、ちょっと…キモチイイ…です…」  
望の方は、ちょっとどころではない、腰を砕かれそうな快感に襲われていた。  
 
二人の息が荒くなっていく、もはや望の方は限界だ。  
「あ…もう駄目です…先に…んっ!」  
「ひゃ…先生のが…あったかい…」  
びゅるびゅると自身に注ぎ込まれる感覚に痺れ、晴美も絶頂を迎えた。  
 
「あのですね、先生。」  
望に腕枕をしてもらいながら、晴美は言う。  
「実はもう、うちのクーラー直ってるんですよ。」  
「なんとなく、そんな気はしてましたよ。」  
「ばればれですか。」  
「ええ、楽しかったので黙っていました。」  
「もしかして、こういう事期待して、ですか?」  
「いや、さすがにそれは。」  
 
「ああ、そろそろ時間ですねえ。お送りします。」  
「うわ、今日はいつもより優しい。なんかやらしいですよ、先生。」  
「いつもより遅いからですよ…」  
なんだか恥ずかしくなって目を逸らす。  
 
「でも、いいですよ、今日は。」  
「そんな、遠慮しなくても。」  
「違いますよ、今日は友達の家に泊まるって、言ってますから。」  
「え?」  
「泊めてくださいね、せーんせ。」  
甘えた声で告げる。  
「え、あ、はい。」  
「それじゃ、おやすみなさい。」  
ちゅ、とキスをして、そのまま寝転がり目を閉じた。  
「本当に遠慮しませんね…」  
そう言って苦笑して、望も晴美の横で眠りについた。  
 

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