「秋祭り?」  
「はい、ウチの近くの神社でお祭りやるんです。一緒に行きませんか?」  
あびるが手際よく望の包帯を取り替えながら話し掛ける。  
「お祭りですか、風流ですね。ええ、是非ともご一緒しましょう」  
動物園での怪我も小さな傷を除けばほぼ治り、日常生活には何の支障もない。  
何よりこれほど早く回復したのは日替わりで見舞いにきてくれた生徒達のおかげであり、特にあびるの献身的な看護には感謝の気持ちでいっぱいだった。  
望はあびるの誘いを快く承諾した。  
あびるは包帯を取り替え終わると、猫のように望に抱きついてきた。  
「ふふっ、そう言ってくれると思ってました!久しぶりのデートですね、楽しみにしてますね!」  
「ええ、私も…」  
望が返事を返そうとしたその時、部屋の扉が勢い良く開く。  
ガラッ!  
「!!」  
「おじさん、あびる姉ちゃん、何やってんだよ」  
「ま、交!」  
「交くん…」  
空気が凍り、静寂が流れる。  
「えっと、これは…っと…脈拍!脈をはかってたのよ!ねぇ、先生?」  
「そ、そうです!これは看護の一環であってやましいことは何も…」  
取り乱し、苦しい言い訳をする二人の横を通り過ぎながら交は冷静に言い放つ。  
「いちゃいちゃするのは勝手だけど時と場所を考えてくれよな、あんまりひどいと小森姉ちゃんとか智恵さんに言いつけるぞ」  
二人は自然と正座の姿勢になり、交の背中に向けて頭を垂れていた。  
二人は小さく声を合わせて『はい、すいませんでした』と謝るしかなかった。  
 

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