ここは、さるお大名の江戸屋敷。  
先日、目黒ですっかりBL本にはまってしまった晴美姫は、  
今日も今日とて部屋一杯にBL本を広げ、熱心に鑑賞されておりました。  
 
と、ふすまが開いて  
「姫。お作法のお時間です。」  
そこに現れたのは、姫の教育係の糸色望卿でございます。  
 
この御方は公卿の家のご出身ながら、公家の常として身代が苦しく、  
晴美姫の教育係として、日々の禄を得るお立場にございました。  
 
卿は、姫の部屋に散らかるBL本を見て目を剥きました。  
 
「姫…こ、これは何なんですかあっ!」  
「ああ、これは目黒で調達したBL本というものじゃ。  
 やはりBLは目黒が一番じゃな。」  
姫はにっこりと笑顔を浮かべて、卿をご覧になりました。  
 
卿は、姫が見ているBL本のページをちらりと見て、天を仰ぎました。  
「絶望した!一国の姫ともあろうお方が、  
 このような下劣な本を嬉々として読まれていることに絶…」  
「のう、卿。」  
姫は、卿のお言葉を全く聞いておられないようです。  
まあ、卿が絶望されるのはいつものことですから、  
今さらいちいち構うのも面倒なのでしょう。  
姫は、顔をお上げになると首を傾げて卿をご覧になりました。  
 
「それにしても、男というものは、随分変わったことをするものじゃのう。  
 卿は、今まで、このようなことは教えてくれなかったではないか。」  
「姫。お作法のお時間の間は、先生とお呼びください。」  
「では、先生。お尋ねするが、男の人と言うのは、  
 どうしてこのようなことをするのか?」  
 
卿は絶句されました。  
 
―――もしや、姫は閨房のことについて、何もご存知でない?  
 
卿は恐る恐る姫に問いました。  
 
「姫…姫は、どうやったらお子ができるか、ご存知ですか?」  
姫は、むっとしたように卿をご覧になりました。  
 
「馬鹿にするな、それくらい知っておる。」  
卿はほっとすると、目の前の湯飲みをお取り上げになりました。  
が、次の姫の言葉に、口に含んだお茶を盛大に噴き出しました。  
「子供は、木のまたから生まれてくるのじゃ。」  
 
卿は慌てて畳を懐紙で拭いながら叫びました。  
「木のまたって…、どこぞの妖精さんですか!?  
 それ、洋の東西間違ってますから!!  
 …というか、姫、それは、本気でおっしゃってるのですか?」  
 
姫はきょとんと卿を見ると、首を傾げました。  
「…違うのか?」  
その姿は、無邪気にも愛らしく、卿は一瞬くらっときましたが、  
それどころではございません。  
 
姫は、いずれはどこかの大名のご正室としてお世継ぎを生さねばならぬ身。  
この御年になられれば、閨房での技についても学んでいなければなりません。  
 
―――一体、お女中達は何をやっているのですか!!  
 
卿は、腹立たしく思うと同時に、姫がいずれは嫁がれる、というその事実に  
胸がきりりと痛むのを感じました。  
 
所詮、自分は貧乏貴族。  
お大名の姫に釣り合うような身分ではありません。  
しかし…。  
姫が、誰とも知れない男に抱かれている姿を想像することは、  
卿には耐え難い苦痛でございました。  
 
「先生?どうしたのじゃ?」  
姫は、黙り込んでしまった卿に、不思議そうににじり寄り、  
襟元をつかんで覗き込みました。  
 
「―――!!」  
卿は、喉元にかかる姫の温かい吐息に、思わず体をのけぞらせました。  
 
姫の眼鏡の奥の瞳はくりっと愛らしく、尖った桃色の唇は艶やかで  
姫に想いを抱いている卿にとって、至近距離からの姫のそのお姿は、  
脆い理性を吹っ飛ばすのに充分でございました。  
 
―――このままでは、姫は、大恥をかかれてしまいます。  
   私は、姫の教育係なのですから、全てをお教えせねば…!  
 
卿は、とっさに都合のいい言い訳を考えると、姫に向き直りました。  
 
「姫。あのような技は、本来、男同士で行なうものではありません。」  
姫は驚いたような顔をされました。  
「そうなのか?」  
「ええ…もとは、男と女の間で行なうものなのですよ…。  
 …教育係である私が、責任をもってあなたにお教えいたしましょう。」  
そう言うと、卿は姫の艶やかな唇に口付けをされました。  
 
「ん…っ!」  
姫の目が驚いたように見開かれます。  
しかし、繰り返し、卿に念入りに口付けられていくうちに、  
その目はトロンと蕩けてまいりました。  
 
卿は、そんな姫を愛おしそうに見下ろすと、囁きました。  
「今のが、口付け、というものです。」  
「くちづけ…。気持ちいいものじゃな。」  
姫は、うっとりと呟きました。  
 
「もっと、気持ちのいいことを教えて差し上げますよ…。」  
卿は、そう言うと姫をゆっくりと畳の上に押し倒しました。  
 
しゅるしゅると帯の解かれる音が部屋に響きます。  
卿は、手馴れた様子で、1枚1枚姫の着物を脱がしていきました。  
襦袢1枚になった姫を見て、卿は感嘆のため息をつきました。  
 
―――こんなにも、お美しい体だったのですね…。  
 
いつもは幾重もの着物に包まれた姫の肢体は、  
豊かな胸とくびれた腰、そして臀部に続くなだらかなライン、  
いずれも男の情欲を誘うに充分な魅力を持っておりました。  
 
「姫…お美しい…。」  
卿が思わず漏らした呟きに、姫は真っ赤になりました。  
「な、な、何を言うのじゃ。恥ずかしいから、あまり見るでない。」  
そういうと、両手で胸元を隠すようなしぐさをされました。  
 
卿は、その手を捉えると、左右に広げ、畳に押し付けました。  
「いけません、姫…。  
 閨の中では、殿方には、全てをさらけ出さねばいけないのです。」  
卿は姫の両手を抑えたまま、姫の胸元に唇をお寄せになりました。  
 
「ん…っ」  
胸元を強く吸われて、思わずというように姫が声を漏らします。  
次の瞬間、それに驚いたように、再びお顔を赤くされました。  
 
「いいんですよ、姫。こういうときは、お声を上げるものです。」  
そう言うと、卿は、姫の襦袢の袷を左右に押し開き、  
その桃色の胸の先端を口に含み、軽く舌で転がしました。  
 
「あぁっ…、先生…!!」  
姫が体をしならせます。  
 
姫は、奥で育ったにもかかわらず、体が柔らかく動きもしなやかで、  
卿は、その反応にすっかり夢中になっておしまいになりました。  
 
気がつけば、姫の襦袢はすっかり肌蹴てしまい、腰巻も緩んで、  
姫が身もだえするたびに、白く滑らかな腿が見え隠れします。  
 
卿が、堪らず、むしりとるように腰巻を取り去ると、  
今だかつて誰も触れたことのない未踏の地が、姿を現しました。  
 
「…。」  
卿は、緊張の余り生唾を飲み込むと、そこに顔をお近づけになりました。  
そして、優しく、ゆっくりと、舌を伸ばされました。  
 
「はぁ…っ!」  
姫は、エレキテルに触れたように体をお震わせになりました。  
きっと、今だかつて体験したことのないような感覚だったのでしょう。  
 
しかし、卿は、姫の反応に頓着することなく、舌をお遣い続け、  
それと平行して、指を姫の中に差し入れ、動かしました。  
 
「あ…っ、あっ、ああああ!」  
姫が再び体をそらせて、そのまま雷に打たれたように固まりました。  
同時に、卿の指には温かいものが溢れてまいりました。  
 
姫は、すっかり上気した顔で息を切らされております。  
卿は、肘をついて体を起こすと、姫にお尋ねになりました。  
「どうですか?姫…?」  
姫は、ぼんやりと卿を見返すと、口の中で呟きました。  
「すごく、気持ち良かった…。」  
卿は、嬉しそうに、にっこりと微笑みました。  
 
と、姫がいきなり、がばりと起き上がりました。  
「わらわばかり気持ちよいのは不公平じゃ。」  
そうおっしゃると、姫はやおら、卿の股間に顔を埋めたのでした。  
「本で読んだ。こういうことをすると、殿方は気持ちよいのじゃろう?」  
「ひ、姫!?」  
卿も、驚いて体を起こされましたが、  
すでに姫のお口は卿をしっかり捉えられておりました。  
 
「…むぅ、ん…。」  
高貴な姫の愛らしいお口が、自分のものを咥え込んでいるという事実に、  
卿は陶然となりました。  
しかも、姫は、BL本でいろいろと知識を仕入れておられたらしく、  
初めての割には巧みな舌遣いをお持ちだったのです。  
 
「う、あぁ…。」  
卿は、余りの気持ちよさに思わず声を上げてしまいました。  
と、姫がふいに、卿から口を離しました。  
 
「…?」  
卿が見下ろすと、姫は卿の下半身をじっと凝視されておりました。  
「な、何をご覧になっているのですか、姫!」  
慌てて卿は足を閉じます。  
姫は、ぽつんと呟かれました。  
「…穴が、足りない…。」  
 
ずがぼん  
 
卿は、畳に頭がめり込むほどの勢いで、突っ伏しました。  
「…先生?」  
 
ひりひり痛む額を押さえながら卿は叫びました。  
「だから!!そんな穴なんかありませんから!!!!」  
そう言うと、卿は姫を押し倒しました。  
 
せっかく盛り上がっていたところに水を差されてしまい、  
卿としては、これ以上は、姫に主導権を握らせるおつもりは  
ございませんでした。  
 
「もう、あなたときたら…!  
 これが、本来入るべき穴を、今から教えて差し上げますよ…!!」  
 
卿は、その言葉とともに、姫の御み足を高く掲げると、  
すっかり潤っているそこに、自身を奥深く突き入れたのでした。  
 
「あああああぁあ!」  
姫の目が大きく開かれ、そのお体が海老のようにのけぞります。  
「せ、先生…!痛い…!!」  
「大丈夫です…もう少ししたら、痛くなくなります…!」  
 
そう答える卿も、いっぱいいっぱいの状態でした。  
姫の若々しく発達した筋肉は、卿をぐいぐいと締め付け、  
その快感に、今にも迸ってしまいそうになるのです。  
 
卿は、姫と自分自身のために、しばらく深呼吸をすると、  
やがてゆっくりと動き始めました。  
 
「んっ…む、あぁんっ!」  
最初はお辛そうに眉をしかめておられた姫も、だんだんと、  
卿の動きに合わせて甘いお声を上げられるようになりました。  
 
「姫…いい…いいですよ…。」  
卿が、腰の動きを少し早めました。  
「ぁぁぁあああ!」  
姫が嬌声を上げて、卿の腕をつかみ、体を起こそうとなされました。  
「せ、先生、もうっ!」  
「まだ、だめですよ、姫…。」  
ところが、卿は、先ほどのことを根に持っているのか、  
まだ容赦しようとされません。  
 
「いや…あぁぁ!!」  
姫は、もはや半狂乱になり、すすり泣きながら卿の首にしがみつきました。  
「せんせ……卿!…卿!!好き…っ、好きじゃ!!大好き…!!  
 ずっと、ずっと前から、卿だけが……っ!!!」  
 
姫の叫びに、卿の動きが止まりました。  
 
「…?」  
姫が、息を切らしながら、怪訝そうに潤んだ瞳を卿に向けます。  
卿は、泣いているような笑っているような不思議なお顔で、  
姫のお顔を見つめておいででした。  
 
姫の、たった今の告白は、卿にとって思いもかけない喜びでした。  
しかし、卿は、それに対して返す言葉を持ち得ませんでした。  
姫と卿との間に立ちはだかる身分という壁は、卿にとって、  
余りにも高いものだったのです。  
 
そう、それこそ、「教育」という名目がなければ、  
姫に触れることもかなわないほどに…。  
 
卿は、不思議そうに自分を見やる姫を見つめ返すと、  
言葉を返す代わりに、想いのたけを体で伝えることにしました。  
 
先ほどよりも、さらに、激しく、強く、深く。  
まるで、自分の想いをあらわすように、卿は姫に体をぶつけていきました。  
 
「―――卿、卿!!」  
「―――姫!!」  
 
姫と卿とは、同時に昇り詰め、果てたのでございます。  
 
 
 
姫は、どうやら気を失われておしまいになったようでした。  
卿は、姫の髪をなでながら、  
自分がつけた紅い花びらを体中に散らせた姫を眺めておられました。  
 
―――これは、お手打ち、ですかね…。  
 
今日の夜、姫が湯殿に入る段になれば、姫の白い体に散るこの跡が、  
お女中達に、ばれないわけがありません。  
そして、それを誰がつけたのかも…。  
 
―――仕方ありませんね、それだけのことをしたのですから…。  
 
卿は苦笑されました。  
姫と想いを遂げた今、例え罪人として裁かれても悔いはありませんでした。  
 
と、姫が薄らと目をお開けになりました。  
「卿…。」  
「姫。お目覚めでございますか。」  
「卿、逃げよう。」  
「…!?」  
 
卿は、驚いて姫を見つめました。  
姫は、今やしっかりと目を見開いて卿をご覧になっておいでです。  
「卿、わらわは、卿に教わって分かった。  
 このようなことを、卿以外の男とすることなど、わらわにはできぬ。」  
「…。」  
 
まだ、口がきけない卿に、姫は起き上がると尋ねました。  
「それとも、卿は、わらわが嫌いか?」  
「そ…。」  
 
不安気な色を見せながらも、想いを込めて見つめて来る姫の眼差しは、  
卿の胸の中の不安や恐れ、そしてためらいを溶かしていきました。  
 
卿は思わず手を伸ばし、姫を胸にしっかりと掻き抱きました。  
「そんなこと、あるはずがないじゃないですか!  
 私は…私は、…ずっと前から、姫をお慕いしておりました!!」  
姫は、その言葉に驚いたように目を瞬かれましたが、  
次の瞬間、卿を見上げると、心から嬉しそうに笑われました。  
 
「そうとなったら話は早い。行くぞ、卿!!」  
姫は手早く着物を纏うと、卿の手を引っ張って立たせました。  
 
「って、えええええ、今ですかーーー!?」  
「何を言っておる、善は急げじゃ!!」  
 
姫は、持ち前の運動神経で、卿の手を引いたまま縁側を飛び降りると、  
そのまま庭を突っ走って、ひらりと塀を乗り越えました。  
 
最初は、戸惑いながら手を引かれていた卿も、  
やがて、笑いながら、姫について走り出しました。  
 
 
 
その後のお2人の行方は杳として知れません。  
 
しかし、それから間もなく、江戸の片隅に小さな寺子屋が開かれ、  
そこには、すぐに絶望したがる先生と、いつもBL本を抱えている奥方のご夫婦が、  
いつまでも仲良く住み暮らしておりましたとさ…。  
 
ということだけを、皆様にお伝えして、  
このお話は、これにてお開きということにいたしましょう―――。  
 
とっぴんぱらりのぷう  
 
 

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