―千里が登校したのはあれから数週間後だった  
 
いつも通り前髪は綺麗に真ん中分けされ髪も朝からセットしたのか真っ直ぐストレート  
でも釣り上がらない眉と力ない眼はまだ傷が癒えていない事を物語っていた  
 
「千里ちゃんおっはよ〜♪久しぶりだねもう大丈夫なの?」  
 
拍子抜けする程明るく第一声をかけてきたのは風浦可符香だった  
 
「・・うん、もう大丈夫よ。・・・・」  
 
精一杯の微笑みで返事すると満面の笑顔を浮かべるポジティブ少女  
あの日憎い一旧と何かを話していた気がするが  
今はこのなごむ笑顔だけで充分だ  
 
「ち・・千里・・・・・もし気分が悪くなったら早退しても良いんだよ?」  
 
「・・ありがと晴美・・」  
 
唯一事情を知るだけにそっと気遣ってくれた親友に感謝するとカバンを開けて教科書と筆記用具を出した  
 
あぁ私は2のへに戻って来たんだな  
糸色先生の顔を見る事が出来るんだろうか?  
 
 
そうこうしている間にチャイムが鳴り  
想うだけで胸が締め付けられるその人はいつも通り教壇に立った  
 
「さて皆さん、  
今日もまた中央線が止まりましたね  
別に深い意味はありません」  
 
朝っぱらからいつも通りネガティブな挨拶をすますと望は千里に気がついた  
 
「木津さん、  
今日は来てくれましたか几帳面な貴女が長い事休んで先生心配してたんですよ?」  
 
彼が心配してくれていたのは知っている  
家に何度も電話してくれたし直々に家庭訪問もしてくれた  
でも電話に出る勇気はなかったし  
会えばどんな顔すれば良いかわからなかった  
 
今も眼を合わす事すら出来ないのだから・・・・・  
 
「どうしました、まだ本調子ではないんですか?」  
 
「・・いえ、大丈夫です・・・・・」  
 
 
そう答えながらも声にはいつもの気丈さはなかった  
少し心配しつつも  
望は授業が始まり自分が何かきちんとしてない事をすればいつもの気の強い彼女に戻るだろう  
その時はそう考えていた  
 
「では授業を初めますよ  
教科書の三十八ページを開いて下さいドフトエススキーの罪と罰の続きです」  
 
いつもの通りタイトルと著者名を黒板に書いていくとある事に気がついた  
 
「おっとドストエフスキーなのに今までドフトエススキーって思って書いていました  
今まで気がつきませんでしたよ〜ハハハ」  
 
 
だがいつもの声が聞こえない  
いつもなら千里が  
「ハハハじゃありません!国語の教師なのにロシアの文豪の名前を間違えていたなんて!」  
 
と指摘してくるはず  
だが今日は何も聞こえない  
彼女をチラリと見ても教科書を眺めているだけ  
 
きっちり平等な共産主義運動が広がりつつあるロシアで犯される殺人  
これほど千里が食いつきそうな話はないのに・・・・・  
 
「ハハハ木津さん、ロシア作家の名前て覚え辛いですね」  
 
「・・そうですね・・・」  
 
名指しでふってもそっけなく流された  
望は首をかしげたが  
千里は指摘出来ない程  
罪と罰の主人公に感情移入していた  
 
「私も大地に接吻し、  
世界の人々に罪を叫べばラスコーリニコフみたく救われるんだろうか・・・・・」  
 
 
自分は何もないのに責任を取れと先生を脅迫し  
何もない事を教えた者を殺害し  
何もなかった苦しみで勝手に休み  
益々先生に迷惑をかけているのだから  
 
するとカエレが金髪を振り乱し指摘とゆうより抗議を始めた  
 
「先生!生徒に間違った名前を教えていたなんてゆゆしき事です  
訴えてやる!!」  
 
 
「ちょ、木村さん間違えた事に気がついたし良いじゃないですか・・」  
 
「先生、私もソーニャの様に流刑地にまでついていきます」  
 
 
「先生似合うでしょうねえ〜シベリアに る け い♪」  
 
 
「ちょ常月さん風浦さん!絶望した!  
有罪になった前提で話を進められる自分に絶望した!」  
 
「そうよ、先生流刑になったら担任誰になるのよ〜」  
 
「日塔さんは相変わらず普通な意見ですね」  
 
 
「普通って言うなーッ!」  
 
ネガティブ教師と癖者女生徒によって授業はいつも通り馬鹿騒ぎとなってゆく  
晴美は呆れ気味に口を開いた  
 
「またはじまっちゃった  
千里これじゃ授業進まないね〜」  
 
「・・私には関係ないわよ・・・・・」  
 
いつも真っ先にこの騒ぎに抗議するはずなのに  
千里は入っていかなかった  
 
関係ないはず  
なのにその心の傷口は塩を塗られたかの様に疼きはじめていた  
 
傷?そんな傷つく事はないじゃないか  
きちんと生理も来たし  
良い成績を取れているし自分を理解してくれる親友もいる  
そして楽しい高校生活を送らせてくれるみんながいるじゃないか・・・  
 
 
「先生、テールスープが美味しい店見つけたんですよ一緒にいきましょう」  
 
「先生!恩着せ強盗なんて言わずに今日こそクッキー食べて下さいよ〜」  
 
「先生、夫が最近相手してくれないんです」  
 
 
「ちょ先生は一人なんですよ?一辺に言わないで下さいよハハハ」  
 
 
一番猛烈にアプローチする千里が久しぶりに学校に来てもおとなしい事をチャンスとばかりに女生徒たちは先生に迫ってゆく  
 
だがおとなしい理由を痛い程知っている晴美は参加せず  
苦しむ千里を見てるだけで自分の胸も切り裂かれる様な気持ちだった  
 
「千里大丈夫?前髪が乱れてるよ・・」  
 
「・・ぅうぅう・・」  
 
 
先生は皆に迫られて楽しそう  
私といる時はあんな顔してくれないのに  
私はやっかいさんでしかないの?  
三珠さんの暴力は証拠過多とか言って信じないのに  
みんなや智恵先生との恋愛はアリアリで私だけ  
「それはない」  
あの殺し足りない程憎い一旧でさえアリアリでも私だけは・・私だけは・・・・・・  
 
 
もう張り裂ける心を繋ぎ止めてくれる絆はない  
 
そして千里の脳裏にある一つの答えが浮かんだ  
 
 
授業も終わりのHRの時間となった  
 
「こうゆうのやっぱ千里ちゃんじゃないと務まらないよね〜」  
 
「そうね、いるのかいないのかわからない委員長よりずっと頼りになるし」  
 
「そんな!僕がいるかいないかだわからないなんて!!」  
 
普通少女も包帯少女も先生に指摘しなくてもホームルームだけはきっちりやってくれる物だと思っている  
 
千里もそれを察したのかそっと立ち上がった  
 
 
「出来る千里?無理しなくていいのよ」  
 
何も答えず幽霊の様に教壇に向かう千里の姿に晴美は再び凄く嫌な予感がしていた  
 
カツカツッカッ  
 
千里は無言のまま黒板に何処かで見た事のあるアフルァベット二文字と漢字一文字を書くと振り向きざまに口を開いた  
 
 
「これから皆さんには、  
殺しあっていただきます。  
このクラスに女生徒は  
一人で充分、  
殺しあって下さい。」  
 
 
切なく狂おしい苦痛の中で千里が導き出した答え  
それはあの憎い憎い一旧の如く自分を嬉々として苦しめ続けるみんなを  
抹殺する事だった。  
 
 
いたいげな少年少女達に殺戮を強制させるあの映画の様な事を言い始めた千里に2のへはどよめきはじめた  
 
 
「そんな事したら経験豊富な千里ちゃんの圧勝じゃない!」  
 
 
だが魚の様に冷たい眼をしはじめた千里に理屈が通じるはずはない  
 
 
「いや・・・・、  
女生徒どころかこの学校には人間が多すぎます!間引きしなくては・・・・ゲームスタート!!」  
 
「いやあああああああああああああああ!!!!!!」  
 
スコップを何処からともなく取り出した事により生徒たちは悲鳴を上げ逃げ惑う  
だが一人猟奇に走る千里に怯まない女生徒が  
 
 
「久しぶりに来たと思ったらまた猟奇!?訴えてやる!!」  
 
 
木村カエレだ  
 
 
「訴える?すると私は警察に捕まるのかしら?」  
 
 
「そうよ今警察に通報するわよ!!」  
 
 
カエレは千里によく見える様に携帯電話を取り出す  
大抵の者ならこれだけで怯むはず  
だが千里は邪々しい笑みを浮かべた  
 
 
「警察、呼んでみなさいよ  
そんなの全員纏めて殴殺してやる!!」  
 
 
最初ダムで沈む村という最適な埋葬スポットを見つけたもののうっかりスコップを置き忘れ警察が学校まで来た事があった  
だがすぐにパトカーから脱走し刑事は始末したのだ  
 
国家権力さえ物ともしない態度にカエレの方が戸惑いはじめる  
 
バキイィ!  
 
鈍い音を響かせ千里はあの刑事の様にスコップで殴打しカエレの大きな体は床に伏せた  
すると腰を抜かした太った女生徒が涙を浮かべて言い放った  
 
 
「ネットアイドルに乱暴すとファンが黙ってないよ!」  
「じゃあそのファンごと殺してあげる!  
てか地球の毒たる人類そのものごと殺してデトックスしてあげる!!!」  
 
ザクウッ!  
 
震えることのんの肉厚な体にスコップを深々と突き刺すとドスンと崩れ落ちる  
 
二人の女生徒が地に伏せた中  
男子生徒たちは男のプライドなど忘れて女生徒以上に情けなく怯えていた  
 
「ひ、ひどい・・・・・」  
 
存在感も頭も薄い臼井はただ呆然と立ち尽くした  
 
「三次元のヤンデレ妹は嫌だーーーッ!!!」  
 
硬派オタクなはずの万世橋は泣きわめいた  
 
そして天才ストーリーテラー少年の久藤は以前映画の本で見掛けた恐ろしい記述を口にした  
 
 
「一人殺せば殺人者  
 
百人殺せば英雄となり  
 
全人類を殺せば神となる  
 
彼女はその神になろうとしているとでも言うのか?」  
 

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