灰色の空。町の色に混ざっていきそうなほど鈍い色の雲。その雲は予報はずれの雨を降らせていた。雨に濡れながら足早に目的地へ急ぐ人々が行きかう。その中に時代錯誤な着物の青年がいた。
「はぁ…絶望した…!あたらない天気予報に…絶望した!」急に降り出した雨に降られながら望は小走りで学校を目指す。
「ふぅ…全くついてませんね…久々に外出したらこれだ。」校舎に入り、雨から逃れた望は一息ついて仮住まいの宿直室に向かう。
「ただいまぁ…あ、小森さん。」ぐったりとした様子で宿直室の扉をくぐると霧が迎えてくれた。いつもの様に霧は毛布を羽織っている。
「先生。お帰り…ハイ、これ。」そういうと霧は手に持っていたタオルを差し出した。
「おや、気が利きますねぇ。ありがとうございます。」礼を言ってタオルを望は受け取った。
「しかし今日は20%の予報だったのに見事に降りましたねぇ…。大体、20%ってなんだかはっきりしませんよね。
『降らないだろうけど、降っても責任とれませんよ』みたいな感じで。言い訳じみていると、そう思いません?」褒められて嬉しそうにはにかんでいる霧に望は同意を求める。
「うん。そうだね。」楽しそうに霧は答える。
同意をもらい満足そうにする望。
「じゃあ先生着替えますから、ちょっとだけ外してください。」
「うん。」
そうして霧に台所に行ってもらい、着替えを選び始めた。
(さて…どれにしますかね…)
望は悩んでいた。普段着物で生活しているため、カジュアルな格好をする事に抵抗を感じているためだ。しかし着物を着ようにもそれほど持っているわけではない。自分一人なら何も問題は無いが今日は霧が来ている。
台所では霧がコンロに火をおこしている音が聞こえる。
(今日は休日だから会うのは小森さんだけですかね…それなら。)
台所の方に視線を向ける。すりガラス越しでよくはわからないが、何かを用意しているようだ。
「お待たせしました。もういいですよ。」望は霧に声をかけた。
「はーい。」返事をして引き戸を開けた霧の目にロングTシャツにGパンのラフな格好をした望があらわれた。
「お、おかしくないですか?私。」そわそわしながら落ち着かない様子で望は尋ねる。
「ううん、そんなことないよ。似合ってるよ。」
「そ、そうですか?慣れない格好なもので…」否定されないで安堵の笑顔を見せる望。
「ほんとだよ?あと、もうすぐお湯が沸くからお茶飲む…?」
「ええ、勿論。小森さんは本当に気が利きますねぇ。いいお嫁さんになれますよ。」殺し文句を涼しい顔をして言ってのける望。
「そ、そう…かな…?」霧は照れて俯いてしまったので顔がよく見えないが、漆黒の美しい髪からのぞく対照的な白い肌が薄くピンクに染まっていた。
その後二人はお茶を飲みながら他愛ない話をしていた。
世の中に対する文句や文学について、ドラマや甥の交の事、ドラマ以外では主に話しているのは望だったが、霧は終始微笑みながら話していた。
「ああ、それなら私も見てましたよ。ただ、大財閥の息子の役の割には軽い感じが拭えないですねぇ彼は…。雨…また強くなってきましたねぇ…。」
望は仄暗い空を見上げながら呟いた。
打ち付ける雨はその音をさらに響かせ、騒々しくさえ感じる。
「そうだね。」霧はずっと笑顔のままいる。その様子は見るものさえ幸福にしてしまうように愛らしい。
「今日は何かいい事があったのですか?」その笑顔を今独占している望が尋ねる。
「えへへ、それはね…今日、この時間ね、ほんとは一人だったの。交君もお泊まりだし…それで雨が降ってきて先生帰ってこないかなぁって思った。そしたらホントに帰ってきたから、なんか嬉しくって…」
「小森さん…。」
「昔はね、一人でも平気だったの。でも学校に引き蘢る様になって、先生や交君、それに可付香ちゃんもマリアも遊びに来てくれて、そしたら一人でいる時、寂しいなって思う様になった…。あ、ごめんね先生…変な事言って…。」そういうと霧は黙って俯いてしまった。
望は何も言わずに霧の肩を抱いた。
「あ…せ、せんせぇ……ありがと。」
「お礼なんて言わなくていいですよ…。あなたが良ければいつでも…。」
優しく望は囁く。
「…うん。」
二人は無言で寄り添い合っていた。望はこのいじらしい少女を孤独から守ってあげたい。切にそう思った。そう思い、ふと横に目をやった。そのまま望の目は吸い寄せられる様にその横顔に向けられた。
陶器のようなという形容が正にふさわしいきめ細かい白い肌。その白さは蛍光の明かりの下でより際立っている。そのコントラストのような長い黒の髪。
小さく整った鼻に桃色の薄い唇。大きな瞳。凛とした雰囲気の中に時折顔をだす幼い純真な印象。思わず見惚れていると、霧がこちらを向いた。
交差する視線。
「先生…どうしたの?…そんなに見られると恥ずかしいよ…。」
耐えられないという様にすぐ視線を下げてしまう霧。髪に隠れしまい、よくは見えないが髪の間から薄く紅潮した頬が見える。
「あ、いや…し、失礼。」
あわてて望も視線をそらす。数秒の間だったがその澄んだ瞳の色の深さが頭にいつまでも残っていた。
再び沈黙が流れる。雨は降り続ける。霧の肩にまわされていた腕は下ろされ、所在無さげにぶらぶらしている。
(どうしたんでしよう私は……彼女は生徒じゃないですか!?)
徐々に頭を占めていく先ほどの庇護心とは違う感情に望は困惑していた。
「せんせ…」霧が再び沈黙を破る。
「ん?何でしょう?」
「先生は先生だよね…?」
「え…まぁ職業はそうですかね。」
なるべく平静を装うように答える。
「私は…生徒なのかな…?」
おそらく彼女の最大限の勇気を出した尋ね方なのだろう。何気ない、軽い言い方をしてはいたが、隠しきれない慕情が滲んでいた。
「そ、それは…」
生徒以上の存在として見てくれるのか。そういう意味を持つと思われるその言葉にどう応えればいいのだろうか。望は答えに詰まってしまった。
『そうですよ』そう言えばいい。それでいつも通りの教師と生徒の関係。しかし望には出来なかった。言おうとするが喉から先へ出る事を拒む。
この感情に対して、否定も肯定も望には出来なかった。
「あ、あのですね…小森さんは…」
心臓が高鳴る。雨音も急かす様にリズムを速めていく。頭の中がぐるぐる回る。
霧はじっと望を見つめている。不安と期待の入り交じる眼差し。望は答えを出さなければならない。
しかし望はこの期に及んで逃げ道を捜していた。
(なにか…何か無いんですか…!?)
うまく機能しない頭で必死に考える。その時、意外な所から助け舟が出された。
「せんせ…」
「はッ、はい!何でしょう!?小森さん?」
「私は生徒だよ…?授業に出ないから忘れちゃった?」
助け舟は他でもない霧から出された。一杯々々な望の様子を見て気を使ったようだ。
「…ま、まさか?。そんなわけないでしょう。」
苦笑いで返す望。
「そう?よかった…。」
霧は安心したような、残念そうな顔をしていた。その顔を見て望は心に痛むモノを感じた。
「なんか…すみませんね…。」
思わず謝ってしまう望。
「ううん、謝る事なんて何もないよ。ねぇ、先生。お昼何食べたい?」
「ん…?昼ですか?」
気付けばもう時計は12時半分過ぎを指していた。
「あぁ…もうこんな時間ですか。何かありますかねぇ…。」
傍にいるとどうかしてしまう。そう思い、望は冷蔵庫を覗きにいった。
「結構…ありませんね。」
「そうなの?」
霧も望に追従する様に覗きにきた。距離をとれたと思い安堵したのも束の間。しかも今度は狭い冷蔵庫を二人で覗いているため目と鼻の先に霧の顔がある。
香る髪の甘い匂い、吐息までもが感じられる気がして望は狼狽してしまった。
「あ…こ、小森さんッ!今日は…そうだッ!私が、私が作りますから居間でくつろいでいてください。」
この状況から逃れるために望は自分で作る事を決めた。いつも通り霧に料理を任せる選択肢もあったが、何かをしていないと落ち着かない気がしていた。
「え…でも先生。」
望の提案に霧は意外そうな顔をした。
「一人暮らしだったんですから料理ぐらい作れます。たまには食べさせたいじゃないですか。」
「うん。じゃあ期待しちゃおうかな。」
望の手料理を食べれるとなって霧も幾分嬉しそうに答える。
「ええ。期待してください。」
(やれやれ…じたばたしてみっともないですね私は…。)
慌てふためく自分に自己嫌悪を感じながらもまだ枯れていない頃に感じた久しぶりの心の乱れに少し愉しみを感じながら望は包丁を手に取った。
「どうですか?」
霧に尋ねる望。料理を作っている間にどうにか平静を保てる様になったようだ。
「うん、おいしいよ。」
笑顔で答える霧。有り合わせの野菜や肉の炒め物だが喜んでくれているようで望はほっと胸を撫で下ろした。
「そう言ってもらえるとうれしいです。このところずっと食事はあなたに任せっきりでしたからね。」
「いいよ。家事は好きだから。それに先生頼りないし…」
「心外ですね。現にこうしてちゃんと作ってるじゃないですか!」
ちょっと拗ねた調子で怒ってみせる望。
「うん。そうだね。」
おかしそうに笑う霧。
「まぁ確かに小森さんが作った方が美味しいですよ。」
まだ拗ねた振りをして続ける望。
「え…そ、そう?」
また嬉しそうな顔をして照れる霧。それを見た望は何故か自分も照れてしまう。
「ほ、本当ですよ!というか冷めないうちに食べてしまいましょう。」
「うん。」
望の手料理という事だからか、普段は小食の霧もいつもよりよく食べたようだ。
余り物を処分する目的もあり多めに作ったが、結局全部を平らげてしまった。
「ごちそうさまぁ。」
手を合わせて満足そうに霧は食事を済ました。それに望も答える。
「ごちそうさまです。じゃあ片付けをしますので小森さんは休んでてください。」
「え?私がやるよ。作ってもらったんだし…」
自分でやるとばかり思っていた霧は意外そうな反応を返した。
「まぁ、今日は私に任せてくださいよ。たまにはこういうのもいいでしょう?」
「そうだけど…」
霧はどことなく寂しそうにしている。元より世話好きなため世話を焼けないとそう感じてしまうようだ。
珍しく渋る霧をなんとか諭して望は料理を片付けていた。霧は居間でぼーっとテレビを見ている。時々あくびをしては眠たそうに画面を眺めている。
望が宿直室暮らしになってから随分とたつ。それ以来ずっと家事をやってきた霧にとって今の時間は退屈なようだ。
「小森さん?」
片付けを終えて居間に入ってきた望は霧に話かけたが返事が無い。代わりに静かな寝息が聞こえてきた。
望が片付けを終える間に眠ってしまったようだ。
「寝てしまいましたか…この時間はテレビも面白くないですしね。」
昼ドラが流れているTVのスイッチを切って霧の傍に座る。
毛布に包まり、横に寝転んで膝を丸めて眠っている霧の横顔を隠す長い髪。
それをかきあげて望は顔を眺めた。
安らかな寝顔。そのままずっと見ていたいと思えるくらい愛らしい。望にはそう感じられた。
「一枚だけじゃ寒いかもしれませんね…」
そう言って霧にもう一枚毛布をかけてやる望。
望はしばらく眠っている霧を眺めていたがやがて語りかける様に話しはじめた。
「さっきはすみませんでした…私は怖いんです。…大切なものって替えが利かないでしょう?それでもいつかはいなくなってしまう…雨がやむ様に。」
霧の頬にそっと触れる望。霧を見つめるその瞳は悲しみを帯びている。
「それでも雨はまた降ってくれますが…人はそうもいかない。だから今までのぐらいがちょうど良かったんですよ。疎遠でもなければ、心が近づきすぎて傷つく事もない。
ましてや教師と生徒です。この先をどうして求めていいんでしょうか?そう…今までがちょうど良かったはずなんですよ…」
言葉に詰まる望。
ひと呼吸おいて、意を決した様に次の言葉を放つ。
「小森さん…私はあなたをとても大事に思っています。」
霧の髪を無意識の内に梳きながら続ける望。
「今日ではっきりしました。私はきっと…生徒以上の存在として見ているんでしょうね…あなたの事を…って、へ?」
一瞬固まる望。
眠っていたはずの目の前の少女が目を見開いてこちらを見ている。霧は申し訳なさそうに望の方を上目遣いで見ている。
「あの…ごめんね先生…」
予想外の展開に頭がついてこない。やっとの思いで言葉を放つ。
「い、いつから…?」
「えっと…あんな風に触られたりしたら起きちゃうよ…ずっと寝た振りするのも悪いし…」
もじもじしながら消え入りそうな声で霧は答える。
「という事は……」
一瞬で頭に血が上っていく。
(あれもこれも聞かれていたって事ですかぁ!?)
「うわぁぁ!絶望したぁ!!あ…あんな恥ずかしい言葉を…ぜ、絶望的です!!」
頭を抱えて取り乱す望。彼の人生の中でもこれほど取り乱す事は珍しいだろう。それほどに語った言葉に偽りがないという事を示している。
「先生…!あの…私もす、好き!先生の事…好き…だよ…」
そんな望の様子を見ていた霧は想いを告げる。今まで一度も口にする事のなかった想い。
その言葉を聞いて我に返ったがより顔が紅潮していく気が望はした。
「先生が言ってくれたから…私も言わなきゃって思った…」
「小森さん…」
なんていじらしい娘だろう。霧の前では先に待ち構えていると思われる暗い不安も霧散していく。
「もう我慢しなくていいんだよね…?」
感極まった表情を見せる霧。目からは大粒の涙があふれている。
今まで口にする事のなかった想いを口に出していった事で堰を切った様に抑えきれない感情が霧の中にあふれていく。
その様子を見た望の頭からはネガティブな思考は完全に引っ込んでしまった。ただ目の前の愛しい少女を愛したいと、その想いで胸が一杯になった。
「いいですよ。もう何も我慢なんてしなくていいです…おっと。」
言い終わらないうちに霧は望の胸に飛び込んでいた。泣きじゃくる霧の頭を優しく撫でる望。その手はそのまま背中に降りていく。
手が背中を上下するたびに霧の呼吸に僅かな乱れが生じるのを密着する体で感じた。
「ん…ふっ」
辛抱ならないと言った様に望は霧と唇を触れ合わせる。触れるだけのキスからすぐに舌を絡ませ合うキスへと移行していく。
霧はそれに応えてぎこちない様子で舌を絡ませていたが、すぐに体の力が抜けた様に望にもたれかかってきた。
「ふぁ…あん…ん…」
霧はなされるがままに望に口内を弄られていく。霧の味を堪能したのか望は顔をそっと離した。二人の間に銀の糸が引く。
「キスってこんなに気持ちいいんだ…」
ぼおっとした表情で呟く霧。
「初めてでしたか?」
「うん…」
少し恥ずかしそうに答える霧。
「…すみませんもっと優しくすればよかった。」
「ううん…すごく…よ、良かったからいいよ。」
俯き気味にそう話す霧を見て望は羞恥心を煽ってみたいという欲が頭をもたげてきた。
「じゃあ…もっと気持ちいい事を教えて上げますよ。」
「……えっち。」
霧は蚊の鳴くような声で抗議したが望には聞こえていないようだった。
「毛布を羽織らなくても平気ですか?」
「うん。ちょっと不安だけど平気だよ。」
「では…」
そういうと望は霧が羽織っていた毛布を床に敷きその上に霧を横たわらせた。やはり何かに包まっていないと不安なのだろうか落ち着かない様子でそわそわしている。
「せんせぇ…手、繋いで。」
「ええ。これで平気ですか?」
「うん。ありがと…」
霧の両の手に自分の手を重ね合わせる。霧は安心した様に目を閉じた。その様子を見て望は再び霧と唇を交わす。そしてそのまま首筋へとキスの痕を残しながら舌を這わせていく。顔にかかる髪の香りが脳を痺れさせる。
「あ…ふぁ…ダメぇ…!」
霧は思わず肩をすくめた。
「首が感じやすいみたいですね。」
そう言うと望は白く透き通った首筋に軽く歯をたて甘噛みをした。
「ひゃう!?」
思いがけない強い刺激に声が裏返る霧。
普段は淡々とした口調の霧からは想像できないほど調子の飛んだ声。霧自身も自分の声に驚いた様子だったが、望から次々と与えられる快感に休む間もなく可愛らしい声をあげる。
「ひゃんっ!…やあぁ…きゃう!!」
何とか逃れようと身を捩る霧だが手を絡ませ合っているために身動きが取れない。むしろその動きは打ち寄せる快感にアクセントを与えて逆効果になっていた。
「可愛いですよ。…とても。」
「はぁ…はぁ、せんせぇ…」
ようやく解放された霧は暫しの休息に安堵したが、物欲しそうな惚けた顔で望を見つめる。覚えたてのこの快楽に初めは恐怖を感じていたが、それももう欲求の方が上回りつつあるようだ。
「小森さん…脱がしますよ。」
「う、うん…」
望は霧に腕をあげさせシャツをまくり上げる。
「小森さん…きれいですよ。」
「……いやぁ…」
霧はあげた両腕で顔を隠している。そうする事で胸はよりその豊かさを誇張している。望はその膨らみを包むブラを背中に手を回して外そうとした。
自然と顔が胸の目の前へ近づく。僅かに霧の体から甘い香りを感じた望ははやる気持ちでブラのホックを外した。
プルンと音を立てる様に震えて姿を露にする双丘。先端はうすくピンク色に色づいている。望はそのまま顔をすり寄せてその柔らかさを満喫する。
「ん…せんせぇ…!」
霧は抱き寄せる様に望の頭を抱え込んだ。高鳴る心臓の鼓動、体の温もり、汗とそれに混じる甘い匂い。それらがよりはっきり望に伝わる。
「あなたを食べてしまいたい…」
望はそう呟くと、霧の胸を少し乱暴に揉みしだいて乳首に吸い付く。
「痛ッ!痛い、よぉ…あんっ、やん、んんっ!音たてちゃ…あん!」
霧の抗議に望は多少揉む手の力を抜いたが今度はわざと聞こえる様に乳首を吸い上げる。
柔らかく吸い付くような弾力を楽しみながら、合間なく胸の頂を舌で転がし、甘噛みをして刺激を与える。その度霧は可愛らしい嬌声をあげて望の劣情を刺激する。
「小森さんは胸も弱いんですね。」
少し意地の悪そうな口調で言いながら望はツンとなった乳首を摘む。
「ひゃん!せ、先生の…せいだよ…」
霧は休みのない悦楽に呼吸を整えるだけで精一杯になっている。
「おや?そうでしたか?」
霧が太腿をもじもじと擦り合わせているのを動きで感じた望はそう言うと胸への責めを止めて徐々に下へと舌を這わせていく。
霧も意図を察したのか体が強ばっていくのがわかった。沈黙が訪れる。二人の荒い息と雨音が混じり合う。
ジャージを脱がし、裏腿に口づけをしていく。霧の下着は近くで見なくても湿り気を帯びているのがわかるほど濡れていた。足の付け根からは媚香が漂ってくる。
望は下着に手をかけて尋ねる。
「いいでしょうか?」
「うん…あ、でも…」
「何か?」
「先生も脱いで…ずるいよ…」
「あ…そうですね。」
僅かにはにかみながら霧は言った。
望は自分の貧相な体格にコンプレックスを抱いていたが霧にはそれを晒すのに抵抗を感じなかった。
「なんだかあなたには全てを晒せるような気がします。」
照れ笑いしながら下着一枚になった望は言う。
「私も先生にならいいよ…じゃあ…脱がして…」
そう言うと霧は望の手を握り自分の腰へと導く。
「…わかりました。…では小森さんは私のをお願いしますね。」
「えっ?」
思わず霧は意識的に視線を避けていたモノへ視線を向けてしまう。
というのも今までの行為で望のものは痛いほどに充血し、そり立っていた。そのため天幕を張っている様になっていたからだ。
「…うん。わかった。」
小さく霧は頷く。
「脱がしますよ…」
望は霧の下着を下ろしていく。下着と秘部の間に透明な糸が引く。下着は水気を持っていくらか重たく感じられる。
「やだぁ…」
霧が消え入りそうな声で呟く。感じ易い事を恥じているのか、両の手で顔を押さえながらいやいやといった風に首を振っている。
「先生は素直に感じてくれる娘の方が好きですよ。」
「………」
返事はなかったが霧は嬉しいやら恥ずかしいやらといった表情を見せた。
「ではこっちも…」
少し緊張した面持ちで望は霧に囁く。
「うん。」
そう答えると霧はおずおずと望の下着に手をかけた。片目だけ薄く開けながらおそるおそる下ろしていく。やがて望の絶棒が現れると霧は大きな瞳を見開いて、固まった様にじっと見つめて視線を外さない。
「あ、あのそんなに見られるとさすがに恥ずかしいのですけど…」
「あ…あ、ごめんね先生…あの、その初めて…初めて見るから……」
「あ…そうなんですか。」
「や、優しくしてね…」
「当たり前じゃないですか…」
望は霧を抱き寄せ頭を撫でた。
「えへへ…頭撫でられるの好きだな…私。なんだかすごく安心する。んっ!」
望は頭を撫でつつ、秘部へと指を侵入させていく。
十分濡れていたためにスムーズに指を滑る込ませる事が出来た。
「あんっ、はぁん!」
初めてにしては、霧は敏感に反応する。さっきまでの責めのために霧の秘部は十二分に神経が過敏になっている様だ。とめどなく愛液が溢れ、望の手を濡らし、内股へと伝っていく。
(この分だとすぐに達しそうですね…)
快感に喘ぐ霧の横顔を見ながら望は思った。
霧の秘部は指にしっかりと絡み付き締め上げてくる。指でこの窮屈さだ、望自身が入っていたらどれほどのものか。早く一つになりたいという衝動を堪えて、霧の秘部をじっくりと責めていく。
「んんぅぅ…ふぁ…ん、あっ…!!!」
霧がひと際甲高い声をあげる。
「今の所が良かったんですか?」
「うん…」
どうやら霧のスポットを探り当てたようだ。そうなれば話は早いとばかりにそこを集中的に責めていく。
「はぁ…あん、はぅ…やぁ…変に、なっちゃ…うぁぁあんっ、ひゃううう!」
あと一押しで霧は絶頂に達するだろう。望は指のスライドを加速させ、余っている指で赤く充血したクリトリスをこすった。
「??????!!!」
言葉にならない声をあげる霧。どうやら達したようだ。
ぐったりと望に寄りかかる霧を再び横たわらせる。
「小森さん…まだ大丈夫ですか?」
「ん…平気だよ…次は先生と一緒にね。」
とろんとした目で答える霧。
望は頷くと霧の頭を撫でて軽いキスをした。そして霧の足を広げさせると絶棒を秘部へとあてがった。
「痛かったらちゃんと言ってくださいね。」
そう言うと望はゆっくりと霧の中へと入っていく。
「んくぅ…はぁ、はぁ」
霧は毛布をギュッと握りしめ痛みをこらえている。望は一旦動きを止めて霧を気遣う。
「大丈夫ですか?」
「…ちょっと痛いけど平気だよ。」
「もう少しで一番痛いのが終わりますからがんばってください…」
「もっと痛いの?…あ、でも平気だよ。先生のだったら平気…」
「わかりました。」
男をまだ受け入れた事のない霧の中は想像した以上に締め付けが強い。
迸る射精感を必死に堪えて奥へと進んでいく。
やがて望は引っかかるものにつき当たったのを感じた。
「小森さん…ここを我慢すれば後は楽になりますから。」
「…うん。」
瞳には不安の色がありありと浮かんでいる。
ここでもたもたしても不安がらせるだけだ、望はそう思いすぐに奥へと進み始める。
「あ…あうぅ!痛っ…はぁ…はぁ、んぅ!」
痛みを和らげようと深呼吸をする。
少しずつ、確実に奥へと侵入していく。そして何かを突き破るような感覚があった。
「ふああぁぁぁん!」
霧が叫び声をあげる。のけぞる霧の体を慈しむ様に抱きしめる望。
「がんばりましたね。もう平気ですよ。もうじきに和らいでくれるはずです…」
「あ…せんせぇ…!せんせぇ…!」
霧は甘える様に頭を望の胸にすり寄せる。
望は自分を受け入れてくれた霧を優しく包み込んだ。暫くして霧がそっと囁いた。
「先生が私の中にいる…なんか暖かい…」
「ええ…今私と小森さんは一つになっているんですよ。」
「先生…また恥ずかしい事言った。」
「え?そうでした?」
意外そうに言う望。自覚というものが全くないらしい。
「そうだよ…先生、動いていいよ…」
「大丈夫ですか?」
「まだズキズキするけど…先生の、なんだか大きくなってる気がするから…」
そういうと霧は自分の下腹部をさする。
「いいのですね?」
「うん…来て…」
その先に言葉はなかった。ただ互いを無言で求め合い、二人は同時に果てた。
幸い霧は一度達していたため、すぐに痛みよりも快感が勝ったようだ。
二人はその後幸せの余韻に浸りながら浅い眠りにまどろんでいった。
それと同時に雨はすっと引いていき、空は晴れやかな青を広げていった。
「ひょっとしたら私は大変な事をしてしまったんじゃないでしょうか?」
情事の後二人は同じ毛布に包まっていた。
「だいじょうぶだよ。」
「そうだといいんですが…ってすいません。こんなことを言って。」
「いいよ。いつも通りの先生だから。」
「ふぅ、もう少し前向きに生きてみますかね…おや、あれは虹ですね。」
窓の奥を見やると虹が七色のアーチをかけていた。
「きれいだね。」
「そうですね。」
ふと向き合う二人。自然と笑みがこぼれる。
望にもさすがに二人を祝福してくれていると感じたようだ。