「男女のべつまくなしやんちゃな時期のあったお兄様は入れません」
そう言う倫の表情は冷静を装いながらどこか寂しげだった。
宿直室の壁にもたれかかりながら考え込む望。
「あの時期はほとんど倫にかまってやってなかったですからね」
やはり兄弟だからなのかあの意地悪な発言の裏に潜む倫の心理を望はうっすらと理解していた。
「まあ、そのうち、なんとか…しないと…いけませんね…」
思考を巡らせるものの、迫ってくる眠気に勝てず望はいつのまにか眠ってしまった。
からっ
倫が部屋の戸を開けると兄が壁に寄り掛かって寝入っているのに気づいた。
倫はそっと近づくとふわりと毛布をかける。
「まったくお兄様ったら…お風邪をめされても私はしりませんからね」
言いながら兄の隣にちょこんと座る。
安らかな寝顔。
その色白の肌に引き寄せられるようにふるふると震える唇を近付ける。
ふっ、と唇が望の頬に触れる。
薄く瞑っていた目を開く。
「お兄様…一体どこまで鈍いのでしょう?」
そう小さく呟くと、すっ、と立ち上がり部屋を後にした。
倫が退出し、部屋には静寂だけが残る。
望は静かに倫の唇が触れた頬に指先を触れながら。
「ふぅ、やはりお前はいつまでたっても子供ですね」
と、呟いた。