気が付いたらその青年は、姿見の前に立ち尽くしていた。
私は一体何を‥‥ 思い出せない‥‥
紫味を帯びたストレートの髪が美しい。切れ長な瞳に知的な眼鏡が光る。
何だこの格好は‥‥
昔存在した日本の文学者が好んだ服装のようだ、自分にはとても古臭く思えた。
着替えを探し、自然と在り処がわかった普段あまり開けることの無い洋服箪笥を引き出す。
チャラチャラした服の中からピンクのカーディガンを身に纏う。
何故だろう、とても落ち着く。
少女は憂鬱だった。原稿に追われて今年のハロウィンの準備が出来なかったのである。
当日の夕方もぽてぽて参考資料を読みながら帰路に付くだけであった。
どかっ! 住宅街の角で何者かと出会い頭にぶつかってしまう。
見上げた先にどこかで観た事があるような青年が立ち尽くしていた。
紫味を帯びた髪、切れ長な瞳に知的な眼鏡。
その美しさに不釣合いなファンシーなピンクのカーディガン。
(えっ?ティ‥‥ ・・・・・先生?)
彼女に圧し掛かっていたメタボな憂鬱は、絶望砲の衝撃に吹き飛ばされた!
青年は夕刻迫る街を彷徨っていた。自分が何者なのか糸色 いや糸口を掴むために。
住宅街の辻でてれてれと漫画を読み耽ける少女にぶつかられた。
セミロングに眼鏡、少し私に似ているかもしれない。
彼女は私を見つめしばし驚いたような顔をしていた。やはり私に縁のある者だろうか。
自分の事を問おうとしたその刹那セイエ‥ はしゃいだように叫んだ。
『ティエリア先生っ!』
「私はティエリアではありませーん!!」
不思議なことに自然と突っ込みが出た。
はて、ティエリア‥ 先生? そうだ、確か私はティエリアという名だった。
師と仰がれるような尊い活動を先導していた気がする。
『先生、嬉しいです!あんなに嫌がる素振りをしていたのに
私がプレゼントしたウィッグ愛用してくれているんですね!
しかもピンクのカーディガンなんて用意周到!』
「わ、私はヅラなど愛用していませんから!」
また自然と言葉が出た。
「大体あなたはどちら様です?私はティエリアです、多分。あなたとは初対面ですよね。」
(そうか、ちょっと微妙だけど先生なりきってるつもりなのね!)
「実は私、記憶を無くしてしまったようなのです。あなたの話からティエリアという名を思い出しました。
. 私について知っている事があるなら教えてもらえませんか?」
(ははあ、記憶喪失の振りをして特徴を聞き出すつもりね。じゃあ私も応えてあげなきゃ!)
ニャマリ
『はじめまして、私は藤吉晴美、あなたの大切な存在なんですよ。
先生は悪の秘密結社、それ廃れてるビーイングのガンダムマイスターなのよ。
力には力で対抗してジャイアンみたいに世界を改革しようとしているのよ!』
(ちょっと間違っていてもわかりやすいようにさらっと極端に教えるほうが効果的ね。)
「ありがとう、大切な事を思い出しました。」
『先生、今日は私間に合わなかったけど、今度一緒に行きましょう。先生がその気になってくれて嬉しい!
それじゃ私、また締め切りあるからこれで、さよならティエリア先生。』
断片的な情報の中から思い出した記憶があった。そうだ、私は革命活動をしていたのだ!
ティエりあ!?のようなものは使命感に燃え、猛然と夕闇を駆けていった。
『先生、頑張って!似る似ないは関係ないわ、その勢いさえあれば今夜の主役になれるのよ。』
「私はティエリア先生!ソ連スタイルのガンダムオイスターだ!俺がマンダムだ!」
. ジークイオン!岡田ミニストップ!僕が政界を一番上手く扱えるんだー!」
朝刊
ハロウィンの夜更け 安田講堂占拠のお騒がせコスプレ教師御用
昨晩、安田講堂によじ登り「自分は人気アニメの主人公だ!」 などど仮装姿で
意味不明な声明をわめき散らしていた教師が、駆けつけた警官隊に取り押さえられた。
同容疑者は以前にも類似の手口で謎の垂れ幕を提示するなどの事件を起こし、
工作員の疑いもあり引き続き取調べを行い余罪の追及に当たっている。
留置場に押し込められ、頭上の紫が地に堕ちた瞬間、望は帰ってきていた。
はっ、私は一体何を!? ‥そうだ、藤吉さんに押し付けられたこのヅラ、
コスプレなんてどこが良いのかと鏡を見たところまでは覚えているのですが‥
⌒ヽ-、_
_,.--`‐ヽ \、_
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v' / ゙‐-、 ヽ \ /. \/ \/ \/ \/ \
/ / /'´/ / / . | ∨ .ノ 幺ク 亡 月 | ┼‐ .|] |]
. _,/ // / // / ヽ \ 小巴 三l三. ヽ_ノ / こ o o
 ̄ `'ヽ / /'´/ / / .| ∨∧ ヽ
/ ' / | // // / ィ /| /┤| / 試しに被ったヅラの因縁に絶望した!!
/ / | | |/ /∠、 彡 ´/ /∠イV /
l// | |/代汀ヘ≧='彡ィfjアノ / イ / 神谷のアホっ!お調子者〜!
|/| ( ト l|`/  ̄ ´ヽ__,_i' ̄イイ l|  ̄ ̄.| /ヽ、 /\ /\ /
′ | しゝ ゝ、 rソ⌒V` / イ| (ヽ、//\/ \/ \/ \/
|ヘヘ  ̄ - / イ l / ヽ´ヽ、ヽ
V|ヽ ,. __¬ /| /|/ (,ゝ、 \ ヽ l、
_V > / ヽ、 ヽ、 | | ! l
/\ /\  ̄ | ヽ ヽ/ l | l
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