最初に声をかけたのはたかしのほうだった。ひとめぼれというのだろうか。  
断られるかと思ったが、意外に返事はイエスだった。  
いつものように絵文字のついたメール。いつもの時間にかかってくる電話。  
彼女はとても従順で、声も仕草も、全てが愛くるしかった。  
ある日、そんな彼女に「家に遊びにこないか」と誘ったのだった。  
男の部屋にくる、それが何を指すか彼女にも伝わったのだろう、  
少し赤面してから「…うん」とうなづくまとい。まといの手をとるたかし。  
彼女はうつむいたまま、素直にたかしについてきた。  
手をひかれるままについてきた。  
 
まといは、はじめて経験する感覚に戸惑っていた。  
正直、これが気持ちいいのかどうか彼女自身わからなくて、  
ただただ、たかしが与える愛撫においついていくのが必死だった。  
恥ずかしくて恥ずかしくて気がつけば何度も足を閉じよう閉じようとしていた。  
ただ、自身が気がつかないうちにみるみる潤いが増してゆくのを感じていたのだった。  
「えっと…も…いいかな…」  
たかしにとってもはじめての経験で何をどうしていいのか頭の中が真っ白になっていた。  
早く早く早く挿入しなければ、と軽くパニックを起こしていたのだ。  
雑誌で覚たり友達から聞いた手順を必死に反芻していたが、身体がもたない。  
今にも爆発しそうだった。  
 
あれだけ練習したコンドームがうまく装着できない。  
焦れば焦るほど手がすべり、うまい位置にかぶせられないのだ。  
まといはまといで身の置き場がなかった。  
間が持たず、「だいじょうぶ?」と思わず手を出してしまったのだ。  
その温かでやわらかな指先が、たかし自身に触れた瞬間、耐えきれず爆発してしまった。  
思い切り飛び散ってしまった白濁液はまといをも汚した。  
はじめての行為とはいえ、愛しい彼女の前で粗相をしてしまい、バツが悪いたかしはうつむいたままだまってしまった。  
それを知ってか知らずか、まといはたかしの出したその液を指に一掬いし、  
「たかしの…にがい…ふふっ」  
とはにかんでみせた。  
その愛くるしい笑顔に、たかしは思わずまといを抱き寄せた。  
「たかし…いたいよ」とほほえむまとい。  
彼女の柔らかな髪の先が素肌をくすぐったが、その感触でますます愛しさがこみあげたのだった。  
 
彼女を、まといを大切にしようと決めたのはこの時からだった。  
そしてそれにまといも応えてくれた。  
が、それが重すぎる愛に変わってゆくことをこのころのたかしは知る由もなかったのである。  
 
おわり  
 

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