「ふぅイザナミはわかってくれた様ですね。」  
 
 
二度と会うことはない永遠の別れ、  
それでもなお二人が産み育てた愛するこの国を守り育てると。  
 
「・・しかし恐くて変な汗かいてしまいましたよ、水浴びでもしますか。」  
イザナギは最初の頃の様に服を脱ぎ捨て海でジャブジャブと禊ぎを行いました、  
汚れを落とすそのおごそかな行為においても多くの神々が産まれていきました。  
 
 
「う〜ん特に顔を洗うと気分がさっぱりしますねえ」  
 
右目を洗うと太陽神であり天地全てを照らすアマテラスオオミカミが産まれ、  
左目を洗うと月と夜を司る闇夜の神であるツクヨミノミコトが産まれ、  
鼻をすすぐと海と嵐を司る荒ぶる神スサノオノミコトが産まれました、  
 
この三柱はただ漠然と産まれた八百万の神と国を纏め支配する三貴神と呼ばれる神の中の神でもあるのです。  
 
 
「これでこの国は安心ですねえ、良い老後が過ごせそうですよ。」  
 
 
ぴろりぱらぴろ♪  
 
 
「ん?神話なのにメールとは、一体誰でしょうか?」  
 
 
『オレだよオレ、老け込んでるんじゃねーよハゲ』  
「ス、スサノオ!?日本書紀で携帯はやめてください!!」  
 
『うるせー!神だから人知を超えてんだよ!!』  
 
スサノオはとても気性が荒くイザナギに任せられた海をロクに納めもせず事あるごとに他の神々へ毒舌メールを送り、  
父や兄弟を困らせてばかりいたのです。  
 
 
『てかなんで俺鼻をすすいで産まれてんだよ!  
俺はオメーのハナクソかよふざけんな!!  
おふくろに会わせろや!!!』  
 
 
「神話とはそうゆうシュールな物ですしイザナミは貴方のおふくろではありません!  
貴方は、私が、鼻をすすいで産まれたんです!!!!」  
 
『そんなわけわかんねー出生秘話受け入れられるか!!俺は黄泉にいるおふくろに会いてえんだ!!』  
 
母を猟奇に変えた恐ろしい黄泉の国に我が子が興味を持つこの事態に父イザナギは血相を変えて益々声を荒げました。  
 
 
「ダメ絶対!黄泉に行ってはいけません!!イザナミに会ってはいけませ〜ん!!!」  
 
 
『おまえよりはマシだハゲ!!短小!!  
とにかく俺は会いに行くぜ!!!  
・・・・・てかオマエもう出番ねえぞ(爆)』  
 
 
「 な ん で す っ て !?  
絶望した!  
我が子に罵倒されて出番が終わる創造神に絶望した!!」  
 
スサノオは散々罵倒したイザナギの屋敷から出るとそのまま黄泉の国へ悠々と向かっていきました、  
しかし普段弱気な父親があんな剣幕で恐ろしいと叫んだ国です、  
荒ぶる凄まじい神と言えど流石のスサノオも不安になってきました。  
 
 
『取り敢えず高天原に寄り道して姉貴に挨拶でもすっか。』  
 
 
そうしてスサノオは高天原の入口にある小川にまでたどり着きました、  
すると対岸から勇ましい武人姿をしていながらも何処かあどけない顔立ちをした神が現れました、  
 
『ケッ!姉貴ショタコン過ぎてとうとう男装にまで手を染めやがったか(笑)』  
 
そう写し出された液晶ディスプレイを見たその神アマテラスは顔を赤らめながら叫びました。  
 
 
「ち、ちがうよ!  
私は最初男神だったのが太陽を奉る巫女と同一視されて女神になったんだし連載当初私を男の子と間違えた読者さんもいたけどそんなんじゃないよお!!」  
 
『必死だなオイ(笑)』  
 
 
「そんな事よりスサノオ何しに来たの?高天原を乗っ取りに来たの!?」  
 
剣を握り乱暴な弟を威嚇しようとしますが涙目なのでまったく恐くありません、  
スサノオは鼻で笑いながら指を高速で動かし、  
来た理由が載った液晶をぐいっと見せつけました  
 
『ちげーよw黄泉にいるおふくろに会いに行く途中でな、  
寄り道して挨拶しにきただけだっつの。』  
 
 
「え、そうなの?じゃあ身の潔白を証明してよ。」  
 
『あぁあれやるのかよ』  
 
そう文字を打っているとアマテラスはまが玉の輪をスサノオに投げ渡したのでスサノオは自らの十拳剣をアマテラスの足元に投げ渡しました。  
 
「えいっ!」  
 
アマテラスは剣を三つに割ると三柱の女神を生み、スサノオはまが玉から五柱の男神を生みました。  
『へへへ俺は五柱も生んだぜw。』  
 
「その五柱の材料のまが玉は元はあたしのだよ、  
てか一度に五人もかわいい息子産まれちゃったあうふふ。  
スサノオの剣からは心優しい女神が三柱も産まれたんだし、高天原入って良いよ。」  
 
 
『へへへちょろいぜ!』  
 
川をひょいと乗り越えスサノオは意気揚々と高天原に入っていきました、しかし・・・・・  
 
 
「あっスサノオ、高天原は携帯圏外だよ。」  
 
 
ガーーーーーーン!!!  
 
アマテラスの言った事は本当でした、  
神々が住まう天界たる高天原に携帯のアンテナなどある訳はなく、スサノオは唯一のコミニケーション手段を失ってしまいまったのです。  
 
スサノオは本来の黄泉にいる母に会いに行くとゆう目的を忘れるほど慌てふためき、  
おろおろとアンテナが立つ場所を探し廻りましたがバリ1どころか表示はずっと圏外のまま、  
長い時間コミニケーション手段を奪われついに・・・・・  
 
「うガp議*Ζモモギレ蛾ドススレ・am@魔!!」  
 
「ひっ!スサノオ様が聞いた事もない言葉を!?」  
 
「黄泉の底から響くような声だ!?」  
 
スサノオの顔は渇ききった大地の様にひび割れ、シャイだった口には肉食獣の様な牙が生え大きくぱっちりした眼は白黒反転しおぞましい醜鬼の目付きとなり。  
口から発するは文字化けしたこの世で一切聞いた事のない様な声、  
いやむしろ音は高天原中に響き渡り作物は枯れ、八百万の神々に吐き気、頭痛、悪寒をもたらしました、そこで神々は彼が入る事を許可した最高神に苦情を言いにきました  
 
「アマテラス様!貴女の弟君が高天原に混乱と破壊をもたらしてます!」  
 
「スサノオが!?彼にも何か理由があったはずよ、」  
 
彼の剣からは心優しい女神が生まれたし自分にかわいい息子をもたらしてくれた、  
しかし神々の鬼気迫る顔に押され取り敢えず様子を見に行く事にしました  
 
「璽$∝/ヅψэθК≦>ガ!!」  
 
「こわっ!」  
 
神々の苦情は本当でした心が清いと証明したはずの弟がこの世の者とは思えぬ姿で秩序を乱してるではありませんか。  
するとアマテラスの侍女のワカノヒルメが頭を抱え初めました、  
 
 
「なんなのこの内臓をえぐる様な声は!?  
不安定になる!不安定になる!不安定になるぅ!!」  
ワカノヒルメはスサノオの文字化けに耐え切れずとうとう断末魔を叫びながら泡吹いて普通に倒れてしまいました。  
 
 
「ひいぃいぃいぃ!!!!!!」  
 
息子は母親に似て娘は父親に似ると言われてます、  
イザナミは厳密には実母ではありませんがスサノオは黄泉での彼女と同じく恐ろしい姿へ変貌し、それを見たアマテラスは実父のイザナギと同じく怯えて逃げだし、  
洞穴に入ると岩戸で扉を締めて引きこもってしまいました。  
しかし彼女は太陽神、光り輝くその不思議な力で高天原は繁栄を保っていたのですが岩戸に引きこもった事により光が照らなくなり高天原も地上の葦原の中つ国も闇に包まれてしまいました。  
 
 
「アマテラス様岩戸開けて出て来て下さ〜い!」  
 
「コミケ始まる前に世界が終わっちゃいますよ〜!!」  
 
「開けないでよ!」  
 
神々は数柱がかりでなんとか岩戸をこじあけようとしますがアマテラスの意志の様に岩戸は硬く重く閉まったまま、  
神々が困り果てる中何故かほくそ笑む神がいました。  
「フフフ太陽神である姉さんの蔭に隠れまさに日蔭者だった僕が目立つチャンスだ!」  
 
アマテラスの弟にしてスサノオの兄ツクヨミです、彼はここぞとばかりに毛が薄い頭を突き出しました。  
 
「みなさん落ち着いてください!太陽神たる姉さんが引きこもり闇夜包まれた世界を、  
月の神たる僕の光りで照らしてあげますから!」  
 
 
「やだっ誰もいないのに声が聞こえた!?」  
 
「気持ち悪いね、」  
 
ツクヨミを奉る神社は割とありますし天皇ともいくらか関わったりしてます、  
しかし八百万の中で最も高い人気と知名度を持つ姉と弟に挟まれ彼は三貴神の中で最も影の薄い存在になってしまいました。  
 
「そんな!ひどい!!」  
 
 
神々は三貴神の一人でもいるかいないかよくわからないツクヨミではなく八百万中最も頭の良いオモイカネガミに相談する事に決めました。  
 
 
「やだなあ皆さん、高天原の神々ともあろう方々がそんな辛気臭い顔しちゃって♪」  
 
オモイカネガミはイザナギ、イザナミが生んだ子ではなく最初に誕生した文化レベルの高い神の直系であるため自身も高い文化レベルを誇っていました。  
神々の真剣な頼みにオモイカネは荒ぶるスサノオに怯まず近づいていきます、  
「魔那レ゛合[κ○∠@†Ж↑■マカクカガagpン!!」  
 
「これは、あの時のイザナミちゃんと同じ、  
えいっ!!」  
 
ガツゥン!  
 
「今殴った!?あなた知恵の神様なのに石でブン殴らなかった!?」  
 
 
「やだなあこれが石なわけないじゃないですかぁ、これは塞の神と言って悪い物を抑え守ってくれるありがたい石なんですよ♪」  
「石って言ってるじゃん!!」  
 
「それよりも問題なのはアマテラスちゃんよ。」  
 
オモイカネいわく引きこもりは周囲が出そうとすればする程心を閉ざし余計引きこもってしまう物、  
童話の北風と太陽みたく自分から出てくる様にするべきだと。  
 
「でもどうやって?」  
 
 
「天岩戸の前でドンチャン騒ぎをするのです!  
鶏を鳴かせ楽器を鳴らしアメノウズメに舞わせアマテラスちゃんが岩戸の隙間から覗こうとしたとこをアメノタヂカラオにこじ開けさせるのです!」  
 
「コノアジノ開キノ様ニ開イテミセマース!!」  
 
アメノタヂカラオは八百万一の力自慢、  
横にいるオモイカネが子どもに見える程の巨体に太い手足に彫りの深い顔、  
人々に相撲をもたらしたとされる屈強な彼なら岩戸を開けてくれそうですしかし・・・  
 
「ちょっと!日本の国技をもたらした神の役が何でこの人なのよ!?」  
 
「相撲は日本人力士より外人力士が活躍してるのでむしろこの方が正しいのです!」  
 
こうして神々はオモイカネの指示に従い家畜の神はまだ元気な鶏を集めて鳴かせ、  
鍛治の神は楽器や鏡を作り、  
他の神々は酒や食べ物を携えて天岩戸前に集いて最高神引きこもり脱却の宴が始まったのです。  
 
「今カラ、ウズメ踊ルヨ♪」  
鶏と楽器も鳴らされるとそのリズムに乗りウズメの舞踏が始まりました、高い運動神経と褐色の肌が際立たせる愛くるしさに女神たちからの黄色い歓声が響きましたが  
男神たちは一部を除き冷ややかです、  
何故なら半裸で踊っているものの彼女の胸は平たく色気がないからです、しかし一人の男神がある事に気づきました。  
 
「てか下はなにも穿いてないんじゃ?」  
 
 
軽やかに踊るたびに服がめくれ毛も生え揃わぬ陰部があらわになってる事に気付いた男神たち不自然な前屈みになりながら大歓声を送りました  
 
 
「さわがしいな・・」  
 
先程まで神々は出てくる様に泣き付いていたというのに今聞こえるのは笑い声や歓声と言った楽しげな声ばかり、  
自分が引きこもり世界は闇に包まれてるはずなのに・・・・・  
アマテラスは岩戸の中から歓声の中心にいるウズメに聞いてみる事にしました。  
 
「ねえ、私が引きこもってるのになんで皆楽しそうなの?」  
 
「貴女よりモ立派ナ神ガ現れたからだヨ」  
 
 
自分よりも立派な神とは誰だろう?  
もしやかわいい男子の神かもと期待しながらアマテラスは岩戸を少し開けて覗き込みました、  
 
そこには鏡が置いてあり自分の姿が写ってますがそうとは気付いていません。  
「最近は男の子でも髪を私位伸ばしてるんだあ」  
 
「今ダ、天岩戸開キナサーイ!!」  
 
 
アマテラスが鏡に見とれている隙にタヂカラオは太い指を岩戸につっこみ自慢の怪力で神々が束になっても開けられなかった岩戸をグググとこじ開けていきます、  
 
 
そして彼女の手を引き外に出すとアマテラスの体は山吹色の輝きを放ち、  
その名の通り天から世界を照らして再び不思議な力で暖かい繁栄の活力を分け与えていきました。  
 
アマテラスが引きこもり脱却した後  
まどろみと鈍痛で頭がぼやける中  
石で殴られ気を失っていたスサノオが目を覚ましました、  
寝ぼけ眼を開くと雲一つない快晴の青空の下でうらめしそうな顔をした神々が自分を取り囲んでいたのです。  
 
 
「出て来たから良いものをよくもアマテラス様を引きこもらせて!」  
 
 
「なんとか言ったらどうなんですかスサノオ様!!」  
 
神々は一斉に世界を滅ぼしかけたスサノオを責めはじめましたが携帯メールでしか意志を伝えれないスサノオは言葉を発する事が出来ません。  
 
 
「大丈夫よメールや言葉じゃなくても伝える手段は沢山ありますよ、  
目を見れば相手が何を言いたいかわかるもんです。」  
 
オモイカネは先程自分が後頭部を殴り青ざめてるスサノオの目をじーっと見つめだしました、  
 
「やーねえ  
『正気を失った私を止めてくれただけでなく、  
引きこもった姉さんを出してくれるなんて  
オモイカネ様は凄いです!  
尊敬します!  
流石機○戦艦ナデシコや蛮○引力で電子頭脳になるだけありますね』だなんて照れるなあ♪」  
 
 
自分が思ってる事とまったく違う妄言にスサノオは頭を激しく横に振りました。  
 
「じゃあ次は私の目を見て私の考えてる事わかる?」  
 
おそるおそるスサノオはオモイカネの大きな目を見つめてみました、  
濁りなく黒真珠の様に奥深いその瞳の果てに浮かんだその言葉は・・・・  
 
「ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ 」  
 
『!?』  
 
 
こうしてスサノオは圏外の高天原からアンテナが立っている地上の出雲に追放されましたとさ。  
 
 

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